今回の話にはラッキースケベ描写があります。苦手な方はご注意ください。
交流会での活躍によって、俺の名声は大きく高まった。「勇者の再来」を通り越して「勇者」と呼ぶものすら現れるほどだ。
正直そこまで行くと、聖教との関係がこじれそうで微妙だが。いや、どうせいつかは「再来」でも「後継者」でもなく「勇者」と呼ばれたい気持ちはあったから構わないといえば構わないのだが。そっちの方がカッコいいしモテそうだしね。
とは言え、聖教とセイナール家の関係は複雑だ。
そもそも、勇者と三英雄の魔人退治の伝承が今の聖教の起源であるが、実際にその教えが明確に成立したのは魔人退治の冒険より暫く後だ。いかに多くの人から尊敬される素晴らしい人物であろうと、その人物を中心とした宗教ができるのは、基本的に当人が亡くなってからというのが一般的だろう。
そして、セイナール家の伝承では初代当主が弟子に取られ剣を教えられるようになったのは魔人退治のすぐ後だとされている。
時期を考えると、聖教ができるよりも前に初代当主(まだ貴族にはなってはいない)は勇者の弟子として世間一般に広く知られていたことだろう。何せ、勇者と呼ばれるほどの人間の動向だ。剣を教えられていた人物が存在しているというのなら、世間も気になるというもの。
聖教が広まり出したころには、おそらく勇者の弟子は勇者より受け継いだ剣で功績を挙げ貴族として取り立てられていただろう。その時点で聖教とは全く関りがなく、一貴族として国家に所属している状態だ。
そして勇者をいくら尊敬はしていても、それが女神ベアートリクスへの信仰とイコールではない。初代は聖教の教えに興味がなく、代を変えようともそれは変わらない。セイナール家は剣にしか興味がなかった。
そんなセイナール家が、聖教にとって頭を抱えるような存在であったことは容易に想像できる。
勇者が育てた弟子の一族なのだから、ある意味「勇者の遺志」そのものと呼ぶべき一族。表向きには絶対に敵対するべきではない。そうすれば自分たちが説く信仰の象徴の一つである勇者を自分たちで否定することになってしまうから。
セイナール家はありのままの勇者を知っている。初代には直接面識があり、考え方を知っており、それは手記や口伝として代々伝えられている。そしてそれは一般民衆にしても周知の事実だ。
もしも、彼らが一言「聖教の教えは勇者の考え方と全く違う」などと発言すれば、聖教の教えが根幹から崩れ去る。
無論、そんなことセイナール家にとってはどうでもいいため、これまで何一つ余計な発言をすることはなかったが。
そんな経緯があって、藪をつついて蛇を出したくない聖教はセイナール家に関して発言しない───所謂「黙認」という状態のまま千年という月日が流れることになった。
これだけの年月が経てば普通なら、強い影響力を持つ聖教によって歴史が改竄されるようなこともありえただろう。そうならなかったのは、勇者という大きな存在が、それだけの時代を超えても、人に忘れ去られることはなかったという証拠なのかもしれない。
無論、代々のセイナール家が実績と実力を兼ね備え王国の剣として戦い続けてきたこと、剣にしか興味がないために不祥事を起こしたり出世争いで蹴落とされたりという貴族ならではのトラブルを避け続けてきたことも大きい。
俺が勇者を継ぐ者として現在祝福されているのは、そうした先人の努力の結果なのである。
さておき、名声以外にも交流会以降変わったことはいくつかある。
まず、クレアが頻繁にセイナール領を訪れるようになったことだろう。その頻度と言えば「入り
最初の一回なんて、連絡も入れず急にやってきて俺に試合を挑んできたのだ。そのお転婆ぶりに呆れはするが、非常にレベルの高い美少女であり、向上心が高く鍛錬相手としても中々に張り合いがある。俺としては大歓迎であった。
……でも嫁入り前の娘が異性の家を何度も訪ねるのは誤解を生むからやめた方がいいと思うんだ。俺からしたら誤解された方が嬉しいので何も言わないけど。
次。交流会を通して俺の実力が認められたことで、俺の単独行動が条件付きで許されることになった。信頼できる人間から俺の交流会での活躍を聞いた父が、漸く許可を出してくれたのだ。
そして、条件というのが、遠出する際に護衛をつけることだ。
護衛と言っても、俺の実力では生半可な者では務まらない。逆に足手まといだ。今「ユージン」として出せる力でも、セイナール家で俺の護衛が務まるのは父くらいだろう。
