推しカプ短編集(ヘブンバーンズレッド)   作:黒糖煎餅

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推しカプがいちゃつくだけ。
拙者が距離感近めの快活な女の子が、恋人になったらドギマギして中々進展しないシチュすこすこ侍のため、こんなテイストの短編ばかりになりますが、何卒よろしくお願いします。


恋人時空
冬の日。君の手の温もり。


「はぁ!?まだ手も繋いでない!?」

蒼井と付き合い始めてから2ヶ月。恋バナでもしようぜ、と言うユッキーの誘いに乗って、ファミレスにいた。

「そう言うユッキーこそどうなんだよ…いちごとはうまく行ってるの?」

「こっちは…まぁ、ぼちぼちだよ。時間が合う時は一緒に帰るし、電話もするしな。」

「それなら私だってするもん…」

「こっちはまだ付き合いたてだっつーの。まぁ、その…手を握られたことくらいは、あるけど…」

「私たちより進んでるー!?」

「普通だろ。好いてる相手に触れたい、触れられたいなんて。お前らがプラトニックすぎるんだよ。」

「だってだって、手を繋ぐんだよ!?手汗大丈夫かなとか、気持ち悪くないかなとか、考えちゃうじゃん!」

焦る私に、ユッキーはため息をこぼした。

「なーんで友達の時は出来てて恋人になったら出来なくなるんだよ…逆だろ、普通。」

「友達にはできるよ!やましいことないんだもん!」

「普通は逆だっての。まぁ、その…なんだ。友達だった頃からボディタッチ多かったんだろ?蒼井もその距離感にある程度慣れてるんだろうし、もう少し積極的に行ってやれよ。蒼井は…引っ込み思案な方なんだし、お前から行かないと進まないぞ?」

「そうだぜ茅森。こっちもいい加減、蒼井の愚痴に付き合うのも疲れるんだからな。」

やいやい言い合っていると、横からそう声をかけられた。

「よう、和泉。早速浮気かよ。」

「ちげーわ言ってあっただろお前も了承してただろ。」

「知ってる。言ってみただけだ。」

「からかうなよ。」

「悪い悪い。」

ユッキーといちごはお互いに見つめ合って、少し微笑み合っていた。

「なんでそんな熟練カップルみたいなんだよ!」

「なんでって…しらねぇよ。ただ、お互いにやりたいことやってるだけだ。なぁ?」

「そうだな。あと、水瀬…」

「水瀬じゃねぇだろ?」

「…いちご、外で頭を撫でるのはやめてくれ。流石に恥ずかしい。」

「ちぇっ。まぁいいや。今日外で飯食べることになったからよ、一緒に食べねぇか?」

「そうか。…妹は?」

「『お邪魔するのは悪いにゃ』って言って、別の店で食べてくるってよ。」

「遠慮しなくてもいいのにな。」

「な。どうせ将来一緒に住むのにな。」

「しょ、将来って…」

「なんだよ、嫌か?」

「嫌じゃ、ないけど…」

「…すももの気持ちがわかる…」

こんなにいちゃいちゃしているカップルを前にして、平然とご飯は食べられない。

「ま、とりあえず明日にでも何かやってやれよ。蒼井、気にしてたからよ。」

「分かったよ…それと、あんまりイチャイチャしすぎちゃだめだよ?周りの人、めっちゃ見てるから。」

 

それだけ行って、私はドリンクバーとパンケーキ代を置いてファミレスを出た。

 

『蒼井、気にしてたからよ。』

いちごの言葉を思い出す。

(蒼井も、私と手とか繋ぎたいって思ってるのかな…?)

ぎゅっと手を握り締め、私は家までの道を歩いた。

 

 

 

 

 

「行ってきまーす。」

「行ってらっしゃい。えりかちゃん、外で待ってたわよ。」

「そう言うことは早く言ってよ!」

私は制服の上にパーカーを着込み、玄関を飛び出した。

 

「おはようございます。茅森さん。」

「おはよ、蒼井…中で待ってればよかったのに。」

「少しだけでしたし、大丈夫ですよ。へくちっ!」

「ほら、寒かったんじゃん…はい、ティッシュ。」

「ありがとうございます…ずびー。」

「じゃあ、行こっか。」

「はい。」

 

無言で、並んで歩く。

昨日のユッキーたちとの恋バナのせいで、まともに蒼井の顔を見れずにいた。

「今日、寒いですね…」

「…だね。」

なら、手でも繋ぐ?なんて、軽く言えたらよかったんだけど…ヘタレな私に、そんなことできるわけがない。

「そう言えば、茅森さん。これ、どうぞ。」

蒼井が、手袋を差し出した。

「これ、くれるの?」

私の問いに、はい。と答える蒼井。

「最近寒いですし…茅森さん、寒いの苦手っておっしゃっていたので。」

「…ありがと。」

蒼井から受け取った手袋を左手にはめる。そして、右手の手袋を、蒼井に差し出した。

「これ、つけてよ。」

「茅森さんが寒いじゃないですか。」

「いいからいいから。」

そう言うと、蒼井は渋々と言った様子で手袋をつける。

「それで、余った手は、こう。」

蒼井の左手をとって、握る。

「これなら、寒くないでしょ?」

声が震えている気がした。

「ふふっ、茅森さん、顔、まっかですよ…?」

「え!?」

「茅森さん、可愛い。」

「からかわないで!」

「事実ですもん。」

蒼井はくすくすと笑いながら、

「ほら、行きましょう?」

なんて言って、歩き出す。ちらりと見えた耳が、真っ赤になっていた。

(蒼井も照れてるじゃん!)

なんて、口には出さないけど。

「ねぇ、蒼井。」

「はい?」

「あったかいね。」

「…はい。とても、心地いいです。」

 

手を繋げて、触れ合う指先の熱が心地よくて。

 

「うん。私も。」

 

空に吐いた息が、白く溶けていく。

 

一歩一歩、進んでいければいいな、なんて、考えた。

 

「蒼井。」

「はい。」

「大好き。」

「私もです。茅森さん。」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ユッキーユッキー!手、繋げたよ!」

「朝からうるせー!!!!」

 

 

「いちごさん!朝、茅森さんから手を繋いでくれました!」

「あぁ、そうか。よかったな。」

 

 

 

ユッキーといちごには、今後もお世話になりそうだけど。

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