銀翼の鴉と黒の剣士   作:春華

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はい、とりあえず…文章が読みづらい可能性が…




では、どうぞ


第十七話:兄と妹

「…………それじゃあ、聞かせて」

 

夕食を終え、お風呂にも入り、後は寝るだけ、という時に、パジャマ姿の直葉が部屋に入ってきた。

ついに、俺自身のことを話すという緊張感や、信じてもらえるのだろうかという不安感よりも、今、俺の心には、直葉に、申し訳ないという気持ちで一杯だった。

 

彼女の兄を、事故のようなものとはいえこの世から消してしまい、また彼の名前を名乗って彼女を助けに来たことも。

 

 

「…………………」

 

「黙ってたら、わからないよ」

 

口を噤む俺に、直葉は真剣な表情でこちらを見る。

…向こうは、俺の言うことをちゃんと聞こうとしている。

向き合って、話しあおうとしている。

 

 

―――俺は……彼女に、全てを話すことに決めた

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…………つまり、お兄ちゃんは本当は別の世界のお兄ちゃんで、ええと…STL?の事故でこっちの世界に飛ばされちゃって…私の世界のお兄ちゃんに憑りついちゃった…ってことでいいの?」

 

 

「……簡単に言えばそうなる…」

 

 

話を聞いた直葉の言葉に、和人は力なく頷いた。

その姿はまるで、死刑を待っている死刑囚のような姿だ。

 

彼の話は、ただの夢物語と言う方が簡単だ。

平行世界?そんなの、信じられるわけない。

 

普通の人なら、勿論直葉でもそう考えるだろう。

しかし、生まれてからずっと一緒に暮らしてきた兄に関しては、話していることが嘘か本当かくらいわかると自負している。

今回は本当のことを言っていると、彼女は思う。

 

「ええと…ここにいるお兄ちゃんは、私のお兄ちゃんじゃないんだよね?その、お兄ちゃんがいた世界では、私はどうしてたの…?」

 

「変わらないよ。スグは俺の妹だったし…こうして隠し事をしたらすぐにばれてた」

 

「………そっか」

 

再び沈黙が落ちる。

先にそれを破ったのは、和人だった。

 

 

「スグを助けに行く時、この体の本当の持ち主…スグの兄と、話したんだ。自分は助けに行けないから、スグを頼むって、言われた。……身勝手かもしれないけど、俺は……彼の願いに答えたいんだ。だから、その…これからも、スグと一緒にいたい。…駄目、かな」

 

「……………そんなの、断れるわけないよ。……でもね、お兄ちゃん。一つだけ、条件があるの」

 

「ああ、何でも聞くよ。スグの言うことなら」

 

「じゃあ言うね。……私を守るとか、そんなんじゃなくて、普通に…兄妹として、今までのように接してほしいの。お兄ちゃんが、本当のお兄ちゃんじゃないとか、関係ない。だって、お兄ちゃんはお兄ちゃんだもん」

 

「でも、俺は…」

 

「はっきり言うと私だって悲しいよ?今まで一緒にいたお兄ちゃんが、同じお兄ちゃんでも変わっちゃうんだもん。でもね、お兄ちゃんは私より辛いんだよね。あっちの私や、友達に会えないだけじゃなくて、全然知らない場所に来ちゃってるんだから…」

 

そう言うと直葉は和人の手を取り、両手で包み込む。

 

「前にも言ったよね。誰もお兄ちゃんの手を掴まないなら、私が代わりに掴むよって」

 

「スグ………」

 

「だから、私のお兄ちゃんでいてください。お願いします」

 

 

「…っ…ああっ……!」

 

 

和人は、その顔をくしゃくしゃにしながら、直葉の言葉に頷いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「それで、お兄ちゃんは…ブレイン・バーストを手に入れたんだよね?どうやって手に入れたの?」

 

色々泣いて、落ち着いたあと、直葉はそう、俺に問いかけてきた。

 

「…あ、ええと……茅場晶彦っているだろ?二十年前にSAO事件起こした奴。…あいつの精神体みたいなのに会って、もらった」

 

「………………なんか、お兄ちゃんの話のスケールが大きくなってく気がするよ…」

 

困ったように顔をしかめる直葉。

本当のことなので、他に説明のしようもないのだ。

 

 

「…?そういえばさ。お兄ちゃん、元いた世界ではブレイン・バーストとか、なかったんだよね?なのに、私を助けに来てくれた時は、ポイントとか、色々知ってたよね?そこら辺は…どうしたの?」

 

ぐっ…また答えに困る質問を…

 

「その…ブレイン・バーストをインストールした時にさ、急に暗い場所に落ちたと思ったら、≪ミッドナイト・フェンサー≫の鎧があったんだ。それに触ったら、色々とこの世界のこととか、加速世界のことも頭に入ってきて…」

 

 

