オリ主が名のある貴族の生まれなので、入学前から王女たちと出会う機会くらいあるよね、ということで、オリジナル剣術大会編です。
入学前にオリ主の表の実績とか名声も欲しいので。
オリジナルが長引いても仕方ないので三話程度でサクッと終わります。
三話末尾にオリ主がディアボロス教団という名前と、一話の誘拐犯が漏らした情報の関連に気づく描写を加筆しました。
修正前に三話を読まれた方も、このまま今話を読まれても問題ないと思われますのでご安心ください。
「実は、城下町で彼女が行き倒れるところを発見したんです。話を聞いたところ、母親と二人で旅をしていたらしいのですが、母親が流行り病で亡くなってしまい、天涯孤独になってしまったらしいのです。エルフ故に長命ですから、『もしもの時に訪ねるように』と母親に聞いていた伝手も、行ってみれば既に空き家。他に保護してもらえる関係者もいないようで……」
「なるほど。それでお前は彼女を保護したいというのだな」
「はい。彼女が自分で食い扶持を稼げるようになるまでは」
「そうか。では責任を持って彼女の面倒を見なさい」
「いいのですか?」
「うむ。お前の行いは勇者の剣を受け継ぐセイナール家の次期当主として恥じぬ行いだ。彼女を助けたいという気持ちが嘘ではないことも、父としてお前を見てきた私には分かる。……それにしても、ローズ王女といい、マリーといい、こんなに早く色を知るとは。もしやかの勇者はそっち方面でも手練れだったのだろうか」
父親に恋愛を勘繰られるという思春期男子にとって絶妙に居心地の悪いイベントはあったものの、ともあれ俺の説得は成功し、アルファが一時的に我が家に居候することになった。因みに「アルファ」という名前は機密情報なので、うちでは「リヴィア」と名乗っている。彼女のルーツにあたる(という設定になっている)英雄オリヴィエの名前をもじったものだ。
そうしてウチの居候となったアルファは、非常に勤勉だった。
空いている時間は剣の鍛錬か、家にある本を父の許可を取って勉強。加えて俺の専属侍女のマリーに侍女としての仕事を教わって、様々なお手伝いをしてくれている。
「ユージン様、起きてください。お食事の準備は整っていますよ。今日は私もお手伝いさせて貰ったんですよ。と言っても、パンに具材を挟んだだけの簡単なものですが」
そう耳元で囁いて、メイド服を身につけた使用人モードのアルファが朝起こしてくれる。何と幸せな目覚めだろうか。
朝一に見る美人は格別だ。ベッドの脇から覗き込むようにして俺と目を合わせてくるため、屋敷に来てから十分に手入れするようになったことで艶を増した金髪がふわりと靡き、森のような心地よい香りがする。
視覚よし。聴覚よし。嗅覚よし。
その日一日頑張る気力が湧いてくるようだ。否、「ようだ」ではなく実際湧いてくる。
元々はマリーが起こしてくれていたが、今はアルファが加わりローテーションになっている。
美人なお姉さんのマリーと同年代幼馴染なアルファで、俺の朝の満足感は二倍だ。
「マリーさんが沢山練習に付き合ってくれたの。マリーさんのような完璧には程遠いけれど……良かったらあなたに飲んで欲しいわ」
そう言って紅茶を淹れてくれたこともあった。俺が気に入るかどうかを、そわそわした様子で気にしているのが、何ともいじらしくて可愛らしかった。
「おいしい」と正直に答えると、安堵と照れの混じった笑みを浮かべる姿は破壊力が凄かった。
夜になれば、かつてアルファを発見した廃村に赴き、俺、クロエ、アルファの三人で剣術教室を開いたり、簡易基地としての設備を整えたり、シャドウガーデンの作戦会議をしたりした。
クロエと俺で意見を出し合いながら前世であるような二階建ての木造建築を作ったのはいい思い出だ。スライムボディスーツが運搬や加工あらゆる面で優秀なお陰で、少人数でも作業が捗った。
やっているうちにお互いの凝り性が発揮され、ツーバイフォー工法(木材の枠組みに頑丈な板や床を強固に一体化させる技法)により、高い耐震性・耐火性・断熱性・気密性・防音性を実現した。因みに、前世で見たテレビによると、ツーバイフォー(2×4)という名前は、主に用いられたパーツのサイズが文字通り2インチ×4インチであるのが理由だった気がする。
