今回女の趣味と名前という共通点があるばかりにハイセンスゴリラの配役を宛てがわれた為あの生徒が盛大にキャラ崩壊しますのでご注意ください。
S.C.H.A.L.Eの外にある自販機で、ヒナとカズサは飲み物を買って休息を取っていた。
主にペロロとレンゲの厳しいしごきによって二人ともジャージはボロボロで、擦り傷や痣も幾つか出来ている。
ちなみに休息とは言ったが二年生達の飲み物も買っていかなければ行けないためパシリにされてるとも言える。
「…妖怪MAXないじゃん。自販機もっと増やせないの?」
「無理でしょ。そもそもS.C.H.A.L.Eだって機密が多いんだから敷地に入れる業者も限られてるの」
「はぁ…えーと、レンゲ先輩が緑茶、ミノリ先輩が珈琲…ペロロ先輩は冷えてれば何でも良いと…やっぱり絶対中に入ってるよね!?暑いから冷たいの欲しいんだよね!?」
例によってそれを無視したヒナはオレンジジュースをこくこくと飲み込んだ。
「…そういえば、百鬼夜行支部の部長が来るのが今日ではなかったか?」
「あ?そういやそうか。打ち合わせなんだったな」
「弾劾」
ヒナ達をパシらせていた二年生三人は、交流会に向けての話し合いの為に本日S.C.H.A.L.Eにやって来る百鬼夜行支部の人達が来ることを思い出し、同時に危惧していた。
百鬼夜行支部の部長は連邦生徒会とも繋がりの深い保守派の有力者。
アリス含めた一年生を特級案件に派遣する事に賛同していたという噂も広まっており、その思想か故に元からホシノやS.C.H.A.L.Eの部長のヒマリとは犬猿の仲であったが、今回の件でより一層その軋轢が深まったという。
「ヒナやカズサが連中と鉢合わせ無ければ良いが…」
「つっても標的だったアリスはもう死んでるんだろ?ヒナ達を今更どうこうするつもりはないはずだろ」
「デモ」
「確かに、教員の立場ならば勝手には動けない。だが生徒ならばどうなると思う?」
「…キキョウが来てるってのか?」
適当に聞いていたレンゲだったが、ペロロが百鬼夜行の生徒の話題を出した途端露骨に目の色を変え、怒気を孕んだ表情を浮かべる。
そこには不良ですら震え上がる凄みがあったが、何ともないように受け流したペロロは大袈裟な身振りで話を続けた。
「あくまで憶測だ。打ち合わせに生徒は関係無いからな。だが、奴らは嫌がらせを好んでいただろう…キキョウとアオイは」
「…チッ」
その頃、噂をすれば何とやら。
先輩達の分の飲み物を買っていたヒナとカズサの元に、二人の来客が訪れる。
方や猫の耳と二股の尾を持つ羽織を羽織った少女、方や青い髪と尖った耳が特徴的な白い装いの少女。
「…何故ここに居るの?桐生先輩」
「嫌だね、ヒナさん。そんなに睨んできて」
「この人達がクロコと三年の代打、ねぇ…」
現れて早々、猫耳の少女…キキョウは嫌味ったらしく、尖った耳の少女…アオイは値踏みするようにヒナとカズサを見やる。
「あんた達が心配だから部長についてきたんだ。聞いたよ、同級生が死んだんだってね。辛かった?」
「…何が言いたいの?それによっては…!」
「やめなさい、カズサ」
「ふん、良いよ。言い辛いことってあるよね。だったら代わりに言ってあげる」
あからさまな嫌味に食い下がろうとするカズサだったが、ヒナが制止する。
それをいい事に、キキョウは手元であやとりをしながら嫌味な笑みを浮かべた。
「器と言えば聞こえは良くても、要は半分特異現象の化け物。そんな汚らわしい人外が隣で仲間を名乗って虫唾が走ってたんじゃない?死んでせいせいしたんじゃない?」
「「…」」
