ブルア廻戦   作:天翼project

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人によってはピンと来るオマージュ回


短編:真冬の死闘

 

外は吹雪く夜のこと。

 

特異現象捜査部の本部であるS.C.H.A.L.Eの敷地内にある寮の談話室には、冬場になるとストーブと炬燵(コタツ)が設置され、自室で過ごすのも退屈な面々はここに集まることが多くなる。

さて、そんな冬場の寮には色々と規則が定められるのだが、基本的に使用される備品は使用者が保管庫から自ら補充するというのが主であり、普段ならトイレットペーパーや箱のティッシュ等がこれに当てはまるが、冬場となるとここのラインナップにストーブの灯油も追加されることとなる。

 

そしてこの規則が下手な任務以上の死闘を招くことになるのは、ある意味必然だったのかもしれない。

 

 

 

 

 

 

 

「…お茶いる?」

「お?さんきゅー」

 

 

久々の休暇ですることも無く寮の談話室で暇を潰す特異現象捜査部の面々。

炬燵に潜るヒナは同じく炬燵に下半身をねじ込み端末を弄るレンゲにお茶を淹れ、同様に炬燵に入って寝っ転がりながらミノリは本を読んでいる。

ストーブの近くではカズサが猫の動画を見ていたり、サオリが少し離れた位置で銃のメンテナンスをしている。

 

それぞれが思い思いに過ごせるのも、ストーブにより部屋が快適な温度に温められているからこそ。

今この瞬間はまさに平和な学生の一幕そのものと言えた。

 

しかし悲しきかな、終わりとはいつの時も突然やってくるものなのだ。

 

 

 

 

ピーーピーーピーー

 

 

 

 

「「「「「「!」」」」」」

 

 

ストーブから鳴り響いた音に、部屋にいた全員が鋭い視線を向ける。

それはストーブの灯油が切れる音であり、即ち今まで部屋を温めていた暖房が停止することを意味する。

それを察した一同はしかし何も言うことはなく素知らぬ顔で平然と過ごそうとするが…

 

「…」

 

時間が経ちストーブが止まったことで部屋の温度が下がり始め肌寒さを感じたカズサはいち早く炬燵へと潜り込んで避難する。

それを見たサオリも遅れて炬燵に入ろうとするが…既に四角形の炬燵、その四辺をヒナ、レンゲ、ミノリ、カズサが占拠している。

ならば隣に入れさせてもらおうかとサオリはカズサの方へ行くが、

 

「…」

「…」

 

カズサにより真顔で無言の圧を受けたサオリはおずおずと下がり、代わりにヒナの隣に入ろうとする。

が、

 

「…」

「…」

 

やはりこちらでも真顔で無言の圧を受け、代わりにサオリはミノリの隣に入ろうとする。

 

「…」

「…」

 

案の定ミノリから真顔で無言の圧を受けたサオリは最後にレンゲの隣へと入ろうとする。

 

「…」

「…よし」

「なっ…!?」

 

レンゲから無言の圧を受けるサオリ…が、これを無視して無理矢理その横に身体をねじ込み、意趣返しとばかりにサオリはレンゲを真顔で見詰めて無言の圧をかけ、レンゲは額に青筋を浮かべた。

 

(お前ら気付いてるんだろ…)

 

(子供じゃないんだから意地張ってんじゃ無いわよ…)

 

(これだからコミュニズムの無い輩は…)

 

(早く入れてきてよ…)

 

と、内心で思いながらレンゲ、ヒナ、ミノリ、カズサはサオリの方を見つめた。

 

(いやなんで私なんだ!?っていうかいつもいつも私が入れてやってただろ!?言っておくが去年もこのくだりやったからな!?)

(まあ前までお前は暖かそうな着ぐるみ(ペロロ)に入ってたし…)

(あの時はクロコかサオリがいつも入れてくれてたな…今日はクロコが出掛けてるのが悔やまれるな…)

 

(…なんか知らない心の声混じってると思ったらまさかミノリ先輩?あの人モノローグだと普通に喋れるんだ…)

(これまでミノリの奴のモノローグもなかったしな)

(まともな台詞貰ったのこれが初めてじゃないか?)

