美少女ハーレムに憧れて   作:いぬペッティ

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原作主人公先天的TSもの流行れ

次回更新は未定。プロットなんてものはないです。

ハーレム、原作主人公TSという地雷要素が含まれますので、ご注意ください。


1 異世界でもハーレムをつくりたい男

 俺には、大きな夢があった。

 

 それは、ハーレムである。

 

 それが同性から馬鹿にされるような夢であることは分かっている。異性から嫌悪の眼を向けられることも分かっている。

 

 しかし、それでも諦められなかった。

 

 その夢を自覚したのは、幼少期だった。偶然深夜アニメのハーレムもののラブコメを見たのがきっかけだ。

 

 多くの人間に好意を向けられ、求められる。そんな主人公に憧れた。誰にでも優しく、理不尽に立ち向かう力を持つ。そして、傍にいる人間をみんな幸せにしてしまう。

 

 そんな在り方は俺にとって理想となった。

 

 

 

 以来、俺は努力を重ねた。

 

 勉学・スポーツ・美術等の自己研鑽に加え、美容、ファッション、コミュニケーション能力、話題に出せるような様々な知識の収集と言った、女性に興味を持たれ、そしていざというときに助けられる力を得る努力を重ねた。

 

 また、そのための資金を稼ぐために、多様なバイトを経験した。時間は減るし疲労もあったが、多くのことを学習・経験しつつ、魅力的な異性と出会うきっかけにもなったため、無駄ではなかった。

 

 そんな風にしているうちに、高校にもなると、俺に好意を持ち交際関係にある女性が複数存在していた。

 

 俗に言うハーレムが完成していた。

 

 しかし、俺はそこで終わりだとは思っていなかった。

 

 ハーレム結婚し、子どもをつくり、孫……できればひ孫の顔まで見て大往生。

 

 それが俺の描いていた終着点だった。

 

 初めて見たラブコメアニメではそこまで描かれることはなかったから、これは「きっとそうなる」「そうなってほしい」と俺が勝手に込めた祈りのようなものだ。

 

 だから、やらねばならない。

 

 全員と結婚する。そのためには法律を変える必要がある。彼女たちの親御さんの理解を得る必要がある。何としても祝福される結婚にしなければならない。

 

 子どもをつくる。そのためには、多くのお金が必要だ。育児の支えとなる環境が必要だ。

 

 だから死に物狂いで勉学に励んだ。女性だけではなく全ての人を惹きつけ、納得させるための話術を磨いた。

 

 ……しかし。

 

「いやぁ! 死なないで! お願い!!」

「置いていかないでよぉ……」

「あなたがいなくなったら、私たちはどうすればいいの!?」

 

 愛しい声が聞こえる。

 

 それに対し、俺は声をかける力が残っていなかった。

 

 だからせめて、笑って死のう。元から死ぬときは笑うと決めていたんだ。

 

 ごめんね皆。約束を守ることが出来なくて。一生守ると誓ったのに。

 

 どうか俺のことは引き摺らず生きてほしい。でも忘れられるのはちょっと困る。命日くらいは思い出してほしい。俺がいなくなることで皆が離れ離れになるのは寂しいから、これからもお互い仲良くして欲しい。

 

 

 

 ……ああ、人生これで終わりか。呆気ないなぁ。

 

 出来れば、ハーレムを最後までやり切りたかった。皆のウェディングドレス姿が見たかった。いつか生まれる子供や孫、ひ孫の顔が見たかった。自分の子どもだけでサッカーの試合ができるくらいの人数が欲しかった。

 

 もう一つ。

 

 あの月の光が似合う少女に振り向いてほしかった。そして、彼女の夢が叶う瞬間を───

 

 

 

 そんな思考を最期に、俺の意識は途絶えた。

 

 

 

 

 

『本日19:33分、大人気遊園地〇×ランドで大規模テロが発生しました。犯行グループにより来場客約300名が人質となり、警察は人質の解放を要求しています』

 

 

 

『続報です。〇×ランドで起こった大規模テロの犯人が拘束されました。警察による交渉が失敗し、興奮状態となった犯人の一人による人質への無差別攻撃行動を止めるため、人質の少年が犯人と交戦、結果命を落としました。その隙をついて警察が突入。電撃制圧により犯行グループは全員拘束され、事件は収束しました。この事件での被害者は死者一名、軽症者21名となっています。この件について、警察側の過失が──ー』

 

 

 

