Fate/Desire Grand Prix   作:水無月 驟雨

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別世界に移動したら当然ノーカンになるので初投稿です


集結編
集結Ⅰ:水面下の胎動


 

 

 

 痛みにしばらく唸っていたがようやく復活したジーンを肩から下ろし、どこぞのビルの屋上へと降り立った。

 

「さて。一応言うがここがさっきの小窓の世界だ」

「なんかサラッと世界間移動したよねー」

「完全な異世界じゃなくて並行世界だからな、そういうところもあるんじゃないか?」

「元は同じってことだもんね」

 

 手すりから下を見下ろしたり、件の物理法則メガ無視タワーを遠目に観察してみたり、三々五々とバラけてみるが、確かに世界間移動という言葉のパワーさに相応しいほどかと言われると微妙だ。

 

「さっきよりは街の様子が見えるけど、本当に普通だよ?」

「建造物なんかは元いた世界より若干未来感がありますが……いえ、科学技術そのものがとても進歩している訳ではなさそうですね。車や電車、住宅なんかは普通です」

 

 あの謎浮遊タワーを見た後だ、てっきり車が空を飛んでるかもとか期待したが、別にそんなことはないらしい。

 

 やはり異質なのはあのタワーだけ、と。

 あとやっぱり、スカイツリーなんて目ではないサイズだ。倍くらいありそう。

 

「でもどこか空気が美味しいな、まるで自然の中の様だ」

「あーそうかも。日中なのに星が綺麗なのと関係あるのかな?」

「さぁな、実はあの車が全部電気自動車とかそういうオチじゃないか?」

「? 電気以外でどうやって動かすというんだい?」

「……未来マウントめんどくせー」

 

 英寿曰く小窓の映像とのタイムラグは無いらしいので、今この世界は創り直された直後ということになる。確かに、創り直される前からかなり輝いていたとはいえ、その後では更に星がよく見えた。このレベルになるともう夜になっても明るいのではないだろうか。

 

「じゃー、次のデザグラ開催はいつなんだろ」

「だいたい、1ヶ月から2ヶ月は空くだろうね。その辺はゲームマスターのやる気と用意周到さに依存するから絶対とは言えないが」

 

 一体、先程終わったデザグラの勝者は何を望んだのだろう。

 まさか街の発展しか願ってない訳ではあるまいと思うが、道長の言う通りガソリン車が無くなり、排気ガスが極端に減って大気が綺麗になったから星がよく見えるのかもしれない……そう思うとそんな気もしてきた。

 

「よし。とりあえずみんな集合だ」

 

 英寿が遠足で引率してる先生並感で呼びかければ、こちらも小学生の如くぞろぞろと集まる彼ら。個性がすごいとはいえ、この辺は御しやすくて楽と言えるであろう。

 

 案外ガキっぽ……子供のようなところがあるメンツだから、と納得しておく英寿。別に口に出してはないしポーカーフェイスは得意なのでセーフ。

 まぁ素直と言えば聞こえは良いし……。

 

 ちなみに、1番ガキっぽく見えて1番達観している可能性があるジーンである。まぁジーンもベロバ同様見た目年齢が少年なだけなのだろう。

 

「さて、今回の視察だが、主な目的は2つある」

「おぉ、勢い的に『気になったから来た』くらいかと思ってた」

 

 意気揚々(?)と世界に乗り込んだ割には生真面目に語りだす英寿。景和が驚き半分呆れ半分にそう茶化すと、対する英寿もまた苦笑して返した。

 

「それは正直否めないけどな。──で、まず1つ目。この世界が本当に『みんなにとって平和なのか』を調べることだ」

 

 そうしてまず、英寿の指が1本立てられる。

 

 前話での通り、直感的なところでは、『ゲームによる市民への危険』と、『ギラギラによる幸運の偏り』の2つを何とかしない限り、その平和は一時的なものに過ぎない。

 

「そもそも、どんな対策を施したってデザグラの勝者が『全人類の滅亡』を願ってしまえば一発でお釈迦なはずなんだ。個人のワガママで人類諸共不幸にされる世界なんて俺は許せない」

 

 英寿にしては珍しく、少し感情を覗かせて吐き捨てるように断言する。

 ちょっとピリついた空気を汲んでか、祢音が努めてそんな重さを感じさせない声音で発言する。

 

「じゃー、こっちの世界じゃ叶えられる規模が縮小してるとか」

「デザグラは所詮未来人(わたしたち)の道楽だ。そんなことをする意味はないだろうな」

 