そんな役目を引き受けてくれた人物こそが……。
「私はベアトリクスという。君の護衛を務めることになった。よろしく頼む」
「こちらこそ、よろしくお願いいたします」
最強の魔剣士を決める世界最大の剣術大会ブシン祭の初代優勝者であり、その輝かしい功績からかつて「武神」と呼ばれたエルフの魔剣士ベアトリクスその人であった。
しかし、そんな偉人でありながら、マイペースな語り口調からは、威厳のようなものは感じられず、その立ち居振る舞いはあくまで自然体だった。何となくクロエとは波長が合いそうだ。二人がもし会ったら、天然二人によるツッコミ不在の面白会話が見られるかもしれない。
その容姿は、くすんだ白銀の長髪にパープルの瞳をした齢二十ほどの美人さん。黒のコートを身に纏ってはいるが、その隙間からは下着ほどの布面積の衣服では隠し切れない色白の美肌が垣間見える。いくら何でもえっち過ぎんだろ(正直な感想)
「ところで、妹の忘れ形見───姪を探しているんだ。私に瓜二つのエルフなんだが、見た覚えはないか? 年齢は丁度君くらいだと思うのだが……」
「ええと、すみません。瓜二つの人は見かけたことがありませんね」
そう聞かれるも、俺は思い当たる相手がおらずよい返事をすることはできなかった。俺の見知ったエルフと言えば七陰が殆どだ。
強いて言うならアルファだが、まあ他人の空似レベルだろう。エルフには多いタイプの顔立ちなのかもしれない。前世でも塩顔や醤油顔、キツネ顔やタヌキ顔、縄文系の顔立ちとか弥生系の顔立ちとか聞いたことがあるしそういうのだろう。
何よりエルフは美人が多い。美人とは欠点がない完成された顔と言うこと。初めから顔のつくりの幅が人間より狭いのだから、それなりに似通う可能性はある。
まあそもそもの話、アルファのことを漏らせばシャドウガーデンの活動に支障がでるため、例え瓜二つと言うくらい似ていたとしても話すという選択肢は最初からなかったのだが。最低でも本人の了承を得てからにすべきだろう。
因みに、先に両親やマリーにも聞いていたようで、皆知らないと答えたそうだ。やっぱり皆も俺と同じように、瓜二つとまでは思わなかったのだろう。
「……そうか、それなら仕方ない。ところで、交流会で見せたというお前の実力に興味があったんだ。護衛というなら、守る相手の実力も知っておくべきだろう? 実は、君と剣を交えるのも護衛を引き受けた理由なんだ。……というより、君と剣を交えるためにこの地を訪れたら君の父君に依頼を受けることになった、と言うのが正しい順番だな」
そう言って腰に括った剣を握るベアトリクスさんの眼は爛々と輝いていた。
「私は、武神と呼ばれるようになってから、ライバルと呼べる強者と巡り合えなくなって久しい。君なら将来、私の剣を更に高みに連れて行ってくれる気がしているんだ」
「まだ学生にもなってない年齢ですし、少し買いかぶりかもしれません。……ですがこちらとしても高名な武神と手合わせできる千載一遇の機会。是非お相手させてください」
そう言って、俺たちは互いに剣を構えた。
「どうした、来ないのか?」
そう言って、ベアトリクスさんは俺を誘うように、
その誘いに俺は迷わず乗った。これは彼女が俺の実力を測るための模擬戦だ。罠などではなく、初撃は見に徹するはず。
「はあっ!」
俺の放った一撃を、彼女は余裕をもって躱す。
「なるほど。素晴らしい一撃だ」
「余裕そうに言われても嬉しくないですよ」
立て続けに俺は剣を振るうが、そのどれもが躱され、流される。
今のやり取りで分かる。彼女は強い。
純粋な剣の腕はクロエにも匹敵するほどだ。
「そろそろ私からもいくぞ」
そう言った瞬間、彼女の手元がきらりと光るのが見えた。
俺は意識を総動員して至急剣を体の前に盾のように掲げる。
直後、衝撃が俺の身体を襲い、高く打ち上げられた。
俺はそのまま空中で体をひねり、20mほど後方で足から着地する。
「今のを防いだか、流石だな。かつて私が出た時のブシン祭の決勝の相手でもきっと防げなかっただろう」
「ギリギリでしたけどね。そう言ってもらえると光栄です」
実際危なかった。クロエとの模擬戦の経験のお陰か認識自体は出来るのだが、体が追い付くかと言うと、そうではないのだ。クロエとの対戦成績? 俺の勝率二割ってところだ。この世界で彼女と出会うまでの間、ぬるま湯のような練習しか積んでこなかった俺と、地獄のような鍛錬を積んできた彼女。寧ろ勝率が低いというよりも、稀に勝てることが奇跡に思える。
