未知を駆ける福音   作:Blackiel

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 前回に引き続きアルフィアが怒り涙する話です。

 


死屍累々 / 静寂の涙

 

 

 

 【フレイヤ・ファミリア】との派閥大戦からしばらく、騒動の中心人物ベル・クラネルは新団員リューも加わった後もさほど変わらぬ日常を過ごしていたが、ある日【竈火の館】で過ごしている中オラリオ中に響く轟音に驚き、急ぎ向かっていた。

 

 

 

 

 轟音から数分、発生源となったコロッセオに到着するとそこには【ヘルメス・ファミリア】団長アスフィと【ガネーシャ・ファミリア】団長シャクティ他団員数名が装着している武器防具共に砕け散り全身血だらけという、まさに死屍累々の惨状だった。

 

「なっ?!アスフィさん!シャクティさんも!それに他の団員の皆さんまで、こんな…」

 

 この惨状に驚愕の声を挙げるベル、そこに【ロキ・ファミリア】から様子を見てくるよう指示され向かっていたベートが到着し、ベルと同じく惨状に驚愕声を出すも冷静に指示を飛ばす。

 

「なっ、これは…?!おい!そこで突っ立ってる兎野郎、俺は【象神の杖】を運ぶ。他の奴らはお前とその辺の奴らで運べ!一刻を争うぞ!」

「は、はい!」

 

 ベルもベートの呼びかけで正気に戻り、急いでアスフィの身体を起こし持ち上げる。

 

「く…っ、ぐっうぅぅ…」

「アスフィさん!良かった、目が覚めたんですね。でも動かないでください、今アスフィさんは血だ…」

「ベル…クラネル、はぁ…、リオンに伝え、なさい。【静寂】が…召喚された、と…ガハッ」

「アスフィさん?!」

 

 アスフィは少し目を覚まし、ベルに伝えたいことを言うも再び吐血し気絶した。アスフィが残したセリフに疑問を持つも、吐血したアスフィに再び意識が向き、周囲の住人にも他団員の運び込みを頼みながら急ぎ【ディアンケヒト・ファミリア】に急ぐ。

 

「ベル!いったい何が…っ、アンドロメダ!」

 

 途中、ベルと同じで騒ぎを聞きつけたリュー・リオン改め、リュー・アストレアがベルに担がれた血まみれのアスフィが視界に入り驚愕した。ベルが担ぐ反対側を担いで急ぎ治療院へ向かった。

 アミッド達に怪我人達を預け、落ち着いたところでリューは事情を聴く。しかし、アスフィがベルに話した内容はリューにとって到底信じられるものではなかった。

 

 

「馬鹿な、【静寂】だと…っ。何故、今頃…」

「リューさん、【静寂】って確か7年前にリューさんたちと戦ったっていう…」

「えぇ、7年前の暗黒期、いづれくる「終末の時」に対抗できるよう、当時いた私たち冒険者に発破をかけるため闇派閥(イヴィルス)に協力した二人のLevel7、その内の一人です」

「僕もヘルメス様から聞いた程度ですけど、恐ろしく強い人だったんですよね?」

「はい、私を含め当時の【アストレア・ファミリア】総力をもって結果的に勝利できましたが、私たちは決定的な勝ちを得ることはできないままでした」

「?それは、どういう…」

「我々と戦った彼女は、最後はその身を激しく砕かれたダンジョンの裂け目に落としたんです」

「!?」

「彼女が抱える爆弾頼りの持久戦でようやく光明が見える戦いで、勝利したようなもの。今でこそ彼女なりにあそこで倒されることを前提としていたのかもしれません…」

「リューさん…」

「【静寂】があそこで確実に死んだか、と問われれば私も解答に困ります。しかし、彼女は不治の病を抱え普通に生きても長くは生きられない身体でした。その状態で私たちと交戦し、あの最後です。例え生き残っても現在も生きていられるわけがない」

 

 リューは悲しみや悔恨、当時への怒りなど多くの感情が混ざり顔を歪めながら当時のことをベルに語る。

 

 リューの表情に掛ける言葉にベルが悩んだその時、かつてベルたちがいた廃教会の方角で何か騒動が起きているようだった。

 

 

 

 

 話を中断しリューと共に急ぎ駆けたベルたちは、廃教会に着くなりその惨状とそこにいる人物に目を奪われた。

 

 