 だがそれにはギロリが答えた。英寿たちが思っている以上に、デザグラのことは快く思っていないようだ。

 そして、その発言も正しい。もちろん、ギロリ自身を含めその例に漏れる者が存在するのも承知しているが、それだけでスエルの牙城(デザグラ)は崩せないのもまた、深く理解しているから。

 

 そしてその例外(こちら側)の関係者ことニラムもその言葉に同意する。

 

「彼の言う通りだな。ゲームの為なら我々は世界すら使い捨てる。何度でも遊べる箱庭のような認識の者がほとんどだろう」

 

 察してはいたものの、デザグラ関係者にそうハッキリと言われれば、少し沈んでいた英寿が更に暗くなったように見えた。

 

「……だから正直、俺としてはあまり期待していないんだけどな」

「知れたらラッキー、ってことね」

「そうだな。たとえ一過性の平和でも、俺たちの世界に活かせるものがあるかもしれない。その為の視察だからだ」

 

 祢音の質問に肯定を返し、己が世界の展望を語る英寿。

 

 ミツメ──母に会うことが理由で戦いに身を投じた彼だが、この激動の1年弱で、露骨に心境の変化があったようだ。

 他人の幸せを本気で願って、その為に力を得る選択をした英寿だからこそ、本来関わることのない並行世界に滅びの未来しか無いのなら、そんなものに構っている時間は無いのだ、と。

 

 ……もちろん、この世界のキーマンが英寿のように平和を望んでいるとも限らない。なればこそ余計に期待はできないという話だ。

 

 ゴージャスな扉をくぐったときとはかけ離れたシリアスさと、その過去を知るからこそ何も言えない景和たち。

 だが、助け舟は沈黙となってから案外すぐに出された。

 

 肩を怒らせる英寿に、そっと添えられる掌。

 

「──大丈夫、君ならきっと上手く行くさ。だろ?」

 

 いつも通りのジーンの、だがいつもより落ち着いた優しい声が英寿の耳朶を打った。

 それではっとなり顔を上げ、直後バツが悪そうな顔をしてため息をつく。

 

「……悪い、熱くなった」

「いいさ。君のそういう熱いところに、僕は心を打たれた(感動した)んだから。──それに、英寿の珍しい表情が見れて嬉しいよ」

「さすが弟(仮)だな、ありがとう」

 

 ゆるく頭を振って思考を切り替える。

 いつの間にか握られていた拳を軽く開く。掌についた爪の跡を眺めながら、気まずさを誤魔化すように、落ち着く意味も込めてゆっくりと再開する。

 

「と言っても、2つ目はもっと期待薄だ。気にはなるが重要ではないしな。──『この世界が分岐した原因及び、その後の歴史』を調べたい」

 

 口にしながら立てた2本目の指は、しかし1本目より熱意が見えないようだった。様子からして、ただの興味本位だというのは本当のようだ。

 

「俺たちとは違う歴史を歩んだ世界──そう言うだけなら簡単だが、ことはそんなに単純じゃない。どこで分岐したにしろ、デザグラが存在している限り、生半可な過去(みち)を辿ってないだろう」

 

 分岐した先が多少違うくらいなら、グランドエンドを乗り越えた、または完遂された段階で本肢に合流するはずである。だが今もこうして独立して存在している以上、もっと根本から違う解決方法が採られたのだと推察できる。

 

 繰り返すようだが、例えば創世の神としての素質を持っていた英寿がその力に目覚めていなければ(=ギーツⅨが無ければ)、解決を目指す道のりの難易度は爆上がりする。

 

「個人的にはライダーの攻撃全無効のジャマ神バッファが1番勝てる未来見えなかったけどね」

「もう少し具体的な願いで、かつあの時の強化が最終戦に持ち込めていたのなら、単身リガドオメガに勝てる未来もあったかもしれませんね」

「そういう並行世界もあったのかもね。多分今はもう合流して無くなってるけど」

 

 ラスボスは『リバース』とかいうクソバグチート技を使うスエル/リガドオメガだ。ゲームを統べているのだから当たり前の権限と言えば……いや別に主催者だからって時間逆行は盛り過ぎでは? オーディンかお前、結構オーディンだなコイツ。

 

 使わせないという戦法もあるとはいえ、一瞬でも隙を見せたら変身能力すら奪われて負ける勝負など、身体スペックの差以前にそもそも勝負として成り立っていない。

 結果何らかの対策が必須になるのだが、時間干渉の対策なんてラスボス(クロノス)劇場版フォーム(スーパータトバ)時の王(ジオウ)とかそんなんばっかである。あと効かないのは紘汰神くらいのもん。

 やはりクソバグチートだなよし解散。

 