(うむ、正直デモとかプロレタリアとか言ってても皆意味わかんないだろうし)

 

(メタいのよあんたら)

 

 

(ともかく、こういう時は確かにいつも私が妥協してきていたが…甘やかし過ぎるのもお前達の為にはならないからな。だからこれは私なりの愛情だと思ってお前達が熱ッ!?)

(悪ぃ手が滑った)

 

高説を垂れるサオリにヒナがお茶を入れるのに使っていたポットを掻っ攫ったレンゲはポットのお湯を炬燵の上に乗せられていたサオリの手に直接垂れ流すことで遠回しに「はよ行け」と促すが、熱湯をかけられた手をふーふーと息で冷ましながらもサオリは強気にレンゲを睨み返した。

 

(レンゲぇ…!そんなことをしても今日は1歩も引かないからな…!)

 

(チッ、なんだよサオリの奴…今日に限って強情だな…)

 

(あれ?クロコ先輩は出掛けてるって聞いたけど…アリスは?部屋?)

(気付いてなかったの?あそこにいるわよ)

 

と、ここでそういえばいつもの面子が揃ってないことに疑問を浮かべたカズサにヒナが部屋の隅の方を指差した。

そこにはまるで毛布で出来た山…を通り越してボール状の何かが転がっていたのだが、それがゴロンとひっくり返ると、毛布の玉の隙間からは「すー…すー…」と寝息を立てるアリスの顔が覗いていた。

 

(…何あれ)

(言うなればアリスボールかしら)

(何言ってんだお前)

(こんな時に寝るとはアリスめ…無理に起こしては私達が悪者になってしまう)

(自動的に対象外とズルくない?はぁ、ほんと誰でもいいから早く入れてきて、よ…え?み、皆見て!?)

 

睡眠という無敵状態に、それもあの純粋無垢なアリスが入っていることで誰も灯油を入れにいけと頼める雰囲気では無くなっていた時。

何かに気付き戦慄した様子のカズサに訝しんだサオリとレンゲ、ヒナはカズサの視線の先を見る。

 

そこには…炬燵の上に突っ伏し、「ぐー…すぴー…」と発しているミノリの姿があった。

 

(ね、寝たフリ…!?)

(アリスの真似してんだけどこの先輩!?)

(ミノリお前っ…「ぐー…すぴー…」って口で言ってんじゃねぇか!それ声に出して言えるんなら普段の語彙もうちょっと増やせんだろふざけんな!)

(突っ込むところそこなのか?)

 

ここに来て自分も寝たフリをすることで他の人に押し付けようとするミノリの奇策が発動。

高等部2年にもなって阿呆みたいな子供騙しを始めたミノリに一同は気温以上に体感温度の冷えを感じるが、されどそこは普段命のやり取りをする歴戦の猛者。

呆れていたものの直ぐに悪い顔を浮かべたレンゲはおもむろに突っ伏すミノリの頭に手を伸ばすと、そのまま頭蓋を鷲掴みにした。

 

(起きろ〜ミノリ〜このままどんどん力加えてくぞ〜?)

 

(レンゲ先輩!?流石にそれ以上は…)

(まあ見ていろ)

 

「ぐ、ぐー…すすぴー…」

 

ギシギシとミノリの頭を掴む手に万力のような力が加わっていき、口で寝息を発していたミノリの声が震え始める。

割と本気で頭を握り潰してしまいそうなレンゲの勢いにヒナが流石にマズイんじゃないかと止めようとするが、それを同級生であるが故にあんまり遠慮を知らないサオリが宥める。

 

(ほら起きろよ〜ほら〜ほら〜)

 

「ぐ、ぐぐごごご…」

 

ギシギシと、レンゲの手に力が入るほどにミノリの声がうめき声のようなものへと変わっていく。

 

(ほら〜ミノリ〜なあミノリ〜)

 

「が、ぐご…や…」

 

(ちょっレンゲ先輩!?)

(死ぬ死ぬミノリ先輩死ぬって!?)

(大丈夫だろう…多分)

(なんでサオリ先輩はそんな悠長なのよ!?)

(仲良いのか悪いのかどっちなのさあんたら!?)

