マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム 作:下城米雪
真夜中のPTA会議。
真希に「休め」と言われた直後だが、ミーコは普通に配信を開始した。
『にゃっほろ~!』
朝でも夜でも同じ挨拶。
ちょっとごきげんなミーコの声が鳴り響いた。
:結局寝てないの草
:ミーコ複数人説
:体力無限猫
:かわいい
視聴者達は、やれやれ、という反応をした。
PTA会議という名に相応しく、こんな時間にも配信を見に来る人々は、保護者に近い感情を抱くようになっていた。
しかし、過度な干渉はしない。
多くの「Vtuber炎上事件」「メンタル崩壊による引退」を経験した熟練の視聴者達は推しの扱い方を心得ている。時間も良い。午前三時。まだ人生経験の浅いキッズ達は寝ている時間であり、コメントは非常に平和だった。
:ミーコクリアおめでとう!
:すごかったよ!
:泣いた
『えへへぇ、ありがとぉ』
ミーコは嬉しそうに言った。
それから雑談を続け、ふと、ひとつのコメントが目に留まる。
:そろそろ収益化しないん? スパチャしたいんだが
『収益化?』
知らない言葉だった。
ミーコは「百万人」という目標しか見ていない。
視聴者達はミーコに説明した。
『えっ!? お金もらえるの!?』
:知らないとかある?
:ま?
:かわいい
『やりたた教えて!』
:やりたたww
:落ち着けw
:動画の視聴時間とか大丈夫か?
視聴者達による丁寧な説明が続く。
ミーコは苦戦しながらも手続きを進め、そして――
『……ぎん、こう、こう、ざ?』
悲報。ヒキニート、詰む。
口座開設。年齢を考えれば全く問題にならない行為だが、十年間、時間が止まっていた「彼女」は、そのようなスキルを全く持ち合わせていない。
『……お外でなきゃダメ?』
:今はネットで申し込めるよ
:身分証とか大丈夫か?
:とりまお兄ちゃんに相談すればいいんじゃね?
『……相談してみるぅ』
ミーコは少し悩みながら返事をした。
兄の負担になりたくない。彼女が持つモチベーションのひとつである。
でも、それ以上にやりたいことがある。
だから、ほんの少しだけ悩んだ後、相談することに決めた。
『生徒諸君、色々ありがとね』
:良いってことよ
:理事長を支えるのは生徒の務め
:生徒に教わる先生とかおる~?w
『生徒に教わる先生?
そんなの居るわけ……おりゅ~!』
:乗りツッコミ草
:ご機嫌じゃん
:かわいい
深夜三時。ヒキニートのゴールデンタイム。
ミーコは教室ひとつでは収まらない数の視聴者達と雑談を続けた。
『んじゃ、そろそろ寝る~』
およそ一時間後、終わりの挨拶。
『また朝~』
:また朝~
:朝!? 明日じゃなくて!?
『おやすみ~』
急に現れた「収益化」というワード。
ミーコは多くの助言を受け、あとは口座を用意するだけ、という段階になった。
明確な目的がある。
それはまだ本人しか知らない。
とっておきのシークレット任務なのである。