マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム 作:下城米雪
◯月曜日
作品 惑星ゲーム
目標 5分(世界記録2分
達成。
◯火曜日
作品 岩親父
目標 120分(世界記録70分)
達成。
◯水曜日
作品 登るだけ!
目標 30分(世界記録20分)
達成。
◯木曜日
作品 壺親父
目標 10分(世界記録1分
――達成。
『ミーコおめでとう!』
真希、褒める。
『ミーコがんばったね!
ミーコえらいね! ミーコかわいいね! ミーコ貢がせて♡』
:最後www
:^q^
:悔しいけど気持ちは分かる。すごかった
『ん~、撫でたい!』
:舐めたい?
:なめたいwww
:今なめたいって言った?
:もしもしポリスメン?
:通報した
『エアよしよし!
エアよしよし!
ん~、ミーコえらいえらい、ちゅ~!』
真希のアバターがミーコの周辺で荒ぶる。
:きっつ
:^q^
:ミーコの表情草
:マーキングやめろw
ミーコはこたつになった。
『……ミーコ!?』
:当然の反応なんだよなあ
:出たw
:何これwww
その後、3分ほど茶番が続く。
真希が涎を拭いたことでミーコが顔を出し、ようやく本題に入った。
『ところでミーコ、気にならない?』
ミーコは喋らない。
ただ、耳がピコピコしている。
『金曜日』
真希は言う。
『まだひとつ、残ってるよね?』
彼女が企画したRTAチャレンジは、五日連続となっている。
しかし作品名などが明かされているのは四日目まで。最終日である金曜日は「?」となっていた。
『発表します!』
真希はテンポ良く言う。
『最後の種目……
真のラスボスは……!』
ダラララララララララ……。
『じゃん!』
画面に表示されていた企画書が切り替わる。
次に現れたのは、パワポで作ったような一枚の表紙だった。
『真希にぽよテト3で勝つまで出られない部屋!』
:うわ
:監禁じゃん
:えぇぇ……
:そこまでやる???
:どんだけ入こたしたいのwwww
一部の視聴者達はドン引きしていた。
その理由は、真希が「ぽよテト」を選択したことにある。
『コメントでぼろくそ言われてますが……、
ウチも鬼じゃないので。期限は16日とします。ルールは3先ね』
:無理に決まってんだろ
:いやでもミーコなら
:なんで16日?
3先とは、先に3勝した方が勝ち、というルールのことである。
ぽよテトは、実力が拮抗していない限り、運に左右される要素が少ない。
3先ルールならば、超高確率で強い方が勝つ。
ミーコが真希に勝利するためには、単純に、実力で勝る必要がある。
しかし、真希はとてつもなく強い。
定期的に開催される「Vtuberぽよテト大会」においては、強すぎて
そんな相手に16日で勝つ?
無理に決まってんだろ。というのが真希を知る視聴者の総意だった。
『ミーコはテト派だけど、ぽよを使うなら、ウチが教えてあげてもいいよ♡』
真希は涎が垂れてそうな声で言った。
数秒後、ミーコはとても小さな声で返事をする。
『……ぇ、やだ』
:断られてて草
:ミーコよく言った!
:きゃー! ミーコが喋りましたわぁ!!
:真希涙拭けよ。ついでに涎も
『……どう、して』
真希はこの世の終わりみたいな声で言った。
ミーコは再び数秒の間を開けた後、蚊の鳴くような声で言う。
『…………かわいそう』
:かわいそうwwwww
:草
:どゆことwww
視聴者達はミーコの意図をくみ取れず、とりあえず笑った。
『どうして、何がかわいそうなの?』
真希は問いかけた。
またしても数秒の間が空き、ミーコは言った。
『……ぽよ』
『ぽよ!?』
ミーコの呼吸音。
『……あんな、かわいい子、消せない』
『えぇ!?』
ミーコは「ぽよ」のプレイを避けている。
その理由は、なんか、かわいそうだから。
『えー!?
やだやだ。やーだ!
ぽよ楽しいよ! 一緒にやろうよ!
ミーコがぽよやってくれるまで今日は配信終わらない!
やーだ! いやあああああ! やだやだやーだああああ!』
:なにこれ
:草
:^q^
:ほんときしょくてすこwww
真希は駄々をこねた。
ミーコはひたすら困惑した。
真希の癇癪は、十分近く続いた。
『うぅ、ひっぐ、ぐすん。
今日は諦めるね。ミーコもしっかり休んでね』
ミーコはうなずいた。
『終わり~』
そして配信は急に終わった。
この後、色々な意味で見どころの多かったミーコのRTAチャレンジは、たくさんのチャンネルで切り抜かれ、累計50万回ほど再生されることになる。
停滞していた生徒数、フォロワー数もまた、じわじわと伸び始めた。
当然、ファンの層が広がる。
その結果、一部の人々が気が付いた。
16日後って、確か――