 

いよいよミシミシと骨が軋む音が聞こえ流石に焦り始めるヒナとカズサ。

サオリは2人が無理矢理止めないようにしつつ達観し、当のレンゲはこのまま力を加えて本当に頭を握り潰してしまう訳にも行かないので、代わりに少しだけバイオレンスに締めることにした。

 

(オラァ起きろミノリィィィ!!!)

 

「ごっ…」

 

掴んだミノリの頭を軽く持ち上げ───炬燵の天板に亀裂が走る勢いで叩きつけ、ミノリの顔面が天板にめり込んだ。

 

((えぇぇぇぇ!?))

(おいレンゲ、炬燵が壊れたらいよいよ私達が凍死するぞ)

(いやどっちの心配してんのよ!?)

(先輩達怖ぁ…)

 

同級生というだけでそこまで容赦ないものなのかと改めて自分の先輩達に戦慄するヒナとカズサ。

 

そして満足気なレンゲは顔が天板にめり込んだままのミノリの頭を軽くポンポンと叩いてさっさと起きて入れてこいと促すが…

 

「ぐ、ぐー…すぴー…」

 

(この人マジ…?)

(ここまで来たらもう入れに行った方が楽でしょ…)

(ふっ、やるなミノリ…今の私の力でも音を上げないなんてな───あ?)

(…む?どうしたレンゲ)

 

あれだけしても寝たフリを続けるミノリにやれやれと苦笑するレンゲだったが…突如としてその顔から余裕が消え、何かを我慢するように表情を歪めた。

 

それはお腹の奥が震える、女の子なら恥ずかしい感覚…尿意であった。

 

(な、なんで…別に前にトイレ行ってからあんまり時間は…)

 

しかしその不自然な尿意に疑問を抱いたレンゲはこの小一時間の間の出来事を振り返りその原因を探る。

寝たフリをしたミノリ、睡眠中のアリス、いつもの流れで灯油係を押し付けられそうになるサオリ、停止したストーブ、珍しく気を効かせてくれたヒナ、弄っていた端ま───

 

(お茶かぁぁぁ!?そうだよなあのヒナが普段いびってる私にそんな親切にしてくれる訳ねぇよな!?どんなスパンで罠仕掛けてんだお前!)

(ふっ、今更気付いてももう遅いわ。トイレに立つならついでに入れに行って貰えるかしら?っていうか人智を超えた肉体を持ってる天与宣誓のフィジギフが今更寒さなんかに怯んでるんじゃないわよ)

(ふざけんな!寒いもんは寒いだよ!つーかアタシと違ってお前らは神秘で自分の身体保護して環境温度くらい防げんだろうが!お前らが行け!)

 

(ヒナも随分毒されてきたな)

(最初の頃はあんなに真面目で堅物な感じ漂わせてたのにね〜…でも確かにヒナのお陰でレンゲ先輩が入れに行ってくれればそれで解決するのは間違いない。でも…)

 

この状況を見越して予め仕掛けた罠にまんまたもレンゲが引っかかった事に普段雑に扱われていることへの仕返しのような優越感を味わうヒナ。

だが何度も言うようにここにいるのは幾つもの死線を潜り抜けた猛者達であり、そう簡単に尿意に屈するような存在では無いのだ。

…現在進行形で寒さに屈しているのは別として。

 

 

(ふふ、さあ早く入れに行きな痛ったぁ!?)

 

 

余裕を見せていたヒナは突如として感じた炬燵の中の足の痛みに、咄嗟に毛布を捲って炬燵の中を確認してみれば、レンゲが凄まじい足の指の力でヒナの足を抓っていた。

そしてそれに乗っかるように…

 

(確かにヒナの策は悪くないが…)

(レンゲ先輩の退場を待つより、あんたを潰した方が早いんだよね!)

(ふっ、自分が場を支配さてると勘違いしているファシストめ…)

 

(ちょっ、痛っ!?)

 

サオリ、カズサ、そしてしれっと復活したミノリがそれに加わって足の指でヒナの足を抓り、ヒナは炬燵の中で集中攻撃を受けることとなる。

 

(痛い痛い痛い!結局暴力!?今までの心理戦なんだったのよ!)