心無いキキョウの言葉にヒナとカズサは子供が見れば泣き出しそうな怖い表情をするが、高まっていた緊迫感にアオイが喝を入れた。
「そこまでにしなさい!キキョウも、どうでもいい話を広げないで。私が知りたいのは彼女達がクロコの代わり足り得るのかどうか、それだけよ」
威圧感を顕にするアオイ。
殺気立っていたヒナとカズサでさえそれを塗り潰すアオイの気迫にたじろいでいたが、一方キキョウは「また始まった」と言わんばかりに呆れてそそくさとアオイから距離を取り始めている。
その様子を疑問に思っていた二人だが、そんな二人の前まで威圧感そのままに歩み寄ってきたアオイは声を大にして二人に問いかけた。
「…どんな女がタイプかしら!?」
「「…ん?」」
聞き間違えたのか、幻聴か。
状況にそぐわない問いかけをされて首を傾げた二人だったが、悲しきかな。
続く言動でアオイは容赦なくそれが現実だと叩きつけてくる。
「返答次第では今ここで半殺しにしてクロコを、最低でも三年を交流会に引っ張りだすわ」
そう言うとアオイは上着を脱ぎ捨て上をノースリーブのインナー姿になると、銃を構えて堂々と宣言して見せた。
「ちなみに私は…タッパとケツがデカイ女が好きよ」
「…なんで初対面の貴女も性癖なんか話さなきゃいけないのよ」
「ん?」
「そうだよ、お堅苦しくて色恋なんて縁遠いヒナにはハードル高いでしょ」
「貴女は黙ってなさい。ただでさえ意味わからないのに余計ややこしくしないで」
ごく当然の筈の指摘に何故か理解にそこそこの秒数を使ったアオイは、ようやく合点がいったのか一人頷くと、一度銃を下ろして自分の胸に手を当てた。
「百鬼夜行支部三年、扇喜アオイよ。自己紹介終了、さあこれで私達は友達、もう気兼ねなく話せるわね。早く答えなさい。男の趣味でも良いわ。性癖っていうのはその人の本質が反映されるものなの。女の趣味がつまらない奴はそいつ自身もつまらないのよ。私はつまらない女が大っ嫌いなの」
「ごめんなさい、一から十まで何言ってるか分からなかったわ。本当に同じ言語で話してるのよね?」
何を理解したつもりで頷いたのか、話を進めようとするアオイを思わずヒナが止める。
しかしアオイもそれを無視して強引に話を続けた。
「交流会は血湧き肉躍る私の魂の独壇場。最後の交流会で退屈なんてしたくはないの。もしそうなったら何をしでかすか分かったものじゃないわ」
「S.C.H.A.L.Eって四年までの在学を認められてなかったっけ?」
「交流会に出れるのは三年までなのよ」
「へ〜」
「答えなさい、空崎ヒナ。今なら半殺しで済ませてあげるわ。どんな女がタイプかしら?」
「なんで私に振るの!?大喜利じゃないわよねこれ!?」
話したい事を話したアオイは再び銃を構えた。
そして話の矛先が向けられたヒナは柄にもなく声を張り上げて抵抗しようとするも、既にアオイの中ではヒナが答えることが確定してしまっているため逃げるに逃げられなくなってしまっている。
(くっ…クッソ面倒臭い!でも、カズサは今武器を広場の方に置いてきちゃってて丸腰なのよね…出来れば揉め事は避けないと…)
「…」
場を収めるために大人しくアオイの質問に答えようと自分の考えを模索するヒナ。
女の趣味…恋愛という意味ではヒナはまだピンと来るものが無いが、好みの気質や人柄から人物像を逆算し…そして一人の後輩の姿が思い浮かんだ。
いつでも自分を慕い、憎まれ役になろうともひたむきに努力を続ける、ヒナが気にかける後輩の姿が。
『委員長はいつもお仕事し過ぎなんですから、たまにはよく休んでくださいね』
「…別に、好みなんか無いわ。その人がひたむきで努力家で、人を気遣えるようなそんな人なら」
「ふ〜ん?」