 ……とにかく、やはりギーツ世界線の中だけでは、ギーツⅨや創世の力を抜きにしてどう対抗しろと言うんだよって具合のチート能力であった。

 なので順当に行けば、こちらとは別の歴史を歩んだ末に力を発現させた英寿やツムリ辺りがこの世界に存在していると考えるのが自然だろう。

 

「もしくは、創世の力を使って何かしらが強化された、あのクソバグチートに対抗できるレベチなライダーやらジャマトが爆☆誕したと思っとくか」

「あとは……案外運営と和解して、全部丸く収まってるのかもよ?」

「何でもアリですね……」

「まぁ言うだけならね?」

 

 そこまで言って、まぁ結局は確かめてみないと分からないという結論に帰ってきてしまう。分岐した原因すら分からない以上考えるだけでは埒が明かないのは分かってはいたので、ここは一旦説明を終えた。

 

 すると、はっとした顔で景和が顔を上げる。

 

「てかそっか、この世界にこの世界にも英寿や祢音ちゃん、道長がいるんだね」

デザグラ継続中の(こんな)世界だ、絶対にいるとも限らないけどな。──まぁ少なくともバッファは居るだろ」

「「たしかに」」

「おい」

 

 ゾンビの耐久力を舐めてはいけないのは、現代人3人が1番よく分かっているのだ。途中で人の道を逸れ更に強化されたが故に、ガチ人外の生存能力であった。

 

「ゲイザー始めとしてあらゆるライダーやジャマトにボッコボコにされたもんね」

「ゲイザーと古代魚ジャマトはちょっと同情した」

「うるせぇな、まさか『最強のライダーになりたい』って願って『ライダー限定の特攻特防』がつくとは思わなかったんだよ」

「対ブジンソード×3は俺が悪いんだ……俺が姉ちゃんを守れなかったから……」

「触れにくい話題を自分から掘り起こさないでくれませんか、泣き落とし喰らってブジンソードを生み出した私もまだ微妙に罪悪感あるので」

「てゆーかあれはナッジスパロウが悪いかんね! 三葉虫ジャマトって言うけど茶色くて素早くてほぼゴ○ブリじゃん!」

「責任の所在とか関係ないシンプル悪口やめような?」

パンクジャック(晴家ウィン)が言い出したんだぞ」

「アイツほんま……」

 

 閑話休題。

 

「俺が言いたかったのは、創世の力産のナーゴ(鞍馬祢音)はそもそも生まれてすらないかもなってことだ」

「なるほどね、英寿も石像にされて会えないかもしれないもんね」

「そうだが、その場合ギャーゴも存在してないけどな」

「……お前ら実は仲悪いのか? なぁ」

有名人同士(スターとインフルエンサー)の険悪ムード、スキャンダルですね」

「お前ら! 一旦!! 黙れ!!!!!」

 

 (久々の二次創作が楽しすぎて閑話休題を挟んでも)どんどん話が脱線していく英寿たちを見かねて、道長が普段の5倍くらいの勢いでツッコミを入れてくれた。

 今にして思えば、最初はあれだけ「お前らと馴れ合う気はない」て雰囲気だった道長がこんなに話の輪に入れててお母さん嬉しいよ。

 

「目的2つを調べるってことは、やっぱり聞き込みとかするんでしょ? もしかしたら英寿や祢音ちゃんは有名人のままかもしれないし、本来この世界の人間じゃない&顔割れてるのにそんなことしたら調査とかこの世界の英寿と祢音ちゃんに影響出るんじゃないの?」

 

 よく分からないけどタイムならぬパラレルワールドパラドックスみたいな? と首を傾げる景和。

 そのことについては想定していなかったのか、一瞬英寿が顎に手を当て間を空ける。

 

 影響というほどでも無いと思うが、確かに活動効率は考えなければならないだろう。ファンに囲まれすぎて身動きができなくなり目的が果たせませんでした、では間抜けにも程がある。

 

「じゃあグループ分けでもするか。2人1組4チームで手分けして行こう──あ、姉さん(あまり)はジーンと俺とな」

「あ、はい」

 (非戦闘員だし姉さん呼びは甘んじて受け入れよう、という顔)

 

 こうしてさっくりチーム分けを終え、もう一度目的も確認し合い、しばらくして出立の準備も概ね完了した。

 

「今は10時だから……じゃあ15時にまたここ(屋上)に集まろう。情報を整理してから本命──あのタワーに全員で行くぞ」

「わかった」「おっけー」「あぁ」「わかりました」

 