 

堪らず炬燵から脱出したヒナは息を荒くし激しく肩を上下させる。

呼吸を整えて一旦落ち着いてから他の皆の様子を伺ってみれば、全員が真顔でヒナに無言の圧力をかけ始める始末。

 

(ざけんじゃないわよ…例えこの足がミンチになろうとも、誰があなた達の為に灯油なんか入れに行くものよ…!見てなさい…!)

 

深呼吸して冷静さを取り戻したヒナは、ゆっくりと立ち上がってストーブの方へと向かっていった。

それを見た面々は悪い笑みを浮かべ、ようやくこのクソみたいな戦いに終止符が打たれるとほくそ笑む。

 

(悪いな〜ヒナ)

(これも1年生であるお前達が将来先輩になる為の試練だ)

(共産の精神は自己犠牲の精神に宿る。勉強になったな、ヒナ)

(今回ばかりは先輩達のターゲットにされなくて良かったわ〜、ヒナドンマイ!)

 

思い思いに心の中で好き放題言う一同の方をチラリと見たヒナはストーブへと近付き…それを通り過ぎてその近くにあった窓へと手をかけた。

あれ?と訝しむ面々に対してヒナはここまで心の中の声だけで続いていた静寂を打ち破るように声を上げる。

 

 

「皆…空気が悪いから、ちょっと換気するわね」

 

 

そして───ヒナは窓を全開にして開け放ち、外の吹雪を室内へと呼び込んだ。

 

(死なば諸共、持久戦よ!)

 

(何やってんだお前ぇぇぇぇぇぇ!?)

(寒っ!?おいヒナ!?ついに気が狂ったのか!?)

(これファシストどころかただのテロリストじゃないか!?)

(ねえ私達ストーブに灯油入れて温まりたいんだよね!?なんで今吹雪に耐えてんの!?)

 

(寒い…死ぬ…)

(いやあんたがやったんでしょ!?)

 

全開にされた窓からガンガン入り込む吹雪は急速に室内の気温を極寒に下げ、炬燵に入っているだけでは誤魔化しが効かないほどの冷気が一同を襲う。

その炬燵も先程レンゲがミノリを叩きつけた際に何処かイカれたのか、内部の温度も徐々に下がり始めてしまっている。

 

下手をすればこのまま全滅すら有り得るというまるで寮の中とは思えない状況に阿鼻叫喚の空気になっていたその時。

 

 

 

ガシャン!

 

 

と、全開になっていた窓が勢いよく閉められた。

突然のことに呆然とする一同は誰がそれを行ったのか一瞬分からなかったが…嫌でも目に入る巨大な毛布の塊がのそのそと窓の近くから元にいた位置に移動したことで、それを知ることとなる。

転がった毛布の玉からは再び「すー…すー…」と静かな寝息が聞こえ始めるが…

 

(…あぁ?今のって…)

(あの毛布の塊…アリスが閉めたのか?)

(…いや待て、確かアリスは寝てた筈だぞ?)

(え、でもアリスが…え、じゃあ)

(まさかアリス、今までずっと───)

 

 

 

────起きていた?

 

 

 

(…いや、いやいやいや。無いだろアリスに限ってそんな事)

(あ、ああ…疑い過ぎだな…だってあのアリスだぞ?)

(まあ、そうよね。きっと私達が騒ぎ過ぎたから今の一瞬起きちゃっただけよ)

(そうだよね…アリスにそんな人を謀るようなIQあるわけ…ねぇ?)

(とはいえ、ミノリ。気になるから一応確かめてきてくれ。一応な)

(で、デモ〜)

 

まさかあの純粋無垢なアリスがそんな狡猾な寝たフリなんてするはずないだろうと、疑ってしまった自分達を恥ながらも念の為…本当に念の為気になったレンゲがミノリに確認に行かせる。

同様で思わず心の声なのに普段の語彙が出てしまったミノリは部屋の端に転がる毛布の玉…炬燵の方からは見えないその正面へと回り込んで毛布の隙間から覗いている筈のアリスの顔を確かめると、真顔で炬燵へと戻ってきた。

 

 

(…寝てたよな?)

(がっつり起きてた。なんなら目合った)

(怖ぇよ!?)

(おい、アリスが今もまだ「すー…すー…」言ってるぞ!?ミノリと目合ってまだ口でそれ言ってるんだったらメンタルどうなっているんだ!?)

