「君は、何者なのかな?」
ホシノからそう問われたアルは何も答えずにただ不敵に笑うと、コートの内側から取り出したスイッチを押す。
すると…ホシノの足元で大爆発が起き、空にまで登る黒煙が上がった。
「…ふん、存外大したことないわね」
ホシノが確かに爆発に巻き込まれたのを確認したアルは背を向けてその場を去ろうとする。
しかし…背後からかけられた声にその足を止めた。
「うへ〜、驚いたよ〜。大型のサーモバリック爆弾?あんな所に仕込んでるとはね〜。一発芸にしてはよく出来てるんじゃない?」
「…舐めてくれるわね」
ホシノは衣服に多少煤を付けただけで、本人は無傷で煙の中から姿を現した。
ホシノの挑発に顔を顰めたアルは、スイッチを捨てると背負っていたスナイパーライフルを構えて銃口をホシノへと向ける。
(こいつ…かなり高い精度で神秘を操れてる。でもS.C.H.A.L.E及び特異現象捜査部に似たような生徒はいなかった筈…となると未確認のアウトロー?よくもこれだけの子が今の今まで潜んでたもんだね)
キヴォトスには誰に習わずとも無意識の内に神秘を操り、秘儀を行使したり、特異体を視認出来る生徒がチラホラ現れる。
S.C.H.A.L.Eはそんな生徒を発見次第保護や勧誘等の接触を行って囲い込んでいた。
しかし、S.C.H.A.L.Eが察知する前に自分自身で神秘や秘儀、特異現象の存在に気付いた生徒の中には、それを利用して悪事を働く者が現れることがある。
そんな生徒は”アウトロー”として登録され指名手配が行われ、特異現象捜査部の捜索、確保の対象となるのだが…ホシノの目の前にいるその少女は少なくともホシノの知識にある内のアウトローの指名手配の中には存在していなかった。
(アウトローの危険区分なら間違いなく特級…恐らく今のKeyより強い)
「…特級はさ、特別だから特級なわけ。こうもほいほい出てこられると特別でもなんでもなくなっちゃうよ」
「ふふっ…矜恃が傷付いたかしら?」
「いーや、俄然楽しくなってきたね」
愉快そうに笑うホシノは、盾とショットガンを構える。
その様子をアルは鼻で嗤い、ホシノの真横に向かって銃弾を放つ。
放たれた弾丸は…ホシノの背後の擁壁を破壊し、崩れ落ちてきた土砂がホシノへと襲いかかる。
「うへ!?」
思わぬ攻撃に驚きの声を上げるホシノだったが、呆気なく土砂に飲み込まれて生き埋めになりその小さな体躯が完全に土砂の底に沈んだ。
「楽しくなってきた、ね。危機感の欠如ってヤツかしら?どうせ貴女はチヤホヤされて甘やかされて、自分の力に胡座をかいて苦労なんてした事ないのでしょうね」
「それは、どうかな。おじさんこれでも人生経験豊富だからね〜」
完全に生き埋めにされた筈だが、しかしホシノは土砂を突き破って外に脱出する。
そしてやはりホシノの身体に傷は一つもなく、それどころかあれだけの土砂に飲まれていたのに多少の汚れはあれど服にもほつれすら見えない事にアルは目を細めた。
(結界でも纏ってるの?完全に弾いてるわけでは無さそうだけど…)
「それにしてもわざわざ人のいないところで襲いかかってきたけどさ、私の仲間の加勢を怖がってるの?案外ビビリさんなんだね?」
「っ!ビビってなんか無いわ!全部私の手のひらの上なのよ!思い知りなさい!」
分かりやすく怒りを顕にしたアルは今度はホシノへとその恐ろしい威力の弾丸を放つ。
普通の生徒ならばキヴォトスの住人特有の耐久力も通じず一撃で肉塊となるその弾丸を…ホシノはぴったりと指で摘んで止めて見せた。
