オルステッドコーポレーション一次面接が無かったら   作:まりん!!! in ICE

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3. パーティ結成

 北方大地を目指すことになった。

 

 北方大地へは、アスラ王国ドナーティ領から関所を目指し、鬱蒼とした森を進み、赤龍の上顎という渓谷を抜け、そこから更に旅路を進む必要がある。

 北方大地の入口とも言えるバシェラント公国、第二都市ローゼンバーグ。目下の目的地はそのあたりになるだろう。

 フィットア領難民キャンプから馬車を駆り、辿り着いたドナーティ領最北の街、関所の最寄りの宿場町で集めた情報だ。

 アスラ王国内では、パウロ達捜索隊の情報網が行き届いている。今更俺たちが情報を集めながら旅をする必要も無いので、宿場町までは最速で辿り着いた。

 その間、野営をすることもあれば、小さな村や町で宿泊することもあった。その間いつしか、ギレーヌやエリスとの朝の稽古が日課になっていた。尤も、俺が参加するのは基礎体力作りと素振りだけだ。打ち合いに関しては全くついて行けなくなっている。それでもギレーヌは、嬉しそうに笑っていた。

 

 「ルーデウスは魔術師だから、素振りなどもう辞めていると思っていた」

 「せっかく教わった型ですからね。素振りだけはこの三年も続けてましたよ。それ以上はどうも上達出来ませんでしたが」

 「そうか。……だが、見ない間に随分と逞しくなった」

 「そうでしょうか。旅の間はルイジェルドさんにおんぶに抱っこでしたから、俺自身が強くなれている実感は全くないんですがね」

 「自分ではそう思っていても、経験というものは少なからず人を成長させるものだ」

 

 ギレーヌの言葉は、何故か重く胸に響いた。自分としては成長は打ち止めと思っていたが、まだまだ伸び代はありそうだ。頑張ろう。

 

 ところでエリスに関しては、今まで俺も気づいていなかったところだが、目を見張るほど強くなっているのが分かった。ルイジェルドと旅をしていた頃は、二人ともレベルの高い訓練をしていることは分かっていたが、エリスに比べてルイジェルドの強さが圧倒的だったがゆえ、エリスの強さというのがよくわかっていなかった。だが今、ギレーヌとの訓練を見ていると、ルイジェルドとのそれと比べ、エリスがかなり互角な戦いを繰り広げているのが俺の目で見てもわかるようになった。まだまだ実力としてはギレーヌの方が高いようだが、エリスも引けを取っていない。生来のワガママで自由なリズムに加え、魔大陸で魔族に鍛えられた変則的な技構成が、時にギレーヌを圧倒する。

 確かにこの実力は、ルイジェルドが戦士と認めるのも頷ける。エリスは色々な意味で俺が守る対象であるのは変わらないが、もう守られるだけの存在では無いという事を薄々実感する。少しだけ、寂しさを覚える。

 

 そんな風に、ロアに居た頃のような訓練の日々を過ごしながら、ドナーティ領の最北の町へと辿り着いたのだった。

 

 前述の通り、北方大地へはこの町から関所を通り「龍の髭」と呼ばれる森を抜ける必要がある。この「龍の髭」がくせ者で、魔物が跋扈し、盗賊団の根城になっているらしい。その為、この町から北方大地へと荷物を運ぶ商人は、護衛の冒険者を雇って目的地を目指すのだ。今回俺たちは、アルフォンスのアドバイスの通り、その護衛を冒険者として担いつつ、北へと同行する算段だ。

 冒険者ギルドの掲示板を見れば、丁度良い依頼が幾つか見付かる。そのうちの一枚を受け付けのたわわな姉ちゃんに渡した。

 

 「北方大地への護衛の依頼の受注ですね。パーティ名は『デッドエンド』で宜しいですか?」

 「あっ……」

 

 俺の冒険者カードだけを見た受付嬢の問い掛けに、俺は一瞬、言葉を失った。今までと変わらずエリスが一緒だったから、パーティの事を失念していた。

 『デッドエンド』は、俺とエリス、そしてルイジェルドのパーティだ。名前をそのままに、ギレーヌを加入させたとしても不都合は無いが、それはルイジェルドに悪い気がしたし、何より俺が嫌だった。離別したとしても、次にいつ会えるか分からないとしても、三人の絆を大切にしたかった。

 

 「すみません、一度『デッドエンド』は解散して、この三人で別のパーティを組みます」

 「かしこまりました。解散と結成の手続きを致します」

 

