マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム 作:下城米雪
深夜3時15分。
いつもと少し違う時間。
『にゃっほろぉ~!』
:にゃほ~!
:ほ~!
:にゃ~!
:舞ってた! 今日ちょっと遅かったね
『ふっふっふ』
:!?
:( ゚Д゚)?
『3時、15分』
:ミーコ!
:なるほどw
:ミーコタイムか
『せいか~い!』
ちょっとした思い付き。
これまで3時ピッタリくらいに配信していたミーコだが、今日は戯れに「3時15分」という語呂合わせで配信を開始した。
:終わりは4時15分、よいこか?
『ぐわぁっ』
突然の負けボイス
『バレた~!』
:かわいい
:草
:分かりやすいwww
ミーコはそっぽを向いた。
『生徒諸君を良い子だねって褒めようと思ったけどやめます』
:求、記憶を消す方法
:住所を晒すとかオススメだよ^q^
:この場合ミーコの記憶を消す必要があるのでは?
:住所を晒すとかオススメだよ^q^
:ダメだこいつ無敵だわ。ワイの負けや
『ヌヒヒッ、生徒諸君、今日も仲良しだ』
:その笑い方すこ
:音にすると、ひゅひゅひゅ?
:ぬひひ、じゃね?
:みゅひひ?
『にっしっし』
:それは違う
:かわいい
:新しい音素材たすかる
普段よりも十五分長く待たされた生徒達。
待望のミーコと会えた彼ら彼女らは、今宵も元気だった。
『りっすん!』
:はい
:( ゚Д゚)?
:突然の英語
『ミーコ、またスキルが増えました!』
:おぉ~!
:ぽよ?
『ぽよ~』
:流石、成長が早い
:どんなスキル?
『ぬんっ!』
真剣な顔をするミーコ。
:?
:( ゚Д゚)?
:(。・ω・。)じっ
『凝視!』
:あ~
:えっ、もう?
:( ゚Д゚)?
凝視とは、相手の盤面を見ることである。
ただ見るだけではない。現在の最大火力、戦略などを読み取る必要がある。
もちろん難しい。
自分の盤面を作りながら、相手の盤面も把握するなどマルチタスクにも程がある。
だが、上級者はみんなできる。
相手の状況によって「フェイント」を打ち込んだり、自分の戦略を変えたり、一瞬の隙を見つけて速攻を仕掛けたりする。
そのスキルを、初心者であるはずのミーコが習得した。
自称しているわけではない。真希が「ヨシ!」と認めたのだ。
『レートも2600まで増えた~!』
:ふぁっ!?
:お~
:昨日より300増えてる!
:真希どんな特訓してるの……?
:そういえば真希のレートどれくらいなの?
『真希さんのレート知らない。
でも気になる。明日聞いてみるね』
:明日? 日付変わる?
『おじいちゃん、その話は昨日もしたよ』
:今日もして
『寝て起きたら明日!』
:寝なければ今日は終わらないってコト?
『寝ろ!』
:はい
:草
:なにこれwww
:実家のような安心感ある
:実家で安心できるとか親ガチャ当たりかよ
『ところで!』
ミーコは流れをぶった切る。
『予告どう!? ミーコ出た!?』
:出てたよ~
:出てた
:ちょっと出た
『おぉぉぉぉお!?』
:かわいい
『どうだった? どんな感じだった!?』
生徒一同、悩む。
あの予告配信では完全に「二ノ宮ホタル」が主役だった。
:真希の弟子って言われてた
:謎の新人。ダークホースに成り得るか、みたいな扱いだったよ
発言しなかった生徒達は、絶妙な切り抜き方をした二人を尊敬した。
『ダークホース!?』
ミーコはとても無邪気な反応を見せる。
『闇の力!』
:それはダークフォース
『しゅこぉ~!』
:かわいい
:しゅこぉ~
:しゅこぉ~٩( ''ω'' )و
『ヌヒヒッ、楽しい~!』
:こっちの方が楽しいが?
:生きがい
今宵もミーコの深夜配信は平和だった。
誰でも参加できるはずなのに、人が少ないこともあり、メンバーシップ限定配信に近いアットホームな雰囲気となっている。
ただ、一部の生徒は、いくつかの言葉を呑み込んでいた。
大会、出ない方が良いかもしれない。
理由は言語化できない。ただ、なんとなく、そう思った。
だけど行動には繋がらない。こちらの理由は明確である。
全力で頑張るミーコに向かって「やめとけ」なんて、言えるわけがないのだ。
――大会まで、残り11日。