「本当に堅苦しい答えだね〜?ここは一発ウケ狙いで巨乳のお姉さんが好きとでも言っておけば良かったのに」
「どちらかと言えば当てはまらない事は無いけどそういうのじゃないのよ…」
ヒナとしては真面目に、真剣に考え出した答え。
カズサに弄られながらも自分自身で辿り着き、紳士に答えたつもりだった。
しかし、その答えを聞いたアオイはおもむろに顔に手を当てると、指の隙間から失望の眼差しを見せる。
「…退屈よ、空崎」
「なんでよ…っぶな!?」
「ヒナ!?」
アオイは構えていた銃を発砲する…かと思いきや、一瞬でヒナとの間合いを詰めると腕全体を使ってヒナの首を狩り取ろうと振るう。
それを腕で受け止めようとしたヒナだが、アリスといいその華奢な体躯のどこにそんな力があるのか、防御の上から暴力が突き破り威力を殺しきれず、ヒナは大きく吹き飛ばされる。
カズサも止めに入ろうとするが、忍び寄ったキキョウにより背後から首に腕を回され、抱きつかれるようにされてそれを妨害される。
「空崎さんも気の毒だね。入学時点で2級を与えられた天才も、1級のアオイ先輩相手じゃ赤子みたいなものだもの。後で慰めてあげなきゃね」
「…面倒だから逃げようかとも思ったけど、気が変わった。熱血なのも陰湿なのも苦手だけど、あんたよりかはレンゲ先輩のが100倍マシね。除湿した方が良いんじゃない?陰湿過ぎてカビ生えてるよ?」
「…口の聞き方ってものを覚えた方が良いよ」
カズサの強気な煽りにまんまと乗ったキキョウは、カズサの腹部に銃を押し当てた。
「一目見た時から察してはいたわよ。貴女が退屈な人だって。でも、人を見た目で判断しちゃいけないわよね?だからわざわざ質問をしたというのに、貴女は私の優しさを踏み躙った」
「もしかして私と貴女の間で次元が捻れてたりする?それで言語が私に届くまでに他の何かに変換されて…ないわよね…はぁ…」
この状況を現実と認めたくないヒナが必死にそれを否定する材料を探すが、これ以上現実逃避を続けても無駄だと悟りヒナもまたマシンガンを構える。
(扇喜アオイって…あの扇喜アオイよね。去年起きた最悪のアウトロー、ユメによる未曾有のテロ、D.U.、百鬼夜行での”百物語”。その時百鬼夜行に現れたという1級特異体5体と、特級特異体1体を鎮めたというあのアオイ…けれど、特級に勝てる1級は確かにいるにはいる。驚くべきは…)
「貴女、秘儀を使わないそうね」
「うん…?あぁ、あの噂はガセよ。流石に特級相手には使ったわ」
(1級には使ってないってことね…やっぱり化け物じゃない)
「安心したわよ、まだ同じ人間の範疇で!『鵺』、と…『蝦蟆』!」
ヒナは銃を上に投げると掌印を結んで大きな鳥のような式神、鵺と大きな蛙の式神である蝦蟆をの影絵を作ると、影から翼を持つ蛙が飛び出す。
「拡張秘儀『不知井底』」
拡張秘儀、それは秘儀への解釈を広げ、秘儀の本来の効力を改変して別の効果、或いは本来以上の効力を引き出す技術である。
ヒナが行ったのは、秘儀である『十種影法術』の式神、その内の二種類をひとまとめにするというもの。
こうして混ぜ合わされた式神は単体で呼ぶよりも能力が落ちるが、代わりに破壊されても元となった式神が完全に破壊されてもう呼び出せなくなるリスクを減らせるという利点がある。
現れた合計五体の不知井底の内、1体ずつがヒナの左右に控え、残りの3体はヒナの背中に張り付く。
先程上に投げたマシンガンをキャッチし、準備は万全。
(距離を取ってから拘束して…)
「っ!?さっきのが全速じゃ…!」
「薄っぺらいわね、身体も女の好みも」