廃村の整備が進み、十分に生活できるようになったことで、アルファはセイナール家の庇護下から離れることになった。長居すれば、悪魔憑きになる前のアルファを知る教団に嗅ぎつけられたる可能性があり危険だ、とは当のアルファが主張したことだ。
それから、アルファは本格的に行動を開始した。
俺も主に夜中だけしか行動できないとはいえ、できるかぎりはその手伝いをした。
やがて六人の子どもたちを各地の盗賊のねぐらや聖教の輸送馬車などから救出し、それをクロエが治療して、新たなシャドウガーデンのメンバーとなった。
アルファを含め、彼女たち七人は皆俺たちと同世代で容姿が非常に整った美少女だ。加えて個性も豊かで、容姿に負けない内面的な魅力も兼ね備えている。
そんな彼女たちは、まだ十やそこらの年齢で表の世界で生きる術を絶たれ、陰の世界で戦う過酷な運命を背負っている。
そんな彼女たちを、俺が自分自身の手で幸せにしてあげたいと思うのは必然だろう。今も家族のような存在だが、それ以上に深い家族としての繋がりを結びたいと強く思う。その時は当然クロエも一緒だ。
アルファを含めた彼女らはクロエにより「七陰」という組織の幹部に任命され、各々の得意分野で教団の調査や悪魔憑きの保護、戦力の拡張のための下地を積み上げていった。
組織はほぼアルファが仕切っており実際有能なので、俺はほぼ手伝いが主だったし、当のクロエでさえ若干置いてけぼり気味だった。
ところで、俺とローズ王女が誘拐され、スタイリッシュ盗賊スレイヤーもといクロエに救出された事件を覚えているだろうか。
クロエがシャドウと初めて名乗りアルファに設定披露したあの日の後、俺はふと、とあることに気づいた。
それは、「あの誘拐犯が漏らした組織の名前」と「クロエが即興で考えた組織の名前」が同じであるということだ。
最初は勘違いかとも思った。クロエの即興劇は中々にインパクトがあった。そのせいで過去の記憶におぼろげにある似通った言葉が今日聞いた強い言葉に引っ張られているのではないか、と。
しかし、それでも不安を拭いきれず気になっていた俺は、そのことをクロエに言ってみた……のだが。
「ほう、ディアボロス教団との因縁は君にもあったというわけだ。ならば君がシャドウガーデンに入ったのは必然だったのだろう。一度結ばれた宿命には、必ず清算の時が訪れるだろう。我が盟友シャインよ、努々警戒を怠らぬことだ(ユージンも設定考えたりするんだね。もしかして私のノリに合わせてくれてる? 流石はベストフレンド。わかってるぅ)」
俺がシャインを演じて台本を読んでいるのだと勘違いしているのか、演劇がかった口調で中二台詞を返してきたクロエ。
ある意味では信じて貰っている気がするのに、肝心の内容は信じて貰えないという結果に終わった。
まあ実際、因縁があるというのは間違いない。あの事件では、俺はともかく両親や家の者たちに心配をかけてしまったし、ローズ王女はとても怖い思いをしただろう。ローズ王女とクロエ、二つの素晴らしい出会いのきっかけにもなった事件だが、それはそれ、これはこれだ。
それから暫くの間も、セイナール家ですら実態を明らかにできていない誘拐犯の情報などそうそう手に入るわけもなく、もやもやとした日々を送ることになった。
そんな疑問を解消できたのは、後の七陰となる悪魔憑きの救出の際に、様々な場所に潜入し情報を集めたからだった。
その頃にはクロエが妄想として語っていたディアボロス教団が実在することを確信していた。それに伴い、構成員の衣服や装飾品、機密の記された資料など証拠となる物品もいくつか集まってきた。
そして、それらを持って改めてクロエに教団の実在を信じて貰おうとした。
……しかし。
「なるほど……ディアボロス教団はとうとう尻尾を現し始めたか。如何に歴史の闇に潜み社会に寄生してきた魔物なれど、我が組織の実力と叡智の前では平伏すほかないというわけだね。(……まあそんな組織ないけど。彼もそれを知っててなおこうして乗ってくれるから、やっぱり流石って感じ。意図を汲んでくれるから変に勘違されず安心して陰の実力者プレイできるんだよね。それっぽいアイテムまで作っちゃって……もしかしてユージンも楽しくなっちゃったのかな。自分の好きなことを人に知ってもらえるのって、嬉しいなぁ)」
前回と同じように、やはり言葉通りには受け取ってはおらず、教団の実在を信じていない様子だった。
彼女の