 四方に別れるとはいえ、一応タワーから離れて市民に話を聞いてみようということになった一同。

 馬鹿でかいタワーについ目を奪われがちだが、よくよく見ればタワーの足元も、周りに比べ発展具合が頭ひとつ抜けているように見えるからだ。戦国時代の城下でもあるまいが、まずは本丸から離れ、外堀を埋めていく作戦と相成った。

 

「集合何時だったっけ」

「え〜〜〜っと5時だよ」

「15時ですね」

「既に不安だ……」

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 そうして始まった聞き込み作業。

 分担されたうちの1つ、道長ニラムチームは、そろそろ集合時間が迫っているが未だに聞き込みを続けていた。

 

「──あぁ……なるほどね。いや、ありがとうマダム」

 

 それは成果が芳しくないから……ではなく、その全くの逆。

 そう、誰も彼もが如何にこの世界が素敵かをペラペラと語るせいで、情報の裏付けと取捨選択とに死ぬほど手間がかかっているのだった。

 

「さて、そろそろ戻ろうか」

「おい待てよ、まだメモが……」

 

 会話担当のニラムと、情報整理担当の道長。ニラムが話術に長けるが故の消去法分担だが、傍から見た険悪さよりは案外上手くやれているらしかった。

 

 集合場所へ向けて歩き出すその肩を、道長がメモ帳を持った手で掴み引き止めた。

 

 「失敬」と謝罪するニラム。まだやってんのかお前みたいなニュアンスは全く無く、そんなにちゃんと謝られると道長としても面白くない。

 

「そうだな、まだ急ぐような時間ではないから落ち着いて続けたまえ」

 

 「死ぬほどボッコボコにされた」と語り恨みを持ってそうな風だった道長も、普通に接すれば物腰だけは柔らかいニラムにそう強く当たれないでいた。

 マンガ化されれば序盤は絶対に糸目になってそうなキャラなのに(関係ない)と心中で八つ当たりするくらいしかすることがない。

 

 道長の素っ気なさ当たりの強さは、基本ぶつける理由がある者にしか向かない。

 超A級だかなんだか知らないが、実力問わず基本りんねちゃん以外スーパー上から目線な黒鋼スパナと一緒にされては困るのだ。

 それこそ道長からすれば笑えないジョーク。

 

 そもそも、裏で何を考えてるんだか分からないし。糸目だし(糸目じゃない)。

 元運営とはいえ、英寿が信頼しているようだったから大丈夫だとは思うのだが。

 

「これと、これ……これも。主観じゃなくて確定だと思って間違いなさそうだな」

 

 ぶっきらぼうに見えて性格はしっかりしている──いやぶっきらぼうなのは間違いないのだが──道長に、ニラムが今日何度目か知れない残念感を覚えながら感謝してメモを受け取る。

 

 そりゃあ職場でもそこそこ上手くやれている道長である。しかもオフィスワークではなく現場作業。チームワークも必要なことだし、言動の割に人間がしっかりしているのだ。

 ただその言動がなぁ、残念なんだよなぁ、というのがニラムの素直な心境。

 

 ちなみに戦力としてのバッファだが、不意を突かれたとはいえ『天国と地獄ゲーム』でしてやられているので、その辺意外と高評価である。

 

「うぅむ、これは……」

 

 道長から渡されたメモを斜め読みしてそう零す。何ともコメントしづらい、というような風で。

 

 書いたのは道長だがニラムも同じ話を聴いているので、当然ながら予想通りの結論&感想である。ニラムもバカではないから、整理された結果意外な事実が……! とかには特に期待していなかったが。

 

「持ち帰って皆と擦り合わせるしか無さそうだね」

「あー……どうせ変わんないと思うけどな」

 

 聞けども聞けども皆似たような内容を話すので、これで別の方角へと散った英寿たちと情報が食い違ったら多分そこは別の国である。そんなレベルで信頼度は高いと言っていいだろう。

 確度と質には自信があるので、つまり納得いかないのはその内容について。

 

 雑に返す道長に、だよなぁ……とばかりに微妙な顔で頷くニラム。

 納得できないのも当然、そりゃあそうだろう。

 

「『唯一神が治める、

 あらゆる不幸も争いも無い完璧な世界』、だなんて」

 

 一体、どんな歴史を辿ったら日本がそうなるんだろうか。さすがに可能性の世界とかそういう次元じゃないだろう。

 あらゆる過去で最善の道を取り続けた理想の世界、にしても限度がある。

 ほら、人って愚か(主語クソデカ)だし。

 

 時間的に余裕はあれどもう一組声をかけるほどでもない。メモ帳を道長に返却し、2人して集合場所へ歩を進める。

 

「デザグラがあるんだし争いはあるだろ。喧嘩だって無い筈がねぇ」

 