アオイを制圧する算段を立てていたその時、アオイは目にも止まらぬ速さでヒナの後方まで駆け抜ける。
その速度による風圧で不知井底がまとめて吹き飛び、無防備になったヒナの腰にアオイが組み付いた。
そのままヒナの体を持ち上げて…ジャーマンスープレックスを決め、ヒナの頭が地面に突き刺さる。
「う、がぁぁぁ!」
銃撃による追撃を察知して地面から頭を引き抜いてそれを避け、話さずに掴んでいたマシンガンを乱射して反撃する。
しかしアオイはその弾幕に真っ向から突っ込んで強引に突破すると、ヒナの頭を掴み背後の壁に叩き付けた。
衝撃で壁に亀裂が走り、脱出しようと藻掻くヒナの腹にさらに拳をぶち込んで壁を貫通してヒナが吹っ飛んでいく。
「例に漏れず退屈ね!」
「っ、この!」
「あら?」
吹き飛んだヒナにさらに追撃を仕掛けようと飛びかかったアオイだが、追いついてきた不知井底達が長い舌を伸ばしてアオイの手足に絡みつき、地面に引き倒してそれを妨害する。
しかしアオイは力づくで絡みつく舌を引きちぎって拘束を破った。
「貴女からはやる気を感じられないわ」
「…下手に出てたら偉そうに言ってくれるわね。そこまで言うなら…やってやるわよ」
苛立ちが募り我慢できなくなったヒナは頭から流れる血を拭い新たに掌印を結ぼうとする。
しかし…
『働くな』
「何をやっているんだお前達は」
「「…!」」
その場に駆けつけたミノリがマフラーを下げ口元を晒し、普段の語彙とは少し違った言葉を発すると、途端にそれを聞いたヒナとアオイの動きが止まり、強制的に戦闘が中断される。
さらに、大きく飛び上がったペロロがヒナとアオイの間に割って入った。
「ふぅ…無事で良かった」
「言うほど無事に見えるかしら?」
「ストライキ」
「…久しぶりね、ペロロ」
「何故交流会まで我慢できないんだ。もう帰れ、監督オペレーターを呼ぶぞ」
「言われなくてももう帰るわ…上着どこに置いたっけ。まあいいわ、どうやら退屈し通しになることは無さそうだし…クロコに伝えなさい。貴女も出ろって」
散々場を荒らしたアオイはあっさりと戦意を納めると、キキョウを迎えに行ってしまう。
ヒナを庇っていたペロロとミノリは肩を竦め、ヒナの手当を始めるのだった。
「特異現象捜査部としての活動を続けたいのなら、喧嘩を売る相手は選んだ方がいい」
「…」
倒れるカズサに銃を突きつけながら、キキョウは小馬鹿にするように笑う。
しかし構えていた銃が突然横から掴まれた。
「人のパシリに何してんだ、キキョウ」
「…なんだ、レンゲか。落ちこぼれ過ぎて気付かなかった」
「落ちこぼれなのはお互い様だろ?お前だって物に神秘を込めるばっか、秘儀だって無いようなものだもんな?」
「神秘が無いよりはマシだけどね」
ギスギスとした空気が二人の間に流れる。
それからしばらく睨み合っていたが、レンゲはため息を吐いて倒れているカズサの方を見た。
「あー、やめやめ。底辺同士でみっともねぇ。カズサ起きれるかー?」
「無理でしょ、それなりに痛めつけたから暫くは…ぐっ!?」
キキョウが油断したその瞬間、飛び起きたカズサはキキョウの首に腕を回してそのまま締め上げる。
引き剥がそうとキキョウも抵抗するも、グレていた時代に鍛え上げられた喧嘩殺法はそうそう振り解けるほど甘くは無かった。
「せっかくおろしたてのジャージに穴開けてきて…弁償してもらうし利子もたっぷり寄越して貰うよ!最近流行りのスイーツ全部奢ってもらうまでは許さないから」
「っ…なら、次はその身体にも穴を開けてあげようか…!それに、そんなに食べてばっかりだから余計な脂肪がついて私に良いようにされるんじゃないの?」
(こいつ…落としてやる…!)
