「ユイ!No.96の仮想世界のモジュールからメッセージだよ!」
明るい声と共にメッセージを見せてきたストレアに返事をしながらペルソナ・ヴァベルーーユイは内容を確認する。
どうやら以前起きていた問題が解決され、そのお礼らしい。
仮想世界でも現実世界と同じように問題は起きる。
《仮想世界の母》として、解決に奔走する毎日だ。
「そういえばメタトロンが呼んでたよ。確かね…ふわふわあん?ってところにいるって!」
「
「やった!あそこのお茶菓子美味しいんだよね」
◆
「…呼んだのはユイだけだったのですが、まあ良いでしょう」
ヴァベル達が向かったのは旧東京タワーの頂上にある落ち着いた雰囲気のコテージだった。
そこはかつて彼女が生まれた《ブレイン・バースト》にて仲間が暮らしていたプレイヤーハウスであり、そのまま管理することになったと教えて貰ったことがある。
室内の家具などもメタトロンが丁寧に手入れをしているのだろう。所々に刻まれた傷も見えるが、耐久度などは減っている様子は見えない。
「それで用事とはなんですか?」
ヤッホーと手を振るストレアに一瞬眉をひそめたメタトロンはヴァベルの言葉に咳払いをしながら言葉を返す。
「んんっ、まあ…共に仮想世界を守っていく仲間として交流を深めようと思いまして」
そう言うがメタトロンとは千年近く一緒に過ごした仲だ。
交流をしていなかったわけでもないし、ストレアと同じようにヴァベルの中では彼女は大切な存在となっている。
気を使わせているのだろうなと彼女の言葉から察したヴァベルは素直にお礼を言うと、案内されたテーブルに着席する。
「…それで、その後はどうなのですか?」
「私が未来に戻ったことで歴史の上書きも特に発生しなかったみたいです。巻き込んでしまった人達も無事に元の時代に戻れたかと…」
“その後”とは言わずもかな自分が引き起こした事件全体のことである。
コアプログラム内部での戦いに勝利したこともあり、彼女自身に影響は無く、特に歴史も変わることも無かったので今まで通りといえば今まで通り。
変わったところといえば…自分の気持ちなどだろうか。
「そういえばストレアから聞きましたが、過去のしもべは《災禍の鎧》と
「うん、PoHをぎったんぎったんにしてたよ」
生憎自分は意識を失っていたのでその場を見ていないのだが、シルバー・クロウは大きな活躍をして皆の危機を救ったらしい。
流石はしもべですねと鼻高々に頷く姿は誇らしそうではあるが、すぐに曇る。
自分達からすれば彼らは過去の存在だ。
もう会うことはできないことを改めて突きつけられたのに気づいたのだろう。
どうにも空気が重くなってしまう。
「えっと…」
「わぁーーっ!?」
自分のことを心配していた友人を逆に心配する時はどういう対応をすれば良いのだろうかとヴァベルが困っていると、ストレアがガタンッ!と立ち上がった。
「ど、どうしたのですか突然…」
「ス、ストレア…?」
「わ…忘れてた…!!いや、今“届いた”?と、兎に角二人とも着いてきて!!」
嵐のように外に飛び出したストレアに顔を見合わせた二人は、彼女を追いかけないわけにもいかないため、共に家を出ることにした。
メタトロンが出してくれたお茶はちゃんと飲んだ。
◆
「まだ生きてる!良かった~」
このリンクのアドレスに飛んで!と言われ、アクセスした二人が見た景色は一面の湖と木々であった。
どこか見覚えがあると思ったが、ここはアインクラッド22層の景色だ。
しかし広大に見える世界は途中で闇のなかに途切れている。
まるで闇の中にこの世界だけ浮かんでいるようだ。
「ALO自体はとっくの昔にサービス終了になってたけどさ。ほら、アスナのお父さんってレクトの社長さんだったの覚えてる?」
「ええ、まあ…でもどうしてここが残ってるの?」
「んー、それを話すのはちょっと待っててほしいかな」
「勿体ぶらずに話しなさい」
「まあまあ」
メタトロンの言葉をのらりくらりとかわしながら先導するストレアの先に見えたのは見間違えることもない、彼女が家族と過ごしたログハウスだ。
「私ね、あのあと何回か行ってたんだ。過去に」
「「え!?」」
衝撃の告白に思わず口を揃えて驚きの声をあげた二人に構わず、彼女はログハウスの中に二人を招き入れる。
鍵は、開いていた。