一応、俺とローズ王女を攫ったのがディアボロス教団であるというのを、その時に聞いていた「ラウンズ」とか言う手掛かりになりそうな言葉も込みで、実質組織の運営を一手に担っているアルファに報告しているから、問題ない……と思いたい。
クロエは……色々勘違いしたままだが、正直この子を害せる相手がいるとは思えない。何か支障が出たとしても、俺がサポートをしていけば大丈夫だろう。
ところで、シャドウガーデンにおける俺の立場であるが、肩書としては「シャドウの盟友にして第一の部下である」ということになっているのだが、ぶっちゃけ何をするのか明確に決まっていない曖昧な立場だ。
そのため、先ほど言ったように現在はアルファたち七陰のサポートをする応援人員として活動している。基本美少女の頼みは断らないので、真面目に相談したり、訓練に付き合ったり、子分扱いされたり、実験の被験者になったりしている。……おい真面目じゃないやつら、しっかりしろ。
ここで、改めて俺の目的を明確にしておきたいと思う。
俺がシャドウガーデンに入ったのはクロエの即興劇の勢いでなし崩し的にという形だった。そのため陰の実力者の夢のために組織を作ったクロエや、クロエに命を救われ各々の強い意志を持って組織に入った七陰とはモチベーションの種類が少し違うのだ。
しかし、それでも俺には確固たる理由があって活動している。
シャドウガーデンにおける俺の目的は主に四つ。
一つ目。クロエの夢を見守ること。そして彼女の罪を減らし、共に背負うこと。そのためにシャドウガーデンに身を置く。それは最終的に彼女をハーレムに加えたいという俺の夢にもつながる。
二つ目。悲劇の運命にある悪魔憑きを救い、新たな人生を歩んでもらう手助けをすること。そのために教団と戦う。彼らがやっていることは感情的にも許せないし、悪魔憑きは基本的に美少女である疑惑があるのでハーレムを拡充していきたい俺の夢につながる。
三つ目。七陰の使命を終わらせ、彼女たちが背負う重荷から解放し、幸せになってもらうこと。そのために教団と戦う。特にアルファは、恋愛に現を抜かすよりも一人でも多くの同胞を救うために戦うことを選ぶような人間だ。ディアボロス教団を世の中から消し去ることができれば、俺やガーデンのみんなが安心して自分の幸せについて考えることができる。
四つ目。クロエというライバルの近くでその技術を学び己を高めること。また、シャドウガーデンとしての活動から得られる情報を元に、日常を脅かす脅威に備えること。加えてシャインという表の顔に結びつかない自由な身分を手に入れることで、できることは格段に増える。これによりハーレムを守るための力を手に入れることができる。
これらのとおり、シャインとして、シャドウガーデンの一員として活動することは俺の利にもなる。
言うまでもなく非合法の組織であり、主に悪人相手とは言え殺しもする。生半可な覚悟で所属することはできない。
それでも、俺は二度目の人生をクロエにかけることにしたのだ。
───もう二度と、理不尽に奪われる側に立つことのないように。
二年ほどの月日が経過した。七陰のみんなは、それぞれの特異な分野を磨き逞しくなった。俺もまた、クロエのライバルとして恥じないようにと激しい研鑽に励んだ。
まだガーデンのメンバーは増えていない。これ以上増やすには活動規模も大きく広げなければならないし、それには危険が伴う。七陰それぞれが並の魔剣士を遥かに超える実力を持っているとしても、相手の実力や規模が未知数な以上危険は避けられない。そのため、この二年はそれぞれの力を高めることに時間を費やしていた。
……しかし、そのタイムリミットもそう長くはないだろう。最近の七陰、特にアルファの様子を見ればわかる。彼女らは、いつか旅立つことを見越しているように感じられる。
そんなある日。俺は父に呼び出され、話を聞いていた。俺宛にとある招待状が届いたのだと言う。
「ミドガル王都剣術交流会?」
「ああ。数年に一度ミドガル貴族の関係者だけで剣術の大会が行われるんだ。その年少の部に出てみないか? 同年代の他の魔剣士の動きを見るのも、きっと役に立つと思うぞ。それに、陛下や王女殿下ら参列されるらしい。王女殿下お二方は選手として出られるとのことだ。残念ながら私や伯爵家の魔剣士たちは、その日大切な仕事があって行けないが、ユージンだけでもどうかと思ってな」
「ぜひ、行かせてください!」