「っ!?」
「なんにせよ私を狙ってきた…危機感の欠如、ね。あ、ところでこれ当たるとどうなるの?」
「ふ、ふん…舐めていられるのも今の内、よ!」
「お?」
弾丸を止められた事に困惑していたアルだが、直ぐに威勢を取り戻すと弾丸に込められていた神秘を起動する。
それによって生じる爆発。
広がった爆炎は周囲の木々に燃え移り、激しい火災にまで発展して被害規模を広げた。
爆発の衝撃波は地面を抉り、コンクリートで舗装されていた道を次々と捲り上げていく。
この世の終わりのような破壊がたった一人の生徒に対して向けられたわけだが…それでも、やはり。
「音と光の二段構え?眩しかったし煩かったし、念入りだね〜」
「まだよ!」
相変わらず無傷で場所を移動していたホシノだったが、その後ろに回り込んだアルはスタングレネードを持った手をホシノの顔面の前まで回して起爆させ、効いたであろう所に背中に直接スナイパーライフルの銃口を押し付けると、ゼロ距離で弾丸を撃ち込んだ。
発射の衝撃によって弾丸と共に吹き飛んだホシノは燃え盛る森の中に突っ込み…アルが弾丸に込められた神秘を起動した事で再びあの破壊的な爆発が起こる。
「ふ、ふふ…こんなところかしら?蓋を開けてみれば所詮弱者の過大評価ね。今の生徒達はやっぱり腑抜け、自由を生きていないからこうなるのよ。万事醜悪、反吐が出るわ。本物の強さというものは、恐怖で広めて見せましょう」
「あのさぁ〜、このくだりさっきやったよね?いい加減学習しない?」
「…な、なんですってー!?」
当然のように無傷で現れたホシノに、いよいよアルは余裕を崩して困惑を隠しきれなくなり思わず白目を剥く。
爆煙を煙たそう手で振り払いながらそんなアルに近付いたホシノはショットガンを向けた。
「ま、待ちなさい!なんで生きてるのよ!」
「うん〜?簡単に言うと、効いてない」
「き、効いてない!?そんなわけ無いわ!あれだけ喰らって無傷だなんてありえないでしょ!」
「そうだね〜、君が破壊したと思ってる私の身体は
「…?」
「ほら、手を出してみなって」
一旦銃を下ろしたホシノは手を差し出すと、それをひらひらと振った。
警戒しその意図を考察するアルだったが、ホシノからの敵意が無いこと、あの謎の防御力の正体が分からない限りこれ以上攻撃を続けても意味が無いだろうことを悟り、恐る恐る差し出されたホシノの手へと手を伸ばした。
やがて手と手は触れ合い…
「硬っ!?」
「おじさんの柔肌に失礼なこと言うね〜。まあそれが不変の正体。私の意識に寄らない干渉を受けず、特定の形を保つ。この秘儀のせいで日頃から切り替えるのが面倒で面倒で…」
(ただの学生の肌なのに、まるで鋼鉄でも触ってるみたいな…これが不変…?)
「スポンジでも凍ってたらカッチカチで形を変えられないって理屈かな?それにしても…そんなにペタペタ触られたら、おじさん照れちゃうよ〜」
「な、離しなさい!」
「うん、せっかくだからもっと話そうよ」
「待っ───ごふっ…!?」
秘儀の原理を探ろうとホシノの手を触って確認していたアルの手を逆に握り返したホシノは、その手を引っ張ると強烈なボディブローを叩き込んだ。
その一撃で吐血したアルは、ホシノに手を掴まれているため吹き飛ぶことが出来ず、またホシノの目の前へと引っ張り戻される。
(な、何…今の…神秘で強化しただけの打撃じゃない…分からない、分からないと…!)
