マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム   作:下城米雪

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第52話 最強 vs 最弱

 ミーコとリンゴンの試合が終わった後、少し間を置き、二ノ宮ホタルとスピネイルの試合が始まった。こちらは二人とも「テト」を選択し、目で追うことも難しいハイスピードな試合展開となった。

 

 双方共に一歩も譲らず、「残り2ラインで敗北」という状況になっては、驚異的な粘りを見せ、今度は逆に相手が残り2ラインで敗北という状況に陥る。

 

 それなのに、どういうわけか差が開いていく。

 前回優勝者のスピネイルは、7回のゲームのうち、2回しか勝てなかった。

 

 決勝は、ミーコと二ノ宮ホタル。

 Vtuber最強の「ぽよ」使いとVtuber最強の「テト」使いによる異種戦となった。

 

 視聴者数は十五万人を超えた。

 コメントの勢い、盛り上がりは、留まるところを知らない。

 

 ぽよのミーコか。それともテトの二ノ宮ホタルか。

 Vtuberにおける「ぽよテト」最強プレイヤーを決める戦いが始まろうとしていた。

 

 

 *  ――  *

 

 

 さっきのゲーム、楽しかったなぁ。

 思えば、誰かと一緒にゲームした経験あんまりないかも。

 

 お兄ちゃんは忙しくて、友達なんて居なかった。

 これまでの練習を考えれば、真希さんと一緒だったし、画面の向こうには常に相手が存在していた。でも、あんまり一緒にプレイしている気分にはならなかった。

 

 やっぱり、顔が見えるから?

 それとも相手の声が聴こえたから?

 

 どっちでもいっか。

 

 私は、全力で楽しむ。

 応援してくれる生徒達に応える。

 

(……本当は、私が一番弱いのに)

 

 ふと、不思議な気持ちになった。

 

(……ミーコなら、勝てるかもしれない)

 

 なんだか自分が強くなったような感覚がある。

 勘違いだって分かるけど、でも、なんか、そんな気分。

 

『ミーコ選手、意気込みをどうぞ!』

『…………にゃほぉ、ミーコでーす』

『あははっ、決勝もそれか』

 

 会話は、まだ難しいけど~!

 

 

 *  *  *

 

 

『ホタル選手、お願いします』

『あと、ふたつ』

 

 ファシリ・テイトの質問を受け、二ノ宮ホタルは指を二本立てた。

 それはミーコに勝つという宣言であり、真希にも勝つという宣言でもある。

 

 多くは語らない。

 常に余裕を見せているホタルだが、流石に集中している様子が見えた。

 

 ミーコを警戒しているのか。

 それとも、ゲームに入り込んでいるだけか。

 

 その答えは、直ぐに分かる。

 ――試合、開始。

 

 画面の左側にミーコ。右側の右側にホタル。

 お互い、AIが操作しているかのようなスピードでプレイを始めた。

 

 ――これまで、ミーコは「ぽよ」と対戦することが多かった。

 ぽよ同士の対戦は、連鎖を組み立てながら互いの様子を見る戦いとなる。

 

 しかし、相手が「テトの上級者」である場合は全く異なる。

 

『ホタル選手ぅ! いきなりのパーフェクトだぁ!』

 

 盤面、全てのラインを消し去ること。

 序盤にしかできない高度な技であり、攻撃力も非常に高い。

 

 ミーコの盤面に横一列の岩ぽよが降り注いだ。

 その結果、これまでに用意していた連鎖が全て封印される。

 

『ミーコ選手掘り始めるが、間に合うのかぁ!?』

『はは、間に合うわけないじゃん』

 

 ファシリ・テイトの実況に対して、ホタルがコメントした。

 その瞬間、彼の盤面で二度目の「パーフェクト」が発生する。

 

:いやいやいや……

:何これ無理ゲーじゃん

:ぽよ勝ち目なくね……?