 やはり納得のいかない道長がぼやく。

 確かに超未来から来たニラムでも「完璧な世界」にはちょっと疑いがあるが、そういうところも含めて文字通り『可能性の世界』だと言うのなら、そこそこ信じても良い気分になってくる。

 

「デザグラに関しては創世の度に記憶が消去されているんだろうけどね。特に今は創世直後だ、最速でも次のコアIDが配られ始めた頃だろうし、覚えてて(思い出して)数人だろう?」

 

 だが、例えば英寿が神になって皆の前から姿を消したときのように、誰かの()()()()()()が発動している可能性もまた無いとは言い切れない。その前例を思い出せば、道長の渋面は深くなっていくばかり。

 

「デザグラ以外の争いの記憶をリセットするのだって、まぁ面倒だろうが不可能でもないだろう。それに、例えば余程の名君主がいるなら、交渉で済ませ争いに発展させないかもしれない」

 

 それだって充分に可能性がある。

 極端な話、創世の力抜きでも全人類が協力すれば世界から争いは消えるのだから。

 

 そして何を言っても可能性可能性と言われ続ける道長のイライラレベルはマキシマムゲーマーのレベルの如く。そして唸る姿はまるで弄ばれ続けた闘牛……いや水牛の如く。

 

「その辺含めてあとで判るだろうな、恐らくは」

「……まぁそうなんだけどよ」

 

 結局この聞き込みは英寿のお願いでしているに過ぎないのだから、判明したらしたで解散だろう。

 

 だがそれはそれで困る。というのも、会話の通り道長もニラムもこの世界にかなり興味が出てきてしまっているのだから。このまま解散されては気になって夜も眠れない程度には。

 

「争いがどうより、やはり()()()が気になるだろう、君も」 

「あぁ」

 

 道長の持ったメモ帳を覗き込み指差すニラム。道長にバレたかと思うような気配は無く、なんなら真顔で即肯定した。

 

 ちなみに聞いた話だと第二次世界大戦は起きているらしく、『平和』になったのはここ10年の話。

 分岐した理由の願いによって即平和になるとは限らないだろうから、それを加味しても分岐したのは1950〜2013といったところだろうか。

 

「つまり、争い=大規模な戦争だけで、多少の紛争抗争はノーカンなのかもしれない。──()()()()()()()()

 

 ただ、それは大した問題ではない。

 

 道長がまず争いについて話し始めたのは、それが1番気になったからではない。

 幾つか出た疑問点の中で、1番解消しやすそうだったからに過ぎず、逆に1番難解なのは見る限りとても明白で。

 

「あらゆる不幸──これ、戦争だけじゃなくて自然災害も無いんだよな」

 

 災害の被害を減らすのは簡単だ。予防策を周知させ、迅速に避難・救助すれば大抵の災害はどうにかなる。どうにもならないものに関しては完璧に対処してもどうせ被害が出てしまうものなのでノーカン。

 この理論で行けば、発生件数と被害者数はいくらでもゼロに近づくことができる……が。

 

「それが『災害の発生そのものを減らす』なんて。

 ……イヤースゴイナコノセカイハ」

 

 何度目かの超未来人ですら以下略案件である。

 これのせいで、「そっち(自然災害)に比べたら争いが無いくらいありえるかもな……」と思ってしまっているニラムなのだった。いわんや一部が宙に浮く大きい塔くらい日常みたいなもんである。もはや完全に興味はそちらに無い。

 

 2人揃って考えていればいつの間にか集合場所に着いていて、まだ10分ほどあるにも関わらず2チームが先に戻っていたので、労いもそこそこに流れるように情報共有へ移る。

 居ないのは景和&ギロリチームだけのようだった。

 

 

 

 

 

 ◇

 

 

 

 

 

 約束の時間まで残り数分の頃。4チームあるとはいえ、同じ街で情報収集してきたのだからそこまでの差異は無く、情報の共有もそこそこに考察大会へと発展しつつあった。

 

 エース&ジーン&ツムリチームを除く祢音とキューン、道長とギロリは得てきた情報を話したのだが、英寿はそれらを聴いても「やはりな」「なるほど」しか言わず、自らの成果をなかなか話さなかった。

 

 必然、話が途切れたタイミングで皆の意識がチラチラ英寿と、そのチームメンバーであるジーン&ツムリに向くのだが。

 

「これは……良くないかもな」

「英寿?」

 

 なに出し渋ってんだよ、とか、実は成果無かったんじゃないのか、とか言いたげだった面々に少しだけ先んじてそう呟く。

 それはどうやら、英寿チームのみ得た重要な情報とやらが関わっているようで。

 