だが考える間もなくホシノは空中に浮き上がる程の蹴りをお見舞いすると、ショットガンの照準をアルへと合わせた。
その銃にホシノの神秘が流し込まれ…銃口が赤く光る。
「私の秘儀『ウジャトの目』。不変を作り出すその本質は絶対的な再生の力。これは厳密には肉体を絶えず元の状態に戻して、押されたそばから押し返すことで、傷つけられたそばから直ぐに治すことで、事実上の不変を実現してるんだ。じゃあ問題…この再生の力を恐怖で反転したらどうなると思う?」
「神秘の反転…恐怖、ですって…!?」
「反転『宵』」
「あばっ…!?」
ショットガンから放たれた赤いエネルギーを纏った散弾は…放射状に燃える木々を、地形を、広がる炎ごと全て消し飛ばしてしまう。
それに巻き込まれたアルはボロボロになりながらも生き延び、そしてまたホシノへと弾丸を放とうと銃口を向けるが、その前に接近したホシノは銃身を掴んで銃口の向きを逸らすと、無防備なアルの首を掴んで適当な木へと投げつける。
投げられた勢いによって複数の木々をへし折りながらぶっ飛んだアルは何とか着地するも、一瞬で背後を取ったホシノによって背後から蹴り飛ばされ、その先にあった湖へと突っ込む。
「…あぁ!何よそれ…!」
「おぉ?いい場所に落ちたね」
『良いけど…死ぬよ?アルちゃん』
(眉唾、じゃなかった…)
湖に浮かぶアルはここへと来る前にそう忠告したユメの言葉を思い出し、後悔を始めていた。
しかし今更引き下がる事はプライドが許さず、なんとしてでも一泡吹かせたいと決意すると弾丸を一つ湖の底に沈め、それに込められた神秘を起動することで爆発を起こし、湖の水を全て蒸発させて吹き飛ばす。
「効かないなら…領域に引きずり込んでやるわ!…あれ?どこに行ったの?…ちょっとー!?逃げたの!?」
「ごめんごめん、待たせちゃったかな?」
「ん?…っ!Keyの器…!」
「え?え?ホシノ先輩?ここ何処ですか!?」
「というわけで、見学のアリスちゃんで〜す」
一瞬目を離した隙に姿を消したホシノだったが、次に現れたかと思えば、その手には首根っこを掴んだアリスを持っていた。
わけも分からずこんな場所へ連れてこられて困惑するアリスだが、困惑しているのはアルも同じ。
「ホシノ先輩、なんで毎回説明が遅いんですか!?」
「う〜ん…じゃあ今から伝えるけど、課外授業だよ。アリスちゃんには、頂点の戦いに置ける真骨頂。”神秘解放”を見せてあげるよ」
「神秘…解放?い、いえ、それよりも10秒前まではアリスあの地下室にいましたよね?」
「飛んだんだよ〜」
「うわーん!駄目ですこの人!説明する気がありません!」
「Keyの器…やっぱり生きてたのね」
『小鳥遊ホシノを戦闘不能に追い込むこと、Key…天童アリスを仲間に引き込むこと』
(今後の為に天童アリスは殺せない。あいつ、私達の目的に気付いてる…!?)
