ブルア廻戦   作:天翼project

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短編:自習

 

「特異現象捜査部とはいえ学生の本分は勉強。幾ら任務で忙しいって言っても学業を疎かにするようじゃ立派な大人にはなれないよ〜?というわけでね、今日は任務もないし、プリント作ってきたからそれ全部解くまでは皆居残りだよ〜」

 

 

S.C.H.A.L.Eの教室にて、放課後に残されたアリス、カズサ、ヒナにそう告げたホシノは、全員に問題が書かれたプリントを何枚か配り、ホワイトボードに大きな文字で『補習』と書いた。

 

「それじゃ、おじさんはお仕事片付けに職員室に行ってくるから大人しく解いててね。あ、相談とかは直接答え教えるとかじゃなかったらじゃんじゃんしていいよ。おじさんが戻ってくる前に全部終わったら悪いけど職員室まで呼びに来てから帰ってね」

 

注意事項を粗方伝えたホシノは手を振りながら教室を後にし、残された3人はそれぞれ互いに顔を見合わせると、息を着きながら配られたプリントに向き合った。

数分の間その静寂が続きペンが走る音が時々響く中、静けさに耐えきれなくなったカズサが問題を解きながらも口を開いた。

 

 

「…なんというか、意外だね。ヒナって勉強出来るイメージあったんだけど」

「…そうね。少なくともあなた達よりは自信があったつもりなのだけれど…最近色々あってつい勉強を後回しにすることが多くてね」

「あ、アリスも色々あってですね…ほら、死んでましたし!」

 

「…この補習ってこの前の数学のテストで60点以下だったから受けさせられてるわけじゃん?皆何点だったの。ちなみに私は47点」

「54点よ」

「15点です」

「「15点!?」」

 

想像より遥かに低い点数を叩き出していた馬鹿にカズサとヒナが揃って声を上げるが、当のアリスは何故か自慢気な表情を浮かべており2人は困惑にペンを走らせる手が止まった。

赤点を取っている自分達が言えた話ではないが30点分程は簡単に解けるボーナス問題的なものもあったはずだというのに何故そこまでの低得点になるのか、と軽蔑よりも恐怖が上回ってくるほどだ。

 

「…っていうか何が分からなかったのよ?」

「大体」

「大体!?」

「仮にも高等部1年生でしょ!?中等部レベルの問題もあったはずだよね!?」

「いえ、分からないものは分からないとしか…このプリントの問題だってそうです!うわーん!なんなんですかこのπ(パイ)とか方程式って!π(パイ)っておっ○いの略ですか!?方程式って童○のことですか!?この2つでパイ○リさせればいいんですか!?」

「それだけはないから落ち着きなさい」

「誰さアリスに変なこと教えたの!」

 

早速問題に詰まって混乱しとんでもないことを口走るアリスをなんとか宥め、落ち着かせた所で再びプリントへと向き直る一同。

しかしこのままではヒナとカズサはともかくアリスがいつまで経っても帰れないのではないかと危惧したお節介焼き2人は、チラチラとアリスの方を気にかけた。

 

「うーん…もう帰りませんか?」

「駄目に決まってるでしょ」

「そんなのバレたらホシノ先輩にぶっ飛ばされるから。私なんてこの前説教されてる最中に隙見て逃げ出したら直ぐに捕まって頭突きで吹っ飛ばされて向かいの壁に突き刺さって頭コンニチワしたんだからね」

「なんで経験者がいるのよ」

「アリスも知ってます!ホシノ先輩は怒らせると直ぐに頭突きをしてくるんです!」

「いやぁ食らう度にあの頭突き威力上がってる気がするんだよね。食らい続けてたら多分その内死ぬ」

「何やってんのよあなた達は」

 

頭を抱えるヒナを余所目に阿呆2人は手を止めてすっかり雑談モードに入ってしまい、このままでは戻ってきたホシノに2人が怒られるどころか連帯責任で自分まで巻き込まれかねないと憂いたヒナはさっさと問題を解いて自分だけでも直ぐに帰ろうとする。

が、

 

「ちょっとちょっと、何一人だけ真面目にやろうとしてるのさ」

「抜け駆けはよくありませんよ!」

「ええい離しなさい!あなた達の巻き添えを食らうのなんて御免よ!」

「地獄に行くなら一緒に行こーよ!」

「アリス達は友達ですもんね!」

「友達を地獄に引きずり込もうとするんじゃないわよ!」

 

