人妻ではなく、未亡人でもありませんよ   作:お餅もっちもっち

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 能書はいらねぇ! 心で感じておくんなさいッ!!




常が非常に変わる時 【始】

 

 

 唐突だが、真桜の正論パンチは怖い。というのが武蔵に住まう人々の認識で、ただ淡々と無表情で言葉を紡いでくる様は閻魔大王にすら見える。

 

 なぜ急にそんな話になったのかというと、まぁぶっちゃけ梅組(莫迦共)が住居区域を壊してしまったせいで三時間も説教を受けたのである。

 

 教師オリオトライに至っては触らぬ神に祟り無しと言わんばかりに「無関係です♡」を貫いている。あとで個人的な制裁(酒没収)を受けるのは明白だが、そこは蛇足にしておこう。

 

 そこから話を飛ばせば、真桜は告白前夜祭を始める少し前。

 

 武蔵アリアダスト教導院学長、【酒井 忠次】に呼び止められたのである。

 

 

「いや〜悪いね。アイツらと色々な準備があるだろうに、呼んじまってさ」

 

「構いませんよ。ある程度はノっておかねばなりませんし、【人の心】とやらを見せておかなきゃいけないでしょう?」

 

「……やっぱり俺ぁ、お前さんの事が苦手らしいや」

 

「あらまぁ。身共は学長先生の事、案外好きですよ?」

 

「嬉しさが微塵も込み上げない告白初めてだよ」

 

「美人が好きって言ってるのに?」

 

「自分で言うのねソレ、いや美人なのは認めるけどさ?」

 

 呆れた顔の酒井にンフフと笑う真桜は、すぐさま切り替えて真面目な話を始めた。呼び出された件についての話だった。

 

「今日来て貰った用件は単純。松平元信(もとのぶ)公が呼んでるんだけど、どうする?」

 

「【行く】以外の選択肢ないでしょうに、それに託けて東国最強……いえ、無双でしたっけ。兎も角だっちゃん様と酒盛りのつもりではなくて?」

 

「うんそう。だから護衛もよろしくね」

 

「はいはい承りましたよぅ」

 

 

 正直なところ、不安はある。武蔵最強……その名は伊達ではなく、東国最強と名高い本多・忠勝と引き分けて倒れた瞬間を見た酒井にとっては、しかもその時はまだ三年(完全体)で無かった為に引き分けという結果だっただけで、今では恐らく忠勝が負けるとさえ思えてしまう気配の圧があった。

 

 

「(──ホント、どうするかな)」

 

 

 本当に厄介極まる存在とその価値観の相違点があるからなのか、この武蔵でも少なからず空いている事が多々あった。

 ただ、全く持って天変地異なんて言葉が生易しく感じる場面を目撃したのも確かだった。

 

 あの【武蔵の至宝】と呼ばれる少女、向井 鈴と早朝の広場のベンチで座って話すなんて光景を見て、顎が外れそうになるほど口をあんぐりと開けてしまった。

 

 盗み聞きしてみれば、何故だか鈴が真桜の舞に対しての感想やら真桜個人に対しての好意的な話ばかりで……つまりはとても懐いていたのである。

 

 見かければ、「真桜ちゃん。真桜ちゃん」と愛らしい雛鳥のようにその背を付いていく姿は、既に武蔵名物の一つと化していた。

 

 

「尊かったよ。や、割とマジで」

 

「何がです? あと急にニヤるのキショいですよ」

 

「コッチがこんなクズい性格してなけりゃなぁ」

 

「ハ! 今更過ぎてウケる。ではそろそろ失礼します……分身体で警護させますので、御安心を」

 

「おお。また後で」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 バタンと閉じたドアの向こう側に。

 

 

 

 ───情に、絆されましたかね。

 

 

 

 ぼそりと呟く声は、外の喧騒に消えていった。

 

 

 

 

 


 

 

 

 鬼も仏も(そそのか)す。

 

 (つい)黒世(こくせ)を止めるため。

 

 道化と成りて、何を得る。

 

 

 《配点》終わりの始まり。メモの準備をわっすれっるなー!

 

 

 


 

 

 

 

 

 正直なところ、よく分からない女というのが本音だった。

 

 今は割と控えめになったが、昔はトーリすら口を開けっ放しにするほどの自由人で、でもそれが必ず結果に繋がるので怒るに怒れないなんて事が良くあった。

 

 ただあの性格は頂けない。大金を稼いだ後に人を小馬鹿にした様な薄ら笑みに何とも思っていない様なあの態度、さらには術式のルールを勝手に破った事も神道関係者各位のヘイトを買ったと聞いた時は何をバカな事をと呆れて仕事に勤しんだ。武蔵の会計士。

 

 

 

 

 

天上天下唯我独尊

 

 

 この言葉が似合うほどには自由気ままにやっていた為、もう武蔵名物の一つに数えられる人物になっていた。

 

 媚びへつらう事などなく我が道を行くスタンスを崩す事なく、ひたすらに突き進む。

 

 脳筋かと思えば策士の如く知略を用いて事を成し、知恵者かと思えば力業でゴリ押し通すその様は正しく鬼神の如し。

 

 ただ、それを彼女に言えば隕石が降って来るよりも末恐ろしく怒り狂う姿を見た事があったからこそ口にしない。

 