 

 決勝、第一戦。

 勝者、二ノ宮ホタル。

 

 試合時間は、僅か三十秒だった。

 

 

 *  ――  *

 

 

 すごぉぉっぉ!?

 連続パーフェクト!? 何それぇ!?

 

『ミーコ選手、目を見開いております』

『ぽてぇ……』

『ポテトさん、早くヒトの言葉を取り戻してください』

 

 そうだ、そうだった。

 テトは「速い」から、戦い方を変えないとダメなんだった。

 

『ポテトさん、ミーコ選手……いや、ぽよに勝ち目はあるのでしょうか?』

『ぽてぇ……』

『真希さぁん!? 解説変わって頂けますかぁ!?』

 

 むぅ、まだ実況が聴こえる。

 ミーコ集中できてないのかな?

 

(……集中。集中。集中)

 

 

 *  *  *

 

 

 二試合目。

 ミーコは明らかに戦い方を変えた。

 

『へぇ?』

 

 それを見てホタルが呟いた。

 しかし、彼は戦い方を変えない。

 

 彼の操作は、上級者としては遅い。

 それは「パーフェクト」を狙った戦略を選択したからである。

 

『ほら、パーフェクトだ』

 

 再び大火力がミーコの盤面を襲う。

 だが、ミーコのぽよは縦に積み上げられており、まだ反撃の芽が残っている。

 

『あは、また作れちゃった』

 

 ホタル、またしても連続パーフェクト。

 AIのような精密操作を前に、コメント欄は湧き上がる。

 

 また一瞬で終わるのか。

 誰もがミーコの敗北を想像した瞬間――

 

『へぇ、やるじゃん』

 

 ミーコは5連鎖に成功した。

 ホタルのラインが少しだけ上昇する。

 

『まあ、僕が勝つけどね』

 

 ほんの数秒後、3回目のパーフェクトが炸裂する。

 ミーコの盤面は2度のパーフェクトでボロボロになっており、先程の5連鎖の反動によって攻撃の余地が残っていない。

 

 0:2。

 試合は、一方的な展開となりつつあった。

 

 

 *  ――  *

 

 

(……二回目が遅かった)

 

 私は直前のゲームを思い出す。

 

(……左は間に合う。少し減らして右にも準備しなきゃ)

 

 テトは横一列に降り注ぐ。

 ぽよが完全に埋まった場合、何もできない。

 

 だから縦に積む。

 一ヵ所でも友情パワーを注ぎ込める余地があれば、反撃できる。

 

(……大丈夫。真希さんと一緒に練習した通り)

 

 あれ、あの時の相手はAIだったっけ。

 ……うん、あってる。すっごく強かった。

 

 あのAIと比べたら……まだ、遅い。

 

 

 *  *  *

 

 

『ホタル選手2連勝だぁぁぁぁ!』

 

 ファシリ・テイトの実況が響き渡る。

 

『予選では見せなかった連続パーフェクトぉ!?

 なんだこれは、なんだこれは、なんだこれは!?』

『あは、君、叫び過ぎだよ』

 

 ホタルは実況に返事をした。

 次のゲームが始まる前の時間とはいえ、それは余裕を感じさせる態度だった。

 

『単純に疑問なんだけど、どうして驚くのかな?

 いつも言ってることだよ。これは当然の結果だ。だって――僕、最強だから』

 

 カメラ目線。

 その直後、三試合目が始まった。

 

 2試合目と似たような展開。

 ミーコが端にぽよを積み上げ、ホタルは淡々と「パーフェクト」の準備をする。

 

『パーフェクト。僕、これ好きなんだよね』

 

 開幕速攻。

 再びミーコを襲う理不尽な火力。

 

『だって、そう思うでしょ。

 完璧な僕にピッタリの技だよ』

 

 ミーコは、この一撃を受けた。

 盤面の三割程度が岩ぽよに埋め尽くされる。

 

『あは、今回は運が良い。もう二回目が作れた』

 

