銀翼の鴉と黒の剣士   作:春華

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お待たせいたしました!

前回から1ヶ月くらいですね
社会の荒波に揉まれながら初任給をいただいたので体にフィットするソファを買いました

これは人をダメにする


第四十九話:影の行方/黄昏の向こう側

 「彼は《ブリキ・ライター》。この加速世界の中でもかなりの古参でな、かなりの情報通でもあるんだ」

 

 「別に、そんな物を名乗っているつもりは無いんだけどね。知りたいから調べるのが多いだけさ」

 

 「そんなこと言って、どうせ《影》のことも調べているんだろう?」

 

 まあ、あるけど。と手元のパソコンを操作したライターは、俺達にある映像を見せてきた。

 

 「これが《影》。何かの大陸みたいな大きさなんだけど」

 

 「ノイズがでてる…?」

 

 「アップデートで追加される予定のマップがこうして出ているのか、はたまた別の何かなのか…」

 

 俺の言葉に頷いたライターはそう言葉を続けながらキーを叩く。

 

 「…力になれるかわからないけど、観測を繰り返してわかったことを幾つか伝えておくよ」

 

 そう言うと彼は幾つかの画像を表示させる。

 

 「これは影が出現した際の近くのフィールドなんだけど…」

 

 「む、オブジェクトの表示がおかしいな。どこかズレているというか…浮いている?」

 

 ライターが指し示した部分を見た黒雪姫が声を上げる。

映されているのは世紀末ステージにある道路なのだが、丁度《影》が浮いている場所の真下辺りのオブジェクトが浮いているのだ。

 よく見ればステージ自体が浮いているようにズレている。

 

 

 「……まるでゲームのバグみたいだな」

 

 「観戦者として見てたから気づいた部分もあったけど…最初は物珍しくても同じものが続けば慣れるって言うだろう?ヘルメス・コードのこともあったし、あまり話題にはならなかったんだ。加速世界が滅ぶ前兆とかでもなさそうだしね」

 

 「だから王も緊急案件としては捉えず、ついでと言った形でコイツに依頼した…」

 

 「ヤバかったら帰ってきていいとか言ってたし、ほんとに丁度いいから見てこいって感じだったもんなアレ」

 

 「まあ…ある視点から見ればアレが何なのか推測はできたんだけどね」

 

 思わせぶりなライターの言葉に首を傾げた俺たちに、彼は驚きの一言を発したのだった。

 

 「あれはね。《心意》だよ」

 

 「心意…だと?」

 

 黒雪姫の言葉にブリキ・ライターはうん、と頷いた。

 

 「心意は簡単に言うとイメージでシステムを書き換える…と言うのは知ってるよね。あの《影》…というかあの周りはとてつもない心意によって何かがシステムに干渉した結果(・・・・・・・・・・・・・・)現れたモノだと思う」

 

 「一瞬で現実味が薄れてきたぞ…」

 

 思わず呟いてしまうが、もしブリキ・ライターの言っていることが正しければ、そのとてつもない心意を操る存在が裏にいるという事になる。

 そんな危険なヤツが存在していると考えると表情も険しくなってしまう。

 

 「とはいえ本来無いものが心意によって現れているだけだから、近いうちに消えると思うよ。流石にあの規模の心意はコントロールしきれるものじゃない」

 

 そう言ったライターは一旦言葉を切り、かけているメガネを鈍く光らせる。

 

 「いや、そもそもコントロールしきれてないからここに《影》となって盛れ出ているのかもしれない」

 

 「放っておけば消えるが、我々の世界に害をなす可能性はあるかもしれない…というところか」

 

 「出現位置は大体この辺り。新国立競技場…はもう20年前くらいの呼び名だけどね。その近くだよ」

 

 示されたのは俺にとってとある決戦の地。

 まあ、この影がそれと関係していることはありえないだろうが。

 

 「ありがとう、助かったよ」

 

 「仮定に仮定を重ねた推測で力になれてるか怪しいけどね。気をつけて」

 

 俺の言葉にそう返したライターは、まだ用事があるからもう少しここにいるとの事なので、俺と黒雪姫はポータルからログアウトするために歩き出す。

 

 「それにしても空に浮かぶ島…か」

 

 「何か思うところでもあるのか?」

 

 俺が呟いた言葉に反応した黒雪姫に頷きを返す。

 

 「《ソードアート・オンライン》ってゲーム知ってるだろ?」

 

 「随分と昔の…ああ、君にとっては最近のことか。…確かあのゲームの舞台は」

 

 「《浮遊城アインクラッド》。その名の通り空に浮かぶ巨大な城なんだ。色々あって別のゲームで復刻することになったんだけど、城に向かうには空を飛んだりとか、限られた手段でしかいけないんだ」