美少女と出会えるかもしれない上に、勇者っぽいこともできる、降って湧いたようなチャンスだ。逃す手はなかった。
翌月、俺はマリーと数人の護衛と共に馬車に揺られ、王都にある王宮を訪れていた。
騎士団に加え時には腕に覚えのある王族も使うとあって、王宮内に作られた武道場はかなりの広さだった。前世で言うスタジアムとかドームに近い。周囲には柔らかいクッションつきの観客席が併設され、医務室は勿論、ウォーターサーバーやシャワールーム、整体サロンも併設されているという実にリッチな環境だ。
うち? セイナール家はグラウンドと汗臭い休憩室が基本です。千年の伝統を感じて乙なものですよ(白目)
到着した俺は、使用人の待機所へ向かうマリーたちと別れ、出場者向けの座席に案内された。
……始まるまでもう少し時間がある。
席に座り、少し暇をつぶそうと周囲を見まわしていると、隣の席に座るとある人物に目が引き寄せられた。黒いリボンでツーサイドアップに結った長い銀髪に真紅の眼をした美少女。
彼女の名前を俺は知っている。この国に生きていて知らない人の方が少ないだろう。
「───アレクシア王女。お目にかかれて光栄です。私はユージン・セイナールと申します」
その呼びかけに、彼女は天使のような笑みを浮かべて微笑んだ。
「あら、かのセイナール伯爵家の神童と名高い、ユージン・セイナールさんですね。存じておりますよ。勇者の再来とも言われているとか」
「ああ、はい。可愛がってくれるセイナール領の魔剣士たちが面白がって言ってるだけですよ。まだ十二ですし、未熟な私には荷が重いです」
「……まあ、ご謙遜なさらずともよろしいのに。本日は手合わせをすることもありましょうが、どうかお手柔らかにお願いしますね」
そう言って上品に笑うアレクシア王女。それが俺には言葉とは裏腹に「手を抜きやがったら許しませんよ、うふふ」と言っているように見えた。
どうやら、初対面の一瞬で俺は嫌われてしまったらしい。
……酷くね?
成人の部では獅子髭のグレンという顔に傷を持ち異名通りライオンのような髭を生やした大男や、若くして貴族の当主を務めながら王都ブシン流の優れた使い手でもあるゼノン・グリフィが活躍していた。優勝したのはゼノン・グリフィだ。
続いて、学生の部。こちらは、豊富な魔力量で圧倒するアイリス王女の独壇場だったが、マルコ・グレンジャーという男子もなかなか粘り強く戦っており見どころがありそうだった。何というか、非常に失礼かもしれないが絶妙にヘタレっぽいところが主人公っぽい。あと、婚約者か恋人か、綺麗な女の子に応援されていた。妙に対抗心が湧く。
やがて、俺たちが参加する年少の部がやってきた。
年少の部は、十二歳~十五歳、魔剣士学園に入学する前までの少年少女が割り振られている。今更だが、魔力で身体強化するという性質上、男女の差は前世より少ないため、普通に男女混合である。まあクロエなら前世でも男女の概念無視してどんな相手でも圧倒していたがな(後方彼氏面)
最初の相手は、無名の貴族令息だった。といっても、剣術の使い手として無名なだけで、立派な子爵家の息子である。
結果は言うまでもない。俺の圧勝だ。
流石に、平均に毛が生えた程度の相手では、誘拐される前の俺でも圧倒出来る。良血ゆえ才能が足りないとは言わないが、努力が圧倒的に足りない。「ちゃんと毎日剣の練習をする」という程度では、この舞台にいる者にとってはスタートラインにすぎないのだ。
俺が第一戦を終えると、アレクシア王女も初戦を迎えていた。
相手は侯爵家の令息。魔力量ではアレクシア王女を上回っており、その表情には自信が感じ取れた。しかし、やはり圧倒的に練習が足りていない。対して、積み重ねた努力を武器に、アレクシア王女は相手の剣を手本通りに捌いていき、最後には相手の剣を弾き落とした。
勝負ありだ。
「一回戦勝利おめでとうございます、アレクシア王女」
「ありがとうございます。ユージンさんもおめでとう」
「ありがとうございます。アレクシア王女の剣には努力が感じられました。きっとアイリス王女やご観覧されている陛下にも伝わっているでしょう」
「……そう、ですか。お褒め頂き光栄です」
俺は、彼女の剣を、そして積み上げた努力を素直に誉めたつもりだったのだが、彼女の反応はよいものではなかった。さっきまでは「俺という存在そのものが気に食わない」という態度に見えたが、今回は俺の発言によるものだと感じた。
