やや期間があきました!
その間にSAOアニメも結構進みましたね
ないよ!剣ないよ!
更新はあるよ!!
それではどうぞ!
「ここが空都ラインか…」
「見たことない建築物が沢山あるねキリト」
辺りを見渡すユージオの言葉に頷きながら、俺も周囲に視線を向ける。
残念ながらユルドなどの通貨は0となっていたため、俺たちが持っているのは道中に倒した敵から手に入れた物のみである。
「とりあえず宿にでも…ユージオ?」
隣にいる相棒に声をかけるが、反応がない。
慌てて彼を探すと、隣にいた筈の彼は俺から離れて広場の一角にいる人だかりに紛れているのが見えた。
どうやらそこでは誰かが歌を歌っているようで、ユージオもそれに釣られたようだ。
慌てて彼のいるところに向かった俺の耳に、メロディーと共に歌声が届く。
『優しい言葉をあなたがくれた』
『寂しいときには、抱き締めてくれた』
「…この歌は……!」
聞いたことがある歌に俺は思わず耳を疑った。
「ちょ、ちょっとキリト?」
困惑した声をあげる相棒に謝りながら人混みを掻き分ける。
そしてその先で歌っていた人物は全身を黒い衣装で包んだ白髪の少女であった。
見間違えるはずがない、彼女は…。
「悠那…いや、YUNA?」
俺の声が聞こえたのか、少女は歌うのを止めると俺に視線を向ける。
「………んー?」
少女は俺を見て何か悩む表情を見せたと思ったら、踊るように俺の目の前まで近づいてきた。
少女は険しい顔をしたまま俺を見続けている為、暫く見つめあうことになってしまうのだが、何となく空気が息苦しい。
「え、ええと…」
「…んー……」
「ゆ…YUNAだろ…?ええと、ARアイド…」
「…そこから先は言っちゃダメだよ」
しどろもどろになりながら話を続けようと彼女のことを口に出そうとするが、ムッとした顔で指を突きつけられてしまったので、俺は続きを話すのを断念する。
ユナはよろしい、と頷くと周囲の観客に視線を移す。
「皆ごめんね、今日のライブはここまで!また来てねー!」
観客は突然の事に困惑した声をあげるが、基本彼女の言うことには逆らわないのかパラパラといなくなっていく。
…その中の数人から恨みを込めた視線を向けられた気がする。
少女はうんうん、と頷いた後、再び俺に視線を移し。
「それじゃあ色々お話しましょ、黒の剣士さん」
「な、なんでそれを…!」
俺の驚きの声に少女は悪戯を成功させた子供のようにペロリと下を出しながら微笑むのだった。
◆
「…つまり、君は記憶があるのか?」
「んー、まあそんなところかな?
場所を宿の一室に移した俺たちは、YUNA…ユナと会話していた。
ユージオはこの歌姫と俺が知り合いということに困惑した顔を見せていたが、後でちゃんと教えろよとだけ言うと、剣の稽古をするということで外に出ていった。
「でもその…君が俺の知っている君だったとしたら…」
「有り得ない?」
「…そうだ。君は既に…」
「覚えてるよ」
ユナはそういうと自分の胸に手を当てて噛み締めるように呟く。
「エーくんが、私を助けてくれたことも…」
そう言った彼女はさて、と明るく声をあげるとパチンと両手を合わせる。
「簡単に私のことを話すと、今の私は《白いユナ》と同じデジタルゴーストみたいなものなんだ」
「デジタルゴースト…」
「データのお化けなんてありえないだろうけど…。とにかく、私のデータの残滓はあの《新国立競技場》とか、色んなところに散らばってたんだ。他にもその…エイジのところとか、君のところとかにもね」
「そういうのが集まって君になったと…?」
「本当なら集まっただけじゃ何も起きなかったんだけど…この子がね」
「お、そいつは…」
そう言いながら彼女が出したのは、彼女とよくセットになっているマスコットである。
ライブ中に彼女の回りを健気に飛び回っているよくわかんない奴と俺は記憶していたが、熱心なファンであるシリカが教えてくれたような気がする。
確か名前は…。
「…おまんじゅう」
「アインだよ」
「あだっ」
間髪入れずに返ってくる言葉と衝撃。
アインがムスッと睨みながら浮遊しているのを見ると、どうやら頭突きされたようである。
「…で、そのアインがどうしたんだ?」
「その話をする前に、まず聞いて欲しい話があるの。…この世界のことで」
彼女はそう言うと、俺達がいるこのVR世界のことについて話し始めた。
ここは確かに《ALO》なのだが、《ペルソナ・ヴァベル》という謎の人物が突然現れ、《別の時間軸に存在するVR世界》とALOを繋げてしまったらしい。
その結果この世界は異質なモノになっているらしく、管理している《レクト》は対応に追われており、プレイヤーへの影響なども考えるとログインは禁止され、残っているプレイヤーは早急にログアウトの方向に進んでいるとか。
