小鳥遊ホシノが神明結晶より解放されてから暫く。
刻一刻とKeyとの決戦が迫る中、キヴォトスの命運を賭けた戦いに勝利する為にアリス達は死滅回遊を通して協力を漕ぎ着けた者達と共にKeyに対抗出来る力を得るための修行に明け暮れていた。
そんなある日の一幕───
「さてさて、今日始めようか。とはいえ皆張り切り過ぎるのもあれだし適度に息抜きと休憩はするようにね」
「はい!しっかり寝てしっかり食べてます!」
S.C.H.A.L.Eに併設された運動場に集まったのは、ホシノとアリス、クロコ達2年組4人とアツコ、フブキとセリカ、外様からはカンナとモモイが今日は参加している。
始める前に音頭を取ったホシノにアリスが元気に答え、それにホシノがうんうんと笑顔で頷くと咳払いを1つして今日の訓練の概要を伝えた。
「今回はカンナちゃんに協力してもらってプラン2の試行錯誤と次いでに簡易領域の練習もしちゃうよ〜」
「私としてもまた自分の出来ること出来ないことを把握しきれていないからな。今日はよろしく頼む」
「いやぁ、殺傷力のない領域を使えるのがアツコちゃんくらいしかいなくてさぁ。それもちょっと面倒な仕様だから、システム的に低コストかつ連続で、しかも長時間領域を維持することもできるカンナちゃんの存在は助かるよ」
「むぅ…失礼な」
「ん、アツコのは煩い」
安全に簡易領域の練習の為の安全な領域を展開出来る事にホシノがカンナの背中をバシバシと叩きながら感謝を伝えるが、引き合いに出されたアツコは不貞腐れるように頬を膨らませるも、経験者のクロコが悪気なく追撃する。
「はいそこ、静かにね〜…さて、時間も惜しいしまずはおじさんが手本を見せてあげようか。カンナちゃんお願いね」
「分かった───神秘解放」
ホシノに促され、カンナが展開した領域『マッド・ドッグ・コート』
今回の領域の対象にはホシノが指定され、範囲内で巻き込まれたアリス達は傍聴席のような場所に座らされる…体質により領域の必中効果を受けないレンゲは空気を読んでそこに混ざって行った。
そしてそれと同時に、ホシノが簡易領域を展開して見せた。
「この領域の必中効果は領域内のルールの強制…だったよね?」
「ああ、基本は暴力等の禁止。その他領域内で行われる裁判を受けることだ」
「簡易領域なら直接的な攻撃だけじゃなくこういう必中効果も防げるよ。で、今回はおじさんが自分から簡易領域を弱めて…と」
ホシノの周囲に出現していた円、それが本人の調整によりパキパキと割れていき、それが完全に崩れるとホシノが転移、カンナの向かいに設置されていた被告人席に強制的に立たされる。
「相手との実力差とか領域の威力や洗練度にもよるけど、必中効果に晒され続けると簡易領域も剥がれちゃうから過信はしないようにね。ま、今回はおじさんの方が強過ぎて自分で弱めないと効かないんだけどね」
「うわーん!ホシノ先輩が年下にマウント取ってます!」
「そういえばカンナさんまだ17なんだっけ」
「おじさん君から感じる雰囲気がくたびれた社畜のそれなんだけど」
「女性の歳の話で盛り上がるな」
好き勝手言うアリスとモモイ、ホシノに青筋を浮かべたカンナはガベルを甲高く打ち鳴らし、領域の効果を進行させた。
今回はホシノが万が一Keyに敗北した際のサブプラン…カンナの領域による詰めの検証も兼ねている為、簡易領域が破られる、または失敗した人はそのまま過去のやらかしを炙り出される罰ゲーム付きとなっていた。
そしてこれに猛抗議したのは他でもないホシノだった。
「ちょっと待って!?最初の手本ではやらない手筈だったじゃん!?」
「せっかくだから受けていけ。貴重な経験だろう」
「ぐっ、領域のルール的に一度かかっちゃったらこっちから神秘解放出来ないのを良いことに…!ま、まあおじさん別にバラされて困るような悪いことなんてしてないし…」
「ジャッジマン」
『小鳥遊ホシノは未成年を含む不特定多数にセクシャル・ハラスメントに該当する接触を行った疑いがある』
「ホシノ先輩?」
「いや違うんだってアリスちゃん」
最初は余裕をこいていたホシノだったが、カンナの背後の式神…ジャッジマンが罪の内容を発表すると、先程までの余裕が嘘のように顔からサーッと血の気が引き、思わずドン引きの声を漏らしたアリスに弁明しようとする。