 ホタルは追撃をした。

 しかしミーコ、これも受ける。

 

『うん、これで終わりかな』

 

 ホタル、圧巻の三連続パーフェクト。

 ミーコの盤面は、既に埋め尽くされており、たった一列しか残っていない。

 

『よし』

 

 ポテトと交代した解説の真希が言う。

 

『いいよ。ミーコ。それが正解』

 

 唯一残った場所に、岩ぽよが降り注ぐ。

 ミーコはギリギリ「生存」しているが、ぽよを回転させることもできない。

 

 ――否、回転させる必要が無い。

 先を見たミーコは、相手の攻撃を待ち、あえて受けた。

 

 計算された位置にぽよが落下する。

 そして――反撃の大連鎖が始まった。

 

『あはっ、やるじゃん!』

 

 岩ぽよを一掃する8連鎖ダブル。

 ホタルはタイミング良く四度目のパーフェクトを成功させたが、ぽよの攻撃を相殺できず、ラインが一気に上昇する。

 

『良いね。真希と戦う前の準備運動にピッタリだよ』

 

 リンゴンとミーコの試合とは違う。

 二ノ宮ホタルは、配信者として、その場の出来事を大袈裟に実況していた。

 

 ファシリ・テイトも負けじと実況する。

 しかしコメント欄には「スーツうるさい」という無慈悲な反応。

 

『面白い。競争しようか!』

 

 ホタルがラインを掘り下げる。

 その度に降り注ぐ岩ぽよを相殺しながら、ミーコが次の攻撃を用意する。

 

『――ほら、パーフェクトだ』

 

 五度目のパーフェクト。

 ミーコの攻撃によるダメージは、全て消し去られた。

 

:無理ゲーなんよ

:うわぁ……

 

 ミーコを応援する者達の間に、絶望的な雰囲気が流れた。

 しかし――決して、振り出しに戻ったわけではない。

 

『マージンタイム』

 

 解説の真希が呟いた。

 その直後、ミーコが2連鎖ダブルを決める。

 

 最初、ミーコはパーフェクトに対する反撃として5連鎖を放った。

 その結果、攻撃を相殺して、ほんの少しだけホタルのラインを押し上げた。

 

 今回は2連鎖ダブル。

 その威力は5連鎖よりも小さい。

 

 しかし――

 ホタルのラインが、僅かに上昇した。

 

『マジかッ』

 

 この結果を受け、ホタルが初めて驚いた声を出した。

 しかし、慌てず冷静にパーフェクトを作ろうとする。

 

 ――それはダメ。

 

 その動きを咎めるようにして、ミーコが攻勢に回った。

 ホタルのラインが一気に上昇する。そしてそれは、一度では終わらなかった。

 

『なぁんとぉ!? ミーコ選手! 奇跡の一勝だぁ!! 熱い! 熱過ぎる! これは決勝に相応しい名勝負の予感です!』

 

 コメント欄のFPSが足りなくなった。

 その後、ミーコは立て続けに勝利する。

 

 3:2。逆転。

 勝負は、まだ分からない。

 

:これ、どっちが勝つんだ?

:勢いに乗ってるミーコか?

:なんだかんだホタルだろ

:全然分からん。どっちもヤバすぎ

 

 視聴者達の雰囲気も変化していた。

 二ノ宮ホタル圧勝ムードから一転して、勝敗が読めない状況になっている。

 

『――温存したかったけど、仕方ない』

 

 その雰囲気を壊すようにして、ホタルが呟いた。

 詳細についてファシリ・テイトが問うけれど、ホタルは答えない。

 

 もはやヘラヘラとした余裕は無い。

 画面越しでも分かる程に、彼は集中していた。

 

 第6試合。

 

 ホタルはこれまでパーフェクトを連発していた。その代償として、速度を落としてプレイしていた。しかし、今回は違う。

 

 100パーセント。

 人間の限界に迫るようなスピードで、彼はテトを「左右」に積み上げた。

 

