TS厄ネタ血統チート転生者、古代文明の遺産の人型超兵器で無双する   作:六畳仙人(ハーメルン)

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戦場

 

 

 

『ムスペル帝国軍の鎧兵器多数接近!"エインヘリヤル"四十、"ヴァルキューレ"六十です!』

 

 ミズガル王国とムスペル帝国との戦争の最前線。

 膠着状態が続いていた両軍の支配地域の境界に、突如としてムスペル帝国軍の大軍が殺到した。

 

「クソっ数が多すぎる!」

 

 索敵レーダーを見ながらミズガル王国軍の兵士の男は厳しい事態に悲鳴を上げた。

 

 戦争が始まっておよそ一年半。

 

 軍事大国ムスペル帝国軍相手にミズガル王国軍はどうにか持ち堪えられていた。

 

 勿論、理由は色々あった。

 

 今回ミズガル王国に攻めてきていたのがムスペル帝国の一貴族の配下の貴族軍のみだったこと。

 

 世界最強と名高いムスペル帝国正規軍が北方のニヴル連邦と西方の反ムスペル連合軍との戦争に送られて不在だったこと。

 

 そういった事情から、ムスペル帝国軍の攻撃があまり積極的ではなかったのだ。

 

 ミズガル王国軍はとても運が良かった。

 

 ところが、その事態が一変した。

 膠着状態を崩すべく、侵攻軍の総司令であるフルングニル伯爵自ら特殊な鎧兵器に乗り大軍を率いて総攻撃をかけてきたのだ。

 

「一体ムスペル帝国にはどんだけ鎧兵器があるんだよ!」

 

 ミズガル王国軍が現在最前線に展開している鎧兵器の数はおよそ四十機。

 

 対して今回ムスペル帝国軍が投入した鎧兵器の数はその倍以上の数だ。

 

『仕方ねえだろ。こっちが使ってるのは遺跡から血眼で探した大昔の発掘品。対してムスペル軍帝国は鎧兵器を生産できる遺跡でいくらでも改装を施した新品の鎧兵器を作れるんだ。数と性能じゃ勝ち目ねえよ』

 

 鎧兵器同士を飛び交う通信では弱音も聞こえはじめる。

 所詮ミズガルは普通の国だ。

 軍事大国ムスペル帝国とは運用できる軍隊の規模が違う。

 今まで互角に戦えていたのが奇跡だったのだ。

 

 それでも、中には勇気を奮い立たせて味方を鼓舞する者もいた。

 

『でもな。相手は貴族のボンクラ兵士が多い。操縦技術ならこっちの方が——」

 

 瞬間、遥か前方で閃光が煌めいた。

 そして、突然味方機の一機との通信が途絶した。

 

『おい、どうした?何があった?』

 

『気をつけろ!どこからか狙われて——』

 

 遥か彼方で再び眩い閃光が煌めく。

 そしてまた、こちらに向けて極光が放たれた。

 

 その極光が味方の鎧兵器を一撃で貫き、次々と破壊していく。

 

「……!?この距離はまだ射程外のはずじゃ……」

 

 危険な状態を知らせる警報が鳴り響く。

 高エネルギーが迫っていることを知らせる警報だ。

 操縦席に投影された映像に映るのは凄まじい速さで迫る赤い極光。

 それは、収束させた高密度の魔力を用いた砲撃だった。

 

「ちぃ!回避行動を!」

 

 兵士の男はすぐに反応して鎧兵器を動かし回避行動に移った。男は戦場で生き抜いている優秀な鎧兵器の操縦者だ。

 

 通常の鎧兵器の魔力砲による狙撃なら回避できる程の技量はあった。

 

 だが、今回は相手が悪かった。

 

「馬鹿な!?魔力砲が曲がって——」

 

 それが、男の最期の言葉(断末魔)になった。

 

 魔力砲は光学兵器に近い。

 放たれると、魔力の収束率が低下するまでただ一直線に進む一条の光となるはずだ。

 

 しかし、今回の魔力砲は回避行動に移った鎧兵器を完璧に捉え、魔力の光線はぐにゃりと曲がりまるで追尾するように正確に鎧兵器へと到達。

 

 通常の射程距離を大幅に逸脱した距離から、回避行動を行い避けることに成功したはずの機体を見事に屠ってみせた。

 

 その後も、ミズガル王国軍の鎧兵器達は射程外から放たれ続ける必ず命中する魔力の光線によって葬られていった。

 

 さらに、数を減らしたところに大量の無人鎧兵器"ヴァルキューレ"が殺到。

 

 そして、ついにミズガル王国軍の最前線の戦力は壊滅した。

 

「ふん、所詮は劣等民族の国の軍隊か。これなら最初から私が出ればよかったな。さすればこの戦もすぐに終わっていただろうに……」

 

 "ティルヴィング"の操縦席から『必中魔力砲』で撃墜したミズガル王国軍の鎧兵器の姿を見て、フルングニル伯爵は率いている配下達の機体への通信を開く。

 

「殲滅せよ。進撃を続けよ。アースガルズの後継たる我等の力を思い知らせてやれ!」

 

 こうして、撃墜されたミズガル王国軍の鎧兵器の残骸を踏み潰しながら、ムスペル帝国軍がミズガル王国領土へと雪崩れ込んだ。

 