が、それを許さないとばかりにカンナがガベルを打ち鳴らした。
「さあ、陳述の時間だ小鳥遊ホシノ。ルールは既に知っているな?よく考えて言い訳することだ」
「ちょっ、ごめんって!何か気を悪くさせるようなことしちゃってたら謝るから!」
「それは自白と取って良いのか?」
「いや、そうじゃなくて…そう!同意!同意があったから!」
「ほほう?ならば今から確認するとしようか」
「なっ…!?」
カンナがジャッジマンから受け取った封筒それから取り出されたのは、監視カメラ等に使われる映像記憶メモリだった。
それが光となって崩れるように消えると、領域の上部からどこからともなく降りてきたモニターにある映像が映し出される。
そこに映っていたのは…S.C.H.A.L.E内の通路を歩くホシノとクロコ、レンゲ、ミノリ、ペロロ時代のサオリの映像だった。
『ん…ホシノ先輩』
『うへへ〜、クロコちゃんはなんというか相変わらず母性をひしひしと感じるよね〜』
『おいクソバカピンク、ちょくちょく出合い頭にクロコの胸に飛び込むのやめろ張り倒すぞ』
『ストライキ!』
『クロコも嫌なら嫌と言っても良いんだぞ?』
『ん…でもホシノ先輩が…』
『ほら〜、クロコちゃんもこう言ってるんだし』
『ざけんな精神までおやじになってんじゃねぇ!今日という今日は許さねぇぞ!』
『う〜ん…レンゲちゃんもまだまだ成長出来る希望はあるよ!』
『ミノリ!ペロロ!』
『デモ!』
『ホシノ先輩もからかうのは程々にしてくれ…』
「ホシノ先輩?」
「違うんだってアリスちゃん」
「捕まってないだけの性犯罪者だったんだね」
「私も昔急に後ろから抱き着いてきたと思ったらお尻に顔当ててきたの忘れてないからね?」
「あ?フブキ先輩も?私もそれされたことあるわ…死刑でいいわよそんなやつ」
「アリス、お姉ちゃん悪いこと言わないからあんな人慕うのやめなよ?」
「ん、懐かしい」
「つーかお前最近も同じようなことされてたじゃねーか。だからクソバカピンクが調子乗んだろ」
「プロレタリア…」
「先日私も外装を捨てたと見るや抱き着いてきたぞ」
「おいクソバカピンク!サオリに手を出すのは洒落にならねーぞ!」
「ホシノ先輩!見損ないました!」
「だから違うんだって!?」
「何が違うんだ。判決だ判決」
口々に貶され軽く涙目になるホシノに構わず、カンナはガベルを打ち鳴らしジャッジマンに判決を促した。
ホシノの陳述は実質的な自白、直接的に拒否は示していないクロコはともかく今回問われているのは不特定多数へ行ったことへの容疑。
実際この場で被害者が声を上げている以上ホシノの弁明は信用するに値せず…
『”
「罰重くない!?」
「アリス知ってます!エッチなのは死刑だと!」
無情にも告げられたジャッジマンからの刑罰に納得がいかないと声を張り上げるホシノだったが、傍聴席のアリス達は「ホシノなら仕方ない」と既に興味無さそうにしている。
ため息を吐いたカンナは領域の解除と同時に手元に出現した『処刑人の剣』を自ら消し、ホシノから没収した秘儀を返還した。
「仮にも子供達を教え導く立場の者が取る行動にしては度が過ぎたな。本人達の内輪ノリで済んでいる間はまだ良いが、それが周囲からどう受け取られるかはまた別の問題だ。じゃれあいも程々にするように」
「うへ…気を付けるよ…えっと、こんな感じで簡易領域の維持に失敗したら醜態晒す羽目になるから頑張ってね〜…」
歳下に説教を受け珍しく本気で落ち込んだ様子のホシノは、顔を引き攣らせながら話を進めた。
そして実際にこうして実演されればこれから練習する側も緊張感が高まる訳で…
「…次、誰がチャレンジしますか?」
「私はやだ。余罪がバレる」
「アツコちゃん詳しい話は後で聞こうか」
「わ、私が…」
「モモイは…もう少し後でもいいかもしれません。心の準備が整ったら一緒に行きましょう」
「ん、私が行く」
「マジかお前」
「労働?」
「本当に大丈夫か…?」
次に高々と名乗りを上げたのはクロコ。
心配するレンゲ達を他所にぴょんとカンナの前に躍り出ると、腰を低く落として出張中に身に付けてきたという簡易領域を展開する。
