銀翼の鴉と黒の剣士   作:春華

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明けましておめでとうございます!!!

短めですがどうぞ!


第六十一話:バベルの塔

 「ここが《バベルの塔》……」

 

 激戦を潜り抜けたキリト達は、ついにバベルの塔の内部に乗り込むことに成功した。

 しかしその中はダンジョンと言うよりはどこか電子的な空間であり、明らかに異質な場所であることがわかる。

 周りの仲間達も戸惑いを隠しきれていないようだ。

 

 「…ねえキリト、ここって」

 

 「…ああ、俺やアリス、ユージオが閉じ込められた《無限変遷の迷宮区》に似ているな」

 

 ユージオの言葉に『キリト』は頷くと、先に続く道を睨む。

 この先にペルソナ・ヴァベルがいるのだろう。

 

 「突っ立っていても仕方ない。そうでしょ?黒の剣士サン」

 

 「…そうだな、皆、いこう!」

 

 そこに事態を解決する手段があるのならと、ユナと共にバベルの塔に乗り込んだエイジの言葉に頷いたキリトは、仲間達に声をかけると先へ進み始めた。

 

 

 

 バベルの塔の中を移動するには何やらポータルを通って上の階層へ向かわなくてはならず、景色もそこまで変化しないため迷いやすい印象を受ける。

 

 ダンジョンらしくモンスターもポップしているが、それもここまで辿り着いたプレイヤーの戦力ならそこまで苦戦することなく倒すことができていた。

 

 そしてある程度進むと、大きな広場のような場所に辿り着く。

 

 奥には今までと色が違うポータル。

 恐らくその先にペルソナ・ヴァベルがいるのだろう。

 しかしそこに向かうには目の前に立ちふさがる敵を倒さなければならない。

 

 「ルルルル…」

 

 敵ーークロム・ディザスターは深く唸り声をあげながらこちらを睨み付けていた。

 その鎧はハルユキ達との戦いの傷が癒えていないようで、未だに自動回復のエフェクトが包み込んでいるのがわかる。

 

 「何で…何でだよ!もういいじゃないか!!」

 

 ハルユキの悲痛な声が響くが、その返答はこちらに剣を突き付けることで返された。

 

 『しもべ、躊躇している時間はありません。やつを倒さねば先に進むことはできないのですから』

 

 メタトロンの言葉を聞いたハルユキは何か言おうと口を開くが、しかしそれが最善手だと考えるとコクリと頷いた。

 

 「ルオオオオオオオオ!!!」

 

 各々が武器を構えるなか、クロム・ディザスターが一際強く雄叫びをあげる。

 すると彼の体を圧倒的な負の心意が包み込み、そこから4つのオーラが飛び出した。

 

 驚きの表情を浮かべる一行の前で闇のオーラは一つの形を作り出す。

 それはまるでデュエルアバターの姿であり、それぞれが負の心意を体に纏わせながら姿を明らかにさせる。

 

 「あ、…あれって……」

 

 「嘘だ…」

 

 現れた相手の姿を見たハルユキはかつてないほどの驚きに包まれる。

 

 「クロム・ディザスター(・・・・・・・・・・)…初代から四代目までの…」

 

 「…マスターに見せてもらった動画データに四代目の姿があったけれど…」

 

 「どう見ても四代目クロム・ディザスターだなありゃあ」

 

 喘ぐように言葉を紡いだハルユキの言葉に、タクムの声

にニコが同意する。

 五体の災禍の鎧から放たれる圧倒的な情報圧に気圧される面々であるが、二代目ディザスターのドラゴン型の頭部が真っ赤に光りはじめたことに気づいたハルユキが声をあげる。

 

 「ぶ、ブレス攻撃です!!!に、逃げて…!!」

 

 しかし言葉とは裏腹にシルバー・クロウの体はゆっくりとしか動かない。

 ありえない光景に完全に不意をつかれた形になっていたのだ。

 このまま攻撃を受けてしまうのかとせめて防御姿勢を取ろうとするハルユキ達の前に金色の騎士が躍り出る。

 

