魔法少女いろは☆マギカ 第2部 RE:Ms.Pain Planter(休載中 第二章一部完結済)   作:hidon

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 許せなかった。
 姉妹の絆を引き裂こうとした事を。
 妹の前でお姉ちゃんを侮辱した事を。
 そして何より、お姉ちゃんの前で妹を殺そうとした事を。
 許せない。
 許せない。

 殺してやる――

 我を忘れて我武者羅に攻撃を叩き込んでいた。夢中に。一心不乱に。
 フェリシアちゃんの指示を、聞かなかったフリして。
 気がつけば、カマキリ男は眼の前に立っていた。振り下ろされた凶刃は、迅速で目が追えない。

 ――あ、死ぬんだ。

 直感だった。
 もう、終わりだと。
 頚筋に刃が触れた瞬間、どんと真横から何かに体当たりされた気がしたが。
 それを確認するまでも無く、視界が暗転――




 


FILE-2 #32 絶好階段のウワサ / ウワサの支配人⑤ (ボス戦その5)

 

 

 

 

 

 

「ん……?」

 

「大丈夫? ……っ」

 

「レナ、ちゃん……?」

 

 死んでいなかった。

 目を覚ますと、水波レナの顔が視界を埋め尽くしていた。

 途端、ぐぅっ、と呻きと共にきつく歪んだ顔を見て、いろはは察した。

 

「!! レナちゃん、まさか――!?」

 

 ――自分を庇って。

 額に脂汗が浮かんでおり苦痛を我慢してるのは明白だった。

 背中を見ると、深い半月状の裂傷が走りドクドクと血が溢れていた。

 もう数センチ深く入っていれば、骨と内腑に及んでいただろう。先ほど視界に広がった血飛沫は、レナのものだった。

 でも、何故――

 

「アンタ、前に言ってくれたでしょ……? レナのこと、“ヒーロー”みたいだって……」

 

「……!」

 

「っ……レナ、酷い性格で、友達を裏切った事にも気付けなかった、最低な奴だけど……せめて、アンタの前ぐらい、"ヒーロー”でいさせなさいよ……!」

 

 奥歯を噛んで焼けるような背中の痛みに堪えながら、そう答える。

 

「レナちゃん……ごめん、私……!」

 

「いいから……。早く、逃げ、て……!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あんのバカ、また……!!」

 

 後ろを振り向いて見えたその光景に、フェリシアはメチャクチャ腹が立った。

 いろははまたも人の話を聞かずに、独断で行動――結果、自分も仲間も危機に陥った。

 

(何で一番弱い癖に、ああいう時だけメンタルタングステンになるんだよボケ!! トラブルメーカーにも程があるだろ!!)

 

 もはや我慢の限界。

 先に引き返したレナが、全速力で突っ込まなければ首を撥ねられていた。

 しかも、カマキリ男の注意を引き付けてしまった。同士討ちを狙う筈だったのに。

 奴はいろは達の目前、自分が助けに行かないとまずい状況――

 

「ああ!! クソッたれ!!」

 

<待て、フェリー>

 

 半ばヤケクソ気味に、駆け出そうとした瞬間にカエレのテレパシーが頭に響く。

 

<ッ、なンだよッ!?>

 

<モモがピンチだ。助けに行ってやれ>

 

<馬鹿いえ! こっちだって同じ状況だ! 見捨てられるか!?>

 

 別に仲間意識がある訳じゃないが、いろはが死ねば、契約不履行な訳で解雇されてしまう。

 つまり、大賢者試験はそこで失格――それはフェリシア的に非常にマズイのだ。

 

<大丈夫だ。こっちにも、切り札がある>

 

<はあ!? おまえ何…………っ、ははーん。なるほど、そういうことね……>

 

 カエレの言っている意味がなんとなく分かった。

 フェリシアは視線を優花のハルバードに向けた。路面に突き刺さったそれからは、蒼穹の魔力が漲っているように見える。

 あれは“ただの武器”だ。

 そう、今は……だから“誰も”気にしてない。

 