 おそらく冒険者であろうエルフ・ハーフエルフの男女20数名、コロッセオ内にいた冒険者たちと違い目立つ外傷はないが、白目を向いて山積みとなっていた。

 その近くにはベルたちとも交流があり、最近も助けてもらった【ロキ・ファミリア】もいたが、レフィーヤは屍?と同じように気絶し倒れており、リヴェリア、ティオナ、アイズは傍の屍?には目もくれず、教会の方を向いていた。特にリヴェリアはベルも見たことが無い厳しい表情を浮かべている。

 

 

 そんなリヴェリアたちと対峙崩れた元廃協会を背にするように目が覚める美人が一人、こちらは屍?どころか厳しい表情で対峙するリヴェリアたちにも目を向けずベルたち、否ベルに目を見開いて佇んでいた。

 

 

 

 

_時は少し遡り_

 

 

 

「ぁあ”?」

 

 

 まるで輩のように声を荒げ振り返るアルフィア。荒げるのも無理はない、つい先ほどまでそこにあったはずの大事な場所が見るも無残に破壊され、愛しい子は離れた場所にいるのだから。

 苛立っている中声を掛けられ、振り返ればそこにはアルフィアの知る顔ぶれだった。

 

「ちっ、貴様たちか。【ロキ・ファミリア】の年増と小娘ども…、生憎と今私は機嫌が悪い、用なら後にしろ」

 

 現オラリオ最強ファミリア、それも第1級冒険者に対する態度ではない。しかも「ハイエルフ」であるリヴェリアに言うに事欠いて「年増」である。まず周囲にいた住民及び冒険者が顔を青ざめた。次にリヴェリアが普段は見せぬ怒りを顔に宿し、それを感知したアイズがトラウマで震えた。最後にレフィーヤ含め近くのエルフ系冒険者が憤怒の形相でアルフィアに吠える。

 

「あ、あなた!リヴェリア様になんて口をっ?!」

「ハイエルフに対する冒涜だぞ!」

「リヴェリア様をなんと心得る」

etc.etc.

 

 レフィーヤ含め20人以上の怒りの大合唱、これには静寂を好むアルフィアが元々出していた怒りの顔を更に深くする。

 

「はぁ、相も変わらずエルフというのは妄信的で困る。レベルで多少誤魔化してるとはいえ、100を過ぎれば十分年増であろうに…」

「きっ、貴様ぁ!」

「!ま、待てっ!」

 

 変わらず不敬(エルフ的)を吐き続けるアルフィアにエルフの数名が襲い掛かる。リヴェリアも突然動いた同胞が辿る末路が分かっているため慌てて静止を呼び掛ける。しかし、飛び出した彼らを起点にレフィーヤを除くその場にいたエルフたちも後に続き襲い掛かる。

 

 中には第2級冒険者もちらほらいるため、周囲で様子を窺っていた住民は顔を青ざめるか愚かな女の末路を想像した。しかし対するアルフィアは向かってくるアホ共に短くため息をこぼしながら先頭にいた冒険者の顔を一撫で(・・・)する。

 

 すると撫でられた冒険者は向かっていた方向とは真反対、つまり後ろに続いていたエルフ冒険者たちの方へボウリングの球のように吹っ飛んだ。突然先頭にいたエルフ(Level3)が自分たちの方へ吹っ飛んで来るという状況にすぐ後ろに続いていた彼らが対応できるわけもなくそのボール(・・・)に巻き込まれ吹っ飛ばされる。

 そうして吹っ飛ばされた冒険者たちはリヴェリアたちから少し離れた位置で綺麗に山積みとなって屍?と化した。

 

 

 第2級冒険者もいたエルフ集団が文字通り一撫でで屍?となった状況に住民たちは訳も分からず元凶のアルフィアへ畏怖を込めた目を向ける。

 

 次に動いたのはレフィーヤだった。確かに彼らの行動は少し行き過ぎたものだが、その彼らを一瞬で屍?にしたアルフィアに対する警戒とリヴェリアに対する不敬の怒りなどから牽制として得意の【アルクス・レイ】を放とうとする。しかし、

 

「ふぎゃっ!」

「レフィーヤ!?」

 

 アルフィアがいつの間にか拾っていた小石をデコピンで飛ばし次の屍?にした。

 