 その進路の先には——

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「こちらフリッカ・アース。異常ありません」

 

『こちら、シュルド・グウィディオン。異常なしです』

 

『こちら、フギン・マクロイ。異常なし!』

 

『こちらイルザ・ケリドウェン。異常ありませーん!」

 

『よし、各機散開!』

 

『了解!』

 

 通信を切ってほっと一息吐く。

 心配は杞憂だった。

 目標空域の映像には穏やかな様子の空、索敵レーダーにも一切の反応がない。

 結局、今回はただ空を飛ぶだけで終わりそうだ。

 

「あー疲れた」

 

 安全なのを確認してから、ようやく緊張感から解放された。

 操縦の為に身体強化の魔法に使っていた魔力も一旦最低限に減らして大丈夫そうだ。

 

「スルト。操縦限界時間は?」

 

『フリッカ様の現在の体力と魔力量を考慮すると残り八時間ですね』

 

「結構余裕あるね」

 

 鎧兵器には燃料切れがない。

 ただし、有人機の場合は操縦者の体力と魔力が尽きたら動かせなくなる。

 

 だから、程よくサボ……体力と魔力の温存は必要だ。

 

「それにしても、魔力って結局なんなんだろうね」

 

『魔力……古代アースガルズ人はアースガルズ粒子とソレを定義していました。この粒子を活用する為古代アースガルズ人は遺伝子操作技術やナノマシン技術を——』

 

「あ、やっぱり話長そうだかやいいや。頭痛くなってきた」

 

『かしこまりました。それと、イルザ・ケリドウェンの機体から通信が入っています』

 

「繋いで」

 

 映像が切り替わる。

 すると、相変わらず可愛いニコニコ顔のイルザの顔が映し出された。

 

『やっほー!初任務お疲れー♪』

 

「イルザ……任務はまだ終わっていないよ」

 

 レーダーに反応がないとはいえ、少し気が抜けている気がする。

 でも、実際敵が来る可能性が低いのは事実だ。

 

 少しぐらいお喋りしてもまあいいよね。

 

『わかってるよ!任務は基地に帰るまでだよね。ねね、終わったら初任務達成祝いにパフェでも食べに行こうよ!』

 

「……!!行こう!」

 

 パフェという言葉に咄嗟に反応してしまった。

 異世界だけどパフェは存在している。なんでも、古代の料理本に載っていたらしい

 

 前世の頃に比べて、どうにも甘いものをよく食べるようになった気がする。最近も甘いものには目がない。

 

 これもTS転生の影響だろうか。

 

 まあ、兵士やってるから太ったことないしいくら食べても問題ないだろう。

 

『きーまりー、じゃあ、フギンとシュルドも誘って——』

 

 

 

 

 

 

 その明るい声が最後まで続くことはなかった。

 平和な時間は唐突に終わりを告げた。

 

 

 

 

 

 

 前方で赤い閃光が輝いた瞬間、凄まじい閃光と轟音が私の視覚と聴覚を埋め尽くした。

 

『……!?何があったの!?』

 

『超遠距離からの狙撃と推定。"エインヘリヤル"264004"号機が攻撃を受けて撃墜されました』

 

 それは、今回私達を率いてくれていた軍人さんの機体が撃墜されたということだ。

 ありえない。今まで索敵に反応はなかった。おまけに真っ先に一番熟練の軍人さんがやられるなんて。

 

 それに、今まで警報一つ鳴らなかったということは、起動権を制限されている状態とはいえ、"スルト"の補助がある"エインヘリヤル"でも発見できなかったということになる。

 

『一体どこか———」

 

『ねえ、フリッ———』

 

 間違いなく、ヤバい事態だ。

 再び魔力を全身にまわして身体に強化を施す。

 すると、反射的にとても嫌な予感がした。

 

「"スルト"!」

 

『起動権による制限解除。出力緊急上昇。防御壁(シールド)を展開します』

 

 咄嗟に、私は起動権を行使して、出力を最大にまで上昇させた。"スルト"の補助もあって鎧兵器の防御壁が展開される。

 

『魔力砲、到達』

 

「……!」

 

 魔力砲が直撃する。

 しかし、展開された防御壁の力場に跳ね返され、魔力は光の断片となって散り消えた。

 

 私に流れるチート血統によって、完全に性能が引き出された防御壁は、しっかりと私の身を守ってくれたのだ。

 

 私だけが特別な力で助かることが出来た。

 

 ———助けて。フリッカ!

 

 その時、横の方から激しい爆発音が聞こえた。

 見るな、見てはいけない。そう脳から命令が流れて来たような気がした。

 

 でも、私は爆発音がした方へと反射的に振り向いてしまった。

 

 全方位の映像が投影される鎧兵器の操縦席の視界のモニター。

 そのモニターの私が見た方向の映像には、先程まで隣にいた味方の鎧兵器のことを映さずに、爆炎と砕け散った鎧兵器の破片が落ちる映像だけを映し出した。

 

「イル……ザ?」

 

 つい先程まで通信越しに話していた、イルザの乗っていた鎧兵器の姿は何処にもなかった。

 

 





一言解説

各国の鎧兵器は基本的に遺跡からの発掘品です。
ただし、ムスペル帝国だけは鎧兵器を生産出来る遺跡を発見し再起動することに成功しているので、現代でも新たに鎧兵器を作ることができます。
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