<じゃ、頼むぞ>

 

<引き受けた>

 

 フェリシアは向き戻って、ももこの魔力を感じる方へ真っ直ぐ駆け出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 出血多量でレナの顔が徐々に青白く染まっていく。呼吸もか細い。

 

「お前さあ……黒羽根共は一匹も殺せなかったんだってなあ~」

 

 早く安全な場所に移動して、治療を――する訳にはいかなかった。

 カマキリ男がいろはの前に立ちふさがる。潰れた右複眼からダラダラと流血を零しながら、大鎌を構えて幽鬼のように歩みよってくる。

 

「……!!」

 

 カマキリ男のスピードは異常だ。

 魔法少女より遥かに早く立ち回れる。頼りになるカエレとフェリシアは遠くにいる。

 ――ダメだ、逃げることはできない。

 いろはは、倒れるレナを庇うように立ち、クロスボウを彼に向けて構える。

 

「……なのに、俺は殺せるのかよおおおおおお?!」

 

「うるさい……!」

 

「ん?」

 

「黙らないと……もう一つの目も、潰すよ……!」

 

 “脅す”のは、生まれて初めてだ。

 低い声で呟きながらも、クロスボウを構えるいろはの腕は震えていた。

 それを見て、カマキリ男がボロボロのシルクハットを脱ぎ捨てる。

 

「上等だ!! じゃあ、俺を殺してみろぉ!!」

 

「えっ」

 

 まさかの申し出に、いろはは唖然。

 カマキリ男は、自分の頭をツンツンとつつき叫んだ。

 

「俺の弱点は“ここ”だ!! さあ射ってみな!! 殺したいんだろう!? 殺すほど憎いんだろう!? 」

 

「……!?」

 

 動揺。

 右腕の震えが、大きくなる。

 大顎を解放して、カマキリ男が狂笑を響かせながら挑発。

 

「ほら、どうした!? できるんだろ、早くやれよ!! 人間は殺せないが化け物は容赦なく殺せるんだろう!? 俺も本当は人間だけどな!! アーハッハッハッハッハ」

 

「くぅ……!!」

 

 射たなきゃ。

 こいつのせいで、何人もの人たちが殺された。罪無く、ただ普通に生きていただけの人たちが。

 だから、私が止めないと――

 このチャンスを逃すな――

 射て――

 

 

【仲間を、傷つけたいのか?】

 

 

【お前と同じ。仲間、同胞、同種。人間。人間。人間。人間。人間。人間。人間。人間……】

 

「…………っ!?」

 

【それでも、お前は私を撃つのか。人殺しだ。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し。人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し人殺し……】

 

 蘇るあの時の黒羽根の言葉。

 右腕に蘇る人を命を感じる重み。

 

 ――頭では分かっているのに、いろはの手はトリガーを引いてくれない。

 逡巡が格好の餌となった。

 いろはの体から黒いアトモスフィアが浮き出した。

 

「いろは!? 逃げて!!」

 

 苦痛を堪えながらもレナが叫ぶ。

 いろはの全身から噴出される霧状の“負の感情エネルギー”がカマキリ男の大口に吸い込まれていく。

 まずい、このままではいろはも虫の息にされる! 

 

「なるほど、殺せないか……しかし、守る為なら殺せると」

 

「くぅぅ……!!」

 

 ――違う、そうじゃない。

 そんなつもりじゃ無かった。

 だけど――

 段々意識が朦朧としてくるが、それでも構えは解かない。

 

「でもよぉ、お前が守ろうとしたぴーひょろ姉妹も俺の仲間なのは知ってるよなぁ? つまり敵なんだぜぇ~!? 人殺しを止める為に人殺しを守るってのは矛盾してるよなぁ~!! アーハッハッハッハ!!」

 

「ぅぅうううううぅうぅ……!!」

 

「アーハッハッハッハッハッハ!! どうしたあああああ!? 早く射てよおおおおおお!?」

 

「……ごめん――」

 

 いろはは謝り、意を決して矢を放つ。

 

 

 ――カエレさん!!