どうやら彼女にとっての地雷を踏んでしまったらしい。彼女とお近づきになりたい俺としては回避しようのないトラップが続いて踏んだり蹴ったりである。
さておき、推測するに、彼女の姉アイリス王女の話題を出したことだろう。つまり優秀な姉への劣等感。転じて、彼女は自身の剣を褒められるようなものではないと卑下しているのかもしれない。
しかし、現状では姉妹二人の問題で、俺が介入する余地がない。今俺が何を言っても、逆効果だ。
もし、今日何か変わるとしたら、戦う以外ない。……それがいい方か悪い方かはさておき。
俺と王女の間に漂う微妙な沈黙を破ったのは、とある選手の試合が始まった時だった。
「クレア・カゲノーですか。ユージンさんは知っていますか?」
「ええ。名前を耳にしたことなら。カゲノー領は王国北部の山々に囲まれたのどかな田舎町ですが、領地が近いので、何度か通ったことがあります。幼くして巨岩を砕いたというクレアさんの噂は、あの地域では有名でしたよ。剣を見るのは初めてですが……」
そう言って、戦の方に意識を向けると、丁度クレアが一撃も食らうことなく相手を倒し切ったところだった。剣術の要所要所にクロエに影響を感じて、何となく好ましい剣だ。
「間違いなさそうですね。今回の大会、確実に上位に食い込むでしょう」
「……私も、そう思います」
そう答えたアレクシア王女の瞳には、強い戦意と、焦りのような感情が宿っていた。
それから、俺とアレクシア王女、クレアは二回戦、三回戦と順調に勝ち進んで行き、やがて準決勝が始まった。
第一試合は、アレクシア王女VSココデマ・ケールだ。ココデマ・ケールは、ケールという野菜の生産地として有名な子爵家の令息だ。喧嘩殺法とも言うような我流剣術の使い手で、特別に才能に秀でた魔剣士ではないが、ここまで勝ち進んできたのは偶然ではないと言えるほどの戦いぶりをこれまでの試合で見せつけてきた実力者だ。
「王女サマ、ここは勝たせてもらいますぜ」
「───かかってきなさい」
ココデマ・ケールはどこからどう見ても裏稼業の人間にしか思えない台詞を吐き、アレクシア王女はそれに落ち着いた様子で答えた。
そして、試合は始まった。
最初に行動したのは、ココデマ・ケール。彼に様子を見るという選択肢はない。それはこれまでの試合でも同様だった。頭デルタかな?
「アニキ~!」
「やっちまえ~!」
それと同時に、客席から歓声が上がる。彼はこう見えて、地元では中々慕われているらしい。
しかし、大振りで放ったココデマ・ケールの斬撃は、彼の動きを予測していたアレクシア王女にあっさりと躱されてしまう。
「おいおい、守ってばかりじゃ、いつまでも勝てませんぜ?」
「それはどうかしら、ねッ!」
それからも、強引な剣術で攻め続けるが、アレクシア王女は、それを的確に捌く。
状況は膠着している、かのように思えた。
しかし、次第にココデマ・ケールの斬撃からは勢いが失われていく。
「うおおおっ、何で当たらねぇ!!」
魔力も体力も有限だ。アレクシア王女はそれらを無駄に消費することなく堅実に戦っていた。対してココデマ・ケールは、全試合を通して常に全力だ。いくらタフな魔剣士でも、それではガス欠を起こしてしまうのも当然のこと。
「……悪いですが、勝たせてもらいますね」
そう言ったアレクシア王女は、間合いの外で一度足を止め、呼吸を整える。
「クソっ、こんなところで」
ココデマ・ケールはそれを見て、自分が追い詰められたことを悟った。
そして、それは現実となる。
勝敗がついたのは一瞬だった。
疲労で散漫になった相手の意識の隙をついた、洗練されたな一太刀によって、勝敗は決した。ココデマ・ケールは錐もみ回転して吹き飛ばされていき、気絶した。
───勝者、アレクシア・ミドガル王女!
審判がそう高らかに宣言する。
「……私はこんなところで足踏みしていられない」
勝利を手にした王女は、それに喜ぶ素振りも見せず、ぽつりとそう呟いた。
オリ主のキャラクター性からして、アレクシアに第一印象で嫌われるのは必然です(無慈悲)
アレクシア:ヒロイン予定。オリ主に対する初期好感度判定は無条件でファンブル。何やら不穏な様子。
ココデマ・ケール:三秒で考えたチョイ役。二つ年上でクレア、ローズと同世代。美人の婚約者がいるらしい。