一応ここまでが改訂前までの部分ですね
SAOの映画みてきました
いや良かった、興奮と鳥肌で泣きそうになりました
それでは、どうぞ
※話数番号降りました
「なっ……!?」
襲撃してきたバーストリンカーを撃退した俺が向かった先の光景は、予想を遥かに越えていた。
離れていたこちらにも届いていたことから推測はされていたが、大爆発の余韻により立ち込めている煙、そしてその爆発を起こしたであろう巨大エネミーが鎮座している。
爆発によって平地になったフィールドを見渡すと、先に戦っていたであろう黒雪姫達のアバターが力なく倒れているのが見えた。
慌てて駆け寄ろうとするが、ガッと何かに足がぶつかったことにより動きを止める。
良く見ると俺の足にぶつかったのは瓦礫ではなく、全身を赤色の装甲に身を包んだネジ型アバターだった。
全身傷だらけのことから黒雪姫達と共に戦っていたのだろう。
その両眼は不規則に点滅していて、痛みで体を動かせそうにないことがわかる。
「おい…!!しっかりしろ…!?」
「ちく…しょ……う、この俺様が…やられる…なんてな……」
屈んで声をかけると、掠れた声ではあるが返答が返ってくる。
意識を刈り取られた訳ではないようだが、彼の体は今も耐え難い痛みが襲っている筈だ。
速やかにポータルへ連れていかなければと考えた俺は彼を連れていこうとするが。
「ん?何、まだ鼠が残ってたわけ?」
こちらに向かって発せられた声で動きを止めることになった。
声の聞こえた方向を見ると、例の巨大エネミーの頭部に近い部分に黄色い装甲のデュエルアバターが立っているのを見つけた。
「…っ」
いや、見つかってしまったと言ったほうが正しいだろう。
デュエルアバターが頭上に誇っているのにも関わらず煩わしそうにする気配を見せない巨大エネミー。
そこから導き出される結論は一つしかない。
「ビーストテイマー…」
「面白い事を言うね!だけどニックはそんじゃそこらのテイムモンスターとは違うよ、こいつは神獣級さ!!」
そう言いながらサルファが手綱を引くと、巨竜はこちらに威嚇するように唸り声を上げる。
なるほどあの手綱でテイムしたのか。
絶命的な状況の中、俺は冷静に観察を続ける。
エネミーのテイム自体元々確率が低く設定されているのは大抵のゲームでは自然のことだ。
これがモンスターとほのぼの過ごすゲームならまだしも敵性NPCとしてモンスターが存在しているならその確率は著しく低い。
SAO、ALO内でもシリカのピナや(こちらはテイムにカウントされるのか)《あちらのリーファ》と共に友好を深めた邪神型エネミーのトンキーなどしか見たことがない。
前にシリカからそれとなく聞いた時はビーストテイマーと言えど専用のスキル、アイテムを使う等のバフを掛けても成功率はあまり高くないらしい。
そう考えるとあの手綱は強制的にエネミーをテイムできるかなりの高レアアイテムなのだろう。
普通のエネミーならまだしも神獣級だ。
そこら辺を加味すると恐らくあの手綱を破壊、除去するなりすればあのエネミーは手綱の呪縛から開放されるだろう。
ブレイン・バーストに出現するエネミーは大体がかなりの強さを誇っており、それなりの強さを持つバーストリンカー同士でパーティーを組み倒すやり方が推奨されている。
それが神獣級エネミーとなると、出会ったら逃げろなり余程のことがない限り戦うのは避けた方がいい。
SAOで言えばフロアボスに一人で挑むようなものだろうか。
とにかくそれくらい強く、危険なのだ。
「なんとか隙を見つけてアイツを引き剥がすしかないか」
方針を決めた俺は大きく円を描くように走り出す。
