人妻ではなく、未亡人でもありませんよ   作:お餅もっちもっち

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 馬鹿どもの説教を終えた真桜は、東の足元に可愛らしいピンクの幽霊が居ることに気づくが、害がないと分かるととりあえずは東に一任して急いで帰宅し、酒井学長を目的地に送る準備を始めた。

 何故だか途中、どこぞの本多ナントカが槍をぶん回し襲って来そうな予感がしたものの、大して気にすることでもなかろうと荷物を分身に持たせていざ三河の地へ!!

 ちなみに、学長は【蒼】での移動にゲロっていた。


 今回ちょいと短めに過去を振り返ります。



常が非常に変わる時「間」

 

 

 荷物をまとめ、武蔵から三河へと降りた真桜は酒井学長と早々に別れた。その理由は単純、本多家長女の相手がクッソ面倒だったからだ。

 それ故に酒井学長に「先に松平公に挨拶してきますね」と言って跳んだのである。

 

 

「今頃はセクハラ受けた本多娘が槍をぶん回してる頃合いでしょうかねぇ」

 

「先生としては、そういうの許しちゃ行けないんだけどね。あとでバケツ満載案山子立ちスペシャルの刑かな」

 

「それよりも新しく作った術式の実験台にしたいのですけど」

 

「また作ったのかい? 良い加減にしないと怒られるよ?」

 

「誰かに言われて止まるほど老耄(おいぼれ)てはおりませんよ」

 

「……お互いにね」

 

「……えぇ、地獄に堕ちる(行く)まで、止まれませんから」

 

 

 実のところ、本音を言ってしまえば真桜はコレから起こることを知っている。なんなら共犯者とも呼べる関係性に近かった。

 故にこそ手は抜かない。情けもかけない。

 

 全てを、救う為に。

 

 

 

 

 

 

 

 ────三河消失という、大事件の始まりである。

 

 

 

 

 

 

 目の前に居る、グレーテル・真桜。彼女に出会ったのは、五年前。

 

 末世に対する備え、その準備に取り掛かろうとしていた時だった。

 とはいえそれを悟られる訳にはいかず、通常行事も行わなければならないという事での親善試合だった。

 

 

 最後の試合、東は当然乍ら東国無双が娘の『本多・二代』が気負う事なく堂々とした態度で歩んでくる。

 

 ならば西はと見れば、これから仕合うと言うのにまるで道端を散歩する老人の如く、緩慢と歩を進める『グレーテル・真桜』の姿だった。

 

 

「なるほど、あの子が例の子(武蔵の麒麟児)だね」

 

「アイツが? オレには寝起きの中等部にしか見えんが……」

 

「まぁ、今回は頼み込んでようやくって感じで出たくれたんで」

 

 

 聞けば彼女は武蔵アリアダスト教導院側の補欠として来ているらしく、言ってしまえばやる気の無さが良く見える立ち姿に勝敗は決まったと考える者が多く居た事だろう。

 

 

「それでは親善試合、最終戦……始め!」

 

「ハァッ!!」

 

 

 開始の合図と同時に勢い良く飛び出したのは二代。突き出した槍の狙いは真桜の胸の中心に吸い込まれる様にして────外れた。

 

 

「な、ぐっ!?」

 

「……ふむ」

 

 

 その勢いを利用した真桜の掌底打ち(つっぱり)を咄嗟に槍の柄の中心部分で受けるも、自身の勢いもあり距離を取られた。

 

 

「定石なら長物に素手は分が悪いんだが、慣れてんな」

 

「神道関係者各位に笑って喧嘩売れる子だからねぇ、飛び道具もお手のもんよ」

 

「はい、私語はそこまでにして続き続き」

 

 

 そのまま距離を詰めるのかと思いきや、突き出したままの右手を腕と共にゆらりと垂らし右脚も同じく両脚揃えて止まり、次いで左手を頭より少し高い所に持って行く。

 元信たちの知らぬ構えではあるが、嫌と言うほどにこの構えの名を真桜はよく知っている。

 

 

「さぁ、どうぞ」

 

「っ、舐めているので御座るか!」

 

「いえ、いいえ。これは異な事を申されますのね」

 

「何……?」

 

