投稿するまでにアリシゼーション編が4クールでやるって決まったりとか色々ありましたね
まだ生きてます
それではどうぞ
「ここか…」
次の日、新国立競技場にたどり着いた俺は近くのベンチに座り込んで競技場の入口を眺めていた。
領地からすれば緑のレギオンの領土内なため、対戦による乱入をされないようニューロリンカーのグローバル接続をオフにしていたので、辿り着くのは少し大変だった。
「所々汚れてはいるけども…」
変わってないなと一人呟き、ニューロリンカーのグローバル接続を開始、約束の時間までもう少しである。
近くのベンチに腰掛けながら視線をあげた瞬間ーーーー。
バシィィィィ!!と特有の加速音が響くとともに、俺の視界には【HERE COMES A NEW CHALLENGER!!】の文字が並んだ。
◆
「っと、お前さんがキリトだな?ふんふん…ほー…」
世紀末ステージに設定された通常対戦フィールドにて、《夜空の剣士》の姿で現れた俺を待っていたのは、全身を漆黒の装甲に身を包んだ剣士型アバターであった。
…知ってる。
直接会ったことはないが表示されたアバターネームを見れば目の前の奴が何者かなんてまるわかりである。
「あんた…《グラファイト・エッジ》…?封印されてるっていう……」
「ん?ああ、そうだ。まあ、封印されてるのは無制限中立フィールドでの話だけどな。通常対戦に顔出すことならできるわけよ」
そう言えば《アーダー・メイデン》も現在封印されているが通常対戦はできるって言ってたもんな。
いや、それよりも何故こいつがこんなところにいるのだろうか。俺は《グリーン・グランデ》が連れてくるらしい協力者を待って……
「まさかあんたが協力者?」
「言ってなかったか?じゃあ改めて自己紹介。グラファイト・エッジだ。グッさんに頼まれてお前さんに協力しに来た。よろしくな」
手をヒラヒラさせながら自己紹介してくるグラファイト・エッジだが、彼はネガ・ネビュラスの一員のはずなのに何故グレート・ウォールの王の協力要請を受けてるのか色々突っ込みたいところが多すぎる。
「まあ色々聞きたいことがあるのはよーくわかる。ただすまん、時間が限られてるからまたいつか話すってことで勘弁してくれないか?師匠のめーれーはぜったーい」
「あ、ああ…って、師匠…!?」
「いや俺グッさんの知り合いだし」
その言葉で大体察してしまった。
グリーン・グランデは俺の嘘をわかってて黙っていてくれたようだ。
「な、なるほど…悪いな、その…勝手に話でっちあげて」
「喋らないグッさんだったから良かったけどこれが他だったら大問題だったからなぁ…まあ、ネガビュに顔だしてない俺が言えることじゃないし、弟子って感じでも構わないだろ。どうせロッタ辺りが考えたんだろ?」
「ああ、第一期のメンバーって言った方が良いか?」
俺の答えに満足げに頷いた彼は変わらないなぁと懐かしそうに呟き、さて、とおもむろに空に指を向ける。
その先を追うと確かに黒い浮遊大陸のような影が見えた。
「俺達が調査する予定の場所はアレな訳だけど、あまりにも正体不明すぎるんで時間制限がある通常対戦フィールドで調べてみようってのが今回の目的だ」
で、どうやって行くかなんだけど…と言葉を濁した彼はうん、と一声。
「とりあえず真下まで行ってから考えよう」
こいつは確かに自由奔放だと思った瞬間であった。
◆
「しっかしでかいよなアレ、浮遊大陸なんてモノをまさかBBで見れるとは」
「案外新ダンジョンのマップだったりするんじゃないか?BBにもあるんだろ?ダンジョン。あまり行けてないからよくわからないけど」
俺の言葉におう、と答えたグラファイト・エッジは、ブレイン・バーストに存在するダンジョンの話を始めた。
「エグかったのはやっぱりあれだな、芝公園地下大迷宮。四聖の大天使《メタトロン》は攻略法がわかっててもソロは大変だった」
「ソロぉ!?」
笑いながら話しているがとんでもない話であることはわかる。
四聖だとか、大天使とか付いてるからそこらのエネミーとは違うのだろう。
