「…デジャブって奴ですか?」
「シュチュエーションが違うのでさっきKeyが言ってた相手と繋がるどうこうの方じゃないですか?」
気が付けば、Keyは薄暗い一室…眩い光を照らし出す液晶の正面に置かれたソファに何故かアリスと隣合って座っていた。
アリスは嫌にスッキリとした表情で、それを見たKeyは深くため息を吐いてソファの背もたれに乱雑に体重を預け、仰け反るようにして天井を見上げた。
「そうですか…私は、負けたのですね…私も何度か葬ってきた相手の今際の際で精神に繋がり招かれた時はありましたが、まさか私が招く側になってしまうとは…」
「散々しぶとく食い下がった割にはあっさりと負けを認めるんですね?」
「しぶとかったのはそっちの方でしょう…誰も彼もが一丸となって、蛇のように執念深く私に絡みついてきて…潰しても潰しても私が死ぬまで食らいついてきて…おぞましい」
「ふっふっふっ、勇気と友情と奇跡の勝利ですよ」
「そんなありきたりな展開など2次元の中で完結するから良いというのに、現実で奇跡など起こされる側にとってはたまったものではありません」
得意気にドヤっと勝ち誇るアリスに肩を竦めたKeyは改めて周囲を見回し、そしてよく見てみれば見覚えのある場所だと気が付いた。
「ここは…いつだったか小娘が小鳥遊ホシノに修行と題してクソゲーをやらされてた部屋でしょうか」
「懐かしいですね。ホシノ先輩は一体どこからあんなにクソゲーを集めてきたんだか」
「未だにクソゲーとやらの存在意義が分からないんですけど、何故あんなものがまかり通っているのですか。本当にキヴォトスは意味の分からない場所です」
「関係ないですけどKeyがそんなクソゲークソゲー言ってると面白いですね」
「黙りなさい小娘」
ニヤニヤと笑うアリスは、何かを思いついたかのようにソファから立ち上がると、正面の液晶が置かれている棚の中を探り始めた。
それを何事かと眺めていたKeyだったが、やがてアリスが棚の中から取り出したものを見て「あぁ…」と声をあげる。
アリスが見つけたのは、あの当時と同じ形のゲーム機一式だった。
「ここまで再現されているとは、面白い空間ですね」
「一種の生得領域のようなものです。私の記憶か貴方の記憶か知りませんが、当時の状態はそのまま再現されていると思いますよ」
「先程Keyが招いたと言っていましたしKeyの記憶じゃないですか?なんですか、Keyもこの時のこと結構思い出深かったんですか?」
「やかましいですね…で、そんなものを取り出して何をするつもりです?」
「伝えたいことは粗方伝えましたけど、やり残した事はあるので。最後ぐらい付き合ってくれませんか?」
「…まあ良いでしょう」
Keyの返事を受け取ったアリスは小さく笑うと、ゲームのコントローラーを1つKeyに投げ渡し、自分もコントローラーを1つ握るとゲーム機を起動し、Keyの隣に座り直す。
そして液晶に映し出されたのは、あのクソゲー特訓期間中に片腕だけKeyに貸すという荒業で対決したことがある馴染みある格闘ゲームだ。
あの時は互いに小賢しい妨害をし合ってまともな決着はつけられなかったが、今は幸いそれぞれが身体を持って2本の腕でコントローラーを握れている、正真正銘の真剣勝負。
それぞれが操作キャラを選ぶと、ゲームが進行していよいよ対戦が開始…その瞬間アリスとKeyは激しい指さばきでコントローラーを操作しながら、雑談を始めた。
「…こんなことをして、小娘はもう私のことを恨んでいないのですか?」
「当然恨んでますよ。大切な先輩や寄り添ってくれた
