銀翼の鴉と黒の剣士   作:春華

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お久しぶりです

気が付けばSAOも終わってしまいましたね…

アリシゼーションアニメ化まではあと二、三年くらいでしょうか…

では、どうぞ


第二十五話:戦いのための準備

「―――せいっ!!」

 

 

 

時刻は夕食過ぎ、直葉は家にある道場にて竹刀の素振りをしていた。

 

能美やハルユキの件もあり珍しく部活を休んでしまった彼女であったが、自然とこうしていたのである。

 

素振りをしながら、今までの現状を少しずつまとめていく。

 

 

梅郷中に現れたバーストリンカー、能美征二ことダスク・テイカ―。

 

彼の目的は≪フィジカル・バースト≫を使い続けるためのポイントを安定して手に入れること。

 

そのために彼はシルバー・クロウから≪飛行アビリティ≫を奪い、それを盾に直葉を破った。

 

こちらとしては彼の約束など守る気はないのだが、仲間であるシルバー・クロウの翼があちらに奪われている以上、直葉は手を出すことができない。

 

そして今日のハルユキの言葉である。

 

自分の翼など関係ない、一人のバーストリンカーとしてダスク・テイカ―を倒す。

 

 

彼なりに深く悩んで出したであろう結論である。

 

そのことを直葉に否定する権利はないし、する気もない。

 

 

だが、本当にそれで良いのだろうかという疑問が湧く。

 

彼の翼を取り戻す手段はある筈なのだ。

 

バーストリンカーのアバターはそれぞれ違っていても、平等というスタンスを取っているという言葉を信じるのなら、≪奪う≫力を相殺するための≪戻す≫力があっても良い筈だ。

 

ただ、手段はあってもそれを実行することができないのも事実。

 

まずその≪戻す≫力を持っているバーストリンカーと出会い、力を借りるということをしたあとに能美と接触しなければならない。

 

そんな雲を掴むような可能性にたどり着けるのはほぼ不可能だ。

 

 

ハルユキもそのことを考えたから翼を犠牲に彼を倒すということを考えたのだろう。

 

 

 

「………?」

 

 

そこまで考えたところで直葉のニューロリンカーに通知が届く。

ダイブコールだ。

 

竹刀を壁に立てかけてタオルで汗を拭き取った後、習慣からかその場に正座をする。

 

 

ダイブコールは仮想空間内で行う通話のようなもので、会話中は≪完全ダイブ≫状態になる。

 

別に立ったまま電話に出ても良いが、その場合全身から力が抜けることで地面に倒れてしまうというとんでもない事態になってしまうので、椅子に座ったりなど楽な姿勢を取るのが普通である。

 

その相手の名前を見た直葉は一度深呼吸をしたあと。

 

 

「≪ダイレクト・リンク≫」

 

 

応答のためのコマンドを紡ぎ、≪完全ダイブ≫の感覚に身を任せた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

VR空間用のアバターの姿になった直葉は彼女の所有しているサーバー空間に降り立ち、同じように降りてくる相手を見つめた。

 

その視線の先に映ったのはピンク色の丸い豚のアバター。

 

シルバー・クロウこと有田春雪であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうしたの?ダイブコールなんて…。別に用事があるならテキストメッセージでもボイスコールでもよかったのと思うんだけど…」

 

 

 

ハルユキからの突然のダイブコールに、直葉は内心驚いていた。

 

ネガ・ネビュラスのことの会議だったり日常会話などで話したりはするが、ハルユキ自身からこのような連絡を受けたことはなかったからだ。

 

連絡などがあってもせいぜいテキストメッセージくらい。

 

ダイブコール自体、事前にアポを取るためにテキストメッセージを送ったり、ボイスコールをするだけで要件は伝えられるのでそこまで使われることはなく、そもそもお互いが≪完全ダイブ≫で行うので、相手が即ダイブできる環境にいなければあまり意味はなかったりする。

 

ともあれ教室で彼女に話しかけようとしただけでも声を裏返してしまった彼が、ダイブコールをしてきたのだ。

 

 

驚かない方が無理があるというのは彼に失礼であろうが、事実直葉は驚いていたのだ。

 

 

「ええと…その、どうしても伝えなきゃいけないことがあったというか…」

 

 