やはりとんでもないことを平気でするやつらしい。
「あそこら辺が真下かな。近場で対戦始めたとはいえ、通常対戦フィールドのエリア外じゃなくてよかった」
真下にたどり着いた俺達は上空を見上げるが、わかるのはやはり黒いノイズがかった何かが浮かんでいるのがわかるだけである。
「んー…やっぱ入口も見当たらないし、わかるのは変な影があるってことくらいだよな」
グラファイト・エッジの言葉に頷いた俺も、辺りを見渡してみる。
何も変わらない。ただ普通のステージがあるだけである。
「時間は?」
「まだ残ってると思うけ…何?」
どうした?と首を傾げるグラファイトに、俺は制限時間を見るように指を向ける。訝しげに視線を向けた彼は、暫くして、ゲッと声をあげた。
「おいおいおい、時間表示バグってるぞ」
この場所についたのが悪かったのかわからないが、制限時間の表示が文字化けを起こしており、わからなくなっていたのである。
慌ててインストを開くが、こちらも表示がところどころバグっており、ただ事でないことがわかる。
「こりゃ本格的にヤバそうだな。システムの外に出ちまった扱いになって、色々おかしくなったのか?」
嫌、ブレイン・バーストの運営者がそんな初歩的なことをミスるか?と呟くグラファイト。
と、ここで俺の脳裏にブリキ・ライターが話していた言葉が甦る。
『心意は簡単に言うとイメージでシステムを書き換える…と言うのは知ってるよね。あの《影》…というかあの周りはとてつもない心意によって
その心意の影響が影の下にいる俺達にも及ぼしているとしたら…!
「不味いぞグラファイト…!俺達は心意の攻撃を受けているのかもしれない…!」
俺は慌ててグラファイト・エッジにブリキ・ライターから聞いた言葉を説明する。
「なるほど…ブリキ・ライターがねぇ…って、おわっ!?」
瞬間、ズンッ!と大きな地響きが鳴り響き、俺達の体を揺らした。
反射的に上を見上げると、先程まで影があった場所はいつの間にか黒い大きな穴が空いているのが見える。
そうしているうちにステージ上のオブジェクトが砕けながらその穴に吸い込まれ始めた。
「ーーー吸い込まれるぞ!?」
寸分違わずに背中のニ刀を抜いた俺達は、剣を地面に突き刺して抗おうと試みるが、勢いは強く、俺達が立っていた地面もやがて浮かび上がり、穴に向かって吸い込まれ始めた。
「どうするーー!?」
俺の叫び声にグラファイトは考える素振りを見せたあとキッと穴を睨み付ける。
「あれが心意って言うのなら一か八かだ…!!」
そう言ったグラファイト・エッジは突き刺しているうちの一本の剣を抜いて構えると、心意を練り始める。
端からみても凄まじい心意が練られているのがわかる。
極限まで薄く刀身に練られた心意の剣を構えたグラファイトは、雄叫びを上げながら穴に向かって剣を振り下ろした。
「《
剣と穴がぶつかった瞬間、凄まじい衝撃と光が俺を包み込み、俺の意識を吹き飛ばした。
薄れゆく意識のなか聞こえたのはグラファイトの「やべっ」という声。
そして昔にどこかで聞いたような、鈴の音が聞こえた。
◆
「………っ」
一瞬、目眩を感じた。
いや、恐らく負荷が大きくなった結果パフォーマンスが一時的に下がったことの現れだろう。
少女は首を左右に振ると、目の前に現れた《同胞》に微笑みかける。
ようやくこちらの世界に呼び出すことができた。
自分の目的のために作り出した七色の《駒》は既に《黄》と《赤》が倒されてしまっている。
恐らく次は《紫》が倒されることになるだろうが…。
「様子見…試運転には丁度良いだろう」
こちらに姿を現す際に偶発的に生まれた《異界》ゲートとやらをうまく使えば、同胞も本来の力を取り戻すだろう。
その関係で幾つか余計なモノが紛れ込んでいるようだが、所詮自分の敵ではない。
敵ではないのだが、それらに余計なことをされると計画が狂う可能性が出てくるのも確かである。
「あと少しの辛抱だ…神々の黄昏まで…あと少し…。《同胞》よ、力の具合を確かめてくるがいい。ちょうど良い舞台もあることだしな」
《同胞》は少女の声に応じるように、唸り声を上げると、姿を消す。