メタトロンが手入れをしていた楓風庵とは違い、家の中はすっきりとしたものだった。
きっと長い年月で耐久力が尽き、消えてしまったのだろう。
しかしその部屋の中にポツンと、一つのオブジェクトが落ちていた。
ひし形のそれはどこにでもある記録装置だ。
「私、ちょっとお願いしてたの。ALOがサービス終了しちゃう時、どんな形でも良いからここだけは残してほしいって。そうしたらアスナがお父さんに掛け合ってみるって言ってくれて」
ストレアが記録装置のボタンを押すと、ブン…と鈍い音を立てながら起動した装置から光が溢れでる。
その光はやがて人のような形を取りはじめた。
『あー、あー、これで録音できてるのか?』
『バッチリ!』
「うそ…」
『久しぶり…でいいのかな、ユイ』
その声も、姿も、二度と見ることも聞くことも無かった筈で。
『ストレアに言われたの。未来のユイちゃんにメッセージを残せないかって』
『それで皆さんで集まったんです!ピナもいますよ!』
『キュルル!』
『未来にメッセージって改めて考えると恥ずかしいわね…』
『しかも千年残るんでしょ』
『まあまあ、リズさんもシノンさんもそんなこと言わずに!』
かつて共に生きた、自分の家族達の姿であった。
『未来の俺は可愛い嫁さん見つけてんだろうなぁ!』
『お前…ユイちゃんに残すメッセージがそれで良いのか…』
変わらないやり取りに思わず笑ってしまう。
彼ら、彼女らは思い思いの言葉を彼女に送ってくれた。
遠い記憶の彼方で、忘れかけてしまったこともあった。
「さっき過去の私から“届いた”んだ。無事に準備できたって」
メタトロンの分もあるんだよと、彼女に同じ記録装置を手渡したストレアは、にっこりと微笑んだ。
「折角過去に行けたんだもん!何か思い出に残るもの、残さないとね!!」
「こんな、こんなものを…スンッ…この私に内緒で…スンッ」
メタトロンは記録装置を受けとると、直ぐに後ろを向いてしまった。
きっと彼女の装置にも、バーストリンカー達からのメッセージが入っているのだろう。
「ストレア」
「んー?」
「ありがとう」
「ユイはお姉ちゃんだもん!妹として、お姉ちゃんが喜ぶことをするのは当然だよね!」
ヴァベルの言葉に笑顔で頷いたストレアは、彼女に抱きついた。
失ったものはあるけれど、残っているものもある。
家族のぬくもりを感じながら、ヴァベルは自分と共に行かないか?と声をかけてくれた彼に想いを馳せる。
あの時の言葉は、とても嬉しかったんです。
だから
だけど…
「…何だかんだ、結構長かったな」
「ホントだホント、まさかロッタに出くわすとは思わなかったし、あんな戦いするなんてな」
「これ、どう報告するんだ?」
「まあ何か凄いダンジョンがあって凄いボスと戦ってクリアしたとかで良いだろ。俺がグッさんにそう言っとくよ」
「良いのかそれで…ん?なんだこれ…」
「青いペンダント…?お前さん、アクセサリーなんか持ってたか?」
「いや、気がついたら持ってて…うわっ!?」
「急に光ったぞ!?」
ーーだけど、あなたが一人にならないように
「MHCP1-1000ーー
こんなサプライズくらいは、してもいいですよね
アクセルソードの話を見た時に、これヴァベルはヴァベルとして救われてはないんじゃないかな…って思ったんですよね
過去に戻って彼女のデータを元に復活しても、あくまでもユイなので、なんかできないかなーって考えたのが始まりでした(合ってるよな…?)
大変長い道のりでしたが、どうにかここまで辿り着けました
隠居してたアスナ父(ゲーム軸だと現役か?)のお陰でサービス終了したALOはログハウス周りだけ残してもらってました
どうだったとしても多少は融通効かせてあげられるでしょう
折角過去に行ったんだから思い出に残るものくらい残さないとってことでタイムカプセル的なのをしてみましたが、ここら辺はキャラが動いてくれました
ストレアならやりそう。やっとけ
というわけでこっちの世界にヴァベルが参戦しました
私“は”行けません
珍しく長文で語りましたが、当時一番やりたかったことが一先ず完結したので許してください
これからは災禍の鎧編に移っていきます
キリトはどのように巻き込まれるのか
そしてケーキ入刀とは何なのか
これからもよろしくお願いいたします