それに合わせてカンナも神秘を解放して領域が展開され、アリス達とホシノは傍聴席へ座らされ、クロコは簡易領域により未だ領域を受けずにその場に立ち続けていた。
「ん…思ったよりこれ難しい」
「クロコでもか?クソバカピンクは余裕そうだったのに…」
「そりゃあ、流石にそう簡単に追いつかれる程の年季じゃないからね〜。でもおじさんくらいじゃないとKeyには対抗出来ないだろうから、気合い入れなよ〜?」
「あっ、割れそう」
「早くない?今注意したばっかなのに…さては本当の領域で試したことないでしょ?」
「ん…」
「…というわけで裁判開始だ…ジャッジマン」
簡易領域の展開自体には成功しているものの、そもそもクロコ本人が神秘を解放出来るためにその重要性が幾分か薄くなり、本人の軽視も相まってカンナとの実力差の割には以外とあっさり…およそ1分程で簡易領域が剥がされてしまう。
そして領域の必中効果を受け被告人席送り、呆れた様子のカンナはガベルを鳴らしてジャッジマンに促す。
そして告げられたのは───
『砂狼クロコは20XX年、ブラックマーケットの某銀行で強盗を働いた疑いがある』
「嘘だよねクロコちゃん?」
「…」
「クロコちゃん!?」
発表された容疑にホシノが確認を取ろうとするも、スッと目を逸らされてしまう。
さらに、アリスは罪状が発表された瞬間に傍聴席のレンゲ、ミノリ、サオリもそっと視線を逸らしたのを見逃さなかった。
「3人も何か知っているのですか?」
「えっ?いやぁ…」
「ストライキ…」
「何のことやら…」
「…カンナちゃん進めて」
「そのつもりだ…砂狼クロコ。弁明を」
「ん…あれは誤解。皆で行った任務先で叩いたアウトローがあの銀行と裏で癒着してたからその足で証拠を暴きに行ったら…何か色々あってワイルドな感じになっただけ」
「…証拠を開けるぞ」
カンナがジャッジマンから受け取った封筒から取り出されたのは、またしても映像メモリ。
先程と同じように領域の上部からモニターが降りてきて、そこに映し出されたのは件の当時の様子を映した監視カメラの映像だった。
そしてその中で目立つのは強盗の主犯となる、見覚えのある4人…ではなく、5人組だった。
「…耳が出てるのはクロコ先輩ですよね?」
「あのマフラーはミノリちゃんので、尻尾はレンゲちゃん、覆面被ってるだけのデカブツ着ぐるみはサオリちゃんとして…紙袋の子は誰だろう?多分違う人だと思うけどなんか昔見た覚えあるんだけど」
その内4人は現在被告人席に立たされているクロコと目立つ特徴からクロコ含めた2年組だというのは察せられるが、残る1人の正体にはイマイチ心当たりがなかった。
平凡な装いで、敢えて挙げられる特徴と言えばその人物が鞄に付けているペロロのぬいぐるみぐらいか。
ホシノは紙袋を被っている様子に同じような格好をしていた奴を見たことあるなと昔のことを思い出ししみじみしているが…そんな中その人物の正体に気付いたのはアツコだった。
「あ、分かったかも。百鬼夜行支部の子だ。去年クロコと行った交流の打ち上げで会って、同じペロロのぬいぐるみを付けてたのを見た気がする」
「ですが、モモフレグッズの普及具合からしてそれだけで断定するというのは…」
「説明しよう。あのぬいぐるみは限定1個のみ出回った伝説のミニペロロジラ人形だ。同一のものを持っている人物が同時に存在する可能性は限りなく低いだろう」
「うわっ、サオリ先輩!?」
「いやお前は正体知ってんだろ…」
「もしかしてヒフミちゃん?去年の映像っぽいし、当時1年のあの子巻き込んで何してるのさ君達…」
ずっとあの外装を着ていただけあって無駄にその方面の知識を持っているサオリが流暢に解説を始め、普段見ないサオリの勢いに思わずアリスはたじろいでしまう。
とはいえ正体が判明したことでスッキリした一同だったが、本題は裁判の結果。
果たして判決は…
『”
「…行為を働いたのは事実だが行政上の正式な業務の一環ならばやむ無しか。場所が場所だけに一般人への被害も出ていないしな。特殊部隊がテロリストの制圧の為に建造物を破壊してもある程度責任が発生しないのと同じ理屈だ。まあキヴォトスならではのその辺の緩さにも起因するがな」
