銀翼の鴉と黒の剣士   作:春華

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こんな夜中に更新

さっきまで80件のお気に入りが一気に100件超えててビビりました。
やっぱSAOとAWって人気なんだなと思いつつ、この場でお礼をさせていただきます

今回はある重要なことの話なので物語自体は少ししか進みません

…というか、感想欄の皆さんの意見聞いてるとこれも良い!こうしたい!って言うのが多くて嬉しい悲鳴というかなんというか…

…うん、ありがとうございます


では、どぞ


第十話:ミッドナイト・フェンサー

「……………違う」

 

目の前でポリゴンとなって消えた少女を見つめながら、俺はポツリと呟いた。

ここは俺が直葉に頼まれて作った≪弾除けゲーム≫のVR空間の中である。

 

顔にかかる前髪をかき上げながら、俺はあるプログラムに関するデータの調整を行っていた。

 

難易度【スペシャル】

装備【PGM・ウルティマラティオ・へカートⅡ】

キャラクター【氷の狙撃者】

銃撃カウントダウン【無し】

 

この設定のみで現れるスペシャルNPC。その調整だ。

この世界にも≪GGO≫は存在していて、≪BoB≫に参加していた≪Sinon≫の存在も確認できた。

ポリゴンアバターはそれを見て限りなく精巧に作っている。

 

―――だが、足りない

魂が、心が、何もない

 

そんなのわかってる。

≪彼女≫がいるわけない。

最初は、軽い遊びのつもりだった。

直葉に頼まれてプログラムを作っていくうちに、銃といえば彼女だったよなと思ったのが始まりだ。

気が付けば、彼女の姿を作っていた。

こんなの、ただ、俺の心を満たすだけのことだってわかってる。

直葉に慰められたとはいえ、俺はまだ完全に立ち直っていないことにだって、気づいてる。

 

多少プログラムができるからって、≪ユイ≫のような存在ができるわけないのだ。

同じカーディナルシステムを使っているからって、SAOのような極限状態が2年も続いたからできたような奇跡を、俺に再現できるわけない。

 

「………っ」

 

管理者モードから設定を選ぶ

 

難易度【スペシャル】

武器【光剣(フォトン・ソード)カゲミツG4】

キャラ【黒の剣士】

銃撃カウントダウン【無し】

 

OKを押すと、目の前に現れたのは一見女性アバターにも見える一体のアバター。

右手には紫色に輝く光剣。

 

「……来いよ」

 

ウィンドウを消し、右手の剣を握りしめる。

俺の右手には、目の前の≪奴≫と同じ武器。

ポリゴンでできた相手は、ただ無表情に、目の前の≪敵≫を倒すために向かってくる。

その単調な攻撃を、右手の剣で受け流し。

 

高速五連突きから斬り下ろし、斬り上げ、止めの上段斬り。

 

SAOでは≪ハウリング・オクターブ≫と呼ばれていたその剣技を再現し、目の前の剣士をポリゴンの粒子に返した。

 

「………………」

 

そのことになんの感慨も浮かばず、ただ武装を解除した俺は、ロビーに戻った。

 

 

 

 

ロビーに戻ると、パチパチパチ、と手を叩く音が聞こえた。

 

「凄いな、今の剣技……あんな鮮やかなものを見たのは久しぶりだよ」

 

視線を向けると、そこにいたのは一人の女性アバターだった。

全身を黒い服で包み、背中からは黒揚羽蝶の羽が生えている。

その顔は学校で見たことがある。確か――――――

 

「…黒雪姫、だっけ」

 

黒雪姫はコクリと頷くと、俺に近づいてきた。

 

「あんた、スグの知り合いだったのか。じゃあ、遠距離銃撃が苦手っていうのは…」

 

「それは私ではないよ。それより桐ケ谷君。今のキミの動き、とても洗練されていた。キミが直葉君の≪親≫なのか?ふむ、それなら彼女のあの強さにも納得できるな…」

 

「…親?何言ってるんだ。俺はあいつの兄だよ。それに、スグと俺は関係ない」

 

「誤魔化す気か?いや、そもそもキミも≪バーストリンカー≫なら、何故マッチングリストに表示されないんだ?梅郷中にこんな…いや、加速世界であのような強さのバーストリンカーなんて早々見たことが無い。どこの陣営なんだ?どこにも入ってないなら、私の陣営に来てくれないだろうか?私や直葉君がいるとはいえ、戦力が少々足りなくてな」

 

バーストリンカー?加速世界?何を言っているんだ彼女は…

やっぱり、自分のことを黒雪姫なんて名乗っている時点でちょっと俺たちとは違う世界の住人なのではないだろうか?自分のことを妖精王って呼んでる奴とか、デス・ガンって呼んでる奴とかと同じ部類だろう。

≪ビーター≫は違うだろう。…俺が作った言葉じゃないし

 