「なんだ?逃げられると思ってるのかよ!いけ!ニック!!」
高笑いと共に手綱を引かれたエネミーは、咆哮と共に俺を追いかけ始めた。
みるみる俺との距離が縮むが、俺の狙いは奴を黒雪姫達から引き離すことだ。
「くっ…!!」
当たったら一瞬で吹き飛ばされそうな突進をギリギリのところで回避した俺は、叩きつけるようにその足を斬る。
巨竜のHPゲージがほんの数ドット減ったのを確認すると、俺は何度か攻撃を続ける。
NPCは特定のアルゴリズムで動いているが、今エネミーを操作しているのは手綱を握っているバーストリンカーただ一人。
変に複雑な動きをしない分対処は楽なのだ。
「こいつ、ニックの足元に…!鬱陶しいんだよ!!」
たまらず相手は悪態を付きながら手綱を引き、エネミーがその指示によってその場で一回転するように尻尾を振り回す。
だがSAOで培ってきた経験から上手く回避した俺を見て相手は舌打ちをし、睨み付ける。
「やってくれるじゃないか…」
「その程度のモンスターの相手は馴れてるさ」
「こいつ……バカにして!!」
「キリト!」
と、ここでブラック・ロータスの声がかかる。
後ろにはコーラル・メロウとラグーン・ドルフィンの姿もある。
どうやら俺が奴らを引き付けている間に復帰できたようだ。
「ロータス、とりあえずポータルから脱出しよう。はっきり言って、勝ち目は薄い」
「ああ、二人とも、聞いての通りだ。奴らは私達が引きつけるから、クリキンを運んで……メロウ?」
黒雪姫の怪訝な声にコーラル・メロウを見ると、彼女は真っ直ぐに空を見上げている。
しかし、どこか様子がおかしい。アイレンズの色も異なっている。
その雰囲気はまるで、ダイブする前にXSBケーブルをもう一本追加してほしいと頼んだ時のようだ。
確か…先ほども真魚がこうなった時に琉花がぼそりと囁いてくれた。
カンダーリ、ユタの血が出たとかどうとか…
確か、沖縄のガイドブックをちらりと見た時に見た気がする。
ユタとは、民間のシャーマンを意味する言葉だとか…つまり、彼女が今このようになっているのは、その能力が何かを感じ取ったということなのか…?
「大丈夫だよ二人とも…今、来るから…」
そう、彼女が呟きながらそっと右手を空に伸ばした。
つられるようにその空を見上げると、一筋の光が見えた。
小さな桜色の輝きは徐々に大きくなっていき、気が付けば視界に花びらが舞っているのが見える。
そして、その中心から、一人の女性型アバターが現れた。
淡い桜色のアバターはブラック・ロータスの前にゆっくりと降り立つと、微笑みながら口を開いた。
「姫、私…来たよ」
「なっ…!?」
「まさか……恵……なのか!?」
その聞き覚えのある声に俺は思わず声を上げる。
黒雪姫の言葉にその女性アバターがコクリと頷いたのを見て、俺は彼女がいつも黒雪姫のそばにいる少女、若宮恵であることを理解した。
しかし、梅郷中学校の三年生のバーストリンカーは俺と黒雪姫の筈だ。
マッチングリストにも表示されていないし、同じクラスになって日は浅いが恵も黒雪姫も互いを信頼しているのはわかっているつもりなので、もし彼女がバーストリンカーだとしたら、黒雪姫に打ち明けている筈だ。
そこまで考えたところで、俺は彼女の体がかすかに透けていることに気づいた。
それを見て、確証はないが彼女が昔バーストリンカーだったのではないかと考えた。
ブレイン・バーストを失った者はその記憶を失う…≪桐ヶ谷和人≫がそうだったように、それは変わらないことの筈だ。
それが、何らかの形でその記憶を思い出し、こうして限定的な形で現れた…?