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――一方。

 

「そのまま戦い続けると、本当に死んじまうよ!!」

 

「ディエゴさまの邪魔はさせない、特に貴女には!!」

 

 黒羽根だった者達の骸と生首に囲まれた状態で。

 自分を縛り付けようと迫る無数の蔓をバトルアックスで華麗に捌いていくカエレ。

 黒羽根は予定通り一分で殲滅したが、かえでだけは非常に厄介だった。

 洗脳によって、リミッターを外されているのだ。故にパワーとスピードが異常に強化され、固有魔法も超強力。本気で挑まなければ勝てそうにないが、モモの妹分だ。殺さない程度に仕留めるとなると困難を極める。

 だが、それ以上に、戦いが長引けば、かえでの体がもたない――

 

(――さて、どうするか……?)

 

<カエレさん!!>

 

「っ!?」

 

「はあああああ!!」

 

 突然聞こえてきたいろはのテレパシー。

 振り向くと視界が捕らえたのは“自分に向かって”真っ直ぐ飛んでくる桃色の矢。

 飛びかかり、杖を振り抜いてくるかえでを右手のバトルアックスで受け止め、そして――

 

(なるほど。そういうことか――)

 

 もう片方のバトルアックスを薙いで、矢を弾き飛ばした。

 その狙いは――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「馬鹿が、どこに向かって射ってる!?」

 

「……これでいい」

 

 緊張が解けたのか、いろはの膝がガクリと折れる。

 

「ハッ、自分を諦めたって訳か。じゃあおとなしく生ける屍となりなぁ!!」

 

「諦めてないよ……!」

 

 既に負の感情エネルギーを大量に吸い込まれ、ぜいぜいと息を切らすいろは。

 だが、カマキリ男を強く睨み付けるその瞳には闘志が満ちていた。

 

「何い?」

 

「カマキリ男……私はあなたが憎い。殺したいって思ってる。……でも、これ以上傷つけられない」

 

「お前は弱いからなあ」

 

「そうだね……っ、私は弱いから。肝心な時にビビッて、何もできなくなっちゃう……だけど、私より強い仲間は、いる」

 

 “仲間”――と聞いて、カマキリ男の顔が険しくなる。愉悦が消えて、眉間に皺をぐっと寄せた。

  怒りで真っ赤に充血した左複眼がギョロリといろはを睨み付け、その巨体がじりじりと迫り寄って来る。

 

「……あ? お前何がいいたい?」

 

 カマキリ男の全神経がいろはに集中した。

 うっ、と息を飲み圧倒されるいろはだが、奥歯を噛み締め恐怖を堪える。

 

「……っ、言ったって、分からないよ! ()()()()()のあなたには、絶対に……!!」

 

「……っ!? てめえええええええええええええええええ!!!

 

 渾身の挑発に、カマキリ男がブチ切れた。

 いろはの首目掛けて大鎌を振り上げた――瞬間、 

 

「っ!? ぎゃああああああああああああああああ!?!?!」

 

 真横から飛来した光の矢が、カマキリ男の左複眼を貫く!!

 大量の血液が噴出し、カマキリ男がのたうち回った!