「随分な度胸ですね…そう…勇気ある者、ですか。なるほど、あなたは確かに勇者のようです。後先考えないその様はどちらかと言えば蛮勇に近いかもしれませんが」
「ああ言えばこう言いますね…そういえばアリスも聞きたかったんですが、どうしてKeyは大昔から…名も無き神々の時代から今まで
その話題を出した途端、Keyは押し黙りコントローラーの操作により熱を入れる。
画面の中でより苛烈になるKeyの攻めをなんとか捌きながら、アリスはまさかと思い当たった事を口に出した。
「もしかして…死ぬのが、怖かったんですか?」
「…舐めないでください。死に対する恐怖そのものはありません。敢えて言うとすれば、きっともっと楽しみたかったのでしょう。せっかく手に入れた自由を謳歌したかった…生まれたことに、報われたかった。だから、思う存分楽しめないまま終わることを忌避したのだと思います」
「でもそれって、やっぱり死にたくなかったってことに代わりはありませんよね?…そう思うと少し安心しますね。超然とした雰囲気ばかり出してきますけど、改めてKeyにもそんな普通の感性があるんだって。それにマルクトや司祭の人も友達だと思っているんですよね?」
「マルクトはともかく…司祭はあくまで従者ですよ。あれは名も無き神々を信望する司祭達の中でも異端で、名も無き神々を数多葬った私に怒りを向ける他の司祭と違って、何を思ったのか私に着いてくることを選んだ変わり者。どこまでも私の味方であろうとし続けた愚か者です」
「…そういう割には、満更でもなさそうですけどね」
「煩いですね、これだから小娘は駄目です」
「またそう言って…マルクトとかはどうなんですか?アリスはミレニアムの時以来会ってませんけど」
「あいつはまあ馬鹿ですね。自分が楽しむ為なら傍迷惑に周りを巻き込んで引っ掻き回す…ああ、そうです。望まず生み出されて自由を得て、何をするべきか途方に暮れていた私にこの世界の楽しみ方なんてものを教えたのはマルクトでしたね。お陰で私も似てしまいましたかね」
「Keyに自分が周りからしたら傍迷惑だなんて自覚があったことに驚きですよ。簡単に壊されるぐらい弱いのが悪いんだとか言っておいてその発言が出てくるんですからね」
「空崎ヒナの身体を乗っ取った直後にそんな話をしましたっけ…貴女も本当に一々根に持ちますね」
ここぞとばかりにアリスが以前のKeyの発言をあげつらうと、Keyは横目で恨めしい視線を向けた。
皮肉や揶揄を多分に含んだ会話だったが、そんな緩やかな話の最中も画面の中では熾烈な戦いが繰り広げられ、アリスとKeyのコントローラーを操作する手により熱が入る。
その後も話は続いていくが、お互い1歩も引かない攻防に、双方のHPが残り僅かになってくると流石にその余裕もなくなってどちらが何を言うでもなく話を切り上げ、無言でゲームに集中し始める。
これが1試合に制限時間があるものならばとっくのとうに仕切り直しになっているだろうが、設定で無制限を課された試合は長時間に及び、それも後半になるにつれてお互いの防御と回避のキレが増していく。
僅かな相手の隙を狙って攻撃を差し込んで、時にはカウンターを狙って相手を誘って…
アリスとKeyにとっては現実でのあの激しい戦いを彷彿とさせる程に今この瞬間が永遠とも思えるようなスローモーションに感じられていた。
そしてどれ程の時間が経ったのだろうか、或いは集中し過ぎて長く感じただけでそれほど時間は経っていなかったのかもしれない。
ともあれ、2人の目の前には…ただその結末だけが残っていた。
「はぁ…はぁ…」
「…」
目に悪い白い光を放つ液晶…その画面には────大きな文字で、『ALIS WIN』の文字が浮かび上がっていた。
