ジョウ100〜成仏するために消したい100の未練〜   作:リビングデッドの歌声

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一項目:『私は生きている』

 

 ──『アンデッド』という単語がある。

 『死んだ』ことを意味する『dead(デッド)』に、否定の接頭語である『un(アン)』が付いたもの。即ち直訳すると『死んでいない』という意味になる単語だ。

 

 しかしこの単語は作り話(フィクション)において『不死者』や『生ける屍』という意味で使われることが多く、現代──少なくとも令和の日本においては、こちらの意味で浸透している。

 

 この『フィクションにおけるアンデッド』というのが本当に多種多様で、それこそ星の数ほど種類があるワケだが──今回はその中の一つ、『ゾンビ』について語ろうと思う。

 

 ゾンビ(コイツ)は『ホラー映画の定番ジャンル』として、非常にメディア露出の頻度が高く……『代表的なアンデッド』として君臨している。

 故にゾンビ(コレ)単体で数多くの細かい派生が存在し、その分定義が曖昧な存在だったりする。

 

 話の焦点は、定義(そこ)だ。

 

 ゾンビとは基本的に『元人間』を指す。

 しかし犬や鳥などの、『人間以外がゾンビになる場合』もある。余談だが、ファンタジー要素が強いと何故かやたらドラゴンがゾンビにされる。

 

 ゾンビは基本的に走らない。

 しかし『少数の走る個体がいる場合』や『大概の個体が生前と変わらぬ速度で走る場合』もある。会話能力についても同様だ。

 

 ゾンビは基本的に頭を破壊すれば、普通の死体になる。

 しかし『それでも動き続ける場合』がある。なんなら『生前以上に肉体の再生力が上がっている場合』すら存在する。

 

 一言で評するなら、『ゾンビとは動く死体』である。しかしコレの、なんと曖昧なことか。

 

 

 ────視界一面に、ゾンビが(ひし)めいていた。

 フィクションではなく、実体のあるものとして……『動く死体(ゾンビ)』と評するしかない存在が、跋扈(ばっこ)していた。

 

 

 多くが元人間だった。しかし猫や狸もいた。

 多くが歩いていた。しかし全速力で駆ける者や、跳躍する者がいた。

 多くが知性を失っていた。しかしそれでも生前の習慣を続けようとしている者がいた。

 

 

 ──私は、そんなゾンビ達の一員だった。

 

 

 心臓が止まっている。私の肉体は、生命活動を停止している。

 

 なのに、腕が動く。足が動く。声が出る。頭が回る。

 

 ────どうして。

 

 

 ()()()()()

 

 私が、()()()()()()()()()()()だ。

 

 ゾンビは肉体が死んで、一緒に魂が死んで、にも関わらず身体が動いている……そういう存在だ。

 

 私は、()()()()()()()()()()()()()()を生きて死んだ転生者だ。

 

 私は、初めから魂が死んでいた。

 生きた肉体に、死んだ心を収めて生きていた。

 

 ────つまり、()()()()()()()()()のだ。

 

 心臓が止まっていても、この身は止まらない。

 

 

 私は、昔も今も『死んでいない(アンデッドだ)

 

 

 拳を握った。

 爪が皮膚を貫くほど、力が入る。痛みはあるが、とても(にぶ)い。

 

 

 ()()()()、力士らしきゾンビを殴った。

 理由はたまたま拳が届く範囲にいたからで、仮にそれが女子供の姿であっても、私は同じことをしただろう。

 

 

 ────未練があった。

 

 

 前世も、今世も、特筆すべきことは何もない人生で。

 人並みに『特別(ヒーロー)』に憧れて、人並みに諦めて。

 

 ……その実諦めたフリだけして、行動もせずに『未練』だけを残していた。

 

 

 ──魂も肉体も死して尚、未練(コレ)だけが消えてくれなかった。

 

 

 だから、今更だが始めよう。

 

 これは、私が成仏するために消し去った『未練』の物語だ。

 

 

 ──手始めに、片端から視界に入ったゾンビを殴殺することとする。

 

 

 今日から毎日、ノルマは当面百人だ。

 

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