自粛期間中にアリシゼーションブレイディングを始めました
オリジナルストーリーでキャラクターの掘り下げしてくれるのは本当に面白いです
リーナ先輩とエルドリエのお話とかあってよかったです
それではどうぞ!
「ーー彼方に輝く星が導く場所へ」
ユナが歌い始めると同時に、ユージオは自身の視界の端に幾つかのアイコンが現れるのを見つけた。
その後から身体中を包んでいた倦怠感は無くなり、天命も徐々に回復し始めているのが確認できる。
驚きの表情でユナを見つめると、彼女は此方にウィンクを返しながら歌うのを続けている。
先程の強化よりも強力な効果を持つ歌を歌い始めたのだろう。
しかもそれを歌うには恐らくかなりの隙を見せることを承知した状態で。
「…僕を…信じてくれるの…?」
《青薔薇の剣》を握りしめる。
実力が伴わないからもう戦えないなんて、どうしてこうも弱気になっていたんだ。
頼りになる相棒がいないだけで何もできないのか?
「…違う」
心の中に浮かぶ言葉を、ユージオは小さく否定する。
確かに自由奔放なキリトの後を何となく付いていっている感じはした。それは自分の《天職》を全うし、自由になったことで何に頼れば良いのか少し考えてしまっていたからなのかもしれない。
だが、ルーリッドの洞窟からこの剣を持ってきたのも、ゴブリンに立ち向かおうとしたのも、アリスを助けるために整合騎士になろうとしたのも、全部自分の意思だ。
「…ステイ・クールだ……」
相棒から教わった言葉を呟いて、弱気になった自分に気合いを入れる。
整合騎士アリスに放った言葉は嘘ではない、仲間を守れる力が欲しくて騎士を目指し、今のユージオには守れる力があるのだ。
すぅ、と深呼吸をすれば落ち着いた頭が周囲の状況を改めて整理してくれる。
使える手段は把握している。
MPという概念を使用して放てる神聖術。
修剣学院にて学んだ剣術。
そして青薔薇の剣。
剣に視線を向けるとユージオは何とも言えない感覚を覚える。そう、知っていないことを知っているような…そんな感覚である。
その事について気になることは多いが、この状況を打破するためにはこの不可思議な現象を利用する手は無い。
「…やるしか、ない」
ふぅ、と息を吐いたユージオは剣を構えるとエネミーに意識を向ける。
やることは簡単だ。
相手の攻撃を凌ぎ、反撃する。
ライトエフェクトに包まれた相手の刀を睨み付けながら、ユージオも秘奥義の構えを取る。
「ーーーーシッ!!」
短く切った息と共にユージオの背中が見えない何かに叩かれたように動き出し、振るわれた剣は同時に放たれた相手の武器と衝突する。
《アインクラッド流》突進技《レイジスパイク》は相手の刀とぶつかり、激しい衝撃と共にお互いをノックバックさせる。
ここまでは今までアリスと共に行っていた戦いと同じだ。
しかしユージオは倒れそうになる体を左足を踏ん張ることで堪え、そのまま相手に右後背を見せるように剣を構える。
同時に青薔薇の剣を包む緋色の閃光。
「う……お、おお!!」
放たれた技は秘奥義ではあるが《アインクラッド流》ではない。
ノーランガルス修剣学院にてユージオが《ゴルゴロッソ・バルトー上級修練士》より手ほどきを受けた技ーーー《
大きく吠えるユージオの体が反時計回りに回転し、エネミーに向かって青薔薇の剣が振り切られる。
青薔薇の剣はそのままエネミーの腕に食い込むと、ズパァンッとその右腕を斬り飛ばした。
削られる《天命》と共に光の粒子となって消える右腕。
ユナのバフによりダメージにクリティカルが入り、エネミーの《部位欠損》を引き起こしたのだ。
「グオオオオオオオオッ!!」
腕を切られたからか、声を上げながら怯む骸骨侍を見たユージオは、ここを好機と捉えた。
秘奥義発動による硬直状態が解除される間に、システムコールの言葉の後に術句を紡ぐ。
知っているはずのない言葉がユージオの口から自然と発声され、その度に見覚えのない情景がユージオの頭に浮かぶ。
ーーーーこれは…青薔薇の剣の記憶ーーー?