それより―――

 

「陣営とか、戦力とか、まるで戦争みたいなこと、やってるんだな。どんなゲームなんだ?直葉に聞いても教えてくれなくてさ」

 

「だからとぼけるなと…いや、まさか…本当に知らないのか?………マジで?」

 

「だから言ってるじゃないか。何を言ってるのかわからないって」

 

目の前の少女は青い顔になると「こ、このことは他言無用にしてくれ!た、頼む!」なんていって、ログアウトしていった。

……時刻は午前3:00。多分寝ぼけてたんだろう。

 

「……俺もそろそろ寝るか」

 

元の世界の事を思い出して少し気分がへこんでいたが、あの少女と話したからか、少し気が紛れた。

…変な奴だったけど、良い奴なのだろうと考えながら、俺はログアウトし、眠りについた。

 

 

 

 

「先輩?黒雪姫先輩?」

 

「…はっ!な、なんだハルユキ君!私は何も話してないぞ!加速世界のことなんて、何も!」

 

「いや、その…ボーっとしてたんで…あの、僕の話、聞いてました?」

 

「…あ、いや…すまない、もう一度聞かせてくれ」

 

「ですから…赤の王に現実で接触されて、先輩と会わせてくれって言われたんですけど…」

 

「あ、ああ…そういえば、そうだったな」

 

そういうと黒雪姫はふむ、と少し考え出した。

今日の黒雪姫は少し変だと思う。彼女と出会って日が浅いハルユキにも、そのことはわかった。

話をしていてもボーっとしていて反応が薄いし、ハンカチでよく額の汗を拭いている。

熱でもでたのかと一度聞いたが、大丈夫だと言われたので大丈夫なのだろうと思い込むことにした。

 

「とにかく、このことは私とキミだけでは決められないだろう?レギオン全員で話そう。昼食は…そうだな、サンドイッチでもいいだろう」

 

直葉の方は案外簡単に見つかった。

ラウンジで誰かを待っているみたいだったが、事情を話すと納得してくれ、待ち合わせしていた相手に謝罪のメールを送っていた。

彼女の容姿だし、彼氏がいてもおかしくないだろうと勝手に解釈したハルユキは、心の中でその彼氏さん(推測)に謝罪して、もう一人のメンバー、タクムのいるところに向かった。

 

 

幸い、タクムは屋上にいたので、三人で移動してそこで会議することになった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「じゃ、じゃあ…会うのは今日の午後四時、それで場所は…僕の…家、ですか」

 

結局出た結論は、黒雪姫がスカーレット・レインの要求をのみ、ネガ・ネビュラスのメンバーでハルユキの家に集まるというものだった。

場の空気に…主に黒雪姫の重圧に負けたハルユキは、渋々ながら了承すると、スカーレット・レインに時間の連絡のメールを送った。

 

――赤の王が来ていいなら私は駄目なのかって…そんなの断れるわけないじゃん!

 

ぶつぶつそう思っていると、黒雪姫は直葉を呼び止めていた。

 

「直葉君、その…単刀直入に聞いていいか?キミの兄、桐ヶ谷和人は…バーストリンカーなのか?」

 

「え…っ!?」

 

「は…?」

 

上は突然聞かれて驚いた直葉の、下は突然の謎の質問にポカンとした表情になったハルユキの声だ。

 

「……………どうして、そう思うんですか?」

 

消え入るような声で聞き返す直葉の声に、黒雪姫はすまなそうな表情をしてから。

 

「いや、実はな…昨日…と言っても今日の夜中か。キミの知り合いが作った弾除けゲームに気まぐれでログインしたら、キミの兄がいてな、NPC相手に凄い剣技を使って勝ったんだよ。それで気になったんだが……どうした?」

 

黒雪姫の言葉を聞いていた直葉の顔が、真っ青になる。

そして次の瞬間、彼女の口から発せられた言葉は、ここにいる全員を驚愕させるものだった。

 

 

「そんなことありえないです。だって、お兄ちゃん……≪ミッドナイト・フェンサー≫は、もう昔に≪全損≫して、ブレイン・バーストの記憶を失ってるんですから!!!」

 

 

 

 

 

 

 

 

今から一年前、桐ヶ谷直葉は、兄和人に「面白いゲームがあるんだ」と言われ、ブレイン・バースト・プログラムをコピーインストールさせてもらった。

 

アバターの容姿は加速世界では珍しい、≪ヒューマンアバター≫兄の和人はブラックカラ―の、黒い騎士だった。直葉は兄のような普通のアバターが良かったと言ったが、兄は「俺はその姿のスグがスグらしくていいよ」と言われ、嬉しかったのを覚えている。

 

和人の指導の元、直葉はどんどん実力を付けていき、レベルも5になった。

兄のレベルは7。「いつかレベル9になって、王達に戦いを挑む」が彼の口癖だった。

しかし、その夢は断たれた。

 

