マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム   作:下城米雪

6 / 68
第6話 反省会

『第一回、反省会、始まるよ~!』

 

:うぇぇぇああああ!

:はーい

:テンションの差w

 

『結果発表~!』

 

:お?

:いきなり?

 

『自己紹介動画の再生数は……現在、43回!』

 

 非常に微妙な数字。

 リスナー達はどういう反応をするべきか悩み、コメントが途絶えた。

 

『すごくない!? 43だよ! 隣のクラスの子まで再生してる計算だよ!』

 

 しかしミーコは普段通りだった。

 その声からは本気で喜んでいることが伝わってくる。

 

:フォロワーは増えた?

 

『見てない!』

 

:なぜw

:そこがKPIじゃんw

 

『ケーピーアイって何?』

 

:おっとw 拙者KPIなどとついwww

:目標のことだよ

 

『あー、それは……なんか怖くて』

 

:でもツイッターの営業も大事だぜ?

:そうそう。フォロー返とかリプ返とか

 

『分かる。分かるんだけど〜』

 

 ミーコは唸る。

 

:私がミーコのサブ垢を演じようか?

:それは草

 

『……有りかも?』

 

:無しだろ

:私は本気です

:お兄ちゃんツール作れるんじゃね?

 

『ツール?』

 

:フォロワー数を見なくて良い奴

 

『マジか、そんなんできんの?』

 

:割と簡単よ

:お兄ちゃんコミュ力的に営業っぽくない?

:お兄様に不可能はありません。信じましょう

 

『分かった。頼んでみる!』

 

:過剰スペックの予感

:ワクワクするね

 

『そんなことより、自己紹介動画、どうだった?』

 

 コメントは沈黙した。

 ミーコは十秒ほど待った後、そわそわした様子で言う。

 

『結構いい感じかなと思うんだけど……』

 

 ミーコの猫耳が尻尾を振る犬みたいに揺れている。

 しかし、さらに十秒ほど待ってもコメントが流れない。

 

:俺は好きだよ?

 

 長い沈黙を破ったのは、ひとつのコメントだった。

 

『ヌヒヒッ、だよね!』

 

:守りたい。この笑顔

:うぉぉん、おぉんぉ、ぉぉぉんぉん

 

『何その悲鳴、おもしろ』

 

:まぁでも、始まったことが大切よな

:それな。千里の道も一歩から!

 

『一ヵ月しかないけどね』

 

:ミーコが言うなしwww

:ゆーてコツコツやるしかないべ

:金の力でクソほど宣伝する手もある

 

『お金の力かぁ……』

 

:お兄様の出番か?

 

『ううん、まずは自演だけでがんばってみる』

 

:堂々とした自演宣言で草

:ったくw 援護射撃は任せとけw

:自演じゃなくて自分では?

 

『自演だよ』

 

:草

:こういう闇あるところも好き

 

『手段を選んでる余裕は、ミーコには無いんだよ』

 

:バレなきゃ自演じゃないって言うしな

:他の新人とセットで紹介するのがコツ

:↑悪いこと教えんなw

 

『なるほど。他の新人とセットか……』

 

:こらw

:ゆーて勉強の為に他の人を見るのも大事よ

 

『ふむふむ。覚えとくね』

 

:勉強の方だよな? 自演のやり方じゃないよな?

 

『……ふっ』

 

:アーニャみたいな笑い方しやがって

:とりあえず、継続は力だよ

 

『うん! 毎日続けるからね!』

 

 ──反省会は和気藹々と続いた。

 悪い点を指摘するのではなく良い点を伸ばす。打ち合わせをしたわけではないが、リスナー達の見解は一致していた。その結果、反省会というよりも、これから頑張るという決意表明の場になった。

 

 リスナー達は、ほんの少しだけ引っかかるモノを感じながらも、ミーコが楽しそうだから良いか、と前向きに捉えた。

 

 配信の後、()()はいつものようにベッドに飛び込んだ。

 そして枕にギュッと顔を押し付けた後、自分の言葉を思い出す。

 

「……手段を選んでる余裕は、無い」

 

 使えるモノは全部使う。

 自分にできることは、全部やる。

 

「……お金は、なんか違う」

 

 多分、兄に言えば無限に出してくれる。

 金の力を使って宣伝しまくれば、一ヵ月で千人のフォロワーを集めることは十分に可能だと思われる。

 

 だけど彼女はそれを望まない。

 一時的に、実力以上の数字を得ても意味が無い。

 

 あくまで、有名になりたい。

 兄に「心配しなくても大丈夫だよ」と伝えたい。

 

「……私には、何ができるのかな」

 

 ──少しずつ、彼女は前を向く。

 その一歩は、とても小さい。まだスタートラインすらも見えていない。

 

 だけど、大きな一歩だ。

 十年も停滞した時間を進める為の、偉大なる一歩だ。

 

 その強い想いは、必ずしも報われるとは限らない。

 だけどそれは、少しずつ、本当にゆっくりと、周囲を巻き込んでいくことになる。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。