 エルフたちを一瞬で屍?にしたアルフィアに警戒していたリヴェリアたちだが、レフィーヤがやられたことで戦闘態勢に入る。

 

「【静寂】!貴様…」

「まったく、エルフというのは直情的な馬鹿の総称だったか?力量も分からず飛び掛かるとは…」

 

 アルフィアの傲岸さは続く…

 

「さて話を遮られたが、まぁいい。この惨状について貴様たちに聞こうか、これはどこのどいつがやった?」

 

 何人かしばいたことで少し冷静になったアルフィアは怒りの原因を探すためにリヴェリアたちに問う。

 

「惨状だと?貴様が背にしている場所か、そこは確か…」

「そこって、確か、ベルがいた…」

「そこってアルゴノゥト君が前いた教会でしょ?確かアポロン様が壊したんだっけ?」

 

 アルフィアが背にする廃協会跡について聞かれたリヴェリアは何故アルフィアがそれを問うのかわからず思考する。そんな中最初に明確に答えたのはティオナだった。しかしこれにはアルフィアが少し驚き疑問を浮かべる。

 

「なに?あの変態神、だと…?」

「そうだよ。ね?アイズ」

「うん、確かアポロン様が団員を使って、壊したはず…」

 

 ティオナがアイズに同意を求めながらも肯定する。しかしそれでもアルフィアにとってはあり得ない事だった。

 

(馬鹿な、変態神を始め【アポロン・ファミリア】がこの教会を破壊できるはずがない)

 

 何故なら…

 

(あの変態神は既に送還されているはずだ!)

 

 そう、アルフィアにとって神アポロンはとうの昔に送還された存在であり、その送還はアルフィアも確認した。また、【アポロン・ファミリア】に関しても徹底的に調教(・・)したはず。

 

(それが、何故…)

 

 ここにきてアルフィアは己と周囲に大きな違和感があることに気付き始めた。

 

「!おい、年増」

「貴様、いい加減その減らず口をどうにかし「貴様、一体いつLevelをあげた?」は?」

 

 そう、アルフィアが知るリヴェリアはつい先日ようやくLevel6になったはずなのだ。それが気配からして7はある、この大きな違和感にアルフィアは思わずリヴェリアに問う。

 

「いつも何もつい先日だ。貴様と相対したときから7年は経つのだ。上がっていてもおかしくないだろう」

「?!」

 

 かつて散々辛酸を舐めさせられた宿敵と並んだ、それが心の片隅にでもあったのか少しだが無意識に得意げな表情を浮かべ答える。しかし、リヴェリアの答えを聞いたアルフィアにとってはその表情に突っ込む余裕は無かった。

 

 「7年前」アルフィアにとって人生のターニングポイントといっても過言ではない時期。それをリヴェリアが口にしたときアルフィアは一つの可能性に思い当たる。

 

 

(7年前…相対…、まさか……っ!)

 

 思考に入ろうとしたアルフィアは少し前まで離れていた大事な子の気配がすぐ近くまで来ていることに気付き、そちらに顔を向ける。

 

 

 

 

 

 アルフィアが目を向けた先にはアスフィたちを【ディアンケヒト・ファミリア】の治療院に預け騒動を聞きつけたリューとベルだった。

 

 

 

 

(あぁ…)

 

 

 急いで向かったであろう二人に、否ベルに顔を向けた時、アルフィアは先ほどまでの怒りを綺麗に忘れた。視界には屍?もリヴェリアたちも映らない。先ほどまで抱きかけた焦りも疑問も今この時だけではない。

 

 

 あるのはたった一人に対する想い…

 

 

__あの子が立っている。__

__あの子が元気にそこにいる。__

 

 彼女の脳を支配するのは彼との思い出。

 

__青白くない肌__

__酷い隈はそこにない__

 

 苦しい思いをさせる彼への罪悪感

 

 今この場にいるのは恐ろしき【静寂】ではない、一人の【慈母】がそこにいた。

 

___元気なあの子がそこにいる。___

 

 

 

 

 

(あぁ、ベル……。私の、私たちの愛しい我が子…)

 

 

 愛しい我が子がアルフィアの記憶にはない元気な姿(・・・・・・・・・・)でそこにいたのだから・・・

 

 

 

_______

 

 

 

_今から10(・・)年前_

 

 

 

「ゲホッ、ん”…。おねえ、さん…誰?」

 

 

 

