TS転生鬼畜難易度RPGセーブロード縛り原作主人公育成系予言者エルフ 作:説くMay
まず
即ちは天玄を象り、地素を繋ぎ、人空を満たす。
是、宇宙理気の令旨となりて、
顕れたる
さりとて、業に通じ、律を敷く大器は八種を超えず。
八種の神星、唯を枢とす大道に至りて己が律を敷く。
第一の神は運命を連ね。
されど、人の望み絶え、黄金もまた成らず。
勇捧げし者、運命を廃す。
第二の神は絶対を掲げず。
けだし、人の夢は栄え、血脈をついに断つ。
勇捧げし者、その残骸を壊さずに。
第三の神らは闘争を求め。
されど、人の祈り絶え、魔法もまた届かず。
勇捧げし者、闘争を滅す。
第四の神は清廉を記し。
されど、人の行い絶え、無辜もまた到らず。
勇捧げし者、清廉を侵す。
第五の神は悉皆を揃え。
されど、人の契り絶え、裁決もまた轟かず。
勇捧げし者、悉皆を降す。
第六の神は滞留を掴み。
されど、人の誓い絶え、継承もまた実らず。
勇捧げし者、滞留を翻す。
第七の神は乖離を奏で。
されど、人の思い絶え、邂逅もまた叶わず。
勇捧げし者、乖離を圧す。
第八の神は破戒を定め。
されど、人の歩み絶え、輪廻もまた巡らず。
勇捧げし者、破戒を糾す。
八種の大道衰え、星書も
故に九つの緯経を編む者、導きの星御霊を宿さん。
勇捧げし者、八種を束ね大器を築き大道へと登る。
是なるは我らが主、世に九をなさんとす兆しなり。
かくして、九の神は降臨し、我らに幸いをもたらした。
★ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆ ☆
…………やっぱり何度見ても何言ってるんだかわからないね、これ。
いや、前世の知識を動員すれば『勇星のみたま』シリーズ全体のストーリー表しているのは一目瞭然なのだが。
それでも、というなんともやりきれない気持ちが残る。
偽りのプラト=クラウ=クエステットに連れられて訪れた魔法学院の生徒会室にて。
ノインノルン=セイヴァンドロードこと、わたしは内心でだけ思った。
「それは初代クエステット王が日々の修養に用いたと言われる九つのタペストリーですね。黙示の様を図示するそれはもちろん国の宝であり、本来は宝殿に収蔵されるべき代物ではありますが、学院を統べる生徒会役員たちへの啓蒙のため、ここに安置されることとなったものです」
壁面に飾られた色褪せた九枚のタペストリー。
それはこの世界の黙示録を図示した宗教画であると同時に、この
正直、二作目ですら出るか怪しい開発状況だったのだから、こんな小ネタ仕込んでも回収見込みすら不透明だったろうによくやる、と前世は思ったものなのだけれど。
「そこに記された銘文は徳深き時代の言の葉を刻む仰高すべき金言の連なりですが……尤もそれは私どもだけの話。貴方様には無用のものでしょう。当代のセイヴァンドロード様。私がいかにこの文言を諳んじたとして
「いいえ、そうでもありません。わたしが百年ばかしの若輩エルフであることを忘れましたか? あなたの言う徳深き時代とは程遠い時代の生まれであり、この銘文はわたしにしても一字千金に値するものですよ」
だが今となっては、ありがたいの一言に尽きる。
タペストリーに添えられた解説の文言を偽王女さまにばれないようにこっそりと、けれど眼は皿のようにしてじっと眺める。
前提として、ノインノルン=セイヴァンドロードは未来を見通す予言者だ。
それは血統に裏打ちされた真実であり、原作に裏付けられた事実に相違ない。
がしかし、原作ゲームにおいて碌な描写のないノインノルン=セイヴァンドロードがどのような理屈で未来を覗き見ていたかは全くもって明らかにされていない。そう、不明なのだ。
ファンの考察コミュニティにおいては森羅万象を記した『
ソースはゼロ。
原作ノインノルン=セイヴァンドロードは目玉焼きにはソースでなく醤油派。これだけは『セイヴァンドロードのお悩み霊安室』で判明している。ついでにいえばわたしも前世からそういう好みをしている。
なので、わりと必死だった。