 チームリーダーは英寿だからと、あるいは自分たちはサポーターとナビゲーターだからと半歩後ろに控えていたジーンとツムリが、空気を察して代わりにと何か言いかけるも、それすら英寿に制された。

 そうして更に怪訝そうになった沈黙の中、言わない訳には行かないと判断した英寿が、数段深刻さを増した表情で改めて口を開く。

 

「──一旦、戻ろう」

「……え、元の世界に?」

「そうだ。タイクーンと父さん(ギロリ)が戻り次第、また門を開いて元の世界に戻るぞ」

「構わないが、そんな急な……一体何が分かったんだ?」

「説明する時間が惜しい。それに、この会話も()()()()()()()()()()()()

 

 何者かがこちらを監視している。と

 言外にそう告げる英寿に、いよいよ深刻さを理解した祢音たち。

 

 さすがは歴戦の戦士たちと言ったところか、一瞬で周囲を警戒しだす。

 尤も、確かに世界そのものはかなりおかしいが、「良くない」などと深刻になるような点は特に見つけられていないので、何を警戒すれば良いのかもイマイチ分からない。

 

 一体英寿たちは何を知ったのだろうか。

 

 その時、祢音たちそれぞれのポケットの、デバイスのアラームが一斉に鳴り出す。そんな10分前集合が出来ている偉い大人たちの横で、偉い神様が世界間ゲートを再び創り出していた。

 今度はいつもの半透明な青い門であり、隠密的に考えてゴージャスはやめたようだ。

 いや、割と常識的に考えて金ピカはやめてほしいのだが。

 

 アラームによって多少弛緩した空気にするっと入り込むように、屋上のドアが開き、景和とギロリが現れた。

 

「ごめんみんな! ちょっと遅れt……まだ誰か来るの?」

「おや? これはどういう……」

 

 今来た2人には英寿たちのピリピリした空気までは察せなかったものの、屋上のど真ん中にどう見てもファンタジーな門が現れていれば、さすがに何か異常なことは分かった。

 

 ギロリが英寿たちの方へ歩き出し、景和は疑問に首を捻ったままギロリを追いかける。

 

 ──この数秒の動き出しの差が、景和の命運を分けることになった。

 

 

 

「ッ!? みんな、気を付けろ!」

 

 

 

 咄嗟に英寿が、『何か』を察し振り返りながら叫ぶ。

 『何か』の気配には気付かなくても、その英寿の行動を見て各々が周囲を警戒し始める。

 

 そして、タワーの方から飛んできた()()は、瞬時に身を屈めた英寿の頭上を通り過ぎて、真っ直ぐに未だ状況を理解しきれていない様子の景和の方へと進み続けて。

 

 矢か、弾丸か。

 光の尾を引きながら迫る死が幾ばくの猶予も無く届くと思われた直前、人ひとり分の壁が割り込む。

 

【DOMINATE A SYSTEM】

【GLARE】

 

 咄嗟に前に出たギロリが変身、仮面ライダーグレアとなって狙撃から景和を守る。

 ヒュプノレイの展開するバリアによって真正面から耐え、振り返って景和へと手を伸ばして──

 

「タイクーン!」

「──あ、」

 

 攻撃は無事防いだ。GMライダーであるグレアのスペックは遺憾なく発揮され、今のグレアにはそよ風ほどの勢いしか感じられぬほどにまで殺されている。

 だがそれでも、生身の景和が吹き飛ばされるには充分の爆風で。

 

 グレアの手が空を切る。

 

 不幸中の幸いか、景和は階下への扉に叩きつけられたものの、屋上から放り出されずに済んだ。

 だが同時に、赤いノイズが走る禍々しい壁によってギロリと──皆と景和が分断された。

 

 第二射を警戒しつつ駆け寄る一同。

 その障壁に手を触れた途端、まるで静電気を感じたかのように顔を顰め手を引く道長。

 

 この見た目、そして圧には見覚えがあった。

 

「この壁……ジャマーエリアか!」

「退いてろ!」

 

 そう言う道長とその他を無理やり退かせ、プレイヤーの変身する並のライダーなら一撃で沈めかねない威力を秘めた必殺技が待機に入る。

 縮退炉から生み出される無尽蔵のエネルギーを右脚に込め、しかし焦るようにプロヴィデンスカードを勢い良くスキャン。

 

【DELETE】

 

 雷光の如き速度の回し蹴りがジャマーエリアを叩き、跳ね返った爆風が後ろにいるはずの英寿たちすら消し飛ばさんとする。

 

「なんて硬さだ!? ……ハァァ!」

 