『続いてのニュースです。本日未明、○○市の森林沿いの国道で、○○高校の生徒、影野実さんが走行中のトラックに轢かれ、命を落としました。何かに追われるような必死の形相で飛び出す被害者の姿がドライブレコーダーに残されていたことが警察の調査により明らかになっており、事件性の有無について調査が進められているとのことです』

 

 

 

 

 

 

 転生した。

 

 まるでネット小説のような展開に、驚くばかりだ。オタクの妄想は、実は世界の真実を言い当てていたとでもいうのか。

 

 それはともかく。

 

 俺は、この中世ヨーロッパに似た世界で、ユージン・セイナールという少年として生まれた。今世の俺は、伯爵家の嫡男である。伯爵というのは貴族の中でもなかなかの立ち位置。位が高すぎて生じるトラブルもあることを考えると、間違いなく勝ち組だ。

 

 そして、このセイナール家というのは、嘘か真か、勇者の剣技を継承する一族だという。

 

 勇者というのは、1000年ほど前にエルフの英雄オリヴィエ、人間の英雄フレイヤ、獣人の英雄リリの三人とともに魔人ディアボロスを倒した伝説上の人物だ。種族は不明、その容姿や性別も正確には伝わっていない謎多き人物である。所詮おとぎ話なのでどこまで真実なのかは不明だが。

 

 セイナール家の初代はそんな偉大な人物から唯一剣の教えを授かった存在なのだという。

 

 そういうわけで、俺も剣技を幼少から教えられていた。

 

 正直、勇者の後継者で貴族令息とか、ハーレム主人公っぽくて燃える。前世にはなかった魔力と言う概念も興味深い。そのため気分が上がっていた。

 

 それに、前世より殺伐としているこの世界では強くなることはハーレムにおいて必須のことでもある。

 

 そのため厳しい(ともすれば虐待ともとられかねないような)稽古をつけられても、全く苦にはならなかった。

 

 因みにこの世界の家族との関係は良好だ。

 

 毎日父に直接稽古を受け、それを終えると母の手作りの夕食を家族三人で食べるという陽だまりのような生活を送っていた。

 

 

 

 そのように生活していると、ある日の夜、俺は誘拐された。

 

 なんでやねん! 

 

 と内心ツッコミを入れるが、よく考えたら、伯爵家のボンボンで勇者の再来とも言われる(お世辞)俺が誘拐のターゲットになるのはそうおかしくない。

 

 武力では国内随一のセイナール伯爵家の警備が突破されたことはには疑問が残るが。

 

 しかし、それはそれとして、ちょっと主人公っぽいイベントな気もする。主人公と言えばハーレムはつきもの。つまり、これは実質ハーレムイベント。不安はあるが、内心ワクワクもしていた。

 

 引きずり込まれた馬車の中で、俺が子どもだから油断しているのか機密をペラペラ喋る下手人たち(全部で五人・俺では二人相手するのが限界)の話を聞いていると、彼らは「ディアボロス教団」とか言う組織の一員らしい。ラウンズとか勇者とか色々話していたが、正直情報不足で理解はできなかった。

 

 かなり遠くまで運ばれてしまったようで、漸く到着したことには一度昇った日が沈もうとしていた。

 

「おい降りろ」

 

 そう言われて、お尻を蹴られて馬車から突き落とされる。痛てぇ。受身取ったからそこそこだけど。

 

「そこの小屋で大人しくしてろ。痛い目に遭いたくなければな」

 

 そう言われて、また暴力を受けないようにそそくさと小屋に入る。元々腕が縛られていたのに加え、更に柱に括り付けられ身動きが取れなくなった。それから誘拐犯が出て行き、直後扉に(かんぬき)が差し込まれ、脱出不可能になった。

 

「……」

 

 ふと小屋の中を見渡せば、一人の少女の姿があった。

 

「君も捕まったの?」

 

 外から聞かれたら面倒なので小声で少女に話しかけた。

 

「……うん」

 

 彼女は絶望の表情で頷く。

 

「俺も捕まった。酷いよね。……どうせやることないし、少しだけお話ししないか?」

 

 俺は少女にフラグを建てることにした。

 

「自己紹介が遅くなったね。俺はユージン・セイナール。これでもミドガルの伯爵家の次期当主なんだ」

 

 

「私は───ローズ・オリアナ。オリアナ王国の王女です」

 

 

 

 それから暫く(しばらく)二人で話をしていた。前世の知識を話題にすることはできないので、オリアナ王国で教わる芸術の話を聞いてみたり、小声で前世の歌を口ずさんだり、俺の剣術漬けの日々のことを話したりした。意外にも剣術の話題で彼女は楽しんでくれているようだった。