額に滝のような汗をかくアリスは肩を上下させながら初めそれを呆然と眺めていたが…少し時間を置くとようやく現実が飲み込めたのか、身体を震わせるとワッ!と飛び上がって喜んだ。
「やった…やりました!アリス、勝ちました!どうですかKey!これでアリスの完勝です!もう、思い残すことは…」
興奮を抑え切れず隣のKeyの肩を掴んで激しく揺らしながら捲し立てるように言うアリスだったが、思いのほかKeyからの反応が帰ってこないことを訝しげに思い、一度落ち着いてその顔を覗き込む。
するとKeyは…驚きと困惑、そしてほんの僅かに喜色を孕んだ複雑な表情を浮かべて画面をじっと眺めていた。
「…Keyも、そんな顔が出来るんですね」
「…初めて、負けました。それも、現実での戦いとは違う小細工のない真っ向での戦いで…ああ、これはなんとも───」
「なんとも…?」
「───楽しい、ものですね」
「…そうでしょう。やるからには勝ちたいものですが、ゲームというものに勝敗は二の次。楽しむ為にあるものなんですよ、Key」
「…それはそれとして、悔しさも多くあります。特にやはり小娘に負けたというのがなんとも気に入らないですね」
「ああ!?またそうやって雰囲気を悪くするようなことを言いましたね!?」
「それに先程小娘は私に完勝したと言いましたが、先程街を案内された時にゲームセンターでの対戦を含めるとまだイーブンです。あまり調子に乗らないように」
「なっ!?なら、もう1戦です!もう一度勝って今度こそ文句も言えないように…!」
「無理ですよ、もう時間ですから」
「!」
その時初めてアリスはこの空間が端から少しずつ崩壊していることに気が付いた。
アリスの最後の一撃によってKeyの神秘とヘイローの奥深くにまで干渉し合って招かれたこの空間は、時間の経過によってその接続が途切れやがて完全に消滅するだろう。
そしてその時が…Keyの最後となる。
散々言いたかった文句がまだまだあったアリスだが、時間が少ないとなれば慎重に言葉を選び…そして告げる。
「Key、もう一度聞きます。また、アリスの中に封じられませんか?そうしたら、死なずに済みます。正しさの押し付け合いという連鎖を断ち切る為に…それに、ここまで起こった全ての出来事の責任は、もう死ぬだけでは果たすことが出来ません。だから…アリスと共に生きて、共に死ぬまでの時間を。少しでも償いに…そして皆を守るために利用してください。その力が悪戯に人に向かないのならば、Keyはアリス達となにも変わらないのだということはもうよく分かっています。だから…」
「舐めないでくださいと、言ったでしょう。小娘、私は貴女が嫌いです。貴女が望む結末になど、させてたまるものですか。それにどうせこれ以上生きる気などありませんから」
「…」
コントローラーを投げ捨て、ソファを立ち上がったKeyはアリスに背を向けると崩壊する空間の方へとゆっくり歩みを進めていく。
アリスの説得への返答は厳しい拒絶を含んでいて、アリスはやはり駄目なのかと視線を落とした。
ふと、Keyは立ち止まると顔だけアリスの方へと振り向く。
「なんせ、もう充分楽しみましたからね」
「…!」
「貴女は最後の最後まで鬱陶しかったですが、それでも…貴女と過ごした時間は悪くありませんでした。さようなら、
「…最後の最後まで嫌な奴ですね。私も、Keyのことは大っ嫌いですよ」
「はっ、貴女に好かれるなどこちらの方から願い下げです」
最後にアリスからの恨み言を鼻で笑い飛ばしたKeyは、崩壊する空間へと足を踏み出し────その瞬間、アリスの意識は真っ白な光で覆い尽くされた。
壊滅したD.U.
