銀翼の鴉と黒の剣士   作:春華

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お久しぶりです…

前回からおよそ四ヶ月ほどですね、お待たせしました

某型月のソシャゲにはまってしまいました
早く…早く新しい鯖を…願わくばアルターエゴたちを…

SAOの新作ゲームも発表されましたね
ロストソングまだ買ってないんだよなー…気になる






第二十七話:攻撃の正体

「……は…?」

 

「おお良かった!通じた!」

 

思わず動きを止めた俺を見た目の前の女性アバターは大きく溜め息をつくと、自身に戦う意思はないとでも言うようにサッと両手をあげる。

 

 

……さっきまで攻撃してきた癖に俺が近づいてきたら降参するって都合よくないか?

 

 

「な、なんやその目…わ、わかったって。外す、外すからその剣早くしまってぇ」

 

 

尚も剣を持っている俺に彼女は頭の帽子を外すと腕に抱え込む。

あれ外れるのかと考えながらも、向こうが武器を収めた以上、俺もそれに従うしかない。

剣を鞘に入れた俺に彼女は安堵の溜め息をつく。

 

 

「……で?ここで何してるんだ?」

 

「何してるもなにも、こうして無制限中立フィールドにダイブしてるだけ。…まあ、ちょっと面倒なことになってるけど…」

 

俺の問いかけにやや歯切れが悪そうに答える目の前のアバター。

ひょっとして、彼女が現在黒雪姫達が調査している問題なのだろうか?

 

一瞬そう考えるがその可能性はないと否定する。

瑠花達とその師匠とやらの三人でも手に終えない問題を目の前の彼女が起こしているのは考えにくいと思う。

 

「兄ちゃんは何でこんなとこにおるん?」

 

「え、ああ…」

 

考え事をしていたからか、不意に聞かれた質問に答えてしまう。流石にネガ・ネビュラスやブラック・ロータスのことは話さなかったが、修学旅行中に沖縄のバーストリンカーと遭遇し、助っ人とやらを頼まれていることを話すと彼女は、ほほうと頷いた。

 

「大体はわかったけど…初対面の相手にそんなリアルに繋がること話しちゃって大丈夫なん?」

 

「げ……」

 

 

指摘されて気づいたが、良く考えればそうだと思わず顔をしかめる。修学旅行だけでちょっと調べればこの時期にここに来ている学校を絞ることができるのだ。

 

これは不味いと目の前の相手を見るが、そんな俺を見てか彼女はなんと笑いを堪えていた。

 

「アカン…おもしろ…っ。ヒューマンアバターってホンマ人間らしい反応するんやな…おーおー、リアルリアル」

 

そう言いながら俺の頬をつついたり摘まんだりしている彼女にどんな反応を返せば良いのかわからず固まっていると。

 

「ええわ、今のは聞かなかったことにしとく。結構笑えたし」

 

「わ…悪い…助かる」

 

ひとしきり触って満足したのか先程の失態を聞かなかったことにしてくれた。

口約束なためいまいち信用にかけるが、リアルに繋がる情報という弱味を握られてしまった俺からしたら、ありがたい言葉だ。

 

 

「…まあ、さっきの話だけどウチは分からんなぁ」

 

「そうか…」

 

ごめんなと手を合わせる彼女に慌てて大丈夫だと答える。

 

…そうなるとそろそろ戻った方が良いかもしれないな。

 

そう思い彼女に別れの言葉を言いかけた時。

 

 

「なっ…」

 

 

ちょうど目の前を黒いビームのようなものが通りすぎた。

 

「…あー…まだ向かって来る?……これは呑まれ過ぎてる感じで間違いないなぁ…」

 

「え…?」

 

先程のビームによる爆発で後半部分は聞き取れなかったが、目の前のアバターがうんざりしたように呟いたのを聞いた。

思わず聞き返すと、彼女はんー…と少し考えてから。

 

「いやな、さっき少し面倒なことになってるって言ったと思うんだけど…さっきからしつこく攻撃されてるんよ。あのアバターに」

 

あそこ、と彼女が指差した方向を見ると、こちらに腕をつきだして立っているアバターが見えた。

 

しかしその姿はどこか異様だ。

身体中を黒いモヤのようなものが包み込み、どす黒い何かが伝わってくる。

 

