TS厄ネタ血統チート転生者、古代文明の遺産の人型超兵器で無双する   作:六畳仙人(ハーメルン)

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仕切り直し

 

 

 

 フリッカとリンダ姫の乗る"フリングホルニ"と、皇太子シグムンド率いるムスペル帝国艦隊。

 

 その二つの陣営による睨み合いは、"フリングホルニ"が主砲の発射態勢に入り、ムスペル帝国側のアウルゲルミル公爵が鎧兵器"フェンリル"を投入したことで、いよいよ決着をつける戦いに移るかと思われた。

 

「……!敵艦の高エネルギー反応消失!新たに次元歪曲反応を確認!」

 

 だが、リンダ姫が戦略的撤退を決断。

 

 フリングホルニが次元跳躍移動(ビフレスト・ジャンプ)により戦場から離脱したことで戦いは突如決着することになった。

 

「逃げられた……か。おまけに、こちらの艦隊戦力の被害は甚大。攻略目標のケルムト基地も落としたとは言い難い」

 

 退いたのはリンダ姫の率いるミズガル王国側だ。

 

 しかし、ミズガル王国側は基地の人員と基地主要施設を回収し、今回は損害もなかった。

 

 一方、ムスペル帝国側は次元歪曲によるエネルギーの直撃を受けて艦隊に甚大な被害を受けていた。

 

 "グラズヘイム"と"ヴァーラスギャルヴ"の超超弩級戦艦二隻こそ無事だったものの多数の艦艇が損傷、航行不能状態に陥り進軍に暗い影を落とすことになった。

 

「仕切り直しだ。必ず態勢を立て直し貴様を確保してやるぞ、リンダ・ミズガル」

 

 シグムンドの口からも口惜しげな言葉が漏れ出る。

 

 被害状況は一目瞭然。ムスペル帝国側の実質的な敗北だった。

 

「全軍、一時後退!航行不能な艦艇はこの場で放棄し乗組員は残存艦艇に待避せよ」

 

 艦隊の被害状況に目をやったシグムンドは悔しさで唇を噛み締め、侵攻軍全軍に対して一度退くように命令を下すしかなかった。

 

 

 

「撤退か。一時的な激情に身を任せないのは流石皇太子殿下といったところか」

 

 シグムンドからの命令を受けて、鎧兵器"フェンリル"に乗ったアウルゲルミル公爵も自艦の"ヴァーラスギャルヴ"へと帰投する。

 

「……一度、陛下や他の諸侯達と話す必要がありそうだ。本国との通信の準備をしておけ。他の諸侯と陛下に報告したいことがある」

 

 去り際に、アウルゲルミル公爵は部下に対して本国との通信会談の準備をするよう命令した。

 

『かしこまりましたアウルゲルミル様』

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「すみません姫様……私に覚悟がなかったばかりに……」

 

 結局、私はスルトに乗れなかった。

 そのせいで、戦略的撤退を選ぶことになってしまった。

 

「いいんですよフリッカ。貴女のおかげで勝ち目のなかったムスペル帝国との戦争に勝ち目が生まれたのです。感謝こそすれ咎めることなどありません」

 

 姫様は優しい慰めの言葉をかけてくれた。

 でも、その言葉を聞くとやはり申し訳ない気持ちになる。

 

 皇太子とアウルゲルミル公爵。

 ムスペル帝国の要人二人を倒せる絶好の機会だった。

 

 その機会を私のせいで逃してしまったからだ。

 

「敵艦隊にかなりの打撃を与えることができたので、まだ時間の猶予もあります。今はまだ焦らなくて大丈夫ですよ」

 

「……ですが」

 

 確かに、敵艦隊にはかなりの大打撃を与えることができた。

 

 侵攻も一時中断せざるを得ない損害を与えることには成功したと思う。

 

 でも、私がスルトに乗っていれば間違いなく艦隊を壊滅させることができていた。

 

 あのヤバそうな鎧兵器フェンリルだって撃破できていたはずだ。

 

 そのまま勢いにのって戦争を終わらせることだって不可能じゃなかったと思っている。

 

 そう思うとどうしてもモヤモヤしてしまう。

 

「フリッカ」

 

 すると、姫様がそれならばと私にお願いをしてきた。

 

「……いつか、貴女に"スルト"に乗ってほしいと頼む日が来るかもしれません。その時はきっと、もう他に方法がないどうしようもない時でしょう」

 

 同時に、こちらに歩み寄ってきた姫様が私の手を握って言葉を続ける。

 

 手から姫様の高貴な温もりを感じた。

 深刻な話をしてなかったら確実に舞い上がっていたと思う。

 

「なので、その時が来たらどうかお願いしますね」

 

 手を握られながらそう言われて、なんだか勇気が湧いてきた。

 

 その時が来たら"スルト"に乗る覚悟が決まる気もした。

 

 そして、姫様のおかげで、私の中で渦巻いていたモヤモヤしていた感情を整理することもできた。

 

 悪く言えば問題の先送り。

 でも、ずっと引きずるよりは遥かにマシだ。

 

 次の機会——その時が来たら今度こそ覚悟を決めて乗れるようにしよう。

 

「……それに、"スルト"を持っていることを知られたら、ムスペル帝国以外の国からの介入だって避けられません。特にヴァン神国……かの国は古代アースガルズ文明に関することなら確実に介入してくるでしょう」

 

 すると、姫様も抱えていた悩みを打ち明けてくれた。

 