 だがその壁が割れることはなく、どれほど力を込めても脚がそれ以上進むこともない。

 

 純粋な一点突破力ではグレアに敵う技はそうそう無く、そのグレアですら突破は厳しそうならば、複数人で力を同じ箇所に集中させる他ない。そう考えた英寿たちもそれぞれのドライバーを取り出し、脳震盪を起こし数秒意識を飛ばしていた景和も覚醒してドライバーを装着する。

 

 そしてその試みは、英寿サイドがバックルをセットしたところで、またしても飛来してきたタワーからの狙撃によって妨げられる。

 

 先ほどの精密に英寿の頭を狙った狙撃と違い、明らかに妨害が目的であろう射撃の乱打。

 彼らの戦闘勘を持ってすれば避けるのは容易だが、これではジャマーエリアへの攻撃に参加できない。

 

「こんの…!」

 

 それを見てなおさら自分がやらねばと感じた景和が、セットしていたニンジャバックルを外しブジンソードバックルへと付け換える。

 

 だが、それすらも妨げんとする者が現れた。

 

「あっ! 景和!」

 

 声を上げた祢音が見たのは、バックルに手をかける景和の背後へ予兆なく現れた謎の者。

 それは全身を黒いウェットスーツで覆い、ペストマスクのように口の尖った仮面を付ける年齢も性別も分からないいかにもな怪しい格好の者。

 体格的に多分男性だとは思うのだが、特段がっしりしている訳でもなく、顔を含め素肌が一切露出していないので断言はできない。

 

【SET AVENGE】

 

「変し──! ……ん、」

 

 ぱっと見たところ棍棒のような武器を持っていたが、まだ変身前であるならばと手刀を入れ、景和の意識を刈り取り、そのまま景和を担ぐ。

 危害を加えず意識を奪ったことと併せて、景和を連れ去ろうとしているようだ。

 

「もしかしてジャマトにされる!? だったら……!」

 

 さっき言ってた半分人を辞めた状態の道長を思い出し、未だ破壊の光明も見えぬジャマーエリアに突貫する祢音。

 

 それを視界の端に捉えながらも無いものとして意識を向けやしないウェットスーツ人間だったが、屋上から去る前に一瞬、見えない誰かと意思疎通をするかのように足を止める。

 敵前で無防備を晒すというそれは障壁を割られない自負からの余裕の表れだったが、直後に横っ面を思い切り殴られる。

 

「変身!」

 

【FANTASY】

 

 その拳は、背後から飛んできた狙撃を体を透過して無効化し、そのままジャマーエリアすらもすり抜けた祢音──ナーゴが放ったものだ。

 

「景和を返して! この不審者!!」

 

 指を突きつけそう言い放ち、幻想の槍を無数に射出する。

 

 殴りつけられた不審者は多少蹈鞴を踏んだ程度であり、その言われようにも動じぬままあくまで静かに景和を担ぎ直した。

 そのまま体捌きだけで全てを躱してみせた不審者は、景和を担ぐ腕とは反対の手に持つ棒を祢音へと向ける。

 

「かかってきなさ……って、釣り竿?」

 

 その不審者が持つ棒はただの棒ではない。作りこそ古いが、先端に糸が括り付けられ、糸の先に返しのついた反った針──まさしく、釣り竿であった。

 

「……なんかよく分かんないけど、そういう敵ってことね!」

 

 眼前の不審者はどう見てもジャマトではない。ないのだが、ナーゴだって敵が必ずしも禍々しい怪人や装甲を纏ったライダーだけだとは思っちゃいない。

 恐ろしさや禍々しさよりも怪しさがぶっちぎっている釣り竿を持ったウェットスーツ人間を相手取っても気を抜かない程度には、祢音/ナーゴは立派に仮面ライダーだった。

 

 不審者が釣り竿を振りかぶる。先手必勝とばかりに幻想の槍、その第二陣。

 

 やはりそういう能力なのか、液状化したコンクリートの地面に釣り糸を垂らす不審者に向け槍が殺到する。だが、不審者に焦る様子は見られない。

 半分予想はしていたが、不審者が釣り竿を上げれば、地面から()()()()()()()巨大な岩石によって槍が防がれる。

 

 ディレイをかけて迂回するように飛ぶ第三陣もまた、壁を作られ届くことはない。

 

「あっ、やっばい追わないと──」

 

 岩石によって生まれた壁が結果的に不審者と景和を覆い隠してしまったことに遅れて気づいたナーゴは、様子見は迂闊だったかと反省しつつ、自身を透過させ直接攻撃を仕掛けようと試みる。

 

 岩石の壁を抜ければ、隣のビルへ乗り移る不審者の姿。

 