つい思考に意識が向きそうになるが、左手に持ち変えた刀を振り下ろそうとしていることに気づいたユージオの口は、自然と術式を発動させるための言葉を放っていた。
「ーーーエンハンス・アーマメント!!!」
硬直が解除されたと同時に青薔薇の剣を地面に突き刺すユージオ。
直撃すればその頭を吹き飛ばすであろう速度で振るわれた刀は、彼に衝突する寸前でその動きを止める。
剣を突き刺したと同時に地面から現れた青い薔薇の蔓が相手の体を絡めとったのだ。
「咲けっ!!青薔薇!!!」
巻き付いた青薔薇の蔓は敵の天命をじわじわと削りながらその体を凍らせていく。
ユナもユージオが発動した攻撃に驚きながらも、支援スキルの発動を続ける。
しかし如何に青薔薇の蔓が動きを止めても、それでトドメをさせるわけではない。
武装支配術の持続時間に対して天命の減りが遅い、とユージオは心の中で歯噛みをする。
青薔薇の剣を通して発動する事象は飽く迄も相手の動きを止める物であり、決定的な攻撃にはならないのだ。
だから《ベルクーリ・シンセシス・ワン》との戦いでーーーーー
「ぐっーーーあっ!?」
突然頭を襲った痛みにユージオは思わず声をあげる。
この世界にーー正確にはキリトと合流してから知らない記憶がガンガンと頭を叩くのだ。
わからない、知らない。
ルーリッドの洞窟でゴブリンと戦った際に重傷を負った自分が、昔キリトと共に過ごしていたと突然そう思ったような、それに近い感覚。
それだけなら気のせいだと流せた。
なのに頭を叩くこの記憶はあまりにも鮮明で、自分が体験したかのように感じられるため、考えないようにするということが難しいのだ。
「ユージオ!?」
幸いユナの声のおかげでユージオの体は硬直から回復した。
しかしその一瞬はこの状況では致命的であった。
どこにそんな力があったのだろうか。雄叫びを上げながら青薔薇の拘束を解除したエネミーはユージオに向けて左腕の武器を叩き付けるように振り下ろす。
自分より大きな体から繰り出される一撃を受ければユージオとてひとたまりもないだろう。
相手の天命の減少は続いているが、それよりも相手の攻撃が早い。
ーーーーーだが。
「うーーーーおおおおおおおっ!!」
それがどうしたとユージオは敵に雄叫びを返し、地面から引き抜いた剣を構えた。その動きは驚くほど洗練されており、かつてない早さでユージオの体は秘奥義の発動シークエンスに入っていた。
放つ秘奥義は、《アインクラッド流》単発斬り《バーチカル》。
お互いの攻撃が近づくにつれて、ユージオの思考は加速を起こし、その動きがスローに見えてくる。
相手の攻撃はこちらの体を左肩から袈裟斬りにするだろう。ユージオの攻撃は届かない。
だがしかし、彼の耳はある音を捉えていた。
だからユージオの動きは止まらない。
「ーーーー悪い、遅くなった」
ギィンッ!と金属同士がぶつかる音と共に聞こえる相棒の声。
漆黒の髪をその目にとらえたユージオはにやりと口角を上げると秘奥義を発動させた。
右上から左下にかけて振り下ろされる上段斬り。
通常のバーチカルならここで攻撃が終了するが、ユージオの腕はまるでバネのように跳ね上がり返すように左下から右上に振り抜かれる。
《アインクラッド流》二連撃技、《バーチカル・アーク》は相手の体にVの字を刻み付け、その天命を吹き飛ばした。
それと同時にエネミーの体は不自然に硬直し、光の結晶となって砕け散ったのであった。
「……ふぅ」
極限の戦いを終えたからかドッと疲労感を感じるユージオだが、彼は一度大きく息をつくと、隣で剣を鞘に納めている相棒に視線を向ける。
「遅いぞ、どこ行ってたんだ」
「えっとーーー」
ユージオの非難する声を聞いた相手は言葉につまりながら頭の後ろをかく。
言葉を探しているのだろうか、やがて彼は観念したように苦笑いを浮かべ。
「ふ…」
「ふ?」
「普通に迷ってました…スミマセン…」
そう、言い出したのであった。
後から聞くと恐ろしくモンスターが多い場所に入ってしまったらしく(モンスターハウスと言うらしい)、その処理に手間取っていたとのことだ。
本当なのか?と問いかけると手にいれた素材と言うものをたくさん見せてくれたからどうやら本当らしい。
「そ、そのほら、これ!ここのダンジョンのマップ!!これが出口みたいなんだ!さっき見たときは変なロックがかかってたけど、フロアボスを倒したから解除されてるはずだ!」
慌てながらこの迷宮の地図を見せてくるキリトにユージオは思わず感心の声をあげるが、それを見ていたユナが一言。
「バラバラになってたわりにはそこそこ踏破してるね」
「そ、それは皆を探してたからだぞ!うん!」
「キリト…」
「ではそちらを目指す方針で行きましょうか」
「そういうことでーーうわぁっ!?」