直葉の言葉にハルユキはそう言った後、真面目な表情になり。

 

「チユが、ライム・ベルが能美側についた」

 

 

「……えっ?」

 

 

驚いた声を出した直葉にハルユキは言葉を続ける。

 

今日の5時間目の時にタクムが能美にデュエルを挑んだこと。

 

その時に乗じてバトルロワイヤルモードでハルユキも能美に挑んだこと。

 

あと少しで能美を倒せそうなところでライム・ベルがダスク・テイカ―のことを治療し、ハルユキ達が負けてしまったこと。

 

 

 

「それでチユに話にいったらアイツ、能美の方に付くって言ったんだ…。これからは≪ネガ・ネビュラス≫と不干渉でいこうって。確かに能美と組めばポイントを手に入れる効率は高いけど、そんなのあのチユが考えられるわけない。能美に脅されてるんだよ。もしくはあいつが自分から能美のとこに行ったっていうか…言い方は悪いけど裏切ったとか」

 

そして対戦の後にチユリと話し、彼女が能美と手を組んだということを聞き終えた直葉は。

 

 

 

「…私は二人より付き合いは短いし、絶対こうだって言えないけど…チユは二人を裏切ってないと思うよ」

 

 

率直に、自分なりに倉嶋千百合という人物を見てきた上でその言葉を言った。

 

「だって三人は小さい頃からの幼馴染でしょ?二人がバーストリンカーだって言った時だって何だかんだで分かってくれてたし……」

 

「まあ、そうだけど…。じゃあやっぱり能美に脅されているって考えるのが妥当か」

 

 

二人でううむ、と唸った後、ハルユキが口を開く。

 

「とにかく、オレの翼にチユの回復能力を持っている能美は多分急速的に力をつける筈だ。今度標的にされるのは黒雪姫先輩と…」

 

「おに…。き、キリトさんだね。キリトさんはどうかわからないけど黒雪姫先輩がチユのことを知ったら…」

 

「間違いなく、能美ごと斬るだろうなぁ…敵対する相手には容赦ないだろうし」

 

 

苦笑いしながらそう言ったハルユキは。

 

「そんなことにならないためにも、先輩たちが帰ってくるまであと四日。タクとも話したけどそれまでに能美を倒してチユを救いたいんだ。だから桐ヶ谷さん」

 

「うん、私も戦う。迷ってたけど、今の話で吹っ切れたよ。……あの時、早く返事返せてたら良かったね」

 

「い、いやいや!オレも唐突すぎたし、桐ヶ谷さんが迷うのも当然だって。…それで、能美のことなんだけど、マッチングリストに出ないとそもそも戦えないし、その件は俺が何とかして知らべる。で、桐ヶ谷さんにはある力をタクと手に入れてほしいんだ。じゃないと、アイツに倒される」

 

「ある力?」

 

首を傾げる直葉の言葉にハルユキはコクリと頷くと。

 

 

「アイツを倒すには≪心意システム≫っていう、心と意思の力で具現化する加速世界最強の力が必要なんだ。アレの前にはどんな必殺技も無意味で、≪心意≫を使えなきゃ、アイツとまともに戦うこともできない」

 

 

加速世界に存在する力の存在を直葉に話した。

 

 

 

 

 

 

 

「≪心意システム≫…そんなのが存在するなんて知らなかったよ」

 

「やっぱ秘匿されてるんだな…。とにかく、明日赤の王にアポを取って二人に≪心意≫の使い方を教えてもらおうと思ってる。だから放課後すぐに練馬に行こうと思うんだけど…部活とか、桐ヶ谷さん大丈夫?タクは休むって言ってくれたんだけど…」

 

 

「あー…うん、多分大丈夫かな」

 

どことなく直葉の歯切れが悪くなってしまうのは放課後にハルユキとタクムとどこかに出かけるところを見られてしまった場合、ありもしない噂が立ちそうだと考えてしまったからである。

 

普通の人なら大丈夫かもしれないが、友人の夏美と日和に見られた場合弄られるのが目に見えている。

 

とはいえ、この現状をどうにかしなければならないのでバレたら面倒だと思いながらも頷くのだった。

 

 

年頃の女子の情報網と好奇心は恐ろしいのである。

 

 