ミッドナイト・フェンサーは、加速世界でかなりの実力者だった。

 

そして、王の座を狙う危険分子でもあった。

 

だから、≪PK≫なんていう手段で殺された。

彼のことを恐れた黄色の王が、彼を罠にはめて、≪無制限中立フィールド≫で≪集団PK≫によるポイント全損に陥れたのだ。

 

直葉はすぐそばでソレを見ていた。

犯人の一人に身動きを取れなくされ、抵抗すれば彼女を全損させるという強迫を掛けられた兄が、目の前で全損させられる様を。兄は、抵抗しなかった。

最後のポイントが無くなるときまでも、彼は「俺が全損したら、リーフ・フェアリーはちゃんとログアウトさせろ」と言って、自分の事なんて、考えていなかった。

そして彼のアバターが消えた後、直葉は解放され、彼のアバターからドロップした一振りの剣を抱きかかえ、泣き叫んだ。

なぜ、兄がこんな目に合わなければいけないのか

問いかけても、誰も返事はしてくれなかった。

 

そしてログアウトした彼女を待っていたのは、ブレイン・バーストの記憶を失った兄だった。

 

そしてそれから中学生になり、同じ学校にブレイン・バーストから消えたはずの、≪加速世界≫における大犯罪者、≪ブラック・ロータス≫を見つけた直葉は、対戦を申し込んだ。

「戦う意思はない。話し合いがしたい」再三そのことを言い続けた直葉は、ついに話を聞く姿勢を見せた彼女に、ネガ・ネビュラスに入りたいと告げた。

彼女と一緒なら、黄色の王と遭遇する確率は高いと踏んだからだ。

 

しかし、その返答は「すまない」の一言だった。

「まだその時が来ていない。時が来たら」という言葉に頷いた直葉は、時が来るのを待った。

そして来たのだ。シルバー・クロウの出現という時が。

 

直葉は喜びに震えた。ついにこの時が来たのだと。

黄色の王に、復讐できる時が来たのだと。

 

だが、それとは別に、直葉はこの世界を愛していた。

別に復讐のためでも何でもない、純粋にブレイン・バーストが好きなのだ。

だから、復讐は黄色の王に出会った時。

それまでは楽しむことに決めていた。

 

実際、領土戦は楽しかったし、ハルユキ達といるのも悪くなかった。

 

一年間、存在を表に見せなかったおかげでリーフ・フェアリーの存在も、良い感じに忘れ去られていたことも、彼女にとっては幸運だっただろう。

 

 

 

 

 

「…っていう感じです。というわけで、別に今すぐ黄色の王と戦えっていうわけじゃないですよ。まずは目の前のことを片付けてから!だから、兄のことはきっと勘違いですよ、はい。お兄ちゃんは…もう加速世界にはいないんです」

 

そういうと直葉は教室に戻っていった。

 

残された三人の間に、重い沈黙がおちる。

 

「理由があるからネガ・ネビュラスに入りたいと言っていたが…まさかこういうことだったとは」

 

「マスターは、知っていたんですか?≪ミッドナイト・フェンサー≫のこと…」

 

「小耳にだけだ。一年前だと…私も潜伏していた時期だし、詳しくは知らなかったよ」

 

タクムの言葉に、黒雪姫は首を振ると、俯いた。

自分の言葉で直葉のトラウマを開いてしまったのだ。気にしないほうがおかしいだろう。

 

「と、とにかく。一旦戻りましょう?もうお昼休み終わっちゃいますし…」

 

ハルユキの言葉に頷いた二人は、足取りも重く、それぞれの教室に戻っていった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




なんだかんだで引きずってるキリト君
完璧なシノンにストレス発散用の自分のデータ作りに頑張ってるみたいです
別にこいつらが後々重要な役割になるなんて考えてません
ただキリト君だしたくてそうしたかっただけです
初対面の黒雪姫は中二病認定されちゃったみたいです
そしてペラペラ話すドジっ子サッちゃん
直葉ちゃんの≪親≫もわかったとこで、短いですけどきりがいいのでとりあえずこんな感じで

黒雪姫、隠れてから加速世界の現状ってよく知ってたっけ…
どうなんだろ、とりあえず、知らなかったということでお願いします

ちなみに弾除けゲームのロビーにはモニターがあって、やってる人がどんな感じか見れます
ぶっちゃけた話、GGOのBoB本線の会場の中が小さくなったのをイメージしたほうが早いです

AW世界のキリト君のアバター名のヒントは感想欄のを参考に決めさせてもらいました!
ありがとうございます!!

皆さんの意見聞きながら組み立ててますが一応キリト君参上までの感じは頭の中にできてるし…
案外早めに出せそうな…と期待をあおることを…




では、また次回!


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