 良くも悪くも活気あふれるオラリオと違い、何気ないのどかな村。そこに大事な妹が残した唯一の宝がいることは忌々しい好々爺から送られる手紙から知っていた。その爺から短い、しかし酷く焦りを感じさせる手紙が来て、妹の死から逃れようと約4年も塞ぎ込んでいたアルフィアは急ぎ村に向かった。

 

 妹が産んだ時以来の少年との再会は、アルフィアにとっておよそ感動といったものを抱かせなかった。

 

 

 

 

 

 

 あまりにも妹、メ―テリアに似ていた。

 

_妹譲りの白い髪

_少女と見紛う程、妹の面影を強く残した容姿

 

 ここまではいい…。だが…

 

 

 

_病気的な青白い肌

_やせこけた頬

_吐血でもしたのか、着る服に残る微かな血痕

_まだ薄いがステータスを貰う以前の妹からも漂った甘くも嫌な臭い

 

(っ、あぁ…。これは、ないだろう…。いくらなんでも…、病まで受け継がなくても…っ!)

 

 

 そう、アルフィアと再会した少年はアルフィアとメ―テリアが患い、妹を死に追いやり、【才禍の怪物】と畏怖されたアルフィアをLevel7程度(・・)に止めさせた「不治の病」を色濃く受け継いでいた。

 

 妹メ―テリアの時も自分が才能を奪い苦しめているのだと己を責め続けたアルフィア。メ―テリアにひどく似た少年を彼女が震えながら抱きかかえ、涙をこぼしたのも無理はない。

 

「ぅ…くぅ、すまない、すまない。…ぅう」

「お、おねえ…さん?」

 

 その謝罪は少年へなのか、今は亡きメ―テリアへなのか。ただしばらくの間ベルはアルフィアの腕の中で、これまで感じたことのなかった温かみを感じていた。

 

 

__ああ、この子だけは奪わせない。神だろうが、モンスターだろうが、この子の幸せを脅かすモノは、私が、私たちが…__

 

 

 これがアルフィアと、妹の愛しい子【ベル・クラネル】との出会いだった。

 

 

 

 

_______

 

 

 

 

 オラリオ中に散開し捜索していた【ロキ・ファミリア】幹部たちは【ヘスティア・ファミリア】元拠点の廃教会跡地でエルフたちが中心となって騒動を起こしていると聞き、すぐさま向かい到着した。

 

 

 7年前の大抗争、それを知るのは幹部でもフィン、ガレス、リヴェリア、アイズのたった4人。もとよりここに到着するまで【静寂】のアルフィアがいることを前提として動いていた。そのため彼女がいること、リヴェリアを何か侮辱しエルフたちを怒らせ返り討ちにしていることも予想の範疇だった。しかし、ここまで予想できていたフィン、ガレスにとって信じられない光景が互いの目に映っていた。

 

 リヴェリアも宿敵の行動に目を見開いて固まっていた。

 

 アイズはペットを知らない人に横取りされた感覚に陥っていた。

 

 

 

 

 

 

 リューはかつて対峙した女傑がこちらに歩み寄るのを見て、即座に武器を構えバックステップ、戦闘態勢に入る。しかしベルはリューのように戦闘態勢に入るどころか動きもせず、ただじっと歩み寄るアルフィアを見つめていた。

 

「ベル!何を呆けているのです?!早く距離をっ!」

 

 リューは慌ててベルに呼びかけるもベルは反応を示さない。その間、ベルは何故か抱く懐かしい感覚に戸惑っていた。

 

 

(なん、だろう…この感じ、”懐かしい”?この女の人と、僕は会ったことがある?違う、合ったことはない、はず…。でも、どこかで…)

 

 

 疑問に思考を奪われていたベルは不意に訪れた柔らかい香りに意識を戻される。が、すぐに自分の状況に絶叫を挙げる。

 

「え、はっ///、え、えぇーーーー///?!」

「ベル、ベルっ…」

 

 

 

 先ほどまで惨状を作りだした女性から出ているとは思えないほど弱々しい声でベルを呼び掛けベルを抱きしめるアルフィアの姿がそこにはあった。

 

 

 

 

 

 オラリオ内で騒動に事欠かないファミリアNO.1【ヘスティア・ファミリア】元拠点の廃教会前、いくつかあった屍?は既に回収されるも未だ多くの目がある中、たった二人が作り出す(正確には一人)空間に大手ファミリア幹部も口を挟むことが出来ない。