「この身は産まれて此の方、一度たりとも他者を舐めた事はありません。むしろかの東国無双が娘たる貴女が、どの様に我が必殺を破るのかに興味が沸き立ちまする……さぁ、おいでなさい」

 

「……真っ向勝負ということか。良かろう、受けて立つで御座る!」

 

 

 第二ラウンド、またもや初手は本多・二代が駆け出すと同時に【翔翼】を割りながら速度を上げて槍を突き出す。

 高速で繰り出される槍の雨になるだろうそれは、最初の一撃から瓦解した。

 

 

「「「な!?」」」

 

 

 言ってしまえばそれが全員の純粋な気持ちの現れだったのだろう。

 二代自身の動きは決して悪くはなく、そこらの格上相手でも通用するだろうことは明らかな技の冴えだった。

 

 ────ただし。

 

 

「どれだけ速かろうとも、所詮は一本の槍に過ぎず」

 

「がっァ!!!!」

 

 

 真桜(魔王)には通じない。

 

 突き出された槍に対し天に向けていた左手で掻き分ける様に受け流すと右手を手刀とした切り上げ、の後すぐさま受け流した左による全力のストレートが胴を打ち付け殴り飛ばされる。

 

 流れるような三連撃(コンボ)に本多・二代の父、本多・忠勝は、『()()を破るには最低でも二人以上居なけりゃ話にならねぇ』と語った。

 

 

「……凄かったんだろうけど、速すぎて見えなかったよ」

 

「真面目に強いな、どんな鍛練させてんだよお前」

 

「それが俺にもさっぱりわかんないのよ」

 

 

 というオッサンどもの話を他所に、気を飛ばし動かない二代を見てあっけに取られていた審判が勝敗を告げる。ちなみに忠勝もコレにぶっ飛ばされ、約30戦目にして「しゃあオラァッ!!」と叫んだのは余談である。

 

 

 閑話休題(それはともかく)、親善試合が終わり、よっしゃ帰んべと荷物をまとめて歩き出す真桜を松平・元信が呼び止めた。

 

 

「何でしょうか。不正はしてませんよ?」

 

「いやぁそこは大丈夫だと思うよ。あそこの副長も「鍛え直しだな」とか言ってたから、って本題はそこじゃなくてね」

 

「君にお願いがあって来たんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ええ、お伺い致します♪」

 

 

 

 

 


 

 

 

 

 

「(もう少し話した方が良かったんだろうけど、先生には時間が足りないからなぁ)」

 

「……? どうしたんです、仏顔を晒して」

 

「いや、今更だけど君に酷いことをさせてしまっていると思ってね」

 

「ほんとに今更ですわね……くだらない事を気にしてないで、お互いやる事やりましょう」

 

 

 いや、割と結構申し訳なく思ってるんだけどなぁ。という殿先生を放って茶を啜る真桜に、まぁ良いかと思い話を進める。

 

 

「例の術式ってどうなってるのかな」

 

「九割九分九厘は完全してますが、腹だたしくも一歩足らずと言ったところです」

 

「じゃあ"眼"とか、他の術式は平気な訳だね?」

 

「ええ、むしろ今か今かと出番待ちしちゃってる感じですね」

 

「おぉー! それは楽しみだね。それじゃあ後は段取りの確認と道具の準備、その他諸々が終わるのを待つだけだね」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「全ては新たな未来の為に」」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 地獄が始まるまで、あと少し。

 






 真桜の六眼(偽)の小話。
【挿絵表示】



 当時の真桜ちゃんには六眼はありませんでした。

 しかし当時の(今でも)真桜は「無ければ作れば良いじゃない」のスタンスでしたので、六眼(りくがん)作りに熱をあげました。
 もちろん元は自身の目。それを使い片方づつ改造及び調整、それが終われば試しての試行錯誤(トライアンドエラー)を繰り返し遂に六眼(偽)(りくがんモドキ)の開発に成功。

 とはいえモドキの名を冠しているのは単純に性能が劣化してしまっている為、出来るのは精々が相手の術式の名、そして自身の流体運用の最効率化までしか出来ず、どれだけの試行錯誤をしてもやっても本家本元の六眼には辿り着けなかったという過去があります。

 挿絵はキャラメーカーからお借りしてます。
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