「?…じゃあまた明日、学校で」

 

「うん、また明日ね」

 

 

ハルユキの言葉にそう返した直葉は≪ダイブコール≫を終えて現実に戻る。

 

 

 

 

 

 

 

 

「…くしゅっ!」

 

 

その瞬間体に襲い掛かる冷気に思わずくしゃみをする。

 

春とはいえ夜の剣道場の中である。汗を拭いたとはいえ寒いものは寒い。

 

 

「うう…お風呂入ろうお風呂……」

 

 

体を摩りながらペタペタと駆け足で風呂場への最短ルートを通る直葉。

 

明日は大変なことになりそうだから風呂からあがったら早く寝ようと考える。

 

 

「お兄ちゃん、私頑張ってみるよ」

 

 

沖縄にいる兄にそう呼びかけ、直葉はもう一度くしゃみをしながら風呂場へ向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

二〇四七年四月十七日

 

 

「んじゃあ、心意についてはこれくらいだな。わかったか?」

 

 

放課後、練馬区に辿り着いた直葉達は赤の王≪スカーレット・レイン≫である上月由仁子に連絡を取り、彼女から≪心意システム≫について教えてもらうことに成功。

その際に待ち合わせ場所に指定されたケーキショップのケーキはとても美味しかったので、帰りに買って帰ろうと直葉は密かに考えたりしていた。

 

それはともかく、店のプライベートルームの中で≪無制限中立フィールド≫へとダイブした直葉たちは現在その身をデュエルアバターに変えてスカーレット・レインの話を聞いていたのだった。

 

心意というのは決して万能ではない。

そして心意を扱うためには自身の≪心の傷≫に向き合わなければならないということを教えられた直葉とタクムは、心意の修行を開始するために気を引き締めていた。

 

 

「さて、クロウとリーファはどうする?あたしは今からハカセと心意の修行をするんだが…」

 

「「は?」」

 

しかし、続いて放たれた言葉に直葉とハルユキは思わず間の抜けた声を出していた。

 

「何だよその顔。クロウはさっきの光る剣見せてもらったし、リーファはディザスター討伐の時にレディオのやろうにやってたじゃねえか。こう、バッサリと」

 

その反応に困った声を出したのは二コである。

リーファに向かって剣を振るジェスチャーをしながら話すのを聞くと、直葉の頭にある言葉がよぎる。

 

 

 

『心意で攻撃してきたなら…こちらも心意技で応えるまで…!≪妖精≫リーフ・フェアリー…この腕の借りは必ず返しますからね!!』

 

 

 

 

「……あ、そういえば、イエロー・レディオがなんか言ってたような…」

 

眉を顰めながら「むむむ」と唸り呟くリーファに、ニコははぁ、とため息をつきながらリーファに近づく。

 

「あー…お前あれか、無意識というか火事場の馬鹿力というか…そんなんだな?そんなんだったんだな!?くそ、そんなんで心意だされたらたまったもんじゃねえよっ!!」

 

ぐわんぐわんとリーファを揺すりながら何故か投げやりっぽく話すニコ。

先ほどの話を聞いたかぎり、心意を手に入れるには自身の≪心の傷≫と向き合わなければならない。

ニコも苦労したのだろう、彼女の気持ちはよくわかる。

 

 

「…じゃあ、リーファも心意使えるんだよね?ここで見せてよ」

 

 

何はともあれ彼女の心意は気になるので、ハルユキはリーファにそう言う。

 

彼女は「う、うん」と戸惑ったような声を出すと、一歩下がって目を閉じた。

 

 

彼女が使える心意はどのようなものなのだろうか。

 

シルバー・クロウは光る剣の≪射程距離拡張≫と、ゲイルスラスターのリチャージを成功させた≪移動能力拡張≫を使うことができる。

 

見た感じリーファもシルバー・クロウと似たような姿をしているし、同じような感じだろうか?

 

いや、もしかしたらその体を強化させる≪装甲強度拡張≫だったり、≪攻撃能力拡張≫かもじれない。

体を強化させるって、どうするのだろうか?

 

≪ヒューマン・アバター≫である彼女の体は人間っぽいし、あのまま体が硬くなったりしたら台無しになりそうな気がする。色々な意味で。

 

 

 

ハルユキがそう思考しながらリーファを見るが、彼女の体には一向に変化が現れない。

 

心意技を使うときに現れる独特の光も見えないし、一体どういうことなのだろうか?