乙女の逆鱗に触れるような挑発にカズサは腕の力を強める。
しかしそこに声がかけられた。
「キキョウ、帰るわよ」
「そんな…」
「あ、上着あったわ」
アオイがやってきた事でカズサは仕方なく腕の力を緩めると、キキョウは逃げるようにアオイの背中に隠れた。
「…ヒナは?」
「大丈夫だ。ペロロ達が行った」
「楽しんでたようね」
「冗談言わないで。まだまだこれからなのだけど」
「駄目よ。私は貴女と違ってD.U.に大事な用があるの」
「用?」
「ええ…リン行政官の公開会見よ!」
「「「へぇー…」」」
その話題になった途端露骨にテンションの上がったアオイに一同はドン引きしながら適当に返事をする。
それを気にせずにアオイは上着を羽織り直すと、本人の意思も無視してキキョウの手を引っ張った。
「ちょっと!?」
「電車を乗り間違えて会見場に辿り着けなかったり、不良が暴れて電車が止まって間に合わなかったりでもしたら私は何するか分からないわよ。だから着いてきなさい」
「あぁ、もう…!勝手な奴…!あんた達も、交流会はこんなもんじゃ済まないよ」
「何勝ってる感じ出してんの?行く前に財布置いてけや次は折るよ?」
「可愛げのないキャットファイトはやめとけ…」
去り際にフシャーッと威嚇し合う猫耳娘二人に呆れ返るレンゲ。
その後ヒナ達と合流しようとレンゲとカズサは道を歩いていたが、先程の会話が気になったのかカズサは遠慮がちにレンゲに聞いた。
「…レンゲ先輩、さっきの話本当なの?神秘がないって」
「まあな。だから私はこの特性のコンタクトを入れてないと特異現象が見えない。この銃も自動で銃弾に神秘を込めてくれるやつだ。お前達みたいに自分で神秘を流しては戦えない」
「アリスが貰ってたやつか…じゃあなんでレンゲ先輩は特異現象捜査部に?」
「嫌がらせ、だな。神秘が無いと見下されてた私が大物になったら、連中はどんな顔をするか楽しみだとは思わないか?」
「…そっすね」
「ああ、そうだ。訓練のと合わせてお前もうボロボロだったな。一旦セナ先輩の所行って治してもらってこい」
「…私は、レンゲ先輩のこと尊敬してるよ」
「…そうかよ」
「ヒマリはまだ?ただでさえ忙しい私の時間を無駄に割かせることは高く付くわよ」
S.C.H.A.L.Eの応接間、ソファに座り腕時計を気にしながら誰にともなく呟く特異現象捜査部、百鬼夜行支部の部長…調月リオに、付き添いに来ていた自称普通の少女…阿慈谷ヒフミは漏れ出る苛立ちを感じ取り部屋の隅で怯えていた。
そんな気まずい空気が漂う部屋に、ノックもせずにホシノが入室する。
「あっ!」
「ヒマリ部長ならしばらくは来ないよ〜?嘘のスケジュール教えといたからね」
(アヤネちゃんを脅して)
「…」
「その節はどうも、リオ部長」
「さて、その節とは何のことかしらね?」
「…とぼけるな。天童アリスのこと。保守派筆頭のあんたも噛んでるんでしょ?」
いつになく、普段のヘラヘラとしたものではなく
「麒麟児だか悪童だか知らないけれど、目上の相手を敬うことも出来ないとはお里が知れるわね」
「端から敬う気がないからね。頭が固いと目も凝って現実が見えなくなるんだ?」
「ほ、ホシノ先輩!流石にその言葉遣いは問題です!後で報告しますよ!」
(…うわぁ〜、あの小鳥遊ホシノ先輩だ…生だ…)
言葉では咎めつつも内心憧れの人に会えた事に浮かれている者が1名いるも、気付いていないのか気にしていないのかホシノはそのまま話を続ける。
「昨晩、未確認のアウトロー2名…どちらも特級に区分されるような連中に襲撃された」
「そう、それは大変だったわね」
「勘違いしないで欲しいけど、私にとっては街でアンケート取られた程度のハプニングだから」
(凄い、カッコイイ!ホシノ先輩流石です!)