『おぉっと!? 二ノ宮ホタル、まだ隠し技を残していたようです!』

 

 先程までとは明らかに違う戦い方。

 それを見て、実況もコメント欄も盛り上がる。

 

『――連鎖は、ぽよの専売特許じゃない』

 

 あっという間にテトを組み上げた後、それは始まった。

 

 テトにも「連鎖」の概念がある。

 そして大連鎖による瞬間的な火力は――パーフェクトに勝る。

 

 連続1ライン消し。パーフェクトによる速攻を意識していたミーコの意表を突くようにして、それは始まった。

 

:これもうラスボスだろ

:絶望感やばすぎ

 

 唖然とする視聴者達。

 心なしかコメントの勢いも弱まった。

 

 対して。

 ホタルの新しい攻撃を受けたミーコは……。

 

 

 *  *  *

 

 

(……なぁにそれぇ!? すごー!)

 

 彼女は、楽しんでいた。

 

(……でも見たことあるー!)

 

 そして、この攻撃は真希が想定していたものだった。

 

(……対策は)

 

 数秒後、思い出す。

 

(……友情パワーでパワー!)

 

 相手の火力を上回る攻撃を叩き込む。ただそれだけ。

 ただし闇雲に連鎖しても勝てない。相手の方が速いからだ。

 

(……まずは、耐える)

 

 マージンタイムを利用する。

 

(……大丈夫。我慢するのは、得意だから)

 

 二ノ宮ホタルの猛攻は止まらない。

 一撃の間隔は先程よりも遅いけれど、その分、威力が大きい。

 

『ミーコ選手ぅ、これを耐えるぅ!

 だがホタル選手、早くも次を用意している!?』

 

(……もうちょっと。もうちょっとだけ耐えて)

 

 ……

 

(……むにゅぅぅぅぅ)

 

 

 *  *  *

 

 

 一進一退の展開が続いた。

 ミーコが逆転した後、再びホタルが逆転。勝利まで、残りひとつ。

 

 3:4。崖っぷちのミーコ。

 しかしゲームの内容は徐々に良くなっている。

 

『……いいねぇ。いいねぇ。そうじゃなきゃ面白くない』

 

 優勢のはずのホタルは、疲労していた。

 

『でも勝つのは僕だ! このゲームで終わらせる!』

 

 八試合目が始まった。

 互いの戦略は明確である。

 

 攻めるホタル。

 耐えるミーコ。

 

 攻撃と防御。

 タイミングがコンマ数秒でもズレたら負け。ズラされても負け。判断ミスひとつで致命的なダメージを受けることになる。極限の戦い。

 

 二十万人弱の人々が見守る中。

 勝負は、クライマックスへと向かっていた。

 

 

 *  ――  *

 

 

 すごい。ホタルさん、すごい。

 本当にギリギリ。苦しい。頭が割れそう。

 

 でも、大丈夫。

 慣れてる。痛いのは、慣れてるから。

 

(……勝ちたい)

 

 生まれて初めて、誰かに期待された。

 

(……ただの、ゲームだけど)

 

 相手は、きっと凄い人だ。

 十年も逃げ続けていた私とは違って、ずっと、前に進み続けていた人だ。

 

 普通に勝負したら勝てるわけがない。

 私は彼の影を踏むこともできないと思う。

 

 何度も思った。

 何度も何度も同じことを思った。

 

 私は弱い。

 まだ太陽の下を歩くこともできない。

 

 だけどミーコは違う。

 沢山の生徒達に愛されて、期待されてる。

 

 私の宝物。

 生まれて初めて、自分で作った価値のあるモノ。

 

(……勝ちたい)

 

 AIみたいなスピードと大連鎖。

 それを「ピッタリ」の数で受ける。

 

『くそっ、落ちろ。落ちろ。落ちろよぉ!?』

 

