魔法少女いろは☆マギカ 第2部 RE:Ms.Pain Planter(休載中 第二章一部完結済)   作:hidon

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FILE-2 #31 絶交階段のウワサ / ウワサの支配人④ (ボス戦その4

 

 

 

 

「ありがとう……! ありがとう……っ!!」

 

「もう大丈夫ですよ……と、これで全員か、市川巡査!! これからどうしたら?!」

 

 磔にされた女性をゆっくりと路面に下ろすと、ももこは少女を背負った隣立つ男に問いかける。

 彼女と警察官―市川巡査の二人は、カマキリ男に捕らわれた人々を次々と解放していった。

 カエレ達がカマキリ男や双子を抑えてくれてるお陰で、敵襲を気にせず救助に専念することができた。

 極力体力が残っている者達にも協力を仰ぎ、“負の感情エネルギー”とやらを吸われ過ぎて虫の息だった人達や、子供達を背負ってもらっている。

 あとは安全な場所へ避難するだけである……が、ここはカマキリ男の世界だ。

 結界から脱出しなければ安全とはいえない。

  

「赤い螺旋階段だ……」

 

「赤い?」

 

 市川巡査は頷く。

 ももこ達が立っているのは、空中浮遊するアスファルトのステージ。その周囲を無数の黒い螺旋階段が巡回している。

 黒い螺旋階段は、乗ると自動的にこの場所に導かれるのに対して、赤い螺旋階段は、逆だ。

 乗ると地上に下りれるという。

 

「カマキリ男が地上に行くとき、黒装束の連中と一緒にそれに乗っていくのを見たんだ……」

 

「なるほど! それを探せば……って、ちょっと待って!? 黒装束って」

 

 ももこはまだ出会って無かったが故に失念していた。

 カマキリ男と双子とは他の敵である、“彼女達”を。

 

 ――そして、いやな予感はすぐに的中した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「アーハッハッハッハ!!」

 

「くっ」

 

 カマキリ男の鋭利な大鎌がカエレの頭上すれすれを翳めていく。

 正に間一髪――もう一拍回避が遅れていたら、首を飛ばされていた。

 忌々しく歯噛みするカエレ。

 先程、丸腰となったカマキリ男の頭上に、トドメの一撃を振り下ろそうした矢先だった。

 一瞬でカマキリ男の両腕が再生し、カウンターを振るってきたのだ。

 

「なんて異常な再生力だ……!」

 

「お前も分かっている筈だ! この結界にいる限り、俺は死なんぞ!」

 

 そういうことか。

 奴の結界に入った時から感じている違和。

 寒気を感じるのに、じとりと肌に纏わりつく湿気の様な、気色悪い澱んだ瘴気。

 捕らえた人間から採取した“負の感情エネルギー”とやらが結界中に充満しているのだ。

 それはつまり、奴にとっての生命エネルギー。

 枯渇しない限り、奴は何度でも再生する――しかし、その量は莫大。

 ならばと弱点の頭部を狙おうにも、用心深さと精妙なスピードで中々隙を見せない。

 インファイトで改めて実感するが、やはり相手の方が魔法少女よりもスペックは上だ。

 歴戦のカエレであっても、かなり手こずる。

 

 さて、どうするか――

 

「しかし、お前は一筋縄ではいかないな……。相手にしてると、どうも調子が狂う……。よし」

 

 カマキリ男の複眼の網膜が、紅紫の妖しいグラデーションを放つ。

 

「ディエゴ様を……傷つけないでっ!!」

 

 それが何なのか、考えてる暇などカエレには無かった。

 後ろに気配!!

 

「!!」

 

 カエレの背後から音も無く“魔法少女”が忍び寄っていた。

 秋野かえでが杖を振るい、襲い掛かってきた! カエレは振り向き様にバトルアックスで受け止めて彼女を弾き飛ばす!

 更に――

 

【チームカラス:パブロ・ディエゴ様の要請により、戦闘に参加します。カラスA:これより標的・三笠カエレを排除します】

 

【了解。カラスB:標的・三笠カエレを排除】

 

【了解。カラスC:標的・三笠カエレを排除】

 

 着地したかえでの背後に、黒い外套の魔法少女達が飛来した。

 機械音声のように淡々と指令内容を呟く3人の黒羽根(ゾンビ)が、袖口から伸ばしたブレードを構えて、カエレを睨み付ける。

 

「お前ら、少しこいつの相手をしていろ」

 

 そう言い残して、走り去っていくカマキリ男。向かう先は、フェリシアやいろは達のいる方向だ。

 

「待て!」

 

「させないっ!」

 

 追いかけようとするカエレだが、秋野かえでが目の前に立ちふさがる。

 同時に周囲も黒羽根達に囲まれた。

 

「……面白い。大人に喧嘩を売るとどうなるか、教えてやろうか!」

 

 ――黒羽根共は一分で片付くが……かえでちゃんはどうかな?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――レナちゃん、私の事、なんて呼んできたか、覚えてる?