「べ、別世界のVR世界を繋げた…」
原理は何となく理解した。
時間をねじ曲げて世界と世界を繋げるということ自体SFの産物のようなものであり、その世界を繋げる際に何か異物が紛れ込むのはよくある…筈だ。
恐らく俺達が調査した《影》を作り出した人物…つまりは強力な《心意》によって《加速世界》に干渉した人物だろう。
「電車に例えるとわかりやすいかな。…ヴァベルが出発点からこの時代という終点に干渉した結果、たどり着く過程で多くの荷物も持ってきちゃったんだ。…その中に目の前にいるキリトや、私の残留データも含まれちゃってた」
「…どういうことだ?」
固い声で訪ねるとユナは指をピシッと一本立てる。
「私やキリトとかは本来積み込む予定に無かった荷物だったってこと。
それで、とユナは言葉を続ける。
「知ってるかもしれないけど、白いユナは《アインクラッド》の100層ボスであるAn Incarnate of the Radius[アン・インカーネイト・オブ・ザ・ラディウス]の言語化エンジンで動いてた…そこはわかるよね?」
「あ、ああ。だから俺達があの時倒したことによって、白いユナは消えた…んだよな?」
「そう。だから全部終わった後の私は残りカスとなってたんだけど、複数人にコピーされて自己崩壊しかけていた黒いユナの存在を繋ぎ止めていた」
…それもエーくん達に助けてもらったことで白いユナは完全消滅したわけなんだけど、と目を伏せた彼女は逆の手でも人指し指を立てる。
「ここで非科学的な話になるんだけど、平行世界が存在していると仮定して、そこの100層ボスが倒されていなかったら、その世界に存在している白いユナはどうなると思う?」
「そりゃ…白いユナは消えていない…んじゃないか?言語化エンジンは生きてる訳だし…」
正解と答えたユナは、ここで話が戻るんだけど、と両手で抱えたアインをズイッと俺に突き出す。
「どうやらこの子がデータになって散らばった私を繋ぎ合わせて、同一の言語化エンジンで動くキャラクターとして生成しちゃったみたいなの」
「…まて、話がわからなくなってきた」
「だから色々混ざってるって言ったの。今の私は歌を歌ってプレイヤーの心を癒すって役割のNPCって感じなんだ」
ALOが旧SAOのサーバーデータをコピーして作りだしたことは知る人によっては周知の事実である。
だからこそ、新生ALOにてサーバーにデータとして残っていたアインクラッドが攻略できるようになったからだ。
…先程、ユナはアインが何かをやらかしたと言っていた。
アインはアインクラッド100層ボスの言語化エンジンを利用して白いユナと共存する形で活動していた。
それらを開発した重村教授なら、ある程度のメンテ等もプログラムに任せていたと考えられるだろう。
つまりアインがユナを繋ぎ合わせたということは…。
「…そうか!ALOサーバー内に残っているアインクラッドのボスデータに反応して、自動的にプログラムの処理が行われたのか!」
「正解っ」
ウィンクと共にそう返したユナはアインの頬をむぎゅっと引っ張りながら言葉を続ける。
「だからさっきも私が君にあったとき、アインが君の中の残留データを勝手に読み取ったことで私のデータが更新されて、色々わかったんだ」
他人のデータが俺に残っていると言われて不安のようなものを感じるが、ただの数字である筈のデータが引き起こす奇跡とも言える現象を俺は何度も体験している。
消えてしまった筈のユージオがアンダーワールドでの決戦の時に手を貸してくれたこととか、それこそ自分の頭にナーヴギアによる高出力スキャンをかけて命を落とした筈の茅場に出会ったこととか、世の中には科学では証明できない事象が沢山存在しているのだ。
「私がこの世界の大体の事情を知ってるのはMHCPの権限としてログデータとかを参照することができるから」
「マジか…そうするとユイと殆ど同じじゃないか」
いや、自身が複製のようなものだとわかっていて且つ自我の崩壊を起こしていないとすると、菊岡や比嘉さん達が目指していたアンダーワールドの住人達に近いのかもしれない。
「ユイってええと…あのちっちゃい女の子だよね。オーディナル・スケールの戦いでアスナさんの記憶をスキャンした時に何かしてたのを見た…ってアインのログにあったよ」
何とも言えない表情で当時のことを思い返す俺たちだが、アインは我は存ぜぬと言った顔でプカプカと浮いている。言語化データで動いているだけでアイン自体は何もしてないので、何となくドローンとの間でユイと言う異質なデータの行き来があったことを観測しただけなのだろう。