(私、もう何も信じられないかもしれないわ…)

(え、本当に最初から今までずっと起きてたの!?途中で目が覚めたんじゃなくて!?)

 

まさかの信じてた筈の、信じられる筈の存在の狂気に触れて戦慄し身体の芯まで冷えたような錯覚を覚える一同。

 

そしてそこにさらに一石を投じるように、毛布の玉がごろりと転がって、毛布の隙間から覗くアリスの真顔が一同を見回した。

 

 

「皆さん…灯油が切れてますよ?」

 

 

(…言いやがったアイツ!?)

(今まで何とかそのワードを口にしないようにしていた私達の苦労が…!?)

(というか普通に喋るな!せっかく私が喋れる機会得たんだからせめてモノローグで参戦しろ!)

(ミノリ先輩は何に怒ってんのよ…)

(え、どうすんのこの雰囲気…)

 

 

「だから皆さん…灯油が切れてますよ?」

 

 

続けて発されるアリスの言葉に一同は肩を震わせることしか出来ない。

今もし何か反論のひとつでもしようものなら確実に終わる…そんな予感が歴戦の猛者達の危機感を刺激したのだ。

 

そんな緊張感など知ったことかと毛布玉の状態で立ち上がったアリスはそのまま移動を始める。

おや?と一同はもしやアリスが灯油を入れに行ってくれるのかと思ったものだが、アリスはストーブに一瞥もくれることなく談話室から出ていくと、暫くして両手で暖かなシチューの入ったお椀を持って戻ってきた。

 

「ふぅ〜…はむ、はむ…」

 

(…え、なんであいつ一人でシチュー食べ始めたんだ…?アタシ達の分は?)

(やめろレンゲ、見るな…今あれに関わったら死ぬぞ…)

(まさかアリスがこんな資本主義もびっくりの独占をするところなんて…見たくなかった…)

(ねえ怖いんだけど…今まで私の中で築かれてきた天童アリスっていう人間の人物像が壊れていってるんだけど)

(本当にあれアリスなのよね…?実はまだKeyが中に残ってるって言われても信じられるわよ…?)

 

一同の戦慄を他所にそのままシチューを完食したアリスはお椀を炬燵の上に片付け元いた位置に収まるように転がった。

結局寝るのか…?と再び一同は困惑するが…「あ、そうだ」と声を上げ何かを思い出したように毛布の玉が転がってアリスが一同の方を向き、言った。

 

 

 

 

「ですから、灯油が切れてますよ───カズサ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「〜〜〜〜〜〜っ!?」

 

何故か名指しされたカズサは抗議しようと思わず立ち上がるが、その前にアリスは転がって顔を背けてしまう。

突然のことに恐怖すら感じたカズサが歯をカタカタと音を立てて震わせながら見回すと、ヒナやレンゲはガッツポーズをし、ミノリやサオリは「ふっ」と小さく笑う。

そして話はこれで終わりだとそれぞれ端末を弄ったり本を読み始め、一人残されたカズサは懇願するようにアリスの方を見た。

 

(なんで…なんで名指ししたの!?これでもう完全に私が行かなくちゃ行けない空気になっちゃってるじゃん!?私があんたに何したってのよ!?アリス!ねぇアリス!?)

 

「…クソ寒いです」

 

「ねぇアリス〜〜〜〜〜!?」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

翌日。

厚手のコートに水色のマフラーを巻いて防寒を整えたクロコは出張から帰ってきてすぐさま皆が集まっている気配を感じて談話室へと向かうと、入室するなりすごい量の毛布に包まり玉のようになっているアリスが出迎えた。

 

「おかえりなさい、クロコ先輩!」

「ん、ただいまアリス。他のみんなは…何やってるの?」

 

「いや別に…」

「何も無いさ…」

「デモ…」

「ええ…」

「何も知らないクロコ先輩は幸せだよね…」

 

「?」

「えへへ、クロコ先輩も寒いでしょうし一緒に温めりましょう!」

 

 

それはそれとして、寒い時のアリスを不機嫌にさせては行けないと学びアリスの為にせっせと暖房を集めたり暖かい食べ物を用意してご機嫌取りするレンゲやヒナ達に困惑するクロコであったとさ。

 

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