「なんだよ…なんなんだよ!また妙な奴が出てくるし…これ以上僕の邪魔をするのは許さないよ!!」
その推測は、前方のサルファの怒りの声によって中断されることとなった。
彼は俺たちを憎悪を込めた瞳で睨みつけた後、両手をまっすぐに突き出した。
「全員燃え尽きちゃいなよ!≪チャコール・スモーク≫!!」
その言葉と共に、彼の体全体から黒い煙が出てきた。
「不味い…っ!奴は火薬を体から出すことができるんだ!逃げろ!エネミーのブレスで大爆発が起きる!!」
ブラック・ロータスが黒い煙の正体を叫ぶと、サルファ・ポッドはニヤリと笑い、さらに煙の量を多くする。
恐らく、ここら一帯を爆発させる気なのだろう。
≪スピニングシールド≫で火薬の煙を吹き飛ばそうとしても、そんなのをあざ笑うかのような爆発が俺たちを襲うだろう。
どうすれば…と考えたとき、柔らかい声が響く。
「大丈夫だよ、姫。桐ヶ谷君。私に任せて」
そう言いながら俺たちの前に足を踏み出した恵は、左手に握った杖を高々と上げた。
杖についている宝石が輝き、その光がアバターを包んでいく。
「≪パラダイム・レボリューション≫」
そう、彼女が言った瞬間、宝石から輝く光が天にまで届き、光は環状に広がりながらカーテンのように広がっていく。
この光景はどこかで見たことがある。
「変遷……か?」
「違う…強制変遷だ……まだ、変遷の時間にはなっていない……なんて…技なんだ…」
俺の呟いた言葉に、黒雪姫は掠れた声でそう返す。
≪風化≫ステージの曇天が、青い空に変化していくのを見ていると、巨竜の上のサルファが驚いた声を上げる。
「な、なんだよ、くそっ何が起きてるんだ…うわっ!?」
苛立ちを隠せない様子で彼が呟いた瞬間、彼のいる地面が消えた。
「な、がぼっ!?げほっ!み、水!?」
いや、彼のいる地面だけではない。
俺たちがいる地面も、一面真っ青な水面に変化したのだ。
慌ててバランスを取るが、コートが水を吸ってドンドン重くなる。
辺りを見渡すと、黒雪姫や真魚と琉花も慌てた様子ではあるがバランスを上手く取っている。
「た、助けてくれぇ~!俺ちゃん、水中は、だm…ぐぼ、ぐぼぼぼぼぼ…………」
しかし、先程俺が躓いたアバター、クリキンは倒れていたため、必死に言いながらゆっくりと水面に沈んでいってしまった。
最後に親指を立てて沈んでいったのは前に見た昔のSF映画に似たような光景だったが、俺も何とかしないと彼と同じ目に遭う!!
「くそ…っ」
防御力は下がるがコートを解除して、下のアンダーシャツ姿に。
下は………こうも女子プレイヤーがいる中でズボンを解除する勇気はなかったので、解除しなかった。
別に…今すぐ溺れるわけでもないし…
すると、横からコーラル・メロウとラグーン・ドルフィンが近づいてきて、俺を支えてくれた。
「クロさん、私たちが支えますよぉ」
「師匠は重いけど、クロなら支えられるさー」
「あ、ああ…サンキュ」
沈んでいったクリキンに心の中で詫びると、この変遷を起こした恵が、水面に立っているのが見えた。
「姫…魔法の時間が終わっちゃうから、私は帰らないと…。姫は、あなたの道を進んでね。私も、もう後ろは振り向かないから…」
「恵…ああ、ありがとう」
黒雪姫の言葉に頷いた恵は、体を向けると俺を見る。
「桐ヶ谷君、姫のことをお願いね。この子、色々と無茶しちゃうから、誰かが見てあげなきゃ心配なの…。私にはできないから、私の代わりに…お願い」
「…ああ、わかったよ。若宮さん」
俺の言葉に彼女は安心したように頷くと、すぅ…っと空に上昇していく。
その時、あっ、と呟いた恵はもう一度俺の方を見て。
「桐ヶ谷君。姫のことをお願いねって言ったけど、別に付き合ってとかそういうのじゃないのよ?私、前にも言ったと思うけど、浮気はどうかと思うの。姫は有田君のことが好きなんだから、ね?」
「め、恵!?なな、何を言っているんだこんなところで!?」
突然の言葉にポカンとする俺の近くで、黒雪姫が騒いでいる。
そんな爆弾を落とした本人はというと、「それから、それから…あ、もう時間?え、もう少し言いたいこt……」と言いながら消えてしまった。
重い沈黙が俺たちの間に落ちる。
彼女は、バーストリンカーとしてここに来たとしても、彼女だったということか……と感慨深げに思ったところで、こほんと黒雪姫が咳払いをする。
「よし、ここが勝負の鍔際だ。まずは私が突っ込んでどうにか竜の相手をするからお前たちは…」
「ネエネエ、さっきの人が言ってたことって、クロとネエネエが付き合って…」
「少し、静かにしような?ドルフィン。もしかしたら奴を倒す前にお前の首が飛ぶやもしれんぞ?」
「は…はい……」
ラグーン・ドルフィンが冷やかすような声で茶々を入れようとした瞬間、黒雪姫が圧倒的な冷気を纏った微笑みを向けてきた。
ラグーン・ドルフィンに向けられている筈なのに、一緒にいる俺もコーラル・メロウも思わず竦みあがってしまうほどだ。
「…話を戻すぞ、私が奴に斬り込むから、お前たちはタゲを取られないように側面から攻撃を…」
「ネエネエ!大丈夫だよ!!」
「海の中なら、私たちにお任せですぅ!!」
黒雪姫の言葉に笑顔で答えた二人はその場で一回転すると、異口同音に叫ぶ。
「≪シェイプ・チェンジ≫!!≪マリン・モード≫!!」
二人の体が輝きに包まれると、ラグーン・ドルフィンの足は、イルカの尾ひれのように、コーラル・メロウの足は、人魚の尾びれのような姿に変化していた。
二人は完全な水中適応形態に変化すると、俺の手を引きながら一直線に泳ぎだした。
……俺の手?
