ジョウ100〜成仏するために消したい100の未練〜   作:リビングデッドの歌声

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六頁目:『身の安全』より

 

「──大型テレビが、欲しいな」

 

「ふむ?」

「ほう?」

 

 それは(アキラ)の『ゾン100(リスト)』における、No.11。『大型テレビでゲームをやりまくる』の達成条件だった。

 

「画面が小さくて、狙い(エイム)が合わせづれーのよ」

「……そうですか。私はやらないので分からないのですが……『FPSは機材が大事』とは、妹も言っていました。愚痴を言わないあの子が、珍しく……本当に珍しく『不満』を口にしたものですから、よく覚えています」

 

「…………その愚痴が出るってことは、

 同じ一人称視点のシューティングゲーム(FPSはFPS)でも、今俺がやってるのとは違うヤツな気がするけど……まぁ、ウン。そうだな」

 

「──では張り切って、調達してきましょうか。具体的に言うと、何インチくらいのものをお求めですか?」

 

「いや、やっぱこういうのは自分の目で見て選んでこそっしょ!」

「……ふふ。『身の安全』より『未練の解消』を求めますか。やはり貴方とは気が合いますね」

 

 

 

 *

 

 

 

 バイクの後部座席に乗せられ、舗装された道路を超速で滑っていく。

 文明という巨人は既に斃れたが……その恩恵は未だ色濃く、世界に残されている。

 私という屍は、その事実に感謝しよう。この感慨が、心臓の代わりにこの身を突き動かす……(みなもと)なのだから。

 

 ……とはいえ、名残は名残。恩恵には限度がある。

 

「行き止まり、ですね」

 

 目の前には、出火している消防車。バス。パトカー。瓦礫。その他諸々。歩道も車道も、乗り捨てられた各種車両で一杯だった。

 いくら比較的細身(スリム)な二輪車でも、『壁』はどうしようもない。

 

「なんてこった、電気屋はすぐそこなのに……」

「別の道を探しま──ッッ、アキラさん!!!

「うぇっ!? どうしたクオン!?」

「後ろ見てください! ()()は私じゃどうしようもないです!!」

「アレって……? ──ッ、()()か!! たしかにヤバいな……!」

 

 タイミングの悪いことに、背後から暴走車がやって来た。しかもガソリンを載せた、ゾンビが運転しているヤツ。

 いくら私の身体能力が常時火事場力な規格外でも、所詮素体(ベース)は人間。力士*1すら殴り飛ばしてみせた私だが、どう足掻いたってアレは無理。考えるまでもなく即死する。私の埒外な再生力も、流石に全身ぺちゃんこ・バラバラになれば機能しないだろう。

 

「しょうがない……! クオン、つかまってろよ!?」

 

 無言で腕の力を強め、指示が届いていることを示す。間を置かずに発進。

 進路は、

 

「──ハハッ、()()()にバイクのまま突っ込むとは!」

「これしかなかっただろ!?」

「えぇ! まったく『いい度胸』です!!」

「褒めてるんだよなソレ!?」

「勿論!!」

 

 そして少し進み──急停止。

 

「ゲッ、ゾンビだらけ!!」

「──私の出番ですね。食い止めます。

 アキラさんは、右のシャッターまで走ってください」

 

 言うや否や、ゾンビの群れに向かって突撃。

 攻撃対象ではない私を前に、ヤツらは怯んで動きが鈍くなり……止まりきれなかった個体の鼻面に、回し蹴りをお見舞いする。

 

 ゾンビ達が、悲鳴をあげて撤退していく。

 

「……!?」

「あ゛ぁ゛あ゛!?」

「あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛!!!」

 

 全員を倒す必要はない。

 ゾンビはゾンビを襲わない。そして身の危険を感じると、このように忌避反応を示すから。……とは言え、

 

「……あらかた逃しはしましたが、袋小路に追い詰めたゾンビを見逃す理由はないので……悪しからず」

 

 引き返せず、シャッターに阻まれたゾンビに声をかけてみる。

 ……期待はしていなかったが、返答はない。

 

「せめて、ご冥福を」

 

 …………今日も、私以外の『喋るゾンビ』はいなかった。

 

「……さて。シャッターの向こうが安全とは限りませんし、アキラさんと合流しませんとね」

 

*1
平均体重161kg

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