 

<まったく、とんだ博打だねえ>

 

<カエレさん!? ありがとう!!>

 

 テレパシーが飛んできて、いろはは感謝を述べる。

 

 ――自分が出来ない事は、他人に任せる。

 

 それが祟りの捜査の際、ももこ達と警察の関係を見て、いろはが学んだことだった。

 だからこそ、この攻撃方法が即席で考え付いた。

 自分には誰かを傷つける覚悟は無い。なら、傷つける強さを持つ仲間に任せればいい。

 以前、黒羽根と戦った時、フェリシアはいろはの矢をハンマーで弾き飛ばして、黒羽根の急所に当てたことがある。

 つまり、傭兵には、そういった高度な戦闘技術がある筈だ。

 フェリシアができるのならば、当然、よりベテランのカエレにできない道理は無い――そう踏んだ上での作戦だった。

 

<でも、よくやった! いろはちゃん、優花のハルバードの元へ急げ!!>

 

<わかりました!!>

 

「レナちゃん、今の内に一緒に逃げよう!」

 

「くっ……、う、うん!」

 

 今だ苦痛で動けぬレナをおぶり、いろははハルバードが突き刺さってる方へ駆け出した。

 カマキリ男の自慢の両目は潰した。これで、自分たちを追いかける事は難しい筈だ。

 

「ぐぅぅうぅ、逃がすか! こんな傷、すぐに再生して……っ」

 

 カマキリ男が立ち上がる。

 結界中に充満する無尽蔵の負の感情エネルギーを大量に吸い込むが――

 

(な、何故だ!! 何故再生しない!?)

 

 視界が戻らないことに愕然となるカマキリ男。

 本来なら一瞬で再生する筈が、潰れた複眼はただ滝の様な鮮血を流し続けるのみ。

 

(まさか、あの時……)

 

 ――やめろおおおおおおおおおおおおおおお!!! カマキリ男おおおおおおおおおおおお!!!!

 

(あのピンク頭の怒りが、俺の生命力を上回ったというのか……!? 馬鹿なッ!!)

 

 本来、自分のみ有利に働く結界の特性が仇となった事に呆然となるカマキリ男。

 更に、いろはの属性は“光”だ。

 人の傷を修復し、ソウルジェムから多少の穢を取り除く、癒やしの光だ。

 それは、“呪いの力”を掻き消す。

 つまり、それによって構成されるカマキリ男の肉体とは、抜群に相性が悪かった。

 

「ぐっ、ククク……舐めるなよガキどもぉぉぉ……!」

 

 しかし、これで怖気づく程、カマキリ男は弱く無い。

 不敵な笑みを浮かべて、自信たっぷりに言い放つ。

 

「俺にはまだ“触覚”がある! お前らの魔力なんぞ、すぐに探知してやるぞ!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

<――恐らく、山吹啓吾(カマキリ男)は、そう考えるはずだ>

 

 レナをおぶりながら、いろははハルバードに向かって駆けていた。

 カエレのテレパシーで指示を聞きながら。

 

「どうしたら……!?」

 

<こっちも切り札を使う。早くハルバードへ! 既に魔法陣が張ってある筈だ>

 

 優花の魔力もまた、癒やしの光だ。

 魔法陣にレナを下ろせば、回復させることができる。

 ハルバードは既に視界の先に見えていて、あと少しだ。

 

「わかりました!! ……ッ!?」

 

「アーハッハッハッハ!! そこかあああああああ!!」

 

 背中に突き刺さる魔力を感じたのと、狂喜が耳を貫いたのは同時だった!

 振り向くと、血眼のカマキリ男が鮮血を撒き散らしながら追いかけてくる。

 

「やばい、気づかれた!!」

 

 大分距離を取った筈なのに、カマキリ男は尋常で無いスピードでぐんぐん距離を詰めてくる!

 背中のレナが耳元で叫んだ。

 

「レナを下ろして!! じゃないと一緒に死ぬわよ!!」

 

 ギリッと歯を噛み締めて、いろはは叫び返す!