「そのアウトロー達は連携も取れてたし同等級の仲間もきっとまだいる。それに敵さんだけじゃなくて、秤ちゃんにクロコちゃん、そっちの扇喜ちゃん。生徒のレベルも近年格段に上がってる。それに去年のユメの一件、そして現れたKeyの器」
「…何が言いたいのかしら?」
「分かんない?あんたらがしょうもない地位や伝統のためにせき止めていた力の波が、どうしようもなく大きくなって押し寄せて来てる。これからの世代は、特級なんて物差しじゃ測れなくなる。牙を剥くのが私だけだと思ってるのなら、痛い目を見るのはそっちだよ、リオ部長」
「…少し、お喋りが過ぎるわね」
最初は涼しい顔をしていたリオだが、ホシノの喋りの語感が上がっていく度に表情を強ばらせ、遂には睨んで話を止めるよう暗に脅迫する。
場数を踏んだ、年季の籠った圧を含んだ睨みをホシノは鼻で笑い飛ばすと、席を立つ。
「おー怖い怖い。言いたいことは言ったからこれぐらいでお暇させてもらうよ。あ、ヒマリ部長は2時間ぐらいで来るからね〜」
「2時間!?」
後2時間することも無くリオ部長と2人っきりでいさせられることにヒフミは絶望した。
「…はぁ、ヒフミ。お茶を買ってきてちょうだい」
「あ、はい!失礼します!」
この空間の気まずさに気が付いたのか、リオは自分とヒフミの息抜きのためにそう頼む。
元気に挨拶きたヒフミは部屋を出ると静かに戸を閉めて…駆け出した。
(追い付いたら一緒に写真撮って貰えないか頼んで見みましょう!)
D.U.、サンクトゥムタワー前広場。
そこでは連邦生徒会に対してクロノススクールの報道部による近年起こる不自然な現象についての追求が行われていた。
問答は粛々と続き、一般の生徒には公開出来ないような質問はのらりくらりと誤魔化し、双方煮え切らないながらも特に騒動もなく静かに会見は進行する。
そんな中、連邦生徒会の統括室首席行政官である七神リンが壇上に立った時にそれは起こった。
「我々は以下の件に紳士に取り組み───」
「キャ〜!リンちゃ〜ん!今日も凛々しい〜!!」
「…これからも皆さんのお声に向き合って───」
「眼鏡外してみて!ちょっとこっち睨んで!」
「…あの、そこの方。ここはそういう場ではないのですが」
「は、話しかけられちゃった…!」
「警備員」
「はっ」
厳粛な会見の場をアイドル会場か何かと勘違いしたらしい不審者は速やかに連行され、その後クロノス報道部の新聞の端っこにその事が掲載されたとか。
一ヶ月後
─────20XX年、9月。
トリニティ自治区、南部商業区の映画研究部運営の映画館にて、某映画上映終了後、三名の生徒の変死体が発見
死因───頭部変形による脳圧上昇、呼吸麻痺
サイレンが鳴り響く街の路地裏。
上機嫌に薄暗くジメジメとしたそこを歩く小柄な少女に、同じく小柄な…頭と背中から計4枚の小さな黒い翼を生やす桃色髪の少女が声を掛けた。
「あ、あんた…映画、館の…あんたが、やったの…?」
「…へぇ、よく追ってきたね。君〜…私が怖くないの?」
────本件の映画館に、特異現象捜査部の生徒を二名派遣
「覚悟は良いかしら、アリスちゃん。この先は凄惨な現場よ」
「…はい!」
配役
東堂…アオイ
真衣…キキョウ
楽巌寺…リオ
三輪…ヒフミ
高田ちゃん…リン