その瓦礫の上で存在感を放っていた黒い球体のような結界が崩壊し、その中からアリスに殴り飛ばされたKeyが…否、Keyが滅ぼされたことにより上書きしていた肉体が消滅し、本来の姿を取り戻したヒナが瓦礫の上を転がった。
長いようでほんの一瞬の時間をあの不思議な空間で経験したアリスは一瞬ポカンとしていたが、直ぐに状況を思い出すと瓦礫の上に倒れ伏すボロボロのヒナへと駆け寄った。
「ヒナ!大丈夫ですか!?」
「…煩いわね…っていうか…身体があちこち痛いんだけど…」
「…良かったです、元気そうで」
「これが元気に見えてるんならどうやら戦いの影響で脳をやられたようね…」
「あ、その辛辣な感じ安心します」
「こいつ…」
身体は脱力したように動かず、視線だけで周囲を確認したヒナはこれだけの惨状の中呑気な様子のアリスを見て呆れたように息を吐いた。
「…なんで、わざわざ私を助けたのよ」
「前に、ヒナが言ってくれたじゃないですか」
アリスが思い出したのは、かつての古聖堂でアリスの身体の支配権をKeyが奪った時のこと。
その時ヒナは自分の命を賭けてアリスを救おうとしてくれた。
『…言っておくけれど、私は貴女を助けた理由に理論的な思考は持ち合わせていないわ。危険だとしても…貴女のようにひたむきな子が死ぬのを見たくなかった。迷ったけど…結局は我儘な感情論。でも…それで良いのよ。私は貴女の言う勇者なんて高尚なものじゃない。だから貴女を助けたことを後悔なんてしてないわ』
「アリスも、そんなに難しい理屈とかヒナを説得できるような何かを持っている訳じゃありません。ただ…ヒナがいなくなるのが寂しかったから…だから助けたかったんです」
「…随分と、我儘な勇者なのね」
「…はい、アリスは”不平等に人を救う勇者”ですから!」
憑き物が晴れたような笑顔でその言葉を返すアリス。
それを受け取り、ヒナはその目をじっと見つめた。
「…困ったものね。まったく」
「やはり、迷惑でしたか?」
「本当に迷惑よ…でも、生き残ったからには…まだ、私を必要としてくれる人がいるなら…もう一度、誰かの為に生きようって思えたわ…」
「…それでこそ、ヒナらしいですね!」
そんな2人からかなり距離が離れた場所でのこと。
周囲は殆どが凍りつき、辺り一帯が白く染まったそこで、また1つの決着が着いていた。
全身をボロボロにし、べっとりと血で赤く染っているのはホシノがKeyに敗北して以降ずっと無名の司祭を足止めし続けていたアツコ。
対するは特徴的だった白い法衣を赤く染め上げ、息も絶え絶えとなり地に膝を着く無名の司祭。
アツコは司祭の凍結と攻撃の規模に苦しめられていたが、神秘解放後のボーナスを利用した不死身のゴリ押しで遂に司祭を戦闘不能に追い込んでいたのだ。
それと同時に…本命の戦いの決着も察知していた。
「…終わりだね」
「ああ…
「何だかんだ君とは長い付き合いだったけど、君も君なりにご主人様への”熱”を感じられて嫌いじゃなかったよ。いやぁ、途中でヴァニタスじゃんけんに失敗した時は焦ったね。前説でユスティナの特異体が着てるあのハイレグレオタードの誕生秘話の解説を途中で切り上げられて生殺しにされたせいで集中出来なかったんだ」
「やめろ思い出させるな私も気になってたんだぞ」
長時間戦い続けたせいか、こちらもその最中に繋がりを得ていたのか…妙に馴れ馴れしく接するアツコに司祭は肩を竦めると、Keyがいた方を向いて片膝を着き、両手を合わせて祈りを捧げるような体勢を取った。
その状態で、司祭は後ろのアツコへと声を掛ける。
「…王女が負けるとしたら、敗因は”受肉体”であったことだ。かつての王女ならばこうは行かなかっただろう。貴様らは運が良かっただけだ」
「運が良かった、ね。私にとっては最高の褒め言葉だよ」
「…だろうな。嗚呼、王女よ…私も、最期まで貴女の旅の供を…」
そう呟くと、司祭は自らを遺物で凍結させ…身体ごと自身を崩壊させた。