 背筋が震えるような声だった。

 とても迫力がある。嫌なことを思い出しそうになる。

 

(……見て、くれてるよね)

 

 全部、敵だった。

 味方なんて一人しかいなかった。

 

 思えば、あの頃はVtuberなんて無かった。

 ほんの数年前だ。この文化が生まれて、この文化が好きだと言う人が増え始めた。

 

 ずっと、ずっと、ずっと。

 

 私は、耐えていたのかもしれない。

 逃げてるつもりで、待っていたのかもしれない。

 

 ――勝ちたい。

 4:4。次が、最後。

 

 

 *  *  *

 

 

『なん、という……なんということだ!?

 ミーコ選手意地を見せた! 再び両者のスコアが並んだぁ!!』

 

:うぉぉおおおおおお!!!!

:やばい。鳥肌立った

:ミーコ! ミーコ! ミーコ!

:初めてeスポーツが面白いと思ったわ

:粘り勝ち

:あの猛攻耐えるのかよ……

:ホタルの粘りもやばかった

:次が最後とかマジ?

:どっちが勝つんだろう

:終わって欲しくない

:ホタル負けないで! 勝って!

:ここまで来たらどっちも応援したい

:最高の試合だよこれ

:これ、どっちが勝っても歴史に残る試合だよね

:ホタルが勝つ! ホタルが勝つって信じてる!!

:ミーコ奇跡を見せてくれ

:俺なんで泣いてるんだろ

:心臓こわれそう

:もうダメ、手汗すごいんだけど笑

:演出だよね? 結局ホタルが勝つんだよね?

 

 コメントの勢いが止まらない。

 予選でも「残像」となっていたコメントだが、今はそれ以上の何かとなっている。

 

『試合開始! 泣いても笑ってもこれが最後です!』

 

 実況が叫ぶ。

 

『あはは、今の二人にはウチも勝てないかもねぇ』

 

 真希が冷静に呟く。

 

:ミーコがんばれ!

:ホタル押し切って!

 

 ファンの応援が止まらない。

 

『……最強は、僕だ』

 

 ホタルは譫言のように呟いた。

 

『……最強は、僕だ』

 

 プレイは研ぎ澄まされている。

 それはミーコも同じだった。

 

 刹那の隙が敗北につながる。

 画面の外にも伝わる程の緊張感があった。

 

『……最強は』

 

 それは二ノ宮ホタルにさえも恐怖を与えた。

 しかし彼は、その恐怖を打ち砕くようにして叫ぶ。

 

『最強は、僕だ!』

 

 瞬間、異変が起こった。

 これまで大連鎖を作っていたホタルの動きが変わったのだ。

 

『おぁぁぁ!? ホタル選手! ここで連続パーフェクトぉ!』

 

 ミーコは完全に意表を突かれた形となった。

 しかし、これにギリギリで対応してみせる。

 

 ミーコのリソースが大幅に削られる。

 ホタルは再びパーフェクトを達成した後、大連鎖に切り替えた。

 

 ミーコの盤面が半分ほど岩ぽよで埋まった。

 このまま大連鎖を受ければ、敗北は必至。

 

『なんと!? ここで2連鎖ダブル!?』

 

 ミーコは速攻を仕掛けた。

 今度はホタルが意表を突かれる番だった。

 

『くっ、マージンタイムか!』

 

 試合の展開が変わる。

 今度はミーコが優勢となり、徐々にホタルのラインがせりあがる。

 

『まだ! まだ! まだだ!』

 

 ホタルは叫ぶ。

 それは配信者としてのコメントか、あるいは本人の心から漏れ出た言葉か。

 

『なぁんという試合展開だ。ホタル選手、あそこから立て直すことに成功!!』

『まだ!』

 

 その直後、意地を見せるかのようなパーフェクト。

 ミーコは三連鎖+ダブルで冷静に対応する。しかし、次のリソースが無い。

 