まず頼みの綱の『
仮に希望的観測をして、セイヴァンドロードの一子相伝秘伝の魔法で未来予知ができるとかであったとして、現状わたしはそれを知らないので関係ない。
よって、セイヴァンドロードの予言者としての立振る舞いを求められると非常に困るのだ。
一応、原作知識があるのでそれらしく欺くことは可能だが、それも確実では全くない。
どこかの誰かの不手際で致命的な原作ブレイクは既に果たされているからだ。
便りにするにしても、ある程度はブレやズレがある前提で動かなければならないだろう。
ノインノルン=セイヴァンドロードとして表舞台に立つことには常にリスクが伴うのだ。わたしが直接原作イベントに乗り込まず、
「ご謙遜を。徳性とは血の代を経て損なわれるものです。未だ九代目の貴方様方は私奴どもなどと比類なき創世の徳が色濃く刻まれているではありませんか」
「徳は個人に占有されるばかりでは意味がありません。例え薄まろうとその徳を統治により広げることもまた上水のごとき功徳ですよ」
「貴方様にそう言って頂けるのであれば、この血を紡いできた先達たちも浮かばれるでしょう」
だから、この回りくどいやり取りを早く切り上げてしまいたかった。
原作知識を動員してそれらしく取り繕ってはいるが、この中二感ある会話を続けているといつかボロが絶対に出てしまうと自分自身でマイナス方向に確信しているから。
「さて、それでは本題に移りませんか? 何故、貴方はわたしを呼び止めたのです? 次代のクエステット王」
「不敬であることは承知しております…………未だ王者ならぬ徳の浅き身で正式正統な手続きを介さず貴方様のお時間を奪うことは許されざることだと」
「是非を判ずるのはわたしです。そして、その判断を下すのは、わたしがあなたの持つ意図を真に理解し、善悪賞罰の天秤が傾いてからのことでしょう」
「それは、それこそが道理ですね。不遜な物言いでした。ですが、私は重ねて礼徳を失すことになります」
「…………………………………………」
プラトの語り口は大陸系ソシャゲの翻訳テキストを想起させる。
いや、それでも、近年はもう少し読みやすく配慮されているか。
なんというか、『勇星のみたま』をしていた前世当時の気分だ。
初代ってゲームとしても粗削りなのに、シナリオもシナリオで世界観に忠実過ぎて逆に世界観に入り込めないテキストしてるんだよね。というか、ぶっちゃけシナリオ部分はガイドブック読んで初めて理解できた要素の方が多いとか、そういうのほんっとよくない。さっきのタペストリーテキストとかその代表例だからな、ほんと。布教のときにどんだけこっちが苦労したって思ってるんだよ、こんちくしょーめ。
仕方ないの話なのだけれど、半ば現実逃避として一人内心で『勇星のみたま』のここがよくないグランプリを開催するほかない。
二作目以降は改善されて取っつきやすくなったけれど、それでもプラトのような高貴な身分のキャラクターの発言は「ちょっと何言ってるか分からないですね」に片足突っ込んでいた。
フレーバーとしてはまあ許容範囲だが、それの原液を浴びせらるのはノーセンキューだ。
ビジネスメールを書いているときというか、漢文の現代語訳をしているときというか。使っているのは母語ではあるものの、肩ひじを張らざるを得ず非常に聞くのも話すのも疲れる。
「それで、あなたの言う礼徳を失することとはどのようなことなのでしょうか?」
「……………………本旨をお伝えする前に一つご理解をいただきたく存じます」
「理解? それもまた事と次第によるでしょうが、セイヴァンドロードとクエステットのこれまでの縁は浅からぬものです。決して悪しきようにはならないでしょう。縁は久遠未来に渡って、さらに深まる縁なのですから」
「……! 大変有難いお言葉を。その貴重な一言すら今の私には身に余る栄誉です。そしてご理解いただきたいことなのですが、私はこれより貴方様にとんでもなく不躾なお願いを申し上げます。それは貴方様が将来に渡って途切れぬと断言してくださったクエステットとセイヴァンドロードの古よりの縁にさえ背くようなものでしょう」