 

 

 

「ベル…あぁ、本当にお前なのだな。こんなっ、こんなに元気な姿で…ぅ、ぅぅ…」

 

 ベルを未だに抱きしめるアルフィアが感極まって瞳に涙を浮かばせる。それだけでアルフィアを知る者は目を限界まで見開いた。(リヴェリアはあまりの衝撃映像に倒れティオネが回収した)

 

 

 

 この誰も踏み込めない空間を破ったのは未だ抱きしめられていることに混乱しながらも周囲の状況でいくらか冷静さを取り戻したベルと、愛しいベルを何故かかつての敵に奪われたリューだった。

 

「あ、ああ、あの///!えと///あ、あなたはいったい…」

「せ、【静寂】貴様っ!!何故ベルに抱き着く?!今すぐ離れろっ!」

 

 

 ベルの呼びかけにアルフィアも未だ抱いていたい衝動を抑え、ベルを離す。

 

「あぁ、すまなかったなベル。いきなり抱き着いて…。少し衝撃が強かった…。ぅぅ」

「貴様ぁ、無視をするなっ」

 

 未だ感極まっているようだが…。(リューには目もくれない)

 

 

 

「ああ、盛り上がっているところ悪いけど、もういいかな?」

 

 ここでようやくフィンたちが再起動する。

 

「…貴様か、小生意気な小人。…貴様もそこのドワーフもLevelを上げたか」

「まあ、あれから7年も経っているからね。それで何故君がここにいるのかについて説明は、してくれるのかな?」

「そうじゃな、リヴェリアはぶっ倒れて運ばれたようじゃが、儂等だけでも聞いてもいいじゃろ」

 

 冷静な態度を見せているが、フィンもガレスもかつての女傑が目の前にいる状況を整理したいのだ。アルフィアに話の場を設けることを提案する。

 

「……ふん、まぁいいだろう。ただし条件だ」

 

 本来Level7に到達したこの二人を相手にこの不遜な態度はおかしいのだが、それを咎める者はいない。それにフィンたちも理解しているのだ。

 

(どういうことだ…)

(この女…)

((明らかに7年前よりも強いっ))

 

 アルフィアがかつて対峙したときよりもはるかに強くなっていることを…。

 

 故にフィンはこの場で彼女が暴れないよう冷静に対応する。

「条件とは、なんだい?」

 

 冷静に対処しようと動くフィンなぞ知らぬとばかりにアルフィアは条件を突きつける。

 

「まず私を呼び出したクソ神とそれが使った魔道具を持ってこさせろ」

「まあそれは当然だね。他には?」

「後は簡単だ」

 

 最後の条件としてアルフィアは側にいたベルを優しく引っ張り、

 

「この子もその場に参加させろ」

「は?」

「え///?!」

「なっ?!」

 

ベル・クラネル、巻き込まれ確定

 

 

_______

 

 

(この世界に”私”はいないのだろうな…)

 

 【ロキ・ファミリア】とベルと共に話せる場所に向かいながらアルフィアはこの世界の自分に思考に向けていた。

 

(おそらくこの世界の私は「贄」になったのだろうな。しかもベルには顔も合わせていないのだろう…)

 

 アルフィアはこの世界で起きたことなど何も知らない、それでもわかるのだ。この世界の自分がエレボスと共に散ったことを、この世界の多くの命を奪う手助けをしたことを、その決意のためにベルに会うことはなかったことも。

 

 

 もし、この世界のアルフィアが元気なベルに会っていれば、自分と同じで共に歩む決意をしただろう。自分を気にしながら歩いているベルからして、あの好々爺が語る物語にでも憧れているかもしれない。

 

 だからこそ、アルフィアは改めて決意する。

 

 

__私が、私たちがあの子と共に歩み、終末の時を越え、共に笑うのだと…__

 

 

 アルフィアは元の世界にいる愛しい我が子に想いを馳せる…

 

(待っていろ、ベル。すぐに戻る)

 

 

 

 

 





 読んでいただきありがとうございます。

 前回と同じく今後もpixivで投稿するいくつかの話を統合して投稿します。

 感想でも書かれている通り本シリーズにおいてアポロンはかつてないヘイトを一部から買います。本編そのものに出ることはありませんが、碌な末路を迎えません…
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