「まあ手助けする人もいなかったから無駄な情報だったけど…キリトがいるなら助けてしんぜよう」
重村教授の娘である重村悠那は困っている人を助ける優しい少女と聞いていたが、元が黒いユナだからなのか、その言動は明るい小悪魔のようなものである。
「…よし、ならここを脱出する方法を教えてくれ」
「…それはちょっと難しいかも」
「…と言うと?」
「そもそもこの現状を引き起こしたのがペルソナ・ヴァベルだから…。ヴァベルが消えるか、直接話して聞いてみるしかないかもしれない…」
その言葉に俺は深いため息をつく。
ペルソナ・ヴァベルとやらが凄まじい実力者ということはわかっているので、倒すのは難しい。そして話が通じるかどうかも、そいつが首謀者であることから望みは薄いのだ。
「せめてユージオだけでもな…」
「ユージオって、一緒にいた男の子?」
ユナの言葉に俺は頷くと、彼だけでも元いた世界に戻さねばと考える。
ユージオの居場所は此処ではない。彼はアンダーワールドの住人であるからだ。
…例えここから先にどんな困難が待ち受けているとしても。
「…親友なんだ。アイツは」
これから先のことを知っているとしても、それでもユージオには戻ってもらわなければならない。
「戻ったよキリト。…話はついた?」
…だが。
「ああユージオ。…折角だから訓練の続きをやろう。今のうちにアインクラッド流の技に磨きをかけて、学院の皆を驚かせてやろうぜ」
例えそれが俺のエゴだとしても、今ここにいるユージオの助けになるのなら、彼が生きる術を教えてやりたいと、そう思うのだ。
◆
《空都ライン》
それは種族間PvP推奨のVRMMOゲーム《アルヴヘイム・オンライン》に存在する中立地帯の街の名前だ。
スプリガン、シルフ、ウンディーネ、ケットシー、サラマンダー、インプ、プーカ、レプラコーン、ノームの九種族
武器防具屋、アイテム屋から始まり、宿屋やカフェなどこの街には一通りのショップが揃っており、街からは巨大な塔ーーー《バベルの塔》がそびえ立っているのが見える。
そんな街のとある一角。
小さなステージには最近人だかりができていた。
そこで歌っているある少女の歌がとても素晴らしいとかなんとか。
「そういうわけで行ってみようよ」
「そういうわけってなんだよそれ…」
目の前に座る少女の言葉にそう答える少年は、最後の一つになったサンドイッチを口に運ぶ。
確かに気にはなる。気にはなるのだが、少年には気がかりなことが多いのである。
「…確かに皆と攻略を急がなきゃいけないのはわかるけど、少し休憩しなきゃ」
「どっかの副団長様も無茶な攻略で倒れたことあるしな」
「そ、それは今関係ないよ!」
軽口で返すと、もう!と口を膨らます少女にごめんごめんと笑いかける少年。
…確かに根を詰めすぎている感はある。
二人の“娘”は突如現れた《ペルソナ・ヴァベル》という人物によって、あの《バベルの塔》に閉じ込められており、二人とその仲間たちは娘を助ける為にこの仮想世界を走り回っているのだ。
先程もバベルの塔に潜入するために必要であろう鍵を持った戦士を倒し、こうして拠点であるラインに戻ってきて少しばかりの休息を取っているわけである。
「じゃあもう少し休んだら行くか…ってメッセージ?誰からだ?」
少年のメールボックスに届いたのは一通のメール。
生憎メールを送った相手の名前は表示されておらず、件名は『届いてるかー?』という変な文章。
本文も本文で、噴水で待っているから会いに来てくれという簡潔なものである。
「……」
すぐさま少女に声をかけて、メールを見せる。
少女にも心当たりは無いらしい。
「ちょっと行ってみるよ。歌姫は後でも良いかな?」
「気を付けてね?それじゃあ私はリズ達のところに行ってるから、終わったら連絡してね」
ーーーーキリトくん
スプリガンの少年ーーーーーー『キリト』は少女の言葉に頷くとメールの差出人のところに向かうために歩きだしたのだった。
あっちにもキリトいてこっちにもキリトいるとかこれもうわけわかんないですね
ユナ周りは無理矢理ですけど、そもそもゲームでユナのこと説明されてないし名目上MHCPの形を取ってるデジタルゴーストみたいな
ストレアに近い形ですかね
映画のその後の話は私が本を持ってないので調べた限りでそれとなく表現しました
何やらあの後にも一悶着あって、エイジがVR復帰してコピーによる自己の増殖に耐えられなくて消滅しかかってた黒ユナを助けたらしいです。熱い。読みたかった
げ、ゲーム世界線のALOの没データエリアにもアインクラッドあるから…(震え声)
最近寒くなったので皆さん体調には気を付けてください(ベン○ブロック飲みながら)
それではまた次回!