銀翼の鴉と黒の剣士   作:春華

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とりあえずネガビュ回

レベルとポイントのやつをちゃんと理解し切れてなかったとか…

教えてくださった方々、ありがとうございます


第十九話:ネガ・ネビュラス

「くそ…!アッシュさんめ…何も僕に当たらなくてもいいじゃないか…」

 

「それでも、バイクに注意してなかったのはハルの失態だね」

 

「勝てると思ったんだよ…まさかバイクが突っ込んでくるなんて聞いてねえし…」

 

昼休み。

「今日は用事があるのでラウンジには来ないで好きにしていてくれ。ちなみに、今日は加速を使ってN・Nの会議もするので連絡しておく」と、黒雪姫のメッセージをもらったハルユキは、屋上にてタクムと食事を取っていた。

タクムも、今朝のアッシュ・ローラー戦は観戦していたようで、ハルユキの愚痴に苦笑している。

 

「…でも、ヒューマンアバターか…。リーファ以外に見たことがないからわからないけど、一体どんなバーストリンカーなんだろうね」

 

「さあな。もしかしたら、うちの誰かが新しくインストールしたんじゃねーの?」

 

サンドイッチを齧りながらそう言った瞬間、加速音と共に、周りの色が変わった。

 

直後、ハルユキの体が銀色のアバターに変化し、視界中央に炎文字が浮かび上がった。

 

【A REGISTERED DUEL IS BEGINNING!!】

 

≪観戦予約デュエルが開始されます≫

という表示が上がったあと、ハルユキの体はステージに誘われた。

観戦予約デュエルというのはその名の通りで、自分がそのバーストリンカーの戦いの際に、ギャラリーとして登録して、その戦いを見ることができる機能だ。

1800のカウントと、対戦するアバター。

今回は黒雪姫のアバター≪ブラック・ロータス≫と、≪リーフ・フェアリー≫だった。

隣にタクムことシアン・パイルがいることを確認し、視線を前に移すと、奇妙なアバターを見つけた。

髪を肩甲骨辺りまで伸ばし、その身を防弾アーマーとコンバットブーツに包んでいる。

ハルユキの視線に気づいたそのアバターは、ハルユキの方を向き、ニコッと微笑みながら手を振ってきた。

 

一瞬その動きにドキッとしてしまうが、ぶんぶんと頭を振り、「あなたは誰ですか」と問いかけようとした瞬間、黒雪姫の凛とした声が響いた。

 

「さて、今日の会議を始めるぞ。まずは、クロム・ディザスター討伐、お疲れ様。特にクロウは討伐に大きく貢献してくれた。これで我々ネガ・ネビュラスは赤のレギオン≪プロミネンス≫と停戦協定を結び、クロム・ディザスターという脅威も取り除くことができた。これで万事解決…なんだが、ここで朗報だ。我がネガ・ネビュラスに新しいメンバーが入ることになった」

 

新しいメンバー?とハルユキが首を傾げると、先ほどのアバターが立ち上がり、ぺこりと頭を下げた。

 

「どうも~…キリトって言います。これから、よろしく」

 

微笑みながら挨拶をするキリト。

一瞬見とれてしまうが、隣のタクムの質問で我を取り戻す。

 

「僕は構いませんが、何故このタイミングなんです?今までマッチングリストにも表示されていなかったですし…。それに、色と名前がはっきりしてません。これの説明は…」

 

「それは私がこの人の≪親≫になったからだよ、昨日、皆と別れた後に友達にあってさ。そういえばVRゲーム得意だったよな~って思ってコピーインストールしたら成功しちゃって…。ネガビュも戦力増やした方が良いかなって思って…案の定上手でさ、レベルも取りあえず私のポイントで2に上げさせたんだよ」

 

へぇと思いながらハルユキはキリトを見る。

そう強そうに見えないけどな…

 

「で、名前のことなんだけど…はっきりいうとわからないんだ」

 