 ドンッ!と地面を大きく踏みしめたアリスは鞘から《金木犀の剣》を抜き放つと同時に《武装完全支配術》の体勢に入る。

 

 「舞えーーーっ!花たち!!!!」

 

 エンハンス・アーマメントの言葉と共に振るわれた金木犀の剣の刀身は一度煌めく刃となり、そのまま菱形の盾として一行の前に展開される。

 ブレスは敷かれた盾とぶつかると激しい衝撃を与えながらも四散していく。

 しかしいつまでも防げるものではないだろう。

 

 その攻撃を放っている二代目ディザスターに狙いを定めるようにアリスの陰から飛び出すのはユージオと『キリト』だ。

 

 「エンハンスーーーー」

 

 「アーマメント!!!」

 

 《青薔薇の剣》と《夜空の剣》から放たれた一撃は二方向から隙だらけの二代目に向かっていくが、その前に四代目と三代目のクロム・ディザスターが立ちふさがる。

 

 四代目ディザスターはその大斧を叩きつけるように振り下ろすことで夜空の剣のエネルギーを力付くで粉砕し、三代目ディザスターは腰だめに構えた刀を居合いの要領で抜き放つと、青薔薇の剣から放たれた氷を当たり前のように斬り払った。

 

 「リーファちゃん!」

 

 「はいっ!アスナさん!」

 

 その間に細剣をワンドに持ち変えたアスナがリーファと共にアリスを中心にバリアを展開する。

 その結果ブレス攻撃はバリアにぶつかることになり、アリスにかかる負担は軽減されたのだった。

 

 「黒雪!」

 

 「…っ!ここまできたら倒すしかない!倒せない相手ではないはずだ!!」

 

 キリトの声にハッとした黒雪姫は頭を振るとバーストリンカー達に声をかける。

 

 「分身を出したからか、本体も疲弊しているのです!」

 

 謡の言葉にハルユキは4体の背後に立つ五代目ディザスターに視線を向ける。

 先程まで光っていた自己修復の光は淡く光るだけになり、唸り声も途切れ途切れとなっている。

 そこまでして何故ペルソナ・ヴァベルを守るのだろうか…?

 

 『しもべ!!』

 

 「ーーえ?うわっ!?」

 

 思考の渦に入りかけたハルユキをメタトロンの声が引き戻すが、目の前に現れた初代ディザスターであるクロム・ファルコンの姿にハルユキは思わず声をあげる。

 ファルコンはそのままの勢いでシルバー・クロウの腹部を蹴り飛ばす。そして体勢を崩したシルバー・クロウの体を掴むと、一つ前の階層に繋がるポータルに投げ飛ばした。

 

 「ハルユキくん!!」

 

 「ーー直ぐに戻ります!!」

 

 黒雪姫の言葉に、ハルユキは反射的にそう答えていた。

 直感のようなものが彼の脳裏をよぎったのだ。

 投げ飛ばされる勢いのまま前の階層に戻ったハルユキは背中の翼を動かすことで体勢を整え、地面に着地する。

 そして現れたファルコンを見据えると、ゆっくりと言葉を放つ。

 

 「ファルコン…クロム・ファルコンなんだろ?」

 

 ファルコンはハルユキの言葉に反応を返さず、ただ拳を構える。

 会話など必要ないとばかりに。

 

 「…そっちがその気なら受けて立つよ。話はーー」

 

 戦いのなかで。

 

 そう判断したハルユキは足を踏みしめると構えを取る。

 シルバー・クロウとして、クロム・ディザスターを終わらせた者として。

 

 

 「「ーーーーッ!!」」

 

 

 走り出しはほぼ同時。

 

 二人のメタルカラーの拳はお互いにぶつかりあい、大きな火花を散らしたのだった。

 

 




20人越えでタコ殴りは可哀想と思ったので分裂させました

リーファとアスナのバリアのところは二期後半のOPを意識してます

ゆっくり進めていきますので、これからもよろしくお願いいたします

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