その最後を見送ったアツコはほっと胸を撫で下ろすと、もう神秘を解放出来る気力もないままその場です仰向けに倒れ、天を見上げるのだった。
「ん…」
柔らかな光と何かの物音を感じて目を覚ましたヒナは、気怠げな感覚の中首だけを動かして物音が聞こえた正面へと目を向けると…
「「あ」」
「…何やってんのよ馬鹿共」
そこには、大きな箱に入ろうとしていたカズサとそれを手伝おうとしていたアリスの姿があった。
「はぁ…カズサが生きてたってドッキリで驚かせようと思ってたんですけど…」
「悪いわね。生憎Keyの中で知ってたわよ。あとカズサ、貴女の『共振』のダメージ私にまで届いてたんだけど。意気消沈してた所にあんな激痛食らわせられる身にもなりなさいよ」
「助けなくていいとかほざいてたらしい奴には良い薬でしょ」
ヒナが入院する病室で、ヒナのベッドを囲うように椅子に座るアリスとカズサ。
あの戦いから早数日経過し、アリスは自前の恐怖による回復も合わせて肉体的な損傷だけなら既に回復している。
カズサは未だ眼帯は取れていないし安静を言い渡されていて、ヒナに至ってはまだ身体に痺れがあるらしく上手く立ち上がれないとのことだった。
そんなヒナの為にカズサはリンゴをうさぎ型にカッティングし、それをアリスがヒナの口に「はい、あーん」と言いながら運ぶ。
最初はバツが悪そうにそれをやんわりと断ろうとしていたヒナだったが、アリスの勢いに押されて結局渋々それを受け入れもっきゅ、もっきゅとリンゴを咀嚼している。
「…まあ、なんというか…迷惑掛けたわ。本当に、ごめんなさい。皆にも謝りたいんだけど…」
「分かりますけどそれは一旦後にして…ヒナが目を覚ましたら渡そうと思ってたんです」
「「?」」
話を遮るアリスに首を傾げるヒナとカズサ。
アリスは懐をゴソゴソと漁ると、2つの封筒を取り出した。
「それは…?」
「セナさんから貰ったんです。なんでも、ホシノ先輩が2人に宛てて書いたらしいですよ!」
「ホシノ先輩が…?らしくないわぁ…書いてるとこ想像すると若干キモイんだけど」
「故人に対して酷くないですか?」
「故人…そうよね…私が殺したも同然だものね…」
「ああ!ヒナがまたシナシナに!?」
「と、取り敢えず読むよ!?あんたもまずは目を通しなさい!」
「え、えぇ…」
死んでしまった恩師を想い罪悪感に押し潰されそうになるヒナだが、なんとか手紙を押し付けて開封させることに。
ちなみにアリスは決戦の前に一通りホシノと話しているため手紙は受け取っていない。
「…それで、やっぱりろくでもないことを書いてましたか?」
「やっぱりって言っちゃってるじゃん。まあでも実際ろくでもないよ。『死んでたら読めないかもだけど〜』から始まってる手紙なんて見たことないんだけど…え〜と…ふむふむ…うん?…はぁ?」
「ど、どうしました?」
「どうしましたって…ホシノ先輩に話したことあったっけな…よく覚えてたなぁ…でも、そっか。いきなりいなくなって何処に行ったのかと思ってたけど、ヴァルキューレ…まあ、あいつらしいっちゃあいつらしいか。はぁ〜…ちょっと気まずいけど、今度会いに行ってみるかな…」
「…なんだか嬉しそうですね」
「そう?…それで、ヒナはなんて書いてたの?」
「…」
ホシノの手紙をじっと眺め…何度も読み返しているのか視線を右往左往させているヒナ。
そして気が済んだのか手紙から視線を外したヒナは…
「…ふふっ」
「あ、ヒナが笑ってる!」
「気になります!見ても良いですか!?」
「そんな大したことじゃないわよ?」
ヒナが放り投げた手紙をキャッチしたアリスは、カズサと共に興味津々でその中身を覗き…そして2人揃って真顔になった。
「…え?」
「これは…ちょっと引くんだけど…」
「…いいのよ」
久しぶりに、めいいっぱいの笑みを浮かべたヒナは上半身を倒してベッドに仰向けになる。
アリスとカズサが呆れた様子で覗いた手紙の内容は───
『おじさんも君のお母さんぶっ殺しちゃったし、これでお相子ってことで!』
その言葉に、ヒナの罪悪感はほんの少しだけ和らいだのだった。