 

 

リーファの方も首を傾げながら目を開く。

 

その顔は心意が発動できないことによる驚きよりも、どうやって発動すればいいかわからなく戸惑っているといったような表情だ。

 

 

「どうした?」

 

「ええと…何だろう、上手くできないっていうか…」

 

ニコに声をかけられ、困ったように答えるリーファ。

そのを聞いたニコは少し考えた後に頷いた。

 

「イメージが安定しないと心意の発動率も落ちるしな…。無我夢中で使ったっていう事例もないわけじゃねえし…わかった。リーファ、お前もこっちで心意の修行だ。んで、クロウは…」

 

「あ、ええと…僕はダスク・テイカーがマッチングリストに出ない理由を調べようかなーって…」

 

「それも問題だな…。あ、そういや最近似たようなこと聞いた気がするな…まあ、噂程度だけど…クロウ、一旦ログアウトしろ。あたしよりその噂に関して知ってる奴に話つけとくから」

 

「ほ、本当!?ありがとうニコ!なにからなにまで!!」

 

「ふん、こっちとしても見過ごせないから情報提供って奴だっての。早く行けって言いたいんだが…」

 

こちらの感謝に照れくさそうに言ったニコは一度言葉を切る。

そのあと首を傾げるハルユキに向かって指を向けると。

 

 

「さっきの光る剣に名前付けとけ。名前を付けることで心意のイメージを固めて発動速度を速めるためにもな。お前、戦闘中に三秒も集中してたらその間にやられるぞ?」

 

「え、あ…うん」

 

真剣な声でそう言われたため思わず曖昧な返事を返してしまう。

 

その瞬間、ニコの周りから不機嫌オーラが垣間見えた気がしたハルユキは慌てて名前を考える。

 

光のように輝く手刀。

先ほどニコはイメージしやすいように名前を付けろと言った。

 

ハルユキがあの光の剣を思い浮かべる時は自分の手は剣と思い浮かべる。

 

そういえば、キリトが使っている剣もビームサーベルみたいな感じだ。

 

ハルユキの脳内で色んな名前が浮かんでは消える。

 

幾億のパターンから考え出し、ハルユキはこれだっ!と考えた名前を口にした。

 

「じ、じゃあ光線剣(レーザーソード)で!!!」

 

 

「…だせえけど、あたしが使うもんじゃねえしまあ良いか」

 

 

………どうやらハルユキの感性はニコにはいまいちだったようだ。

 

 

 

「と、とにかく色々とありがとうニコ!タク、リーファ!二人とも頑張って!!」

 

「ああ、ハルも気を付けて」

 

「無茶はしないようにね!」

 

二人の返答にサムズアップを返したハルユキはそのまま練馬区役所のポータルに向かって走り出した。

 

 

 

 

そんな彼を見送ったニコは二人の方を向く。

 

 

「それじゃあ始めるぞ。ビシバシいくから覚悟しとけ!!」

 

「「はいっ!!」」

 

 

 

心意習得への修業が、今始まったのだった―――。

 

 

 

 

 

 

 

それと同じくして沖縄の≪サバニ≫という喫茶店

黒雪姫に連れてこられた俺の前に二人の少女が座っていた。

 

二人とも警戒した目で…特に隣の快活気味の少女は俺のことを明らかに威嚇している。

 

突然呼び出されたと思ったらこんなことになるのは誰も予想はしていない。

というかこの子達は誰だ?

まさか黒雪姫の付き人か何かなのか?

 

こいつ…沖縄にも手を伸ばしていたのか…

 

「…おい、何か今失礼なこと考えなかったか?」

 

眉を顰めながら不機嫌そうに声をかける侵略者(黒雪姫)に「何でもない」と返し。

 

 

「で、何なんだこの状況。説明してくれ…」

 

 

俺―――桐ヶ谷和人は事情を知っているであろう黒雪姫に問いかけたのだった。

 

 

 

 




心意の修行開始です

でもこれからは沖縄編です。キリト君です。

改定前のをいくつか手直しするだろうしまた時間がかかるかと…




ではでは、また次回!
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