 

『レ……レナのっ……! 下僕になればっ!?』

 

 ――そう。レナちゃんはずうっと私の事を下に見てきた。だって、私はレナちゃんの“下僕”だから。

 

『とろいから、その子』

 

 ――だって、仕方ないよね。友達って言われなかったのは、仕方ないよ。

 

『嫌だ! 絶対嫌!』

 

『その子入れるとか……レナは絶対嫌……!』

 

 ――私は、レナちゃんの友達の基準に達して無かったから……。

 

『足、引っ張りそうだから嫌だって言ってんの! こないだだって、ひとりじゃどうしようも出来なくて困ってたんでしょ? そんな子入れたって、戦力増えるどころか、面倒見させられるだけじゃない! 何でレナたちがっ……』

 

 ――……レナちゃんが、短気でウザくて、上から目線で。人が傷つくことも平気で言っちゃう性格なの、分かってた。

 

 ――でも私、それでも良かったんだ。レナちゃんにどれだけキツイ事言われても、ワガママ言われても……いつか、レナちゃんにとって、本当に一番の友だちになれるって信じてたから……ずっと我慢してきたんだよ。

 

 ――でもね……。

 

 ――期待に応えてくれなかった……レナちゃんが、裏切ったから。

 

 

 私よりも、男を選んだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「う……ん……っ」

 

「レナちゃん、良かった! 気が付いた!」

 

 目を覚ますと、桃色の前髪と瞳の少女がこちらを覗き込んでいた。

 

「いろは……? かえでは!?」

 

 どうやら。

 自分はカマキリ男に捕まった筈だったが、いろは達に助けられたらしい。

 ガバリと起きると、自分は桃色の光に包まれていた。いろはが、自分のソウルジェムに手を当てて、治癒魔法を掛けてくれていたのだ。

 フェリシアも近くに見えた。こちらを守るように背中を向けて立っている。

 

「それが……」

 

 いろはの顔が曇ったことで察した。

 依然として、状況は悪い。レナは申し訳無さそうに、頭を下げる。

 

「ごめんなさい、レナのせいよ。全部……」

 

「? それってどういう……」

 

「おい、来るぞ!」

 

「「!!」」

 

 フェリシアの声に、二人が一斉に振り向く。

 カマキリ男がこちらに向かって、全速力で突撃してきていた。

 

「くっ、アイツ……!」

 

「フェリシアちゃんっ!」

 

「任せろ!」

 

 いろはは、レナの治癒に専念してる為、身動きが取れない。

 よって、フェリシアが頼りだ。声を掛けると、彼女はニッと不敵に笑う。

 

「カマキリ野郎なんざ記憶をブッ飛ばすまでも無く、ズガンッとイチコロだ!!」

 

 自慢の大ハンマーを構えて、意気揚々と宣言する姿は実に頼もしい。

 だが……

 

 

「この、クズ野郎どもがあああああああああああああ!!」

 

 

「なっ……!?」

 

「「えっ!?」」

 

 襲撃に備え身構えていた三人は、眼の前で起きた光景に、一斉に驚愕した。

 カマキリ男の向かう先が、微妙に逸れた。

 標的は、フェリシア達では無い。

 

「ぐぇ……っ!」

 

 カマキリ男の助走を付けた蹴りが鳩尾にどっと食い込んだ。

 ()()()()()

 革靴の鋭い爪先が、倒れ伏していた彼女に深く突き刺さる。

 

「てめえら主様がピンチって時になぁに寝てんだよおおおおおお?!」

「ぐぶっ……がっ……!」

 

 痛みで、月夜の意識が覚醒した。

 カマキリ男が、のたうち回る彼女の背中を何度も何度も踏みつけてくる。

 背骨がミシッと音を鳴らし、全身に電流が駆け巡る。

 

「家族や友達が死んだっていいのかよおおおお!?!?」

「ごは、ぐぅ」

「俺に忠誠を誓ったんじゃねえのかよおおおおおお!?!?」

「ぐぅぅぅっ、ぁぁぁあああああぁぁあああああああッッ!?」

 

 全体重を掛けた足が、月夜の背骨をメキメキと押しつぶす。

 

「っ! ……月夜ちゃんっ!? やめてディエゴっ!!」

 

 痛みで朦朧とする意識を堪えながら、目を覚ました月咲が叫ぶ。

 カマキリ男が、憤怒の血に染まった複眼を月咲にも向けた。

 

「てめえもだよクソ妹っ!! 姉貴のワガママは幾らでも聞けるのに、俺の言うことは聞けねえってのかよおおおおお!?」

 

「っ……こんな痛い思いして、戦える訳ないっ!!」

 

「何い!?」

 

「アンタみたいな自分勝手で気色悪いクズ野郎の為に、誰が命がけで戦えるかっていってんだよ!! 勝手に一人で戦って勝手に一人で死ねよ!! 月夜ちゃんを巻き込むなあっ!!」

 

 月咲の涙声の叫びが、カマキリ男の地雷を踏み抜く。

 

「こんの……クソガキがあああああああ!!!」

 

 

 

 