「ふむ……?」
ない。
原作にない。
これっぽちも思い当たるイベントが原作にない。
いやわたし、というか……ノインノルン=セイヴァンドロードが魔法学院にいる時点でイレギュラー以外の何物でもないのだから、原作に該当するようなイベントがあるはずもないのだけれど。
それでもただでさえ『
そう考えると、一番最悪な人物に捉まったかもしれない。
後先や今後のイベントを考えるとプラト=クラウ=クエステットを抹殺して闇に葬るなんてことも不可能だなのだから。この国の王女であることとか関係なしに、原作を守るという観点では絶対に殺してはならない人物なのである。
はっきり言ってこのプラト=クラウ=クエステットは序盤から中盤にかけての導入NPCなのだ。
この
そして王家と勇者との連絡係は、お察しの通り学院にいる唯一の王族である彼女、プラト=クラウ=クエステットを通じて行われる。彼女を今、このチュートリアル終わりたてほやほやの状態でどうこうしてしまうと、クレイの成長やに必須のこの先のシナリオが完全に閉ざされてしまう。
かといってクエステット王国崩壊を企てている偽りの王女の眼前の彼女にボロを出して、情報は落としたくない。あーもう、胃が痛い。
「ですが、これはプラト=クラウ=クエステットですらない、私ただ一人の独断によるものだとご理解いただきたいのです」
「現クエステット王や、あなたの
「ええ。そうです。どころか私の有する従者、神徳なき奴隷どもともこの話をしたことはございません。真実、九の神に誓って、これは私の心根のみから発するお願いなのです」
「過分に回り持った言い方ですね。即ちはわたしが落とす首はあなた一人のものに収めろ、と?」
「そうは言っておりません。ただこの事実をご理解いただけないうちは、建設的な対話は実現し得ぬと思い申し上げたのです」
「その煙に巻く姿勢こそが他ならぬ肯定だと思いますが……いいでしょう。セイヴァンドロードの予言者として九の神にも誓いましょう。この件で如何なる不義理があったとして、対価となる命運はあなたのものだけとすることを」
「……寛大かつ格別の御厚情、誠に有難う御座います」
言って、未来のクエステットの女王は深々と頭を下げた。
やたらとレトリックの多い言い回しであったが、責任の所在を予め明らかにしておいただけだろう。冷静になると本題を始める前からそんな前置きが必要な時点で結構な無茶振りを投げられるのが確定しているということで、やはり胃を痛めるストレッサーだ。
セイヴァンドロードの予言者という立場的に問答無用で断ることもできるけど。
クエステット王家というかこの偽物王女の原作にない動向を把握しないままなのは怖い。
現状この魔法学院でクレイは無双が可能な位に仕上がって入るものの、彼女が王女としての偽りの衣を脱いだときは流石に怪しい。チートを仕込んでいるとはいえ、第一作で一番苦戦するボスの代表格なのだ。本性を顕にした偽プラト=クラウ=クエステットは。
だから、いざという事態で彼女の首を落とす権利を得たのはプラスだったかもしれない。シナリオを思えば、クレイが仲間と共に撃破するのがもちろん最良だが、なりふり構っていられる状態でないのはわたしが一番分かっている。
もっとも、そんなのは最終手段も最終手段だ。
ストーリー的に最後は敵対こそするが、偽王女は悪しきものではない。敵対する動機も納得が行くもので、ルート次第ではパーティメンバー入りもする。
何よりこちとら、元は普通のどこにでもいるパンピーなのだ。
そうすべきだからといって、誰かの命を軽々しく奪う覚悟はできていない。
だから、わたしはおおらかに心に余裕を持って、彼女の話に耳を傾ける。
どうせセイヴァンドロードの予言者に求めることなんて、勇者関連のものなのだ。
刃傷沙汰になり得る要素は何一つとしてない。勝ったな、がはは。
「セイヴァンドロードの至宝。『
偽王女ちゃんったら、なんでそんな無茶なこと言うの?
もう
やっぱり続きません。皆さんの脳内で育んでください。