「ちょ!?」
叫ぶ暇もなく、俺は二人に引っ張られるように巨竜のいる方向に突っ込んでいく。
ま、まさか、俺をあいつにぶつけるとかそんな作戦じゃないだろうな!?
俺そんなに頑丈じゃないぞ!!斬られたら死にますよ!?
「クロ!ワン達が注意を引くから!」
「あの
そう言うと二人は海面を叩いて大きくジャンプすると、せーの、の掛け声で俺を投げ飛ばした。
「うわああっ!?」
情けない声を上げながらも、俺は真っ直ぐに飛んでいく。
無意識のうちに背中から半透明の羽を出して姿勢を立て直した俺は、エクスキャリバーをサルファ・ポッド目がけて投げつける。
「うわっ!?」
剣はサルファ・ポッドの前に突き刺さり、思わず手綱を離した彼の前に一回転しながら着地する。
目の前に現れた俺に驚きながらも、攻撃をしようとしてくるあたり、流石とも思うが、俺は既に攻撃の準備を終えている。
左手に包まれたライトエフェクトと、システムアシストによって動く体の動きに合わせて意識的に体を動かすことによる威力のブースト。
「≪閃打≫ッ!!」
俺の拳はサルファ・ポッドの顔面を思いっきり捉え、彼を巨竜の背から叩き落した。
その先にはコーラル・メロウとラグーン・ドルフィンの二人組。
「今までの仕返しだ!
ラグーン・ドルフィンはそう言うと、水上から飛び上って元の姿に戻ると、両腕をグッと体の脇に引き絞った。
固く握られた拳が鮮やかなマリンブルーの光を放ち―――
「≪タイダル・ウェーブ≫!!」
その名前と共に両腕がカノン砲のように撃ち出された。
五秒間に続く拳のラッシュはサルファ・ポッドを捉え、凄まじい音と共に海に叩き落した。
落ちてくるラグーン・ドルフィンをコーラル・メロウが抱きかかえると、二人でこちらにVサインをしてくる。
こちらも笑って手を上げて返事をしようとした瞬間、地面が大きく揺れたので思わず膝を付く。
いや、地面じゃなくて、ここ巨竜の上だったじゃん!
手綱を握って制御しようと試みるが、如何せん足場が不安定なのでうまく近づけない。
どうしようかと考えたとき、コーラル・メロウがある方向を見て叫んだ。
「お姉さま!!竜の鼻皮を斬って!!」
その方向を見ると、丁度ブラック・ロータスが飛び上って、その剣を構えているところであった。
「≪デス・バイ・ピア―シング≫!!」
気合と共に撃ち出されたその剣は、竜の鼻帯を斬り裂き、帯が手綱ごと竜の口から落ちた。
ブラック・ロータスはそのまま華麗に俺の近くに着地すると、俺の剣と俺を器用に抱きかかえ、そのまま海へダイブした。
彼女にお礼を言いながら剣を鞘に納めて水面に上がると、丁度その巨竜が大人しくなったところだった。
先ほどの手綱があいつを支配していたようだが、黒雪姫がそれを斬り落としたので、自由になったようだ。
これで終わりか…と思った時、巨竜がある方向を睨んで、咆哮を上げた。
一瞬身構えてしまうが、奴が睨んでいるのは俺たちの誰でもない。
その方向に視線を向けると硫黄色のアバターが浮かび上がり、必死に泳いでいるところであった。
「に、ニック!来てくれたのか!?はっ!どうだ雑魚ども!!手綱なんかなくても、ニックには僕のことがわかるんだよ!今すぐお前らを切り刻んで……」
近づいている巨竜に気づいたサルファ・ポッドは、動きを止めて俺たちに叫んでいる。
しかし、その言葉は最後まで言うことができなかった。
巨竜が口を大きく開けると、サルファ・ポッドをあっさりと喰ったからだ。
自分を好き勝手使った元マスターに仕返しをした巨竜は、ゆっくりと俺たちを見た後、元々水竜だったのではないかというスピードで姿を消したのだった。
戦闘が終わったことによって緊張が解けたのか、コーラル・メロウとラグーン・ドルフィンはブラック・ロータスに抱き付いていた。
バーストリンカーを敵としての戦闘は初めてだったのだろう。小さくその体は震えている。