「逆にセクハラだけで死罪取られるホシノ先輩は何やってるんですか?」
「おじさんもまだ納得してないからね?後この話おじさん聞いてないからクロコちゃん達からは詳しく聞かせてもらうからね」
「ん…」
「さて、じゃあ次は誰で遊ぶか」
「遊ぶって言っちゃってんじゃねーか」
「ストライキ!」
いよいよ裁判の方をメインにし始めたカンナに外野がツッコミを飛ばすが、あえなく無視され次のチャレンジャーの募集が始まる。
そもそも簡易領域を維持しなければ罰ゲームを受けると言うが、今回の修行の性質上維持の練習は簡易領域が剥がされるまで継続するため、ホシノ程圧倒的でも無ければ絶対に罰ゲームを受ける羽目になってしまうのだから酷い。
「ふぅ…大丈夫、アリス。お姉ちゃん行くよ」
「モモイ…」
皆腰が引ける中、暫く静観していたモモイが手を挙げてカンナの前に立った。
それを心配そうに見守るアリスと、興味深そうに見つめるホシノ。
モモイは以前までは凶悪なアウトローとして活動しており、ミレニアムでの事変においては主犯となるアウトローと共謀して多くの死傷者を出してしまっている。
それが罪に問われればモモイに言い訳する余地も無し、目を背けられるものでも無いためそれを改めて向き合わせれば精神的なダメージは避けられないだろう。
故にアリスは気を遣って後回しにするよう言っていたのだが…覚悟を決めたモモイの表情を見たカンナは、アイコンタクトだけで確認を取ると、ガベルを鳴らして神秘を解放した。
それと同時にモモイもフブキから教わった簡易領域を展開し、それに対抗する。
「おー、やるじゃん。恐怖が扱えるだけあって、神秘のセンスは中々あるねぇ。セリカなんかこの前アツコの領域で練習したら一瞬で剥がされてクソみたいな情報流し込まれてたのに」
「ちょっと!?嫌なこと思い出させないでよ!」
「失礼な…」
モモイの簡易領域は先程のクロコと比べても安定しており、じわじわと円の外側から崩れて行ってはいるものの確かにその効力を発揮してモモイを必中効果から守っていた。
それを見て仕込んだ本人であるフブキは賞賛するが、同時に貶されたセリカは抗議し、流れ弾が飛んできたアツコはまたもや不貞腐れる。
しかし、確かにモモイの簡易領域はカンナの領域に耐えてはいるが10秒、20秒、と経過するに連れて次第に剥がされるペースも上がっていき、モモイも額に汗を浮かべ始める。
「モモイ!頑張ってください!」
「うん…!妹に応援されたら、お姉ちゃん頑張らない訳にはいかないよ…!」
アリスからの応援が飛ぶと、モモイは気合いを入れ直し再び簡易領域の安定化に成功。
剥がれていくペースが多少減衰し、耐久時間を伸ばしていく。
そしてカンナが神秘を解放してから2分が経過し、残りのモモイの簡易領域の範囲は3分の1弱程度まで剥がされたところで───
「ぐっ…くぅ〜…!…はぁっ…はぁっ…」
集中力が途切れてしまい、残る簡易領域が一気に剥がされる。
そして領域の必中効果に晒され、強制的に被告人席へと立たされた。
クロコが1分足らずで剥がされていたのからするとかなりの記録と言えるだろう。
だが維持を続けられなかった以上罰ゲームは平等に行われることになり、カンナは厳粛にガベルを打ち鳴らした。
「始めるぞ」
「うん…どんな罪も、飲み込むよ」
『才羽モモイは大量精神崩壊兵器”TSC”を世に出回らせ不特定多数の精神に健康的な悪影響を及ぼした疑いがある』
「いやいやいやいや!?」
「意義ありですカンナ!『TSC』をそんな物騒な呼び方しないでください!」
「いや…あの事件をリアルタイムで追っていた身からすると民衆からの苦情が本当に酷かったぞ…特に生活安全局の連中の苦労がな」
かつてモモイが仲間と共に生み出した伝説のクソゲー、『TSC』が多くの人に自己崩壊を起こさせアリスですらとち狂ってしまった最早兵器と言っても差し支えないあれがいよいよ罪に問えるレベルになっていると知りモモイは想定していたのとは別方向でショックを受けた。
アリスはその時の記憶が飛んでいるので何か革新的なゲームをしたという記憶しかなく取り敢えずモモイの擁護に回ったが、当時の生活安全局に集中したクレーム地獄を思い出したカンナは彼女達に同情するように頭を振る。