 どうやら"鬼神"という単語そのものに過度な反応、言ってしまうと極度の拒否感があるらしく言うと向こう一週間は口を開かなくなる。

 

 一度だけ鈴さんに頼んで理由を聞いてみたことがあり(鈴さんに対してはあまり強く出られないので)渋々という感じで教えてくれた。

 

 

 曰く、"四つ目に四つ腕、口二つ"

 

 曰く、"二種の斬撃"に"炎の矢"

 

 曰く、"最強が勝てぬ最強"

 

 

 忌々しい口惜しいと唸っていたと、聞かされた時は梅組一同が揃って首を傾げたものだったと、従士は思った。

 

 

 


 

 

 

 カチャりと懐中時計を取り出し時間を確認すると、時間帯は指定の時刻を少しばかり過ぎていた。

 

 

「……長話が過ぎましたね。学長警護の任、任せますよ」

 

「お任せを、いざとなれば玉兎で攪乱して逃げ出します故。まぁ、必要でしたら本体(あなた)に代わりますから」

 

「ええ。了解です」

 

「それでは、行ってらっしゃいまし」

 

「だいぶ過ぎてますけどね。行ってきます」

 

 

 互いにその場から消えるように行動を開始する。

 

 片や学長警護で、片や告白パーティでという形。

 

 大分時間が過ぎたとはいえ間に合わない訳では無いので、なるべく早めに向かう事にした。

 

 まぁ本気だと地面が割れるので蒼が使えれば楽なのだが、"縛り"がある為使えず……それはそれとして他にも方法はある。

 

 

 1秒を24分割、己の視界を画角とし(あらかじ)め画角内で作った動きを後追い(トレース)する。

 術式発動中は真桜の掌に触れられた者も1/24秒で動きを作らねばならず、失敗すれば動きがガタつき、1秒間フリーズする…当然リスクはある。

 一度作った動きは途中で修正出来ず、過度に物理法則や軌道を無視した動きを作れば自らもフリーズする。

 言ってしまえば便利ではあるが不便でもある術式の一つである。

 

 

「移動だけなら問題無いんですけどね、投射呪法」

 

 

 そんな文句を呟くと同時に、夜闇の街を駆け抜ける様は正しく俊足であった。

 で、教導院に着いたら着いたで、胃が痛くなった。

 

 

「スゥー、ハァー……遺言は聴きましょう。吐け」

 

 

 その般若だからか閻魔大王もビビり散らかすほどの形相に対し、先程まで浅間、白黒魔女、莫迦、その他数名が正座で待機し魔王(真桜)の雷撃が過ぎ去るのを黙して待っていた。

 

 ただしそれが賢い選択ではない事が確定しているが、現実逃避をしたくなるのもまた、人の心というものであった。

 

 途中まで叱っていた武蔵の会計、シロジロ・ベルトーニもこの時ばかりは飛び火ならぬ飛び(虚式)茈をされるやもと思い、口を噤んでいた。

 金の亡者を超えた人物だが、こういうことに対しては賢い選択が出来る男である。

 

 説教開始から数分後、既に心が満身創痍の問題児(破壊者達)は後日何らかの高額請求書が届くが、払わねば差出人が(バックれる奴等を)直で取り立てに来る事を知らない。

 

 さらに数分経った時、階段を上がりやって来た武蔵王ヨシナオが向井鈴を泣かせたのは余談として、良い大人が取り乱してどうするのかと言う説教を受けたのは言うまでもない。

 そんな真桜をまぁまぁと宥めた武蔵の帝の御子息、東に対する好感度が右肩上がり急上昇し見事に救世主となったのも余談である。

 

 

「……まぁ、もぅ許してはやりましょうか」

 

『ははぁ!!』

 

「これから身共は仕事が入っていますのでもぅ帰りますが、キチンと直して起きなさい。シロジロ、ハイディ、請求はきっちりと頼みますよ」

 

「任せて、必ずもぎ取るね!」

 

「フン、誰に物を言っているのだ貴様は。この武蔵に私以上の金勘定が出来る奴が居たか?」

 

「まさか、だからこそですよ」

 

 

 なるほど。ええ、と互いに目配せするだけで言いたい事を理解するのは伊達に守銭奴夫婦と交渉勝負してないのだ。

 

 

「あととても気になってるんですが、その子は東の妹か何かで?」

 

『へ??』

 

「え、っと? 余に妹はいないけど……」

 

「ちょ、ちょっと待ちなさい賢女? まるで今すぐそこに"ナニ"か居るみたいな言い方するじゃないの今すぐ取り消しなさい怒るわよ!?」

 

「いえ、東の脚に引っ付いてるのはどう見ても霊体の娘御では?」

 

 

 確実に、しっかりと真桜の瞳のその視線は東の片脚に注がれている。

 全員がゆっくりと、そっと、ギギギという効果音が付きそうな首の動かし方を一切乱さず行う様はそんな感じの楽器みたく見える。

 

 注がれる一同の視線は、東の足下を捉えた。

 

 そこには、

 

 

「パ……パ?」

 

 

 薄桃色の半透明な少女であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『キャアアァアーーー!!!?!?』

 

 

 

 





 不義遊戯したかったけどちょい難しかった。
 あと単純に時間が取れずに書ききれんかったっス


 次こそ登場ご期待くだせぇ!!


 誤字脱字ございますれば教えてください。
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