で、話を戻すが、はっきり言えば俺にはベアトリクスさんに勝てる実力がある。
しかし、今の俺は「ユージン」だ。決して「シャイン」ではない。ユージンにはシャインのような膨大な魔力もないし、用いる剣も実用性に特化したものではなく芸術性に特化したものだ。
今の俺は陰の実力者の相棒ではなく、あくまで高い才能を持った将来有望な魔剣士の子どもでしかない。
その結果、俺はこの模擬戦において、圧倒的なパワー不足という問題を抱えていた。
次々に迫るベアトリクスさんの一撃を何とか防ぐも、消耗は激しい。
「君はその年で一体どれほどの鍛錬を……? まるで熟練の魔剣士を相手にしているようだ」
「はぁ、はぁ……そりゃ、絶対に譲れない夢があるからね」
「それは一体……」
「悪いけど……まだ教えない、俺の嫁になってくれるなら考えるけどねッ」
息も絶え絶えな状態の俺は、敬語も忘れて軽口をたたく。対するベアトリクスさんにはまだ余裕があった。
───しかし、勝算がないわけではない。
「……見たいんでしょ、勇者の剣」
「漸く見せてくれる気になったか。……受けて立とう、武神と言われたこの剣で!」
決着に向けて、気迫を練り上げる。
しばしば漫画やアニメで「戦いの最後に必殺技を披露しあう」という鉄板の描写がある。俺は前世で武術を習い始める前まで、「何故最初から必殺技を使わないのだろう」と疑問を抱いていた。
しかし、武を身に付けた今ならわかる。
必殺技は文字通り決着をつけるために全身全霊を込めた一撃だ。それは決して外してはならない。それを外すことは、勝ち筋を失うと同時に、大きな隙を相手に晒すことになる捨て身の一撃。
故に、必殺技を必ず相手に的中させるために、事前に相手の実力や考え方、動きの癖を見極める。
決着に至るまでの戦闘中にあった全てのやりとりは、そのため。
そして、俺は、これまでベアトリクスさんの動きをじっくり見てきた。ベアトリクスさんも同じだろう。
だから、俺たちは互いに相手の動きがある程度予想できるのだ。
───しかし俺は、その予想を回避する術を持っている。
俺の持つ剣は、実用に足るものだけで四種類ある。
一つ目は、シャインの本気の剣。これは、クロエと戦うときにしか使ったことがないものだ。俺の持ち得る武術の全てを合成させた俺の中で最強の剣。
二つ目は、シャインの魅せ剣。これは、クロエが「スタイリッシュな剣」と称する、美しさを追求した剣。ローズ王女も惚れこんだ本家の美しさにはまだ遠く及ばないが。
三つ目は、セイナール家の剣。これは、当家代々受け継がれてきた剣だ。直接父に教わったものであり、俺にとっては思い入れのある剣だ。普段は使わないものの、俺の全ての剣技の中にそのエッセンスが生きている。
四つ目は、俺がユージンとしてこれまで使ってきた、セイナール家の剣をベースに「スタイリッシュな剣」を組み込み、かっこよさを追求した「勇者の剣」。
「正統セイナール流」
ここまで言えば分かるだろう。
最後の一瞬だけ「勇者の剣」ではなく、セイナール家の剣に切り替えて振るうことによって相手の予想を外す。
それが俺の勝ち筋。
複数のスタイルの剣を使い分けるのは、現実的に考えてそう簡単なものではない。しかし、二つの剣は要素が共通しており、親和性は高い。それに、十歳近くになるまで毎日振り続けた剣だ。父の教えは未だこの身体に染みついている。
だから、容易く切り替えられる。
虚を突ける!
「───瞬光剣」
「残念だが、君の剣は見極め───なッ!」
俺の目論見通り、ベアトリクスさんはその対処を誤る。予想と違う軌道で伸びてきた剣を、彼女は打ち返すことができない。
───獲った!!
そう確信し、俺は剣を振り切る。
しかし、彼女とて武神と呼ばれた伝説の魔剣士。即座に危険を感じ取った彼女は、一瞬の判断で、上体を逸らす。力強くも柔らかくしなやかな身体は、咄嗟の回避を実現させる。
───直後、二つの果実が揺れた。
「へっ?」
一瞬遅れて、俺の思考が戻ってくる。
状況を整理しよう。ベアトリクスさんは俺の振り下ろした一撃をイナバウアーの要領でギリギリで回避した。しかし、彼女が着ている服には命中した。下着か水着にしか思えない布面積の衣服の、胸の真ん中を繋ぐ大切な場所にスパッと切込みが入ってしまい───その立派な母性の象徴が露わになった。
??????