 受付嬢が解散手続きをしている間に、俺はエリスとギレーヌに向き直った。

 

 「三人でパーティを組むことになりました。パーティ名はどうしましょうか?」

 「デッドエンドは解散するの?」

 「デッドエンドはルイジェルドさんあってこそのパーティですからね。いつかまた再会した時にでも再結成すればいいでしょう」

 「それもそうね! だったら、カッコイイ名前がいいわ! 強そうなの!」

 「あたしは何でもいい」

 

 強そうでカッコイイのか。エリスは相変わらずだな。しかしパーティ名か……。『デッドエンド』はスペルド族の汚名返上の作戦の一つとして付けた名前だったが、今回はそういうのは必要無いな。ゼニスやシルフィ発見の策として、向こうから見つけて貰う為に俺の名前を前面に出すというのも悪くないが……。それでカッコよくなるとは思えない。魔大陸で一瞬絡みがあった『スーパーブレイズ』みたいになるのは嫌だからな。せっかくなら三人の要素を取り入れた名前がいいだろう。うーん、剣士二人と魔術師一人。何気に難しいな。……そう言えば、冒険者として活動している中で、それぞれ二つ名が付いていたはずだ。

 エリスが『狂犬』。ギレーヌは『黒狼』。俺は……『飼い主』ってのはもうここで払拭したいな。ていうか今度のパーティも犬だらけじゃないか。ギレーヌはデドルディアなのに……。この際、二人はまとめて犬でいいか。

 

 「パーティ名はお決まりになりましたか?」

 「はい。『エビルドッグ』でお願いします」

 「かしこまりました。『エビルドッグ』ですね。パーティ結成の手続きと、依頼受注の手続きをさせて頂きます」

 

 『エビルドッグ』。犬二人と、魔術師(エビル)の俺という訳だ。『エビル』はシーローンでアイシャに偽名を名乗る時に一瞬候補に上がった名前から取ったものだ。自分で付けておいて何だが、俺としては若干背筋が痒くなる厨二っぽい名前で恥ずかしい。とは言え、エリスが嬉しそうにしていたのでこの世界においてはカッコイイ名前という部類に入るのだろう。

 

 無事パーティ結成と依頼の受注が済んだ。出発は三日後だ。ここからは約一ヶ月半の長い旅路になる。出発までは少し身体を休めたいと思ったのだが、うちの元気娘はそう思わなかった様だ。

 

 「せっかく時間があるなら、この森の魔物に体を慣らしておきたいわ!」

「それもそうだな。ルーデウス、森の浅い所で受けられる討伐依頼は無いのか」

 「長旅の前に少しゆっくりしませんか? ここまでも急いで来たので疲れもありますし……」

 「本番の護衛の依頼までに少しくらい手慣らししておかないと身体がなまるわ! ただでさえ、ここ最近魔物との戦闘が無かったんだもの!」

 「あたしも暫く実戦が無かったから少し感覚を取り戻したい。この依頼なんでどうだ、『町から一日の距離にターミネートボアが通常より多数のアサルトドッグを引き連れて出現』多数の敵との戦いなら、あたし達の連携を試すのにも丁度いい」

 

 おお、あのギレーヌがちゃんと文字を読めている……。俺が教えた事を忘れていなかったんだな。感動しつつ、呆れもする。脳筋二人を抑えることは難しそうだ。まあ、連携を本番前に試すというのは理に適っているし、良いのだが……。

 

 「ここから一日の距離だと、行って依頼をこなして戻ってきて、すぐまた出発になりますよ?」

 「ちょうど出発に間に合うなら、時間も無駄にならないしピッタリじゃない! その依頼を受けましょう!」

 

 頼むから休養日を計算に入れてくれないだろうか。そもそもこの二人に休むという概念が無いのだろうか。家庭教師をしていた頃は、七日に一度の休みにエリスも喜んでいたと思うのだが……。冒険者稼業に於いては休みも不要なのだろうか。ずっとこのままでは俺がもたないのでそのうち休みの概念も復活させたいが、久々の戦いに熱くなっている二人を抑えるのは、今日の所は無理そうだ。

 

 「……はぁ。分かりました。じゃあこの依頼を受けましょう。休み無しで活動するのは今回だけですからね」

 「やったあ!」

 

 大喜びのエリスは、掲示板から依頼書を破り取ると、自ら受付に向かっていくのであった。

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