 これを見てホタルが連続パーフェクトを仕掛ける。

 ミーコは最短で2連鎖を完成させ、ダメージを最小に抑えた。

 

『……強運だなぁ』

 

 真希が呟いた。

 その言葉通り、今のはミーコの運が強かった。

 

 これ以外は無い。

 そういう組み合わせのぽよを引き当てたのだ。

 

 そのまま一進一退の攻防が続く。

 両者の盤面は徐々に苦しくなった。

 

 ミーコの盤面には通常ぽよと岩ぽよがあちこちで並びあっている。

 ホタルの盤面は残り6ラインとなっており、その下には岩テトあるいは妨害テトが敷き詰められている。

 

 ミーコが2連鎖+ダブルで攻撃した。

 ホタルは猫のような反応速度で対応する。

 

 次の攻撃までに間が生まれる。

 ほんの数秒だが、その間にホタルは盤面のリカバリーを試みる。

 

 ミーコは追撃をした。

 これで決める。そんな声が聴こえるような攻撃だった。

 

『待ってたよ。それ!』

 

 ホタルが笑う。

 そして、痛烈なカウンターを始めた。

 

 ミーコは無理な追撃でリソースが少ない。

 そこに、ホタルのカウンターが突き刺さる。

 

『ホタル選手、ここで連続4列消し! まさか、これを狙っていたのかぁ!?』

 

 起死回生の一撃が、ミーコ直撃した。 

 

 

 

 ――否、ミーコは、あえて受けた。

 

 反撃の2連鎖+ダブル。

 マージンタイムに突入した状態であり、その威力は侮れない。

 

『効かないなぁ! そんな攻撃ぃ!』

 

 ミーコは追撃したい。

 しかし、そのためのリソースが無い。

 

 だが、それはホタルも同じだった。

 テトもラインを消すときには「待ち時間」が発生する。

 

 ミーコは、その時間が欲しかった。

 

 二度目の2連鎖攻撃。

 今度は、まだまだリソースが残っている。

 

 それはホタルも同じだ。

 耐えるか、攻めるか、彼は選ぶことができる。

 

(……知ってるよ。次は5連鎖だろ?)

 

 ホタルの脳が加速する。

 

(……2連鎖+ダブル。時間を空けてから5連鎖。反撃したくなるけど、今の盤面はギリギリ耐えられる。だから、あえて受けるべきだ)

 

 多くの上級者が5連鎖を予想した。

 あまり詳しくない初心者でさえも、これまでの試合展開からミーコの得意技が炸裂するシーンを想像した。

 

 しかし――

 2連鎖クアトロ+友情パワー増し増し。

 

『はぁ!?』

 

 意表を突いた速攻。

 5連鎖に備えていたホタルは、刹那の間だけ思考が止まった。

 

 しかし、直ぐに復帰する。

 ギリギリ耐えた盤面を掘り始める。

 

『やっちゃえミーコ!』

 

 真希が叫んだ。

 ミーコを育て上げた彼女には、その狙いが分かっていた。

 

 全てのリソースを使い切る3連鎖ダブル+全消し。

 ホタルはギリギリのタイミングで4列同時消しを発動させたが――

 

『決着ぅぅぅぅううううううううううううううううううう』

 

 ファシリ・テイトの声が響き渡る。

 

『やっ、ったあああああ!』

 

 ミーコが叫んだ。

 彼女以外の全員が驚愕する。

 

 しかし、止まらない。

 ミーコは周りが見えていない様子で、はしゃいでいた。

 

 それを見て、ホタルが頬を綻ばせる。

 おめでとう。小さな声で祝福して、彼は拍手をした。

 

 

 

 ――真のラスボス、満を持して登場。

 ホタルとの死闘で全てを使い果たしたミーコは、嘘のように敗北した。

 

 瞬間最大同時接続者数、26万3000人。

 驚異的な盛り上がりを見せた大会は、こうして幕を閉じた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ――と、この瞬間だけは、誰もが思った。

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