「……私も、実は少しだけ怖いんです。この国を守るために一体どれだけの血が流れる決断をしなければいけないのか。そう思うとまだ躊躇してしまう気がするのです」

 

 "()()()"()()()使()()()()()()()()()

 

 最悪ムスペル帝国を滅ぼしてしまえばいいからだ。

 

 ただ、そうなると今度はムスペル帝国以外の国とのことも考えないといけなくなる。

 

 そして、最悪の場合私は直接、姫様は間接的にミズガル王国を守るためにこの星の数多の命を奪う覚悟をしなければならなくなるだろう。

 

「だから、私にも少し時間をくださいフリッカ」

 

 私も姫様も互いに時間が必要だと感じていた。

 

 同じ苦悩を抱えていた。

 

 それでも、たぶん姫様は最後には心を押し殺して決断を下せると思う。

 

「わかりました。その時までには覚悟を決めておきます」

 

 だから、私も早く姫様と同じように心を押し殺して決断できるようにならないといけない。

 

 それがこの国と姫様を守るために一番必要なことだと思った。

 

「……ありがとうございますフリッカ。さて、それでは回収したケルムト基地の皆さんに会いに行きましょう」

 

 

 

 

「お久しゅうございます姫様」

 

 基地ごと回収したレギン隊長やケルムト基地の人達は元気そうだった。

 

「顔を上げてくださいレギン卿。母様の騎士だった貴方の御力をどうか私にお貸しください」

 

「お望みのままに!」

 

 姫様の前にレギン隊長が騎士のようにかしずいた。

 レギン隊長の姫様に対する振る舞いはとても様になっていた。

 そういえば、昔、元王妃直属の護衛騎士だったとか言っていた気がする。

 たぶん、姫様の母親——亡くなられた王妃様の騎士だったのだろう。

 

「それで、色々と説明してもらうぞフリッカ。一体何があった?」

 

 姫様への挨拶を済ませたレギン隊……元隊長が私に詳しい説明を求めてきた。

 

 一応私は姫様直属の騎士……ということになっている。起動権を誤魔化すために都合がいいからと姫様が任命してくれたからだ。

 

 という訳で、今の私は散々部隊でしごいてくれたレギン隊……元隊長より立場は上になったのだ。

 

 なので、これからは元隊長のことも顎で使える立場……のはずだ。

 

()()()()()で基地施設をそのままこの艦に取り込みました」

 

 とりあえず、姫様と一緒に考えた誤魔化しのシナリオをレギン……元隊長にも説明する。

 

 やっぱり隊長以外の呼び方はどうにも違和感がある。呼び捨てはやめておこう。

 

 全部姫様の御力だと言っておけば納得してくれるはずだ。

 

「この艦が……いや、艦の全長から考えて基地施設は艦内に収まらないはずだ」

 

「ご安心ください。()()()()()で起動した()()()()()()()であるこの艦"フリングホルニ"は、艦内空間を大幅に拡張しています。よって、実質五千メートル級の艦と同等の積載量を持っているのです!」

 

「なるほどな……流石は古代文明の遺産だ」

 

 「姫様の御力」と「古代文明の遺産」。

 この二つの言葉の説得力のおかげで隊長も簡単に納得してくれた。

 

 実にちょろい。

『フリッカ様。目的地のミズガル王国軍カルナック基地の防空識別圏に入ります』

 

 そうこう説明している間に姫様が決めた目的地にも到着した。

 

 本当は基地の真上に瞬時に次元跳躍したかったけれど、索敵網をすり抜けてしまい基地の人達を驚かせるからと少し離れた位置に次元跳躍移動をすることになり到着に時間がかかった。

 

「それではレギン隊……太尉。カルナック基地に着いたので詳しい話はそこでしましょう」

 

 カルナック基地。

 姫様が決めた目的地であり、ムスペル帝国への反抗作戦の新たな拠点。

 

 第七鎧兵器部隊の拠点だったケルムト前線基地や、私が初陣の際にいたニューグレンジ基地と同じくミズガル王国の領土防衛を担う重要な拠点の一つだ。

 

「カルナック基地だと?まさか、そんな遠方の基地にもう着いたのか!?」

 

 カルナック基地はケルムト前線基地はからはかなり離れた場所にある。

 

 なので、たった数分でそのカルナック基地に到着したことにレギン隊長は驚きを隠せなかった様子だ。

 

「そうですよ。()()()()()のおかげで私達が乗るこの艦は次元を超えて瞬時に移動することが可能なのです」

 

 勿論、次元跳躍移動も姫様の御力という説明で納得してもらった。

 

「……信じられないことばかりだ。まさか、鎧兵器が突然青い魔力の輝きを放ち出力を上昇させたのも姫様の……」

 

 都合がいいことに、レギン隊長は私が配った御守りの力も姫様の御力だと思い込んでくれていた。

 

 どうやら、私が第七鎧兵器部隊のみんなに配った御守り——私が貧血になりながら作ったレベル十の"血の触媒"はみんなを守るためにちゃんと効果を発揮していてくれたようだ。

 

「あ、隊長の機体もだったんですね」

 

 まあ、起動権の秘密はそのままにしておきたいので私も同じく姫様の御力に助けられたということにしておこう。

 

「そうですよ。あの現象もまた()()()()()によるもの……『星系の炉心(アースガルズドライブ)』が起動した証です」

 

 敵を欺くには、まずは味方からだ!

 

 

 

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