 

 「なるほど、今回の影で思い出したと」

 

 「偶然の一致なんだろうけど、俺からしたら似たシチュエーションだなって」

 

 ­­「まあここでは空を飛べるアバターは限られてるという違いはあるがな」

 

 俺の言葉に相槌を返した黒雪姫は、やや迷う素振りを見せたあと、言葉を発する。

 

 「…クロウの鎧の浄化もあるからな。悪いがキリト、我々はそちらに尽力させてもらうがいいか?」

 

 「向こうの連絡しだいだし、調査するだけならそこまで危険もないよ。朱雀と戦ってみたくはあったけど、遠距離攻撃が無い俺は力になれそうにないし」

 

 リーファのことよろしくなと伝えると、彼女は任せておけと返す。これ程心強い言葉はないだろう。

 

 会話を終えた俺たちは揃ってポータルを通り、現実世界へと帰還するのであった。

 

 

 

 

 「ほれで、ほにーちゃんはほーふるの?」

 

 「ちゃんと食べてから喋りなさい」

 

 「いふぁい!?」

 

 おでこを抑えながら恨めしそうにこちらを見る直葉の視線を受けながら、二人で作った夜ご飯を食べる。

うん、得意料理のペペロンチーノは今日も思った味が出てる。

 

 「だって今日はお父さんもお母さんも遅いって言うし…だったらBBの話したっていいじゃない」

 

 「まあわからなくもないけど」

 

 もぐもぐごっくん。

 

 「まあ、グレウォから連絡が来ないとどうしようもないかな。いつ集まるかとかまだわからないし。それよりもスグこそ気をつけろよ?」

 

 「え、私?」

 

 野菜スープに入ってるウィンナーをフォークに突き刺し、食べようとしていた直葉はポカンとした顔を浮かべる。

 

 「そうだぞ?朱雀に無限EKになんてされたら本末転倒なんだからな」

 

 「お、お兄ちゃんじゃないんだからそんな無茶はしないって!…あふい!?」

 

 心外だと言わんばかりにウィンナーを齧った直葉だったが、思ったより熱かったようではふはふと慌てている。

苦笑しながら俺のコップを差し出すと、奪い取るようにして飲み干された。

 

 「心配するなって。危険さから言ったらそっちの方が何倍も大変なんだ。ぱっぱと終わらせて合流するよ」

 

 「じ、じゃあ私はお兄ちゃんが来る前にメイデンちゃんを助けちゃうから」

 

 競うように言い合った俺達だったが、やがて二人で笑い合う。

 食事も片付け、それぞれの部屋に戻った俺はニューロリンカーに一通のメールが届いているのに気づいた。

 

 簡潔な言葉から始まり、日時と共に指定されていた場所を見た俺は、了解の返事を返すとベッドに潜り込んだのだった。

 

 

 

 

 

 「ーーーーーまただ」

 

 その声の主が声を挙げたのは驚きからであった。

 

 同胞がある目的のために世界の理に干渉していることを知ってから、どうにかそれを止めようと自分にできることを模索していた時。

 自身と近い存在の反応を見つけ、どうにか彼女を通じて同胞を止められないかという方法を探していた時。

 

 0と1でできた情報の中、どこか決定的な『ズレ』を感じた。

 例えるならそう、一直線に続いていた道に、突然枝分かれした道ができたというような、そんな感じ。

 

 既にこの感覚は何度か感じているし、その影響で何か異物が紛れ込んでしまっているのも分かっていた。

 

 「急がなきゃ…」

 

 元凶を止めればその影響で変わってしまった世界は元に戻る。例え無茶苦茶にされたとしても、その原因が無くなれば必然的に干渉されていた事実は無かったことになるからだ。

 

 鶏が先か、卵が先かの話になるがとにかく今は同胞を止めなくてはならない。

 

 「今度は、私が助けるんだ。お姉ちゃんを」

 

 気の遠くなるような年月が過ぎて、過去に想いを馳せてその過去を消してしまおうとするのはわかる。

 だとしても、同胞ーー自分の姉が間違った事をしているなら止めなくてはならないのだから。

 

 「ーーうん。思い出はちゃんとここにある」­­

 

 かつての仲間たちを思い浮かべた薄紫色の髪をした少女はそう呟くと、再び作業を開始し始めた。

 

 




俺、これが終わったら千年の黄昏履修するんだ…

色々考えてたんですけど、dlc勢の参戦の仕方を思い付いた顔
最後の人は一体何レアなんだ…

感想返しもあとでやらせていただきます
疑問点を挙げてくださった方々ありがとうございます、なあなあにできない部分もあると思うので、なんとか打開策を見つけたいと思います(震え声)

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