マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム   作:下城米雪

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第32話 真のラスボス

◯月曜日

作品 惑星ゲーム

目標 5分(世界記録2分

 

 達成。

 

◯火曜日

作品 岩親父

目標 120分(世界記録70分)

 

 達成。

 

◯水曜日

作品 登るだけ!

目標 30分(世界記録20分)

 

 達成。

 

◯木曜日

作品 壺親父

目標 10分(世界記録1分

 

 ――達成。

 

『ミーコおめでとう!』

 

 真希、褒める。

 

『ミーコがんばったね!

 ミーコえらいね! ミーコかわいいね! ミーコ貢がせて♡』

 

:最後www

:^q^

:悔しいけど気持ちは分かる。すごかった

 

『ん~、撫でたい!』

 

:舐めたい?

:なめたいwww

:今なめたいって言った?

:もしもしポリスメン?

:通報した

 

『エアよしよし!

 エアよしよし!

 ん~、ミーコえらいえらい、ちゅ~!』

 

 真希のアバターがミーコの周辺で荒ぶる。

 

:きっつ

:^q^

:ミーコの表情草

:マーキングやめろw

 

 ミーコはこたつになった。

 

『……ミーコ!?』

 

:当然の反応なんだよなあ

:出たw

:何これwww

 

 その後、3分ほど茶番が続く。

 真希が涎を拭いたことでミーコが顔を出し、ようやく本題に入った。

 

『ところでミーコ、気にならない?』

 

 ミーコは喋らない。

 ただ、耳がピコピコしている。

 

『金曜日』

 

 真希は言う。

 

『まだひとつ、残ってるよね?』

 

 彼女が企画したRTAチャレンジは、五日連続となっている。

 しかし作品名などが明かされているのは四日目まで。最終日である金曜日は「?」となっていた。

 

『発表します!』

 

 真希はテンポ良く言う。

 

『最後の種目……

 真のラスボスは……!』

 

 ダラララララララララ……。

 

『じゃん!』

 

 画面に表示されていた企画書が切り替わる。

 次に現れたのは、パワポで作ったような一枚の表紙だった。

 

『真希にぽよテト3で勝つまで出られない部屋!』

 

:うわ

:監禁じゃん

:えぇぇ……

:そこまでやる???

:どんだけ入こたしたいのwwww

 

 一部の視聴者達はドン引きしていた。

 その理由は、真希が「ぽよテト」を選択したことにある。

 

『コメントでぼろくそ言われてますが……、

 ウチも鬼じゃないので。期限は16日とします。ルールは3先ね』

 

:無理に決まってんだろ

:いやでもミーコなら

:なんで16日?

 

 3先とは、先に3勝した方が勝ち、というルールのことである。

 ぽよテトは、実力が拮抗していない限り、運に左右される要素が少ない。

 

 3先ルールならば、超高確率で強い方が勝つ。

 ミーコが真希に勝利するためには、単純に、実力で勝る必要がある。

 

 しかし、真希はとてつもなく強い。

 定期的に開催される「Vtuberぽよテト大会」においては、強すぎて殿堂入り(出禁)。プロが参加する大会でも通用するレベルの猛者である。

 

 そんな相手に16日で勝つ?

 無理に決まってんだろ。というのが真希を知る視聴者の総意だった。

 

『ミーコはテト派だけど、ぽよを使うなら、ウチが教えてあげてもいいよ♡』

 

 真希は涎が垂れてそうな声で言った。

 数秒後、ミーコはとても小さな声で返事をする。

 

『……ぇ、やだ』

 

:断られてて草

:ミーコよく言った!

:きゃー! ミーコが喋りましたわぁ!!

:真希涙拭けよ。ついでに涎も

 

『……どう、して』

 

 真希はこの世の終わりみたいな声で言った。

 ミーコは再び数秒の間を開けた後、蚊の鳴くような声で言う。

 

『…………かわいそう』

 

:かわいそうwwwww

:草

:どゆことwww

 

 視聴者達はミーコの意図をくみ取れず、とりあえず笑った。

 

『どうして、何がかわいそうなの?』

 

 真希は問いかけた。

 またしても数秒の間が空き、ミーコは言った。

 

『……ぽよ』

『ぽよ!?』

 

 ミーコの呼吸音。

 

『……あんな、かわいい子、消せない』

『えぇ!?』

 

 ミーコは「ぽよ」のプレイを避けている。

 その理由は、なんか、かわいそうだから。

 

『えー!?

 やだやだ。やーだ!

 ぽよ楽しいよ! 一緒にやろうよ!

 ミーコがぽよやってくれるまで今日は配信終わらない!

 やーだ! いやあああああ! やだやだやーだああああ!』

 

:なにこれ

:草

:^q^

:ほんときしょくてすこwww

 

 真希は駄々をこねた。

 ミーコはひたすら困惑した。

 

 真希の癇癪は、十分近く続いた。

 

『うぅ、ひっぐ、ぐすん。

 今日は諦めるね。ミーコもしっかり休んでね』

 

 ミーコはうなずいた。

 

『終わり~』

 

 そして配信は急に終わった。

 この後、色々な意味で見どころの多かったミーコのRTAチャレンジは、たくさんのチャンネルで切り抜かれ、累計50万回ほど再生されることになる。

 

 停滞していた生徒数、フォロワー数もまた、じわじわと伸び始めた。

 

 当然、ファンの層が広がる。

 その結果、一部の人々が気が付いた。

 

 16日後って、確か――

 

 

 

 

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