「イカれてる……!」

 

「何なの、アイツら……? 仲間割れ、してるの?」

 

 仲間同士で蔑み合う異様な光景に、いろはとレナは呆然と見つめていた。

 一方で、フェリシアはふうとため息を付き。

 

「でも、チャンスじゃねーか」

 

 しれっととんでもない事をのたまう。

 

「あのカマキリ野郎が、シロアリ共ブッ殺してくれりゃあ、こっちの勝機は多少は上がるってもんだ」

 

「アンタ、何いってんのよ!?」

 

「同士討ちも有効な戦術の一つだろ? それより、今の内にこっから離れるぞ!」

 

 今は双子に集中しているが、怒りが治まればまたこちらに攻撃してくる筈だ。

 言いながら、フェリシアは既に背中を向けて駆け出していた。

 

「!? わ、分かってるわよ!」

 

 いろはのお陰で、大分回復できた。

 レナはすっと立ち上がり、慌てて走り去るフェリシアの後に続く。

 

 しかし……

 

「…………」

 

 いろはだけは、その場に留まったまま。

 カマキリ男と姉妹の様子を、じっと見つめていた。 

 

「…………やめて」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「オラァッ!!」

 

「ぐはっ……!!」

 

 カマキリ男が、月咲の顔面を蹴り上げる。

 爪先が顎に直撃し、月咲の体は後ろへ吹き飛んだ!

 

「月咲ちゃんっ!?」

 

 月夜の悲鳴を背に、月咲に接近するカマキリ男。

 じわりと、その複眼の端に()が滲む。

 

「お前らは味方の癖に、いつも俺の邪魔ばっかりする……、味方、なのに……ひ、ぐぅっ……俺を、俺をぉ、裏切るのかよぉぉおおおおおお!?」

 

「っ! ひいっ……!!」

 

 血の涙を流しながら、愚図る子供のようにしゃくり上げる。

 顔を上げた月咲は、その異様な様子に、全身が震え上がる。

 ぎらりと鈍い銀色の光が弧を描いた。

 彼の白い右手が再び巨大な鎌へと変形し、ゆっくりと振り上げる。

 

 

 

 

「やめて……っ!!」

 

 ーー遠くでいろはが呟いた。

 

 

 

 

「……てめえらに思い知らせてやる……永遠に繋がる絆なんて、あるわけねえんだ……」

 

 声を震わせながら、カマキリ男は冷酷に宣告。

 複眼の端から溢れた血の雫が、月咲の頭に垂れる。

 

「いやあああっ!! 助けて!! 月夜ちゃん!!」

 

「月咲ちゃっ……ぐぅ!?」

 

 強く踏まれた衝撃で、骨盤に深いダメージを負っていた。

 恐怖で動けない月咲を今すぐ助けたい月夜だが、下半身が痺れて足が動くことすらままならない。

 

「月夜ちゃん!? 月夜ちゃん!!」

 

「っ……、月咲ちゃん……ごめんなさい……っ」

 

「え……?」

 

「ごめんなさいっ、ごめんなさい!!」

 

 その場に蹲って泣きじゃくる姉に、月咲は絶句した。

 

「ほれみろ、姉貴はお前を助けない。結局、そんなもんなんだよ」

 

 絶望の言葉ーーそして大鎌が振り下ろされる!

 

「いや!!」

 

 死にたくない。

 月咲は必死の想いで叫んだ!!

 

 

「助けて……()()()()()()っっ!!」

 

 

 

 

 ――声は届いた。

 

 

 

 

 

 

「やめろおおおおおおおおおおおおおおお!!!

 

カマキリ男おおおおおおおおおおおお!!!!」

 

 

 

 

 

 

 ――()()()()に。  

 

 喉が張り裂ける程の絶叫が遠くから聞こえたのと無数の光の矢が飛んできたのは同時だった。

 

「えっ!?」

 

 死を覚悟した月咲が呆然となるのも束の間。

 首を切り落とさんと寸前に迫った大鎌が桃色の閃光に弾き飛ばされる。

 

「なにっ!? ……ぎゃあああああああ!?!?」

 

 更にもう一矢が振り向いたカマキリ男の複眼を貫いた!!

 血が溜まっていたせいか、噴水のように鮮血を撒き散らし、悲鳴を挙げるカマキリ男。

 

「あああああああああああああああああああ!!」

 

「ぐうううううう!!」

 

 怒り狂った金切り声に伴い乱射される桃色の閃光が、カマキリ男の全身を滅多打ちにする。

 しかし、彼の強靭な肉体はその全てを弾き飛ばした。

 右複眼に刺さった矢を強引に抜き捨て、矢の雨の中を構わず駆け出す。

 

「死ね!!」

 

「っ!!」

 

 瞬く間に目前まで迫ったカマキリ男が大鎌を薙いだ!!

 回避する間も無くいろはの頚筋に触れ――そして、

 

 

「っ……!」

 

 

 

 

 ――血飛沫。

 大量に噴き出す真紅が、一瞬で視界を染めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




あと3話ほどで締めたい
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