「…何よそいつ、盾にでもするつもり?」
「盾?違う違う、言ったでしょ?見学だって。今はこの子に色々教えてる最中でね〜…だから君も気にせずに戦ってよ」
「はん!自分から足手纏いを連れてくるなんて馬鹿ね、どうなっても知らないわよ!」
Keyを仲間にする為にアリスを気にかけなければいけなくなったアルはそれを悟られないようにするために強気に、あくまでも冷静にそう言う。
しかし…次にホシノが放った言葉によって、その冷静さも吹き飛ぶことになる。
「まあ大丈夫でしょ〜。だって君、弱いし」
「…舐めるんじゃないわよ!!その気の抜けたツラごと吹き飛ばしてやるわ!!」
激昂したアルは全身から強烈な神秘を立ち登らせ、それだけで大地が震え、大気が歪んで突風が起こる。
その明らかに生物としての格が違う存在を見て、アリスは思った。
(あれが…弱い…?今までのどんな存在より化け物ですけど…)
不安と恐怖に肩を震えさせるアリスだったが…その肩に優しくポンと手が乗せられた。
アリスが振り向くと、そこには尊敬するホシノが穏やかな表情でアリスに言葉をかける。
「だいじょーぶ。私から離れないでね」
「…はい!」
「もう出し惜しみしないわよ────
────神秘解放『ノワール・アドマイアー』」
アルが掌印を結びそれを唱えた瞬間、一帯が赤い絨毯が敷かれた絢爛豪華で広大な洋室の景色に変わった。
高い天井からは煌びやかなシャンデリアが吊るされ、遠くに見える壁には高級そうな絵画が飾られている少し悪趣味にも感じる空間。
「な、なんですか…これは…?」
「これが”神秘解放”。秘儀を付与した生得領域を神秘で周囲に構築するんだ」
「…なんだかここ、嫌な感じがします」
「おっと、私が幾らか補助してあげてるけど、さっきの訓練みたいにアリスちゃんも自分で神秘を保つんだよ」
(…そんじょそこらの奴じゃ、入った時点で邪気に当てられて意識すら保てない筈だけれど…まあ予想通りと言えば予想通りね)
「さて、話を戻すけど…この領域に類するものとして、アリスちゃんは古聖堂の地下で直接見たんだよね?あれは秘儀が付与されてないただ生得領域を具現化しただけのものだったけど…あれがちゃんとした領域だったら一年の子達全員死んでたと思うよ。委員長ちゃんは分かってたんじゃないかな?」
アルは領域に入れられてもなお殆どその影響を受けていないホシノ達に驚き、そして先程その規格外さを実感したからこそ下手に仕掛けられない。
だから敢えて向こうの話が終わるのを待って…いや、もしかしたら、話の最中に仕掛けて片手間に処理されるかもしれないという危機感が働いて、プライドの防衛本能が闘志を押さえつけていたのかもしれない。
なんにせよアルが待っているのを良いことにホシノも話を続ける。
「まず、この領域を広げるのには滅茶苦茶神秘を消耗するけど、その分利点も多いんだ。一つは、領域の環境によるステータス上昇って言えばいいかな?」
「つまりバフということですね」
「そんな感じ。そしてもう一つが、領域内での攻撃が絶対に当たるんだ」
「ぜ、絶対ですか?」
「そ、ぜーったい。でも勿論対処法もあるよ。今みたいに神秘とかで自分を保護して受けるか、あんまりオススメは出来ないけど領域の外に逃げるか。まあこれは大抵無理だと思うけど。そして…」
「私の領域で貴女の不変とやらを中和すれば、ダメージは与えられるわよね?」
「ん…そうだね。いくら私の秘儀でも、単体じゃ結界とかの色んな補助を受けた領域には濃度で負ける。濃度で負けたら、神秘を塗り潰されて十分な機能が働かないしね」
「そう、安心したわ…」
(…ここに来たのは、半分はお遊びのつもりだった。本当に殺せれば重畳、殺せなくてもそれでも構わなかった。けれど…突き付けられた彼我の差を、アウトローとしての矜恃が受け入れられない)
「殺してやるわ、小鳥遊ホシノ」
「…そして領域に対する最も有効な対抗手段」
最大にまで練り上げた神秘を弾丸に込めたアルは、それをホシノにぶつけようとスナイパーライフルの引き金に指をかけて…
「…こっちも神秘を解放して領域を展開すること。同時に領域が展開された時、より洗練された神秘がその場を制するんだ。これは相性とかにもよるけどね────
─────神秘解放『アイ・オブ・ホルス』」
弾丸が放たれる直前に、ホシノも自らの領域を披露した。
(…な、何…何が、起こったの…?私の領域が押し負けた…?なんで、動け、ない…!?)