いつの間にか自分の隣に立ち、話に加わっていたアリスにユージオは驚きの声をあげる。
キリトも突然現れた騎士に驚きを隠せない様子だ。
「それにしてもユージオ、助かりました。不覚を取って意識を失ってしまいましたが、あなたが倒してくれたんですね」
「そ、それは騎士アリス、あなたが敵の天命を削ってくださっていたからです。ユナも助けてくれましたし」
整合騎士に礼を言われることなど普通に暮らしていれば無いことに、ユージオは慌てながらもそう返す。
なんだかむず痒いものである。
「ゆ、ユージオさん?そちらの騎士は…」
ぎょっとした表情でアリスに視線を向けるキリトに対し、ユージオは頷きながら口を開ける。
「整合騎士の方だよキリト。僕を助けてくださったんだ」
「……」
「な、なにか…?」
「…いえ、ユージオと親しそうですが、あなたも同じ学院の者ですか?」
「あ、ああ…いや、はいっ。キリト上級修練士…でありますっ」
慌てて敬語に直すキリトにユージオは思わずため息をつく。それを聞いたアリスはふむ、と悩む仕草の後、その兜を外すと三人に視線を向けた。
「助けられた相手に顔を見せないのは不誠実だ。改めて名乗りましょう。私はアリス・シンセシス・サーティ。人界を守護する整合騎士の一人です」
「ーーーーーーアリス…」
透き通るような金髪をたなびかせ、吸い込まれるような青い瞳を持つ整合騎士の姿は、ユージオの記憶の中の幼馴染みと合致していたーーーーーーーー。
◆
「よーっす、キリト…であってるよな?」
《空都ライン》の噴水広場の前で話しかけてきた男は、一言で言うと
全身を漆黒の鎧で包み込んだ姿は自分達と違って機械的だという違いはあるが。
「えっと、そうだけど…なんで俺の名前を?」
「いやー会えてよかったよかった。こっちへ来たもんはいいんだが、変なダンジョンに入っちまうし、ようやく脱出できたからさてどう合流したもんかと…。メールは届いてたから来てくれたんだもんな?」
明らかにこちらを知っている様子で話しかけてくる男に『キリト』は困惑を隠せない。
「待ってくれ、まずあんたは誰なんだよ」
「おいおい冗談キツいぜ。師匠の名前を忘れたのかよ……って、いや待てよ…」
こちらの質問に答える様子もなく考え込んでしまう男性アバター。この自由奔放さはどこか親近感を覚えないでもないが、もしや…と思い付いた言葉を話してみる。
「もしかしてあんた…《グラファイト・エッジ》か?ロータスに技を教えたって言う…」
「いやそうなんだが…いや…うーん…こいつは…」
どこか歯切れの悪い返答をしながらキリトの服装を眺めるグラファイト。
自分の服装をジロジロと見られることはあまりないので、思わず後ずさりをしてしまう。
「うーん…お前さん、ドッペルゲンガーって信じるか?」
「は?いや…何のことだ?」
「…いや、今のは俺が悪かった。ちょい用事思い出したから行くわ!何かあったらメッセ飛ばしてくれ!」
「いやおい、待ってくれよ!……行っちまった…」
喋るだけ喋った黒装甲の男は手を挙げながら走り去ってしまった。
色々と聞きたいことがあったのだが、確かにあれは中々である。
「ドッペルゲンガー…《ホロウ》の俺になら会ったことはあるけど…」
SAOの《遺棄エリア》と呼ばれるところで戦った自身の影との戦いを思い出すも、何となく違う気がするのだ。
「…とりあえず次のオーブを探しに行かないと……」
ユイが囚われている《バベルの塔》が存在するエリアに向かうには、彼の仲間である別世界のVRMMO《ブレイン・バースト》の戦士であるバーストリンカー達の王と呼ばれる存在のゴーストデータを倒し、彼らが所持しているオーブと呼ばれるアイテムを集めなければならない。
道のりは険しい。
バベルの塔にたどり着いたとしても、そこを守護する巨大エネミーとの戦いや、紫の王を倒した後に現れた《クロム・ディザスター》と呼ばれる存在ともまた何れ戦うことになるだろう。
「ペルソナ・ヴァベル…」
この事件を起こした張本人とも、戦わなければならない。
だが負けるわけにはいかないのだ。
娘を助け出すために、『キリト』はフィールドに赴いたのであった。
アクセルソードでユージオが武装完全支配術を使える理由は仕様って感じですが、こちらでは『青薔薇の剣』に残っていた『ユージオ』の記憶が混ざった事で大規模レベルアップをしました
デメリットは知らない記憶が気になるくらいですかね
アリスも騎士道にのっとって兜をはずしてご挨拶です
グラフは一緒に吸い込まれたグラフです
アクセルソードのキリトを知り合いと勘違いしていますがどうやら違った様子でした
グラフはグラフで別の場所で迷っていて、ようやく脱出できました
相変わらずゆっくりの更新ですが、よろしくお願いいたします
それではまたじかい!