 

「話も通じなくてなぁ…止めろって言ってるのに攻撃してくるんよ。もう獣みたいに。なんかヤバイのやってるんじゃないかとウチは勝手に思ってるね」

 

彼女の言葉を聞きながらそのアバターを観察する。

まるで何かに憑かれたようにも見えるが、ここはあくまでもVR空間だ。

幽霊にとり憑かれるなんてあり得ないだろう。

 

 

 

「おい!いきなり何するんだ!!」

 

 

出会い頭の遭遇戦や不意打ちによる攻撃はこの無制限中立フィールドでは極々当たり前のことだが、思わず言葉に出してしまう。

しかし相手は俺の言葉に反応する様子もなく、こちらに手を向けると、先程と同じ黒いビームを撃ち出してきた。

中々の早さではあるが、十分に対応できる速度だ。

背中の剣を抜き放ち、必殺技の準備を整える。

《赤の王》のような《強化外装》が見当たらない以上、あのビームは必殺技と考えた方が良いだろう。

 

必殺技には必殺技。

非実体系ならミサイルのような誘爆は発生しない。

ALOにて相手の魔法をソードスキルで斬ったように、剣を水平に構えると、ライトブルーの光が剣を包み込む。

 

 

「《ホリゾンターー》」

 

「触れたらあかん!」

 

 

発動するためのボイスコマンドを口にしようとした瞬間、横から短く、そして焦ったような声が聞こえた。

その声が聞こえた瞬間、咄嗟に必殺技を止めようとするが、既に体はシステムアシストによって動き出してしまっていた。

 

 

ライトエフェクトに包まれた剣はそのまま黒いビームと衝突し、その攻撃を弾かなかった(・・・・・・)

それどころか必殺技のエフェクトに包まれた刃を何の抵抗もなく突き進み、真っ直ぐ俺に向かって飛んでくるではないか。

 

 

「くぁ……っ!」

 

俺が発動してしまったのは片手剣水平斬りの《ホリゾンタル》だ。

《バーチカル》や《スラント》のように大きく踏み込んで攻撃する技ではないので、踏み込んだ足を無理矢理動かすことによる転倒によってスキルを無理矢理キャンセルさせるのは難しい。

 

しかし、例え本来の武器とは性能が違ったとしても、腐ってもこのアバターの装備武器である剣が、必殺技同士のぶつかり合いになったとして一瞬でも抵抗もなく破壊されるのはおかしい。

それができるとしたら、この攻撃はとんでもない威力なのだろうとしか考えつかない。

 

そんな攻撃を受けてしまえば俺のHPは跡形もなく吹き飛ばされてしまうだろう。

 

 

 

攻撃への恐怖を噛み殺しながら、俺は全意思を込めてシステムアシストに抗って足を動かそうとした。

 

 

「ごめんな!ちょっと我慢して!」

 

 

しかしその瞬間、そんな声と共に足元で爆発が起きた。

爆風によって体が吹き飛ばされ、痛みが体を襲うが、耐えられない程ではない。

 

呻き声をあげながら起き上がると、声の主ーー先程まで話していた女性アバターが俺に駆け寄ってきた。

 

おそらく彼女が俺の足元に攻撃をし、その爆風で俺を吹き飛ばすことによって助けてくれたのだろう。

 

 

「ごめんな兄ちゃん!ちょっと荒っぽい助け方になった!」

 

「いや、助かったよ。あのままだったら避けきれなかったと思う」

 

 

お礼を言いながら右手の薄い水色の刀身の剣を見ると、刃の先からおよそ半分ほどが綺麗に消失していた。

 

「…リズに何て言おうか……」

 

 

苦笑しながら小さく呟くが、現実は変わらない。

 

恐らくあのアバターを倒さない限り、黒雪姫達との合流は難しそうだ。

無視することは簡単だろうが、こんな相手を彼女達のいるところに連れていけば何が起きるかわからない。

 

剣をストレージに戻し、もう一本の黒い刀身の剣を抜き放った俺は奴のいる方向を睨み付けたのだった。

 

 

 

 

*

 

 

 

場所は移動し、現実世界の練馬区に位置する無制限中立フィールド。

そこに三人のバーストリンカーがいた。

 

 

