マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム 作:下城米雪
自称四天王が集まるチャットルーム。
ここはミーコが旅立った後も毎日動いている。
挨拶などは特にない。
ひとつ言えるのは、ミーコの配信直後に活性化すること。
4時15分。
良い子じゃない四天王達の二次会が始まった。
:今日もかわいかった
:頬もげそう
:このままだと顔面ムキムキになるかもしれない
:っ鏡
:うわっ、化け物!
:あなた達、今日も元気ですわね
:うわっ、化け物!
:うわっ、化け物!
:うわっ、化け物!
:あ”?
お互い顔も名前も知らないが、冗談が通じる程度に仲が良い。
:この中に雑談チャレンジしたやつおりゅ?
:わたくし、やりましたわよ
:お前は分かるからええわ
:(# ゚Д゚)
しばらくミーコを賞賛。
各自の語彙力が尽きた頃、誰かが唐突に言った。
:二ノ宮ホタル参戦、ぶっちゃけどうよ?
視聴者の層は配信者によって異なる。
基本的には平和だが、母数が増えれば荒れるリスクも高まる。特に、特定の配信者のファンが別の配信に現れた時、しばしば問題が起こる。
四天王は初期のミーコを見つけたほどのマニアである。
もちろん数万人のVtuberを全て知っているわけではないが、二ノ宮ホタルのような大物の情報くらいは網羅している。
故に、四人とも同様の懸念を抱いていた。
:別にホタルが悪いとは言わないけどさ……
登録者数、二百万人。
それだけの人数が集まれば厄介な人物の数も多くなる。実際、彼のファンは何度も問題を起こしている。
もちろん彼は何度も注意喚起を行っている。
しかし、二百万人を制御するには至っていない。
このため彼はコラボを控えているのだが、大会などのイベントには稀に顔を出す。それが逆に希少価値を生み、彼が参加したイベントには多くのファンが集まる。
そして、彼のファンが対戦相手に何かコメントしなかったことは一度も無い。彼は何度も注意しているのだが……そんなこと彼のファンではない四天王には関係無い。
もちろん杞憂で終わる可能性もある。
しかし、彼のファンがミーコに攻撃する可能性を否定できない。
:自称最強さん調教が足りてねんだわ
:お下品な表現はおやめなさい。はしたない
:調教って上品な言い方あんの?
:教育とかじゃね
:自称最強さん教育が足りてねんだわ
:主語を省略すると本人に対する侮辱に聞こえます。はしたない
:( ˘ω˘)スヤァ
台本の無い会話は直ぐに発散する。
しばらく毒にも薬にもならない会話が続いた。
:ただ、大きなチャンスであることは確かですわね
:せやな
:最悪バックにはお兄さまがおる
:それな
:絶対的な信頼感あるわ
:悩みどころですわね
:何が?
:ミーコと結婚して、お兄さまをお兄さまにするか。それとも、お兄さまと結婚してミーコを妹にするか
:今日も絶好調で安心するわ
:ところで
:どうした
:あの紹介文は誰が考えたんですの?
:それな。なんだよブラコン理事長猫って
:解釈が違い過ぎる。真希なら絶対ありえん
:ポテトか? 配信見てねぇだろあいつ。焼くぞ
:逆に、お前らならなんて書く?
四天王、しばし検討。
その後、ぽつりぽつりと投稿。
:こたつ系エンジェル猫
:いや、妹系こたつ猫か
:未来の妹、でしょうか(照れ
:ミーコみたいな妹と同じこたつに入ってゲームしたいだけの人生だったが、あえて選ぶなら違うだろ。具体案は無いがミーコの魅力はそこじゃない
:オーケー。徹底的に話し合おうか
四天王による激論が始まった。
結局結論は出なかったのだが、四人はノンストップで十二時間ほど語り続けた。もちろん私生活の合間に投稿しているのだと予想できるが……まぁ、そういう人物達の集まりということである。色々な意味で。
さておき大会に向けた不安が消えたわけではない。だが、暗い話を続けて気分を下げる理由も無い。四天王達は、どっしり構えると決めた。
何が起きたとしても、全力でミーコを応援する。
やることは、何も変わらないのだから。
――大会まで、残り10日。
今日のミーコはお預けです。
次のミーコは16日の3時15分。