「『TSC』ねぇ…おじさん7年ぐらい前からゲーム自体やってないや。桃鉄99年とどっちが辛いの?」
「ん、分からない。でも想像を絶するらしい」
「確か前にキキョウに遊び半分でオススメしてみたら3ヶ月くらい連絡もくれなくなったなぁ」
「闘争!ストライキ!」
「どうしたミノリ何か嫌な思い出でもあったのか?」
「そうかあれをプレイすれば合法的に体調悪いって言ってサボれるのか…」
「仕事サボれるのと精神ダメージのどっちが辛いのかしらね…?」
「なんで皆そんな酷いこと言うの…」
「モモイ!アリスは味方です!今度一緒に遊びましょう!」
「決戦前に精神が汚染されたら堪らないから全部が片付いてからにしてね」
落ち込むモモイを励ますアリスだったが、ホシノによってさらに刺されモモイはどんよりとした雰囲気と共にぐったりとうなだれた。
「弁明する気は無いのか…?そうか…じゃあもうさっさと終わらせるぞ」
『”
「しかも罰が重い!」
弁明無しにより証拠の提出をするまでもなく有罪判決を取られたモモイ。
しかも死刑にまで発展し、カンナはやれやれと頭を搔いて手元に出現してしまった『処刑人の剣』を解除する。
救出されたモモイはぴっとりと寄り添ったアリスにより慰められ、10分程のインターバルを挟んでようやく復帰した。
その他も軽い休憩を終え改めて練習に取り組むことになり…
セリカ…耐久時間17秒
『黒見セリカ、罪状無し』
「お前…良い生き方してるな」
「えっと、これはこれで気まずいわよ…」
アツコ…耐久時間42秒
『秤アツコは20XX年、酒類の密造に関与し、同時に未成年にも関わらず飲酒をした疑いがある』
「アツコちゃーん?あの件やらかしたのシグレちゃんだけだと思ってたけど君も関わってたのアツコちゃーん?」
「お酒じゃないよ。ただの発酵したカンポット」
「有罪だ馬鹿」
レンゲ…測定不能
『…』
「いやそもそも私裁判受けれねーし簡易領域使えねぇよ!」
「どうするんだこの空気…ジャッジマンが反応に困ってしまっているじゃないか」
「知るか!」
サオリ…耐久時間22秒
『錠前サオリは…強く生きろ』
「何故だ…?」
「なんでちょっと自我出し始めてるんだジャッジマン貴様」
フブキ…耐久時間12分55秒
『合歓垣フブキ、職務怠慢。
「頑張ったのに弁明の機会すらなかったんだけど!?裁判の公平性はどこ行ったのさこの悪徳裁判官!その天秤は飾りなの!?」
「そもそも耐久時間と裁判の結果は関係ないのだが…」
「フブキちゃん。キレるのは良いけどもうちょっと真面目に働こうね」
アリス…耐久時間38秒
『天童アリスは20XX年、10月31日。ミレニアム自治区にて大量殺人を犯した疑いがある』
「うわーん!なんでアリスだけそんなガチなんですか!?」
「…無かったことにするか。もう答えを出した話だ」
最後にアリスが以前カンナと戦った時の罪状が繰り返し取り上げられ、傍聴席がお通夜状態になったのでカンナが領域を中断することで今回の修行を一通りこなしたことになる。
時間も時間なので、再び全員の前に出たホシノが締めに取り掛かることにした。
「まあ、殺傷力の無い領域とはいえ実際にそれを体験するのとしないのとじゃあ大違いだからね。これからもKeyとの決戦前にちょくちょく簡易領域の練習はして…カンナちゃんは勿論、アツコちゃんとかクロコちゃん、あとクロコちゃんが連れてきた人達みたいな領域が使える人達に頼んで各自で対神秘解放の練習を進めるように。今日のところは色々な意味で皆疲れただろうから、じっくり休んでよね。え?私?私のはちょっと加減が効かないから…」
そうして今回の修行はお開きとなり───
「カンナ、もう1回クソバカピンクに神秘解放してくれ。今度は没収したら暫く秘儀は返さなくて良いからな」
「レンゲちゃん?」
「ウジャトの目さえ没収出来れば私達でもホシノ先輩に仕返しできるからね〜…セクハラの」
「フブキちゃん?」
「ごめん、ホシノ先輩…皆に1発殴れって言われたから」
「クロコちゃん!?」
「モモイ!ホシノ先輩は放っておいて一緒にキヴォブラしましょう!」
「う、うん…ホシノさん本当に大丈夫かな…?」