マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム 作:下城米雪
深夜3時。
今宵もミーコ学園のPTA会議が始まる。
『ぽよぽよ~!』
:ぽ~!
:ぽよ~!
:ぽぽぽ~!
:ぽよ~!
『ぽぽぽって聞くと、背が高いあいつを思い出すよね』
:名前を言ってはイケないあの人
:ミーコの身長どれくらいだっけ?
『ミーコの身長は非公開です』
:130センチくらいかな
:小さそう
:小学生くらいのイメージ
『小っちゃいよ!』
:かわ……ん?
:否定してると思ったら肯定してて草
:解釈一致
今宵も穏やかな時間が始まった。
のんびり五分ほど経った後、ミーコが大きな声で言う。
『スキルを獲得しました!』
:ゲームかな?
:お?
:どんなスキル?
『時間差式にだぶごれんアタック!』
:真希の得意技じゃん……
:( ゚Д゚)?
:ラーメンの注文かな?
分かる人、分からない人、お腹が空いてる人。
色々な反応を見た後、ミーコは目を細めて言う。
『ちょっと待って。思い出してる』
ミーコの発言を分解すると「2ダブル+5連鎖攻撃」となる。
ぽよぽよにおける「ダブル」とは、2カ所で同時にぽよを昇天させることを言う。また、直前に付与されている数字は連鎖数である。
要するに「時間差式2ダブ5連アタック」とは、2連鎖目に2カ所同時に昇天させた後、少し間をあけてから5連鎖を決める攻撃である。
ぽよは連鎖をするゲームだと思われがちだが、実は違う。
大切なのは、相手が嫌がるタイミングでぽよを昇天させること。
と、真希は説明した。
なぜ2ダブなのか。なぜ5連鎖なのか。
その理由についても、真希はミーコに詳しく説明した。
『整った!』
ミーコはそれを自分の言葉に変えて説明する。
『まずは2連鎖を作ります』
:はい
:分かる
:うんうん
『2連鎖目で2カ所同時に昇天させます』
:なるほど
:2ダブの説明だね
『相手は困る!』
:確かに
:かわいい
『この時ひとつ大事なことがあって……えっと……』
:なんだろう
:タイミングかな?
『仲良しパワーが強いほど強い!』
:仲良しパワーとは
:連結数のことだろ
:いっぱい一緒に昇天するほど仲良し
:偶数ボーナスありそう
:それからそれから?
『それから……時間を空けて追加攻撃!』
:おぉぉ
:なんか強そう
『相手は……とても困る!』
:草
:語彙力w
:かわいい
:ガチ勢の得意技を説明されてこんなほっこりすることある?
『ふふんっ!』
ミーコは勝ち誇った。
誰に勝ったのかは分からない。
ただ、この瞬間、ミーコは確かに勝利したのである。
『今は……レート? 増やしてるよ!』
レート。
オンライン対戦における戦闘力。
勝てば増える。
負ければ減る。
『今日ね! 6連勝できた~! すごいでしょ~!』
:お~
:ミーコえらい!
:今レートいくつなん?
『ヌヒヒッ、今日はレート2300を達成したよ!』
:ほえー
:どれくらい強いのか分からん
:順調だね
『真希さん曰く、3000超えてからが本番っぽい』
:プロ基準定期
:いやいやいやいや……
:ミーコもうちょっと!
『そう! もうちょっと!』
分かる人、分からない人。
双方の立場からコメントが発せられる。
ちょっと良い気分なミーコ。
今は意図的に褒めてくれるコメントだけを見ていた。
ミーコだって人間だもの。
調子に乗りたい時はあるのだ。
因みに、レート2300から3000は全然もうちょっとじゃない。東京から大阪に徒歩で移動するくらいの隔たりがある。
『あー!』
ひとしきり無邪気な喜びを見せた後、突然の悲鳴。
『思い出した。明日、大会の予告配信があるっぽい』
:明日?
:日付変わる? 変わらない?
『寝て起きたら明日!』
:りょ
:把握した
:寝るまでは予告配信が始まらないってコト?
『寝ろ!』
:はい
:草
:力強い
『えっと、出場者の紹介とかあるっぽい!』
:ほえー
:ミーコ出るのか!
『名前だけ出るかも!』
:おー!
:あの予告配信、そこそこ同接続あるよな
:俺のミーコが知られてしまう……
:は? お前のじゃないが?
:俺たちのミーコが知られてしまう……
:よろしい
『仲良くして』
:はい
:ごめんね
:いいよ
:やさい生活
『楽しみ! ミーコどんな風に紹介して貰えるかな?』
:かわいい
:ゆーて有名配信者メインっしょ
:むしろ今は目立たず本番でかましていけ卍
『むぅ、あんまり期待できなそう?』
:ハードル下げとこ
『埋めた!』
:思い切りの良さ
:草
『えっへっへ』
ミーコの耳がぴこぴこする。
『まあ、正直、名前だけ呼ばれて終わりかなって思う。
それでも、やっぱりちょっとワクワクする』
:同時視聴する?
『同時視聴やりたい!
でも、その時間は真希さんと練習する予定……』
:マジか
:めちゃストイックじゃん
:ゆーてガチ勢が集まる大会ではある
:あくまでVtuberレベルだけどね
:真希は除く
:真希は除かれた定期
:草
以上、ミーコは伝えるべきことを言い切った。
『ふぅ……』
一仕事終えた後の満足した声である。
ミーコは額の汗を拭い、手元の水を飲んでから言った。
『雑談しようぜ!』
:舞ってた
:来た
:とっておきのネタを仕入れておいたぜ!
その後、ミーコは生徒達と楽しく会話した。
ミーコは今日も元気いっぱい。どんな話でも心から楽しそうに笑った。
――大会まで、残り12日。