マイナーVtuberミーコの弱くてニューゲーム   作:下城米雪

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第8話 地道な努力

 ミーコの配信に顔を出すリスナーは、四人で固定されている。

 そしてツイッターアカウント開設を機に匿名のチャットルームが誕生した。

 

 このようなコミュニティは自然消滅するのが常である。しかし、チャットルームの開設から日数が経過していないこともあり、イン率は高い。最も書き込みが増えるのはミーコが配信を行った直後であり、その日の感想が語られる。

 

:頼めば一晩でツールを開発してくれるお兄ちゃん強すぎん?

 

 ミーコはツイッターのフォロワー数を見たくないと言った。このためフォロワー数を見なくても良いツールの開発を提案すると、翌日の配信までに完成した。

 

:流石です。お兄様

:↑某妹のパロなのかお兄様ガチ勢なのか判断に迷うな

:お兄様ガチ勢の方ですわよ

:認めてて草

 

 このチャットに参加人数などは表示されない。

 しかし、全参加者が「四人集まっている」と感じていた。

 

:お前ら、あの自己紹介動画、ぶっちゃけどうだった?

 

 そのコメントが投稿された後、一分ほど間が空いた。

 

:俺はマジで好きだよ。でも、まあ、言いたいことは分かる

:個性的ではあるけど、あのサムネで再生させるのキツイわな

:私は逆に目立つと思うけど……

:でも、あの再生数が答えっしょ

 

 このチャットに参加している時点で、ミーコに対する否定的な感情は無い。そしてミーコが夢を叶える瞬間を、そこそこ強く願っている。

 

 だからこそ、ミーコを応援するために、忌憚なき意見を言い合っていた。

 

:ぶっちゃけフォロワー集めるだけなら、フォロバ率100%みたいなことプロフに書いてる奴を片っ端からフォローするだけでええんよね

:最終手段としては有り

:ミーコの夢を考えたらNGだろ

:でもやっぱガワが無いと始まらないっしょ

:それなぁ……

 

 このチャットに参加しているのは、わざわざマイナーな存在を応援するような者達である。実際にプロデュースしたことは無いものの、「この子は伸びる」「この子は伸びない」ということを判断できるだけの知識と経験は持っている。

 

 現状のミーコが伸びることは無い。

 それが、この場に集まった四人の共通認識だった。

 

:そういえば、お前らはなんでミーコ応援してんの?

 

 その質問の後、再びチャットは沈黙した。

 深く考え込むような間。次のコメントが投稿されたのは、およそ二分後だった。

 

:いつも同じ時間にやってるから?

:俺もそれかな。最初はラジオしてたけど、だんだん癖になってきた

:私もそんな感じ

:分かる

:この魅力、伝えるのムズイよなぁ……

 

 ミーコの魅力を伝えることは難しい。

 その認識に否定する者は居なかった。

 

:とりま、見守るしかないっしょ

:それなぁ……

 

 ミーコの夢を応援したい。

 しかしながら、配信を見ること以外の活動をする程に推したいわけではない。

 

 だから、とりあえず見守る。

 四人の方針は、そのように決まった。

 

 そして時が流れる。

 ミーコは宣言通り、毎日活動した。

 

 決まった時間に配信する。

 決まった時間に動画を投稿する。

 

 コメントには全て返事をする。

 ツイッターを使った営業も忘れない。

 

 それは当たり前のことに思える。

 しかし、毎日継続するとなれば難しい。

 

 例えば「匿名のチャットルーム」に参加する四人でさえ、ミーコの配信を必ず視聴するわけではない。週に一度くらいの頻度で配信を見ないことがあった。

 

 しかしミーコは活動を休まなかった。

 毎日、元気な姿をリスナー達に届けた。

 

 その健気な姿はリスナー達に好感を与えた。

 仮にVtuberが登場した初期の段階であれば、ミーコは多くのファンを獲得できたかもしれない。実際、ミーコのフォロワーは少しずつ増えていた。

 

 だけど、今は「地道な努力」が通用する時代ではない。

 多くの知見が集まり、莫大な資金を持った企業も参入している。個人の活動でも、数十万から数百万という広告費をかけることが当たり前になっている。

 

 ミーコの用意した設定は、斬新ではあった。

 個人でも「肉体」を用意できる時代に、一定数のフォロワーが集まったら肉体が貰えると宣言して、落書きみたいなイラストだけで活動する。それは極一部のマニア達に、そこそこ受けた。

 

 ミーコは数字を見ていない。

 ただひたすらに、自分にできることを続けた。

 

 だけど他の四人は違う。

 いつも見える場所に「結果」があった。

 

 やがて四人は数字を見ることをやめた。

 

 

 ──そして、一ヵ月が経過した。

 

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