「それで、昼休みに彼女たちに会って、話を聞いていたわけだ」

 

リーファの言葉に続けるように黒雪姫がそう言う。

そうか、だから先輩は今日はラウンジに来なくていいって言ったのか…

 

「で、彼…こほん、キリトの名前の件は私にもわからない。ブレイン・バーストがここに来て新しいシステムを追加したのかも知れないし、名前自体(・・・・)がこのアバターを表現している。というのが私の推測だ。ちなみに後者を推すぞ。アップデートがあれば、全員に何か通達が来るはずだからな」

 

「…そうですか。すみません、キリトさん」

 

「い、いえ。ええと…シアン・パイルさんの考えもわかりますから」

 

「ええと…じゃあ、リアルの方では…」

 

ハルユキがそう言うと、キリトが口ごもる。

どうしたのだろうとハルユキが首を傾げると、黒雪姫が口を開いた。

 

「その質問には私が答えよう。こいつは私と同じクラスの奴でな、結構大人しいんだ。あまり人と付き合うのが得意でなくてな。だから、今はリアルを教えることはできない。連絡はメッセージか、こうして加速空間での会議くらいにしてもらいたい」

 

「わかりました」

 

二人で頷くと、黒雪姫も「うむ」と頷いて。

 

「では今日はこのくらいにしよう。では、解散!」

 

 

と言って、その場はお開きとなったのだった。

 

 

 

 

「…キリトさんか、なんか大人しそうな人だったな」

 

「……………」

 

隣のタクムに話しかけると、彼は思案顔で何か考えている。

 

「どうした?…あ!もしかして、あの人に惚れちゃったのか!?お前…チユという奴がいながら……」

 

ハルユキの質問にタクムははぁ…とため息をつくと

 

「そんなわけないだろう?そもそも、ヒューマンアバターだからって現実と容姿が同じなわけないって、リーファがそう証明してるだろう?……まあいいや。マスターがそんなことするわけないし」

 

「そんなことって、なんだよ?」

 

「意図的にあのキリトって人のリアルを隠しているってことだよ。マスターと同じクラスで、桐ケ谷さんの友達なんだ。活発的な桐ヶ谷さんの友人が、人付き合いが苦手って、あまり考えられない…」

 

「……そうか?そんな偶然もあるんじゃないか?ゲームになったら性格変わるとか」

 

ハルユキの言葉にタクムは渋々といった感じで頷き、先に戻ると彼が言ったことにより、この話は終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

「…さて、これでいいのか?」

 

「ああ、助かったよ」

 

ここは食堂のラウンジ。

俺と直葉がいつも座っているテーブルには、黒雪姫が座っていた。

 

「それにしても和人君、あれはやりすぎだぞ。正体がバレてキミがあんな女の子のような恰好をしている奴だったと、ハルユキ君たちに思われても、責任は取れないからな」

 

「あれは俺が好きでやったんじゃないとだけ、言っておく。それに、そんなことなんて大したことないよ。君にも見せたろ?俺のアバターのアビリティ」

 

俺の言葉に黒雪姫はふむ、と頷くと

 

仮想体変化(アバターチェンジ)か…状況に合わせて四つのアバターに姿を変えることができるとは…」

 

「その分、レベルアップボーナスもほとんどないし、四つのうち一つはまだ変われないからな。皆近接型だし」

 

「でも、黒雪姫先輩、よく信じてくれましたね。私たちの話…」

 

「平行世界のお前の兄、だったか?普通なら私だって信じないよ。だが…」

 

黒雪姫はブラックコーヒーを一口飲んで、続きを話す。

 

「和人君が加速世界に来る前に、一度射撃空間で彼の動きを見たと言っただろう?昨日のミッドナイト・フェンサーの動きは、それと同じだった。クロム・ディザスターのように、誰かの強化外装に持ち主の思念が宿っているのは知っているからな。ミッドナイト・フェンサーは全損しているし、装着者の動きは私がVR空間で見た和人君のモノと同じだ。すると…」