 

 そうしているうちに二時間ほどが経過した。

 

 人の近づく気配に気づいた俺は、彼女に「しっ」というジェスチャーをする。

 

「おいガキども、付いて来い」

 

 直後扉を開けた誘拐犯のリーダー格らしい男にそう言われ、拘束を一部解かれた俺たちは大人しく小屋を出る。

 

「グヘヘ……今から楽しい場所に連れて行ってやる」

 

 そう言って、俺たちの腕を縛った縄で引きずられる。

 

 今にも馬車に押し込まれようとしていた時───。

 

「おっ、ボーナスキャラめっけ」

 

 黒き影が、その場に姿を現した。

 

 

 

 一瞬だった。それは、戦闘ではなく狩り。あるいは掃除。

 

 それほどまでに一方的で理不尽な光景だった。

 

「スタイリッシュ盗賊スレイヤー」と自ら名乗った、目の部分だけがくりぬかれた紙袋を被った子ども程度の背丈の人物は、一瞬にして盗賊五人を殺した。

 

 目の前で人が死んだことへのショックはある。しかし、それを超えるほどの情報量が、俺の頭の中をかき乱していた。

 

 ───その剣技は、美しかった。

 

 かつて父が見せてくれた、千年前の勇者からこの時代まで受け継がれてきたセイナールの剣を知っている。

 

 それ以外でも伝統のブシン流、革新的な王都ブシン流と言った数々の剣術の猛者を見る機会があった俺から見ても、比べ物にならない唯一無二の美しさだった。

 

 まるで、芸術品だ。

 

 ふと、横を見ると、ローズ王女も同様にその剣に目を奪われていた。

 

 それは当然だろう。

 

 芸術の国に生まれ、確かな審美眼を持った彼女にとって、あの奇跡のように美しい剣術は、毒だ。

 

 きっとこれから、彼女にとっての美の極致は、剣を突き詰めた先にしか見つからないのだろう。

 

 そんなことを、呆然とした頭の傍らで考えていた。

 

 

 

 だがそれより、気になることがある。

 

「少し話をしないか? スタイリッシュ盗賊スレイヤーさん、いや───」

 

 そこで一旦言葉を区切り、

 

「『影野()()()さん』」

 

 俺は()()()でそう言った。

 

 彼女は、深淵のような紅い瞳で静かにこちらを見ていた。

 

 

 

 

 

「───どうしてわかったのかな」

 

 俺の指摘に彼女は探るような目つきで、そう言った。

 

「勘だよ。俺は出会った女の子のことを忘れないようにしているんだ」

 

「ああ、そっか。君も転生していたんだね。今のセリフで思い出したよ」

 

 俺は前世で彼女と交流があった。

 

 と言っても、仲が良かったわけではないし、断じて恋愛関係にあったわけでもなかった。

 

 しかし、俺は彼女の秘密───即ち、彼女が「陰の実力者」に憧れ、本気でそれを目指していることを知っていた。そして、同じく他人に理解されない夢を追いかけるもの同士として、バチバチに意識していた。

 

 恐らく、向こうからも意識されていた、と思う。同じジムや道場で見かけたし。夢を語り合ったこともあるし。加えて、彼女が今俺のことを思い出してくれたこともその何よりの証拠になるだろう。彼女は「陰の実力者」に不要なものは全てを切り捨ててきた求道者である。そんな彼女が世界を跨いでも俺の存在は覚えていてくれたことには正直感激している。

 

 彼女は前世では前髪で顔を隠し、目立たないクラスメイトだった。そして俺はクラスの人気者だった。そして、互いにそうあろうとしていた。それ故、俺たちが関わることは多くはなかった。

 

 しかし、俺は彼女がずっと気になっていた。

 

 一心不乱に夢を叶えようと努力する姿。

 

 本当は美人なのにそれを隠してモブを演じる姿。

 

 俺に夢を語るときに瞳に宿した狂気。

 

 その全てが、俺は好きだった。

 

 端的にいうと、彼女には俺のハーレムに入ってほしいと思っていた。

 

 そして、それは最期まで叶わなかった。

 

 ……そのはずだったのだ。

 

 しかし、ここに奇跡が起きた。

 

 お互いが前世の記憶を残したまま同じ世界に同時期に転生した。

 

 位の高い貴族に生まれ、神童と持て囃されたことで、俺は誘拐のターゲットになった。

 

 そして誘拐された先で、スタイリッシュ盗賊スレイヤーとして現れた彼女と再会した。

 