その空間は、延々と広がる広大な草原。
空はどこまでも青く透き通った雲ひとつない晴天。
そして…太陽の代わりに地上を見下ろす巨大な瞳。
(身体が麻痺して…違う、見えない何かに押さえ付けられてるような…いや、それも違う…これは一体…)
「君が動けないのは君自身の意志…というより本能かな。蛇に睨まれた蛙みたいに、刺激された”恐怖”が行動をしたいという意志を身体に伝えさせないんだ。空の目が見えるでしょ?この領域の中では、あらゆる存在が『ウジャトの目』の監視下に置かれて、律される」
アリスを小脇に抱えるホシノは、動けないままその場で固まるアルにゆっくりと歩み寄ると、その頭を掴んでミシミシと音が鳴るほどに力を込める。
「…っ!」
「ずっとこのままでいたら恐怖が高まり過ぎて発狂死するんだけどね。君には色々と聞きたいことがあるからこれぐらいで勘弁してあげるよ」
優しい声でそう言ったホシノは、直後に容赦なく掴んだ頭を地面に叩き付け、領域を解除した。
周囲の景色は元の干上がった湖の底に戻っていて、立つのは勝者、地に伏すのは敗者。
小鳥遊ホシノ、余裕の圧勝だった。
(これが…最強…生物としての格…いや、最早次元が違います…)
「さて、お嬢ちゃん。誰に言われてここに来たのかな?」
「あーあー、負けちゃった。だから言ったのにね〜。あ、私は助けないよ?S.C.H.A.L.Eの人達に顔を見られたくないし」
「…」
離れた場所から一連の戦いを俯瞰していたユメとカヨコ。
薄情に背を向けてその場を去るユメに対して、カヨコは呆れたようにため息を吐くと取り押さえられているアルの方へと向かった。
「命令されて動くようなタイプには見えないね。私を殺すと何か良いことでもあるの?」
「くっ…殺しなさい!貴女なんかに話すことは無いわ!」
「…!アリス知ってます!くっ殺というやつですね!」
「ごめんねアリスちゃんちょっと静かにしてて」
どこからか持ってきたロープで未だ身体が動けないままのアルを縛り上げたホシノは、その頭に銃口を突きつけながら尋問を行っていた。
だがやはりと言うべきか、中々口を割らず悪戯に時間だけが過ぎることを嫌いそろそろ強硬手段に出ようかと考えていたその時。
「…!」
揺らめく影のようなものが飛来し、ホシノはそれを避ける。
落ちてきたそれにホシノとアリスは警戒を向けるが…そこにいたのは、一匹の猫だった。
「…わぁ〜、猫ちゃんだ〜」
「可愛いですね〜」
(…秘儀だよね?戦意が削がれる…)
その猫を見た途端アリスとホシノの張り詰めていた警戒心や緊張感が融解する。
内心その違和感を即座に看破したホシノは新手が来たのだと悟り周囲に意識を張り巡らせると…突如現れた全身が揺らめく靄に覆われた巨大な狼のような怪物がアリスへと襲いかかり、咄嗟にホシノはアリスを担いでその場を離脱する。
「…チッ、やられたね」
その間に怪物を影にして潜んでいたカヨコがアルを回収し、怪物の背に乗って駆け抜けて行く。
追いかけようとしたホシノだったが、周りから集まってくる同じような怪物の気配を察知し、アリスを守る為に側を離れられず、逃走を許してしまった。
(…気配を隠すのが上手い。もう追えなくなった。戦闘力ならともかく、厄介さはあっちのが上かもね)
「はぁ〜…消化試合だよ。アリスちゃんは私の側を離れないでね」
「すみません、ホシノ先輩…アリスが足手纏いなせいで…でもアリスをここに連れてきたのはホシノ先輩なのですから責任はそちらにあると思います」
「ずけずけ言うね」
その後襲いかかってきた怪物を全て掃討したホシノは、一応連中が逃げて行った方向を探ってみるも、神秘の痕跡どころか足跡すら完全に隠蔽されて既に追跡が困難になっていることを確認する。