 

グラタンをパクリと食べた黒雪姫が人差し指を立てる。

 

「……矛盾が発生する。直葉君の話を聞く限り、ミッドナイト・フェンサーのバトルスタイルは剣を一本しか使わないし、多少のダメージはその鎧で耐えて攻撃するらしい。まさに肉を切らせて骨を断つだな。だが、和人君は二刀流だったし、攻撃も回避していた。スタイルが変わったのかと思われるが、直葉君の話では最後までそのスタイルを突き通していたようだから、全損によるブレイン・バーストの消失中にそれを直すようなこともできない。しかも、イエロー・レディオが、彼を見た時に驚いていたからな。そこらへんから考えると、案外ストンと納得するものさ。ニューロリンカーが人間に量子接続して人を見極めるなら、君の兄と和人君は、平行世界の同一人物とはいえ、別人だろう。ブレイン・バーストのインストールも可能なはずだ」

 

「おおー……」

 

二人で感嘆の声を上げる。

まさかここまで推測できる人がいるとは…

 

「…まあ、和人君の実力は申し分ないからな。我がレギオンに入ってくれるなら十分だよ。これからよろしくな」

 

「ああ、よろしく頼むよ、レギオンマスターさん」

 

こちらに手を差し伸ばしてきた黒雪姫の手を握る。

この秘密は、当分三人だけの秘密になるだろう。

 

 

 

 

「……なるほど、そういうことでしたか」

 

 

と、その間に誰かの声が聞こえた。

三人でその方向を見ると、そこにいたのはメガネをかけた好青年。確か……

 

「あ、シアン・パイルの…」

 

「馬鹿者!キミが言ってどうする!それでは自白しているのと同じだぞ!!」

 

「ぁ…」

 

黒雪姫の言葉を聞いて、冷や汗をかいている俺に、メガネ君はため息をついて、こちらに手を差し出してきた。

 

「なにやら大変なことになってるみたいですね。桐ケ谷先輩。僕も、あなたに協力しますよ」

 

「え、な、何で?」

 

思わずそう聞き返すと

 

「マスターの方針には逆らう気はありません。ただ僕は、真実が知りたかっただけなんです。そうしたら平行世界やらとんでもない単語が飛び出してきて…。それなら隠したい理由もわかりますよ。下手に桐ヶ谷さんの兄だって言うよりは、多少不都合があっても先ほどの会議のように説明したほうがマシです。全損からの復活者だなんて、そっちのほうが色々と大変そうですからね」

 

「……黛君、なんか…うん、ハカセみたい」

 

うぐっと呻いたメガネ君は、くいっとメガネを直すと

 

「黛拓武です。これからよろしくお願いします」

 

と言ってきた。

俺はその手を握り返して。

 

「桐ヶ谷和人、よろしくな」

 

 

 

 

結果、秘密は4人ということになった。

 

シルバー・クロウには話さないのかと聞くと、全員一致で「情報が漏れる危険性がある」と一致したので、彼には暫く黙っておくことになった。

 

 

なんか…あれだ。ドンマイとしか言いようがない。

 

いずれ過去の自分が彼と戦うだろうし、その時に説明すればいいだろうと、何となく思っていた俺であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 




黒雪姫は超万能
タクム君は万能

みたいな
というか加速終わって速攻ラウンジに到着して気づかれないように話を聞けるタクム君怖いね
人間超えてるんじゃないかな


ところでハルユキ君が照れたりしてるけど、GGOキリトの容姿に騙されてるだけです
キリ×ハルなんてCPは存在しません


次回はのうみくん回スタート
ついにヒロインが登場しそうだけど、キリト君は黒雪姫と同じ学年なんだ。

その意味が、わかるな?



では、また次回!!

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