彼女たちのケアは黒雪姫に任せておいて、俺は……
(恐らく意味はないのだろうが)大きく深呼吸をした俺は海中に潜りだした。
暫く泳いでいると、先に沈んでいった赤いアバターが俺の目に入る。
彼も俺に気づいたのだろう。差し出された手を、俺はしっかりと掴み、彼を引き上げるために泳ぎだした。
「あんた……名前は…?」
「……キリトだ」
やはり、海中の中でも喋ることはできたようだ。
ALOの時みたいに魔法をかけなければ潜れないと思っていたが、そうではなかったらしい。
クリキンは俺の言葉に「そうか…」と呟くと、黙って引き上げられている。
あと少しで水面だ。
案の定鉄の塊である彼は重かったが、気合でここまで来た。
後少し……
そう思った時、俺の視界を虹色の光が包んだ。
そして、目の前には≪風化≫ステージの景色。
「………あんたに、太陽の光は見せてやれなかったよ…」
思わず呟くと、背中にポンと、彼の手が当てられた。
「いや、あんたはよくやってくれたよ………」
と、謎の漫才を終えた後、クリキンが黒雪姫にあるモノを手渡していた。
それは、先ほどの巨竜をテイムしていた強化外装≪幻想の手綱≫というものだった。
「沖縄エリアの北の方には空飛ぶ馬とかいるらしいぜ。捕まえて乗り回してみたらどうだ?」
使い道がないと苦笑いした黒雪姫にそう言ったクリキンは、コーラル・メロウとラグーン・ドルフィンを引き連れてポータルに向かって歩いていった。
彼らが消えたのを確認した黒雪姫は、俺の方を向くと。
「キリト、今から私はサルファ・ポッドに尋問をするつもりなんだが…どうする?」
「情報を聞き出すのか…?ほどほどにしてくれよ?」
俺の言葉に黒雪姫はふむ、と頷いた。
……トラウマ残らなきゃいいけど。
心のなかで相手に合掌しながら俺たちは時間が経つのを待った。
ということで、残ったサルファ・ポッドからは何としても情報を聞こうとしたのだが、彼は案外あっさりと話してくれた。
彼が言う≪組織≫に関しては口を割らなかったが、彼がどのようにして東京から遠隔ダイブしてきたのかはわかったところで、自動切断セーフティの時間が近いこともあり、情報収集はここまでとなったのだった。
「ネエネエ―――ッ!クロ―――ッ!!またウチナーに来てね―――――!!」
「お元気でぇ――――!!」
リゾートホテルの正門で手を振り続けている真魚と琉花は、せーの、と声を合わせると。
「「
と言ってこれまた一層大きく手を振っていた。
その後ろの方でベンチに座っている高校生らしき青年が、こちらにサムズアップをしてきたので、彼がクリキンのリアルか…と漠然と思いながらも、周りの友人から沖縄であんな可愛い子と知り合うなんてどういうことだと責められながら、俺はバスに乗っていたのだった。
怒涛の質問攻めに遭いながらも、俺はちらりと黒雪姫と一緒に座っている若宮恵を見る。
あのあと、メールにて彼女のニューロリンカーにはやはりブレイン・バーストは存在していなかったことを教えてもらった。
なら、彼女が俺たちを助けてくれたのはなんだったのか…
その答えは、わからないままだ。
それとも、黒雪姫を助けたいと恵が心のそこから強く思い、それが昔に削除されたブレイン・バーストの残留データ的なものに反応して、あの世界へ彼女を呼び戻したというのだろうか……
「……なんてな」
わからないことは考えても仕方ない。
本人に聞いても、彼女は忘れているのできっとわからないだろう。
友人たちの質問に答えながら、俺たちを乗せたバスは、次の目的地へ進んでいったのだった―――――。
オーディナルスケールでの出来事を経験させた設定にするかは悩みどころです
最初の方にニューロリンカー付けたときに滅茶苦茶驚いてますからねうちのキリの字は
必要に応じて出てくるかもしれませんね
それではまた次回