「あのレベルのアウトローが徒党を組んでるとはね。楽しくなって来たね〜」
「あれを楽しめるのはホシノ先輩だけだと思いますけど…」
「アリスちゃん…というか皆には、あれに勝てるぐらいは強くなって欲しいんだよね。少なくとも最低ラインってやつ?」
「あれに…ですか…」
「目標は具体的な方が良いでしょ?いや〜、連れてきてよかったよ〜」
簡単に言うホシノだが、自分にはまだまだ遠そうな道だし無茶を言うなと内心毒を吐くアリス。
しかしそれでは駄目だと気持ちを切り替えると、頬を叩いて気合いを入れた。
「…やる気だね。じゃあ目標を設定したら後は駆け上がるだけだよ。ちょっと予定を早めて、これから一ヶ月もっとクソゲーやっておじさんと戦ってを繰り返す。その後は実践、アリスちゃんには重めの任務を幾つかこなしてもらうよ。基礎と応用、しっかり身に付けて交流会でお披露目といこうか」
「…はい!ホシノ先輩!」
「はい、アリスちゃん何かな?」
「交流会とはなんですか?」
「あれ、言ってなかったっけ?」
一方、S.C.H.A.L.Eでは…
「…遅いです!」
「すみません…」
先に行かされたアヤネはいつまで経っても来ないホシノにキレるヒマリと二人切りで、気まずさに胃を痛めていたのだった。
某所、とあるビルの中を歩くユメは目的の扉を開け、その中に入る。
そこには、どこまでも続く荒野が広がっており、至る所に木の代わりに刃が地面から生えた物騒な景観。
そんな荒野の真ん中で、立てられたテントの中から小柄で悪戯っ子のように無邪気に笑う少女が顔を出した。
「相変わらず殺伐とした空間だね〜。生得領域がこれって、ハルカちゃんのことちょっと心配になるよ」
「やあ、ユメちゃん…アルちゃんは?」
「瀕死。カヨコちゃんが助けに行ったから多分大丈夫じゃないかな?」
「あはは、アルちゃんったらま〜たこういう役回りさせられてるよ!…けど、無責任じゃない?アンタが焚き付けたんでしょ?」
愉快そうに笑っていた少女だが、不意に真顔になってユメを睨む。
そんな冷たい視線を顔を背けて躱したユメは、大袈裟に身振りしながら飄々とそれを否定した。
「そんな、私は止めたんだよ?むしろ気にかけてあげたことを感謝して欲しいね〜…っと、噂をすれば」
荒野にポツリと立つ扉が開き、その奥から縛られたままのアルを担いだカヨコがこの空間に入って来る。
ようやく動けるようになったアルは鬱憤を晴らすかのようにじたばたと暴れるが、カヨコによって雑に地面に転がされたことで涙目を浮かべた。
「な、何よー!あいつ!」
「あっはは、アルちゃん無事で良かったね!」
「どこをどう見たら無事に見えるのよ!というかまずはこの縄解きなさい!」
「それで済んでるだけマシだと思うけどね〜。これで分かったと思うけど、小鳥遊ホシノは然るべき時、然るべき場所、然るべき状況…こっちのアドバンテージを確立した上で封印する。決行は10月31日、ミレニアム自治区。詳細は追って連絡するよ。良いよね───ムツキちゃん?」
「うん、異論は無いよ。狡猾に行こうか、人間らしく…アウトローらしくね…くふふっ」
「ちょっと!話すなら私も混ぜなさいよ!何勝手に進めてんの!?」
「社長大人しくして。この縄神秘で保護されてるせいで力づくじゃ切れないんだから…」
「あ、アル様ー!?今お助けします!」
「ちょっ、ハルカ…無理に引っ張ったら…!」
「痛い痛い痛い!?締まってる、ハルカ、やめて…締まってるからぁ!?」
「…こっちは締まらないなぁ〜」
「あはは、アルちゃんらしいね!」
配役
真人…ムツキ