できるだけありのままのことを話すが、今回の直葉は難しい顔をしながら考え込んでいる。

やがて、「もしかしたら、なんだけど」と言うと、とんでもないことを言いだした。

 

 

「………私のお兄ちゃん、その鎧になっちゃったんじゃないの?」

 

「…はい?」

 

「だ、だって、今まで知らなかったことが、その鎧に触ったらわかったんでしょ?ええと…お兄ちゃん達は、その…フラクトライト?がほとんど一緒なんだよね?それで、記憶の共有化みたいなのが起きたんじゃないのかな~…なんて」

 

…その考えにも一理あるな…

というか、ここまで非科学的な現象が多いとどうしようもない…

 

 

「………あ~!!もう!頭がこんがらがるよ!!」

 

直葉は「うにゃ-!」とひとしきり叫んだあと立ち上がり

 

「私、もう寝る!お兄ちゃん!また明日ね!!」

 

といって、自分の部屋に戻っていった。

 

 

「…また、明日…か」

 

直葉の言葉に、自然と笑みがこぼれる。

全て話して、少し楽になったようだ。今日はきっと、良い夢を見ることができるだろう

 

欠伸をした俺は、そのままベッドに入ると、眠りについた。

 

ニューロリンカーのグローバル接続は、切れていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

その日、俺は夢を見た

 

いや、悪夢と言った方が良いだろう

 

 

 

目の前で、大切な人が消えていく夢だ。

 

サチが、黒猫団の皆が、俺の手の届かないところでポリゴンの粒子となって消えていく。

彼女たちが消えると、次はクラインや、エギル。リズにシリカ、アルゴなど、SAOで知り合った、たくさんの仲間が現れた。

こちらに手を伸ばす皆に、歩み寄った時、上からスカルリーパーが現れて、クラインをポリゴンの粒子に変えた。

 

 

やめろ……

 

 

叫ぼうにも、声がでない。

スカルリーパーは俺以外の全員をポリゴンの粒子に変え、こちらに視線を向けてきた。

今、奴の鎌が俺を捉えようとした時、その体が震え、皆と同じように爆散した。

 

アスナが、ユイが駆け寄ってくる。

二人を抱きしめようと両手を伸ばした瞬間、白い、ALOのグランドクエストで戦った白い騎士の大群が、二人を飲み込んだ。

助けようと手を伸ばすが、体が動かない。

 

やがて大群が姿を消すと、その場にはアスナのレイピアと、ボロボロになったユイの服。それに、ALOで出会った皆の武器や、道具がボロボロになって落ちていた。

 

…その中には、勿論リーファの剣も

 

 

呆然としていると、今度は砂漠の真ん中に立っていた。

ここは…GGOの決勝…デス・ガンと戦った場所だ。

気が付くと、目の前でシノンが倒れていた。

相変わらず体は動かない。

 

 

 

呼びかけようにも、声がでない

 

そうこうしているうちに、目の前の景色が歪み、デス・ガンが現れた。

彼は倒れているシノンの前に立つと、十字を切り、手に持っていたハンドガンで、シノンを撃った。

 

攻撃を受けたシノンは苦しむように悶え、やがて動かなくなった。

 

 

 

再度場面が変わる。

忘れようにも忘れられない。ここはセントラル・カセドラルの頂最上階…

俺が、大切な友人を失った場所だ…

 

巨大蜘蛛のシャーロットや、カーディナルが、物言わぬ体となって倒れている。

それだけではない。あの世界で心を通わしたロニエやティーゼ、ソルティリーナ先輩達、ノーランガルス帝立修剣学院の人たちも同じように倒れていた。

 

さらに視線を向けると、ルーリッドの村の人たちも見えた。

その中の一人…セルカを見つけた俺は彼女に駆け寄った。

その小さな体をゆすっても、何も反応はない。

 

 

---気配を感じて振り返る。

 

そこにいたのはアドミニストレータ。

そして、彼女は今まさにその長剣で、若草色の髪を持つ親友と、金髪の女性騎士を斬り裂いていた。

 

すべてがゆっくりに見えた。

ユージオと、アリスの体が地面に倒れる。

アドミニストレータが高笑いを上げている。

 

 

俺は、それをただ見ているだけだった。

 

 

俺は、誰も助けることができないのか。

 

どんな時も、≪俺≫には、誰も助けられないのか

 

 

 

…≪キリト≫なら、≪黒の剣士キリト≫なら、きっと……

 

 

 

 

そして目の前が真っ暗になった。

 

消えゆく意識の中、聞き覚えのあるような、声が聞こえた。

 

 

『—―――それが、君の望みか』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 




とりあえずスグちゃんが天使だって思ってもらえればいいです


キリト君のアバターの能力を作るに至ってのこの悪夢です
四つ分の悪夢を見させたのが能力のヒントですかね


次回からは、皆さんに楽しめる内容のものを書いていきますので、またよろしくお願いします

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