ジョウ100〜成仏するために消したい100の未練〜 作:リビングデッドの歌声
「──大型テレビが、欲しいな」
「ふむ?」
「ほう?」
それは
「画面が小さくて、
「……そうですか。私はやらないので分からないのですが……『FPSは機材が大事』とは、妹も言っていました。愚痴を言わないあの子が、珍しく……本当に珍しく『不満』を口にしたものですから、よく覚えています」
「…………その愚痴が出るってことは、
「──では張り切って、調達してきましょうか。具体的に言うと、何インチくらいのものをお求めですか?」
「いや、やっぱこういうのは自分の目で見て選んでこそっしょ!」
「……ふふ。『身の安全』より『未練の解消』を求めますか。やはり貴方とは気が合いますね」
*
バイクの後部座席に乗せられ、舗装された道路を超速で滑っていく。
文明という巨人は既に斃れたが……その恩恵は未だ色濃く、世界に残されている。
私という屍は、その事実に感謝しよう。この感慨が、心臓の代わりにこの身を突き動かす……
……とはいえ、名残は名残。恩恵には限度がある。
「行き止まり、ですね」
目の前には、出火している消防車。バス。パトカー。瓦礫。その他諸々。歩道も車道も、乗り捨てられた各種車両で一杯だった。
いくら比較的
「なんてこった、電気屋はすぐそこなのに……」
「別の道を探しま──ッッ、アキラさん!!!」
「うぇっ!? どうしたクオン!?」
「後ろ見てください!
「アレって……? ──ッ、
タイミングの悪いことに、背後から暴走車がやって来た。しかもガソリンを載せた、ゾンビが運転しているヤツ。
いくら私の身体能力が常時火事場力な規格外でも、所詮
「しょうがない……! クオン、つかまってろよ!?」
無言で腕の力を強め、指示が届いていることを示す。間を置かずに発進。
進路は、
「──ハハッ、
「これしかなかっただろ!?」
「えぇ! まったく『いい度胸』です!!」
「褒めてるんだよなソレ!?」
「勿論!!」
そして少し進み──急停止。
「ゲッ、ゾンビだらけ!!」
「──私の出番ですね。食い止めます。
アキラさんは、右のシャッターまで走ってください」
言うや否や、ゾンビの群れに向かって突撃。
攻撃対象ではない私を前に、ヤツらは怯んで動きが鈍くなり……止まりきれなかった個体の鼻面に、回し蹴りをお見舞いする。
ゾンビ達が、悲鳴をあげて撤退していく。
「……!?」
「あ゛ぁ゛あ゛!?」
「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」
全員を倒す必要はない。
ゾンビはゾンビを襲わない。そして身の危険を感じると、このように忌避反応を示すから。……とは言え、
「……あらかた逃しはしましたが、袋小路に追い詰めたゾンビを見逃す理由はないので……悪しからず」
引き返せず、シャッターに阻まれたゾンビに声をかけてみる。
……期待はしていなかったが、返答はない。
「せめて、ご冥福を」
…………今日も、私以外の『喋るゾンビ』はいなかった。
「……さて。シャッターの向こうが安全とは限りませんし、アキラさんと合流しませんとね」