マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム   作:下城米雪

47 / 68
第40話 予告!

『こんばんは。本大会も司会を務めますファシリ・テイトです』

 

 午後九時頃。

 Vtuberぽよテト最強決定戦の予告を行う配信が始まった。

 

 このイベントが初めて開催されたのは、今から三年くらい前。

 主催者は「ぽよテト」を愛する個人勢のPoYoテイト。ポテトみたいな外見をしたモンスターである。彼は初開催の時から手当たり次第に営業活動を行った。そして、登録者数百万人クラスの超有名Vtuberを誘致することに成功したのである。

 

 その結果、イベントは大盛り上がり。

 翌年も開催され、今では半年に一度の名物イベントとなっている。

 

『主催者のポテト氏が今大会に向けたPVを作成しました。早速ですが、紹介させて頂きます。どうぞ、ヘッドホンを付けてご覧ください』

 

 PoYoテイトは「ポテト」と呼ばれている。

 せっかく凝った名前を付けたのに、呼びやすい方に収束してしまったのだ。

 

 さておき。現在の視聴者数は2万人弱。コメントの勢いは凄まじいものがあり、優れた動体視力が無ければ目で追うことすらも難しい。視聴者の会話が成立するミーコの配信とは全くの別物だった。

 

 ――画面が暗転する。

 動画の始まりは、とても静かだった。

 

 ――トゥーン。

 光の粒が落ちたかのような反響音。

 

 ――あなたにとって、ぽよテトとは。

 画面中央に白い文字が現れた。

 

 パッ(フラッシュ)

 目と口のあるポテトが現れた。

 

『サラダ』

 

 コメント欄が混沌に包まれた。

 

 再び暗転。

 シュッ、という風を切るような音。

 

 ――伝説。

 

 真希が圧倒的な実力で勝利した際のダイジェストが15秒程度で紹介された。

 

 ――追放。

 

 真希が出禁になった際のダイジェストが15秒程度で紹介された。

 

 ――熱戦。

 

 過去大会の名勝負ダイジェスト。

 当時を知る人ならば、間違いなく胸が熱くなるようなシーンの欲張りセット。

 

 ――疑念。

 

『永遠の二位争い楽しいですかぁ?』

 Σタノシイデスゥ!

 

 真希が過去に放った発言。

 再び過去大会のダイジェストが始まり、それを背景として次々と文字が現れる。

 

 ――所詮、絵畜生の大会。

 ――屈辱を胸に、灼熱の接戦。

 

 ――プロ絶賛。

 ――同接10万人突破。

 

 ――ここが天井か?

 ――否

 

 参加者の紹介が始まった。

 一枚絵と一言の紹介文。一人あたり五秒程度の尺で次々と紹介される。

 

 ミーコも一瞬だった。

 紹介文は、最近話題のブラコン理事長猫。それだけ。

 

 ――超える。

 

 また、途中途中に黒い背景と文字が差し込まれた。

 それは参加者の紹介のようであり、実は、とある一人だけを示している。

 

 ――最強、来れり。

 

 パッ(フラッシュ)

 画面が切り替わり、何か、イラストの一部が表示された。

 

 徐々にカメラが上昇する。

 やがて映し出されたのは、一人の男性Vtuberだった。

 

 二ノ宮ホタル。

 チャンネル登録者数、200万人以上。

 

 ゲームに特化した配信者であり、その実力はプロをも凌ぐ。

 実際、いくつかの賞金が出る大会で優勝したことがある程だ。

 

 ジャンルは問わない。

 Vtuber同士の対戦においては負けを知らない。

 

 性格は極めて強気で挑戦的。

 しかも男性声優のような甘い声を持ち、多くの女性ファンを集めている。

 

 ――参戦。

 

 瞬間、本人がSNSに参戦を表明する投稿をした。

 その投稿は瞬く間に拡散され、予告配信の視聴者数が激増する。

 

 動画が終わった。

 画面には、司会のファシリ・テイト、主催者のポテト、そして――

 

『やぁ、待たせたね』

 

 白銀の髪、透き通るような蒼い瞳。

 強気な表情を浮かべた「主役」の姿があった。

 

 コメントが爆発する。

 もはや文字として認識することすらも困難な勢いであった。

 

『驚きました。まさかホタルさんが参戦するとは』

 

 早速、司会のテイトが言った。

 動画は気合の入った3D配信。

 ホタルは頬に手を当て、目だけを動かして隣に立つテイトを見た。

 

『ひとつ良いかな?』

『もちろんです』

 

 息を吸う音。

 

『僕が優勝した後の話なんだけど』

『おぉぉ?!』

 

 ポテトが言う。

 

『なに?』

 

 ホタルが鋭く目を細めて言った。

 

『ひゅっ。いやぁ、始まる前から強気だなぁ、と』

『当たり前じゃん。僕、最強だから』

 

 見事なカメラ目線。

 

『続き、良いかな?』

『どうぞどうぞ』

 

 ポテトは腰を低くして言った。

 

『元最強、呼んでよ』

『真希さんのことですか?』

『そう。そいつ。雑魚相手に無双しても退屈だからさ』

『おぉぉぉ……言いますねぇ』

 

 ここでファシリ・テイトが口を挟む。

 

『ホタルさん! 朗報がありますよ!』

『なに?』

『今回は……なんとっ、優勝者と真希さんのエキシビジョンマッチが行われます!』

『へぇ、良いこと聞いた』

 

 ホタルは再びカメラ目線になる。

 カメラさんも空気を読み、彼をアップで映した。

 

『教えてやるよ。真の最強が、誰なのか』

 

 司会者のテイトと主催者のポテトは「おぉぉ」という感嘆の声を発した。

 その後、テイトが言う。

 

『しかし、まずは優勝する必要があります』

『あのさ、誰に言ってんの、それ』

『いやいや。この大会、プロも絶賛するくらいハイレベルですから』

 

 カメラがテイトに向けられた。

 実はこれ、台本通り。テイトは次々と有力な参加者の情報を伝えた。

 

 その中に、ミーコの名前もあがる。

 

『こちらは最近ちょこちょこバズってるミーコ学園の理事長、ミーコさんですね』

『バズってる? どれくらい?』

『えぇっと……魂も知らない肉体が話題になった時は、一万リポストくらいですね』

『へぇ。やるじゃん。僕が挨拶した時と同じくらいだ』

『あはは、ホタルさんはレベルが違いますね』

 

 画面にミーコの資料が映る。

 

『あまり情報が無いのですが、この方、なんと真希さんの弟子みたいです』

『へぇ、良いね。面白い』

『おっ! 流石のホタルさんも気になりますか?』

『弟子の仇を取る師匠とか、配信的に面白い』

『うぉっ、おぉぉ~、相変わらずの自信ですねぇ』

『何度も言ってるじゃん。僕、最強だから』

 

 ミーコの話題は終わり。

 その後は「主役」の話で持ち切りだった。

 

 他の参加者のファンとしては面白くない。

 しかし、配信としてはこれ以上は無い成功だった。

 

 最大瞬間同時接続数、8万人。

 予告配信としては、歴代1位の記録となった。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。