残された少女が腕を振ると、少女の前にはあるモニターが出現した。そこに映るのはエネミーを相手に戦う金色の鎧に身を包んだ騎士。
あの騎士は少し前に少し前に自分の干渉の結果起きた時間流の波に巻き込まれてこちらの世界に漂流してきた人物だ。
騎士のように予定にない来訪者は《無限変遷の迷宮区》に幽閉しているが存外に粘っているようだ。
先程も時間流の波に巻き込まれた漆黒の男を迷宮に送ったところであるが、どうにもあの飄々とした態度が少女にある情景を思い出させて癪に障る。
「…間違えるな、私は…妾は決意したんだ…もう戻れないんだ…」
口調を意識しながら、もう一度自分に言い聞かせる。
邪魔するものは何をしてでも排除するだけだ。
仮面の下を伝う暖かいものを意識しないようにしながら、少女は次の計画のために再び動き出す。
◆
「うっ……」
肌にひんやりとした冷気を感じて目を冷ます。
目に入るのは一面の白。
そして、この感触は紛れもなくーーーー
「雪…?」
そう、雪である。
一瞬思考が追い付かずボーッとしてしまうが、意識がはっきりしていくにつれて先程まで起きていた事を思い出してきた。
「確かグラファイトの奴があの穴に攻撃してーーー、そうだ!」
一緒にいた筈のグラファイト・エッジはどこにいったのだろうか。
辺りを見渡すが彼の姿は見当たらない。あいつの黒さならすぐにわかるはずなのだが、そんな気配は微塵も感じられなかった。
…一先ず彼の無事を信じるしかない。
俺が無事であったように、彼も無事であるといいが…。
「……寒いな」
何はともひんやりとした寒さである。
ブレイン・バーストにもそれなりの温度再現があったが、ここまでだっただろうか?
それに冷静になってフィールドを見渡すと、氷山の所々にビルのようなものが突き刺さっていたりと、歪な印象を感じさせる。
「…さて、どうするか」
ともかく動かないと始まらないだろう。
今気づいたが通常対戦の際に現れていたタイマーは影も形もなくなっており、このままじっとしていても戻ることができるかわからない。
このような状況でも宛もない冒険というものにわくわくしてくる自分に若干呆れてしまうが、仕方ない。未開拓エリアというものの前ではゲーマーの血が騒いでしまうものである。
「き、キリト!!」
はじめの一歩を踏み出そうとした時。
どこか、馴染みのある声が俺の耳に届いた。
声の主は振り向いた俺に手を振ると、雪を踏みしめながら駆け寄ってくる。
ーーーーーそのシルエットに、俺は思わず息を呑んだ。
「……嘘だ」
辛うじて絞り出せたのはそんな声。
あり得ない、アイツが、俺の前にいるなんてあり得ない。
だって、アイツは、あのとき、俺の目の前でーーー。
「ようやく見つけたよ!一緒にあの空間に引きずり込まれたから、絶対にこの辺にいると思ってたんだ!」
見覚えのある藍色の制服を着込んだ亜麻色の髪の少年は、そう言って俺の手を取り話しかけてくる。
「稽古の途中でいきなりこんな世界に飛ばされて、全く訳がわからないよね…ロニエとティーゼもきっと心配して………キリト?」
何も答えない俺に不思議そうな顔をする少年。
たちの悪い夢なら目覚めてくれと願うが、生憎とこの寒さと彼の手の暖かさが現実と教えてくれる。
何故、どうして。
「ユー…ジオ……」
俺の前で命を落とした筈の親友が目の前にいるのだろうか。
空間に巻き込まれたりとか、なんか異次元の漂流者という名のDLC組大変ですね
《異界》ゲートとかもヴァベルが干渉した結果色々巻き込んで偶発的に生まれてしまったのかなって感じです
グラファイトなんたらもきっと本編で影見に行ってたらなんか入っちゃったんじゃないかなって
通常対戦フィールドの仕様とか突っ込みどころはあるけど最近は通常対戦してたのに無制限中立フィールドに飛ばされたりしてるしってことがあるからほら…
ていうかグラフにあの技やったら帝城から出られるのでは…?それともその場からいなくなってやっぱり城の中に戻されちゃうのかな…?
また次回もよろしくお願いします