状況を処理しきれず、再び脳がショートする。
脳の99%が思考停止し、残り1%の機能で丸見えになった
でっか……。
柔らかそう……。
弾力……。
ピンk
「戦闘中に考え事はよくない。そこだけは反省点だな」
耳元で囁かれた、いたって平静な様子の声を最後に、頭に入った衝撃によって俺の意識は飛んでいった。
まあそんな締まらない決着となったが、敗北は敗北。
例え最後の
それにしても擬態のためではなく純粋な力量不足で負けたのは、父とクロエ以来である。父に関してはここ最近は戦績は互角と言ったところ。剣では皆伝を貰い父を超えたと言えるが、魔力を制限する俺に対して、父は豊富な魔力を使って戦うので、結果としていい勝負になる。そんな状況のお陰で俺の剣はますます磨かれている。幸いにも陰の活動を偽るために実力を制限することが逆に意義のある修行になってくれていた。
話を戻すが、ベアトリクスさん流石は百年以上もの間剣の腕を磨き続けた伝説の魔剣士というだけあって、やはり強い。戦闘中剣技だけならクロエにも匹敵すると評したが、それはやはり勘違いなどではなかった。百年前の時点で「武神」なんて仰々しい肩書がつけられるほどの実力者が、これまで欠かさず鍛錬を続けてきたのだ。そりゃあ強いに決まっている。
「……勝てませんでした。ベアトリクスさんは強いですね」
「まだ子ども相手に負けては立つ瀬がないからな。寧ろ驚いた。最後の油断がなければどうなっていたか分からないだろう」
「あなたほどの人にそう言ってもらえるのは嬉しいですが、正直万策尽きた状態でしたよ」
「十二でこれほどの剣を持つというのは信じられない。魔力は少ないが、それは一部の上澄みと比べてのものだ。嘆くほどではない」
「ありがとうございます。……それで、あなたから見て俺は合格ですか?」
「無論だな。あと十年もしないうちに私を超える逸材だ。……一つ提案があるんだが」
ベアトリクスさんは、こちらに手を差し伸べて言う。
「君の父君からは護衛と言われているのだが、その間弟子にならないか?」
その言葉は願ってもないものだった。彼女ほどの魔剣士はこの世界に五指もいない。純粋な剣の腕なら、それこそおとぎ話の時代の人物か、今でも冗談みたいな覚悟で実力を求め続ける最愛の少女と並ぶほどだろう。そんな相手から剣を教われるなど、幸運以外の何物でもない。
父からも教わって、クロエからも教わっていながら、ベアトリクスさんからも教わるのは節操がないと思われるかもしれない。
しかし、そういう節操ないやり方の方が俺に向いているのだと思う。
女性に節操なく、バイトに節操なく、趣味に節操なく、知識に節操なく。前世からそうやって生きてきた。そんな俺に相応しい剣もまた「節操ない剣」なのだろう。
「よろしくおねがいします、ベアトリクスさん」
そう言って、俺は彼女の手を取る。すべすべした甲とは違い、手のひらには無数の剣だこがあって硬かった。しかし、それは俺からしたら美点にしかならない。がんばる女の子とか最高だよね。
「いい手だ。やはり私の見立ては間違っていない。君は強くなるだろう。───こちらこそ、よろしく頼む。それと、私はただの放浪の剣士だ。敬語や敬称は必要ない」
「それなら……これからよろしく、ベアトリクス」
「うん、それでいい」
俺が呼び捨てで彼女の名を呼ぶと、彼女は鉄仮面のような顔にうっすらと笑みを浮かべるのだった。
「ハッ! そういえば、服は!? ……あれ、直ってる?」
「君が気を失っている間に着替えたんだ。壊れた服については気にしなくていい。同じもののストックが二十はある」
「にじゅう!? 因みに、他の種類は?」
「ないな。この一種類だけだ。選ぶ手間もないし動きやすい。エルフの国の伝統的な織物が使用されていてな……」
ドヤ顔で語るようなことではないぞ師匠ェ。
「……その恰好も似合ってるけど、他の恰好も見てみたいな。それに護衛ならTPOで服装を使い分けるものだし、そのうち必要になるだろうから。今度、一緒に服飾店に行こうか」
「君がそう言うなら……うん、わかった」
ベアトリクスは子供にえっちないたずらされても顔色一つ変えなさそう(願望)
あまり真面目に書いてると陰実本来のコメディ感が薄れていきそうなので、今回はアクセル踏み込んでみました。ハーレム主人公と言えばラキスケ。古事記にも書いてある。
ベアトリクス:剣技だけならシャドウに迫る(アニメ設定)を採用。勇者の師匠ポジに。
アニメのベアトリクスとシドのやり取りすき。ハンバーガー沢山買いすぎたからプレゼントしたのに、お礼に別のハンバーガー受け取るの秀逸で笑いました。
オリ主:この日、(肉体的な意味で)思春期に目覚めた。
Q.何故ベアトリクスとアルファを誰も瓜二つだと思わないの?
A.愛じゃよ、愛。
敢えて表現するなら、興味ないアイドルグループの人って全員同じ顔に見えるけど、ファンの人からしたら個性豊かだし絶対間違えないでしょ、という感じ。