 なんという奇跡なのだろうか。

 

 やはり俺はハーレム主人公で、彼女は俺のハーレムの一員になる運命なのだろう。

 

「色々言いたいことはあるけど、まずは助けてくれてありがとう」

 

「たまたまだよ。私は盗賊狩りをしていただけ」

 

「それでもだよ。君がいなければ、酷い目にあってただろうから」

 

「そっか」

 

「あ、あの、お知合いですか?」

 

 彼女にお礼を告げていると、気になったのかローズ王女が会話に入ってきた。

 

「うん。彼と私は───うん、なんて言えばいいの?」

 

「やっぱり(結婚する運命で結ばれた男女という意味で)ただならぬ関係、じゃないか?」

 

「(前世から互いの夢を追いかけるライバル兼協力者的な意味で)ただならぬ関係か、そうかも」

 

「ええっ、そうなんですか!? 何て言うか、ミドガルは進んでるんですね……(二人は婚約者? って言うかそもそも顔が見えないけど女の子なんだ。でも、女の子の方は貴族っぽくはなさそうだし、もしかして親の反対を押し切って密会してるような関係!?)」

 

 狙ってぼかした言い回しをしたのは俺だが、それはそうとローズ王女は何かおかしなことを考えている気がした。オリアナ王国の未来を担う少女の頭は、先ほどまでの出来事のインパクトの余波で、致命傷を受けているのかもしれない。

 

「それで、これからのことだけど、どうしようか」

 

「帰り方がわかりませんね」

 

 馬車で丸一日運ばれてきた場所だ。子ども二人で帰るには、いささか遠すぎる。まさか影野さんに送ってもらうわけにもいかない。

 

 そうやって途方に暮れていると、周囲に馬車の音がした。

 

 そちらを見やると、うちの家紋のついた馬車だ。

 

「ぼっちゃまー!!」

 

 やけの大きな声。それは聞き慣れたセイナール家の騎士長の声だった。

 

「それじゃあ、私はこのへんで。()()ね」

 

「うん。()()

 

「あ、ありがとうございました」

 

 そう言って彼女は背中を向けて進みだす。

 

 その前に、一つだけ……。

 

「俺はユージン・セイナール! 君の名前は!?」

 

「クロエ・カゲノー」

 

 俺だけに聞こえるようぽつりとそれだけを言い残し、彼女の姿は闇に溶けて消えていった。

 

 短い再会の時は終わった。

 

 俺はセイナール家に無事保護され、ローズ王女も一時セイナール家に滞在した後、無事にオリアナ王国に帰国した。

 

 犯人である盗賊は盗賊同士の抗争により既に死んでいたが、被害者二名は無事に救出。

 

 これが、セイナール家嫡男及びオリアナ王女誘拐事件の顛末だった。

 

 

 





この後の予定ですが、TSシャドウと一緒にアルファを保護し、シャドウガーデンが結成されます。オリ主はサブリーダーポジでコードネームは「シャイン」。(オリ主の名前ユージン・セイナールと合わせることで「神聖なる勇者・陰(イン)」のアナグラムとなる)

なお、TSシャドウの名前「クロエ」は姉クレアに響きが近いこと、漢字表記で「黒影」にできなくもないという理由で採用。先天的にTSするなら、女の子っぽい名前の方がすこ(個人の感想です)

TSシャドウ→オリ主の感情
基本的にこの世界でも影野実は恋愛感情・性欲を不要として切り捨てているため、その手の感情を抱くことはない。ただし「この世で最も関心のある男性は?」と質問するとオリ主と即答する。




1/14追記 設定の変更、及び誤字修正 ※詳細は活動報告に記載しております。

そして、このセイナール家というのは、嘘か真か、勇者オリヴィエの剣技を継承する一族だという。勇者というのは、1000年ほど前にこの世界を襲った脅威、魔神ディアボロスを倒した三人の英雄のことだ。所詮おとぎ話なのでどこまで真実なのかは不明だが。



そして、このセイナール家というのは、嘘か真か、勇者の剣技を継承する一族だという。

勇者というのは、1000年ほど前にエルフの英雄オリヴィエ、人間の英雄フレイヤ、獣人の英雄リリの三人とともに魔人ディアボロスを倒した伝説上の人物だ。種族は不明、その容姿や性別も正確には伝わっていない謎多き人物である。所詮おとぎ話なのでどこまで真実なのかは不明だが。

セイナール家の初代はそんな偉大な人物から唯一剣の教えを授かった存在なのだという。
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