その中の二人は地面に膝をつき、呼吸を整えている。

そして残った一人。

三人の中で一際小さいアバター、赤の王スカーレット・レインは呼吸を整えている二人の様子を見て一つ頷くと声をかけた。

 

 

「うし、一旦休憩挟むぞ。お前らとっととポータルから現実に戻れ」

 

 

驚きの声をあげる二人を尻目に、ニコはゆっくりとポータルのある方向に歩き出した。

 

「ちょ、ちょっと待ってください赤の王!!」

 

 

それを呼び止めたのは右手にパイルバンカーを装着した大型のアバター、シアン・パイルであった。

 

「休憩なんて必要ありません!そんなことしている時間があるのなら、心意の特訓を…!」

 

「そ、そうだよ…私たちに休んでる余裕なんて…!」

 

 

自分達を信じて一人で能美の秘密を探り始めたハルユキのためにも、彼らは少しでも早く心意をマスターしなければならない。

 

タクムは焦っていた。

 

ダスク・テイカーに手も足も出ずに負け、彼と戦うための力である心意の特訓を始めてから、どれくらい時間がたったのかわからない。

 

しかしどんなに試行錯誤を繰り返しても心意の兆候は現れなかった。

 

それは隣にいるリーフ・フェアリーも同様だ。

 

一度は使えた心意の使い方が分からず戸惑っていた彼女は、最初こそ集中していたが、発動しない心意に苛立ち、集中力が散漫しているのがわかる。

 

 

しかし、やめる訳にはいかない。

いざ能美との決戦の時に心意を使えませんでしたなんてことになっては元も子もないのだ。

 

 

そんな二人の意思が伝わったのか、スカーレット・レインはヤレヤレと肩を竦めると。

 

 

 

「言っただろ、休憩だ。黙ってアタシの言うこと聞け」

 

 

 

有無は言わせないというように再びそう言ったのだった。

その迫力に言葉を失う二人にニコは溜め息をつくと、言葉を続ける。

 

「お前らが急ぐ気持ちもわかる。でもな、こっちじゃそれなりの時間は経ったが現実ではたかが数分程度しか経ってねえんだ。ちょっとは休憩するのも特訓のうちなんだよ」

 

 

その事を言われて二人はあっ、と声をあげる。

無制限中立フィールドで立つ時間は現実世界と比べると遥かに長い。

レベル4になったばかりのバーストリンカーならまだしも、二人は一人前と言っても良いくらいこの世界で戦ってきた戦士だ。

 

それを忘れるくらいにまで疲弊していたことを気づかされた二人は互いに頷くと、ヨロヨロと立ち上がりポータルに向けて歩き出した。

 

 

 

 

 

 

 

「う…」

 

「桐ヶ谷さん?どうかした?」

 

「あ、い、いや…何でもないよ?何でも!……はぁ」

 

ポータルから出ると、ニコがケーキを頼んでいたようで二人の前にケーキが差し出される。

先程ダイブする前にケーキを食べていた二人であるが、脳は甘いものを所望していたようで苦もなく食べきった。

 

満足感を得ていた二人であったが、直葉が唐突に自分が食べたケーキの皿を見て苦悶の声をあげる。

紅茶を飲んでいたタクムは気になって声をかけるが、彼女はひきつった笑みを浮かべながら平気だと返し、溜め息をついた。

 

ハルユキならそれで誤魔化せたのかもしれないが、タクムは今の直葉の返しで何か気づいたようだ。

 

 

 

……女の子って、大変だなぁ

 

 

余計な言葉を口に出さないように気を付けながら、タクムは再び紅茶のカップに口をつけたのだった。




確か無制限中立フィールドじゃ相手の名前は見えなかった筈…

一応なにも知らない一般アバターが近づいてきたら自分も一般のアバターのフリをするよね
立ち位置的にも危ないし

敵はマゼンタとの戦闘の際に彼女の周りにいたような虚ろな感じのアバター達のような感じです

それとなく実験してたら暴走しちゃったって感じ

タクムの心意の修行の裏にはこんなこともあったのかなと…
ハルユキだって休憩いれながら永遠と山登りしてましたからね

女の子にカロリーは敵…ですよね


亀更新ですが、これからも頑張っていきたいと思います
では、また次回

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