「逃さない!!」

 

 ファンタジーバックルをひと引き。右足を中心に円錐状のオーラを纏ったナーゴが地を駆け、ビルの手すりから一足飛びに身を踊らせた。

 

【FANTASY STRIKE】

 

 そのまま頭から落下していくはずのナーゴの体を、突然不思議な力が包み込む。

 重力に反し、しかし飛び出した際の慣性は残したままに()()()()()()いけば、その落下地点には宙を舞う不審者の上下逆さの背中が見えた。

 

 相手がちょうど最高到達点に達し、跳躍力と重力が拮抗し始めわずかに速度を落としたその時を狙い澄まして突っ込む。

 だが、もう直撃するしようというその時、不意にその背中が──消えた。

 

「────!!」

 

 反重力が解除されどこかの貯水タンクの上面に墜落しながら上下が元に戻った視界で辺りを見渡せば、今しがた空中にあったはずが、狙っていた最高到達点のちょうど真下あたりのビルに着地しているではないか。

 

「瞬間移動!?」

 

 すぐさま踵を返し追いかけるナーゴだが、不審者はまるで先ほどまでの追いかけっこは児戯だと嘲笑うように空中を──空間を飛んで回っている。

 

 ビルに着地したかと思えば上空に居て、西に向く足が地を蹴った瞬間には東のビルへ着地している。

 相手の動きだけでは全く行き先が想像できず、ジグザグと翻弄されること数十秒。

 

 捕まえられなくてもいいから英寿たちのいるビルからは遠ざけまいと位置どっていたためにそこまでの距離は稼がれていない。だが、パターンも何もないその翻弄に、追いかける速度で勝っていても一生追いつける気がしなかった。

 

 またしても捕まえる寸前で空中へと逃げられ、頭上へ向けノールックで槍を射出しようとも瞬間移動の連続発動で躱される。

 

「い、いい加減に──」

 

 諦めはしないものの折れかけていたその時、何度目かの瞬間移動で空中へ現れた不審者の背中を────黒と黄金の狐のキックが貫いた。

 

【FANTASY】

 

 フィーバースロットレイズバックル、その『???』を引き当てることで無理矢理ファンタジーフォームに変身した英寿/ギーツが、ナーゴと同じくジャマーエリアをすり抜けて必殺キックをお見舞いしたのだった。

 

「よっ、英寿! 運もある男!」

「当然だ。欲しいものは自力で引き当てるのさ」

 

 景和を放り出した不審者はゴロゴロと屋上を転がり、奇しくも先ほどの景和のように階下へ続くドアへと衝突する。

 

「英寿、みんなは?」

「狙撃はジーンやグレア(父さん)たちが防いでくれてる。バッファはファンタジーが出るまでガチャしてるさ」

 

 なおさら運のある男じゃん……と思いつつ、これがもし景和だったら最レアのUR(ブースト)ばっかりすり抜けて目当ての推し(SSR(ファンタジー))がずっと出ないタイプなんだろうな……とも思いつつ。

 

「あいつ、上下に瞬間移動するよ」

「見ていた。よく引きつけてくれたな」

 

 ギーツを脅威と認識したらしい不審者が、しかしダメージが大きいのかすぐには起き上がらない。腕の中から景和が失われているのに気づくが、ギーツ&ナーゴから見れば不審者寄りな位置で寝かされているため、迂闊に回収はできない。

 それを理解してか起き上がる動きはゆっくりだった。

 

「ていう訳で。はいどうぞ」

「じゃあ有難く……っと」

 

【DUAL ON】

【FANTASY】

 

 ナーゴが自身のファンタジーレイズバックルを引き抜き、ギーツへと恭しく手渡す。こちらも大袈裟に受け取ったギーツは、起き上がる不審者を睨みつつドライバーを叩き回転させる。

 

【JACKPOT HIT】

【GOLDEN FEVER】

 

 不審者が起き上がる。釣り竿を両手に持って大きく振りかぶった。

 それはさながら大上段に構えた刀のように感じられ、漁師としては普通なその姿勢こそがこの相手の戦闘態勢なのだと理解できた。

 

 対してフィーバーファンタジーフォームとなったギーツは、上下共にファンタジーとなった黄金の装甲を煌めかせ、それに負けずとも劣らない輝きの金色のマフラーを靡かせた。

 狐を模した右手の指を掲げたのち、相対する不審者へ向けゆっくりその手を差し出す。

 そうして、パチンと鳴らされるフィンガースナップ。

 

 

 

 

 

「さぁ──ここからがハイライトだ」




サーヴァントに他作品キャラ出したら怒る?ネタ無い
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