 

「やだ!!」

 

「なんでよ!!」

 

「かえでちゃんを助けるんでしょ!?」

 

「――っ!?」

 

 ハッとなるレナ。

 

「私だって同じ!! お父さんとお母さんを助けてういを見つけるまで絶対に諦めない!!」

 

「いろは……!」

 

「その為なら命だって何だって賭けてやる!! レナちゃんもそのつもりだったんでしょ!? だから諦めないで――」

 

「今度こそ終わりだ!! 死ねえええええええええええええ!!!!」

 

 ハルバードは目前。

 魔法陣へはあと一歩。

 しかし、それより早くカマキリ男が追いつき、両サイドから大鎌で斬りかかる。

 

「まずい――!!」

 

 

()()を貴女の矢で破壊しなさい>

 

 

「ッ!?」

 

 刹那――頭に響く何者かのテレパシー。

 カエレでも、他の仲間のものでもない。聞き覚えの無い“新参者”の声。

 前方を見ると、優花のハルバードの真上に、大きな水球が浮かんでいた。

 あれを、射てって訳? ――だけど。

 

(だめだ!! 間に合わない!!)

 

 視界の両サイドから白銀の刃先が入り込む。

 いろはが再び死を覚悟した――

 

 

「カミハマン・キーックッ!!」

 

 

「ぐはっ!!」

 

 勇ましいバリトンボイスが轟いた。

 瞬間、背中がふっと軽くなったのと、カマキリ男の呻く声が聞こえたのは同時だった。

 レナが飛び出し、カミハマンに変身して繰り出したローリングソバットが、カマキリ男の下腹に直撃し、後方に弾き飛ばした!

 

「レナちゃん!?」

 

 振り向いて驚くいろはにカミハマン(レナ)のテレパシーが響く。

 

<レナも最後まで諦めない!! いろは今よ!!>

 

「っ! うんっ!!」

 

 いろははすぐに向き直り、水球に向けて矢を放った。

 これがなんだかよくわからないけど、やぶれかぶれだ!!

 矢が触れた瞬間――

 

 パァンッ!!

 

 ――と爆裂音、水風船が割れたように大量の水が周囲に弾け飛んだ!!

 

「!? なんだ……これは……!?」

 

 途端、カマキリ男の動きが止まる。

 困惑した様子で、キョロキョロと首を忙しなく動かした。

 

(何が起きた!? いきなり魔力があちこちに分散して、奴らの場所が全然わからねえ!!)

 

 魔力センサーたる“触覚”が異常を起こした。

 広範囲に空気中に飛び散った無数の()に反応して!

 

<いろはちゃん>

 

<分かった! レナちゃん、パス!!>

 

 カマキリ男が混乱してる隙に、いろはがハルバードに辿り着いた。

 そこから聞こえてくる声にテレパシーで応えると、突き刺さってるそれを引き抜いて、カミハマン(レナ)に放り投げる。

 

<ありがとう!>

 

<ナイス判断、ですわ!>

 

 ハルバードをナイスキャッチするカミハマン(レナ)

 足元に魔法陣が発生し、背中の傷を癒やしていく。そして――

 

<全力で、(わたくし)をブン投げるのですわ!!>

 

<OK、行くわよ!!>

 

 言われるがまま、助走を付けて――思いっきり槍を投擲!!

 

「っ……ぐえっ!?」

 

 真っ直ぐに飛来した槍がカマキリ男の喉元に突き刺さる。

 メリメリ、ブチブチと肉を切り裂く音が響きそして――

 

「ぁぁぁああああああああああああああッ!?!?」

 

 ――頭を斬り飛ばした!

 

 

「や、やった!!」

 

 絞り上げる様な断末魔を挙げて、ぼとりと落ちて転がるカマキリ男の頭。

 血飛沫を上げて後ろに倒れるその巨体を見て、元に戻ったレナが歓喜の声を上げる。

 

<一件落着、ですわ>

 

 そしてその骸から離れたハルバードもまた。

 そう安堵して、()()姿()に戻るのだった。 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




 








 しかし――
 
「まだだよ。まだ、終わらない……」

 未だカエレと戦いながら。
 主の死に様を遠くで見ていたかえでが、ポツリと呟く。

「本当の祟りは、これからだよ……!」

 ゆるりと口元が弧を描いた。

 愉悦。
 恍惚。

 まるでその時を待ち望んでいたかのように――。










 
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