執拗な妨害を受けて結局手を止めざるを得なくなったヒナは、仕方なく2人と向き直りこの状況をどうやって打破するかを話し合うことになってしまう。

正直早く帰りたいヒナとカズサだが、アリスが問題を解かないことにはそうはいかないだろう。

あのホシノの事だ、アリス1人だけ残して帰るような事は許す筈がないし、それもあってわざわざ問題を解くのに相談するようにと伝えてきたのだろう。

そして直接問題の答えを教えようとしてもホシノの勘の鋭さならば直ぐにばれるに違いない。

故にヒナたまカズサがやるべき事は…

 

「…しょうがないわね。アリス…と、せっかくだから全員で問題を教え合うとしましょうか」

「私も分からないところあるからねえ、3人寄らばなんとかってやつだ」

「アリス知ってます!三本の矢ですね!」

「それはちょっと違うやつよ…」

 

本当に大丈夫かと憂鬱になり、日頃からもっと勉強して補習を受けないようにしておけばこんな面倒な状況にならなかったのにと後悔するヒナであった。

 

 

 

 

 

 

そして3人による勉強会が始まったのだが。

 

「見てください2人とも!アリスJ○J○立ち出来るようになりました!」

「おー凄い」

「だからなんなのよ!?やる気あるのあなた達!?」

「うわーん!?せっかく練習したのに!?」

「っていうかさあ、勉強教えるって言ったってアリスが思ってたより馬鹿なんだからどうしようもないじゃん」

「む!アリスはお馬鹿なんかじゃありません!」

「そういえばこの前ホシノ先輩にアリスは馬鹿じゃないって相談したらしいわね」

「そういうところが馬鹿じゃん」

「は?」

「は?はやめなさいアリス。あなたが言うと怖いのよ」

「第一ホシノ先輩に馬鹿の相談して何になるのさ。あの人も大概頭の中にイシ○ブテ飼ってるのかってくらい馬鹿でしょ」

「言い方酷くないですか?」

 

しれっと話の流れでディスられ、職員室で仕事中のホシノがくしゃみをしたことなど露知らず、最早勉強そっちのけで3人の馬鹿話は続く。

 

「あなた達人の事言えないんだからよしておきなさい」

「そういうヒナだって頭の中にハ○ネール飼ってるのかってくらい頭カッチカチじゃん?」

「ぶっ飛ばすわよ」

「カッチカチ(物理)ですね」

「アリスまで乗るんじゃないわよ」

 

「うわーん!というかこのプリントの問題がそもそも難し過ぎます!なんですかこれ習ってない部分まで出てませんか!?」

「あ、やっぱり?私が授業休んでる時に出てたのかなって思ってたんだけど」

「それなら後でまた別に補習するでしょうし、授業じゃ出てない範囲よ。そうよねアリス」

「いえアリスは授業中大体寝てるので知りません」

「じゃあなんで習ってないって言ったのよ」

「それよりも!ホシノ先輩はアリス達に習ってない範囲を出して苦しむ様を見て喜んでいるドSということですか!?」

「その認識でおk」

「おk、じゃないわよ。アリスも納得した顔するんじゃないわよ!」

 

「はー、勉強教えるのがこんなに大変とはねえ。教鞭取ってくれてる先輩達は凄いわー」

「ヒナはともかくカズサから教わっても何にも分かりませんからね!尊敬します!」

「よし喧嘩売ってるなら買うよ。15点ゴーレム風情が私に口答えしたこと後悔させてやるわ」

「なんですか、同じ赤点取ってるなら人の事言えないじゃないですか。アリス知ってます、世の中には50歩100歩という言葉があるそうですよ」

「その理論で言うと私もあなた達の仲間みたいになるんだけど…」

「えっ違うの?」

「ヒナもこっち側ですよね?」

「上等よこの際だから格の違いを教えてやるわ」

 

女子3人集まれば姦しい。

もはやお約束の如く、何かあればリアルファイトに発展する3人は満足するまで暴れ回ったあと、結局問題は解けないまま面倒臭くなって帰ってしまうのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

職員室で仕事を片付けたホシノは補習の為にアリス達を詰めている教室に入ると、その瞬間に死んだ目で室内を見回してため息を吐いた。

 

教室は凄惨に荒れ果て、壁や床、天井の至る所に弾痕が残穴が空き、崩れて破壊され机や椅子も幾つか粉砕されている。

窓は無事なものの方が少なく、すっかりと教室は風通しが良くなってしまっている。

 

「何この惨殺教室…今度こそどっかの特殊部隊でも攻めてきて…ないか。皆もう居なくなってるし…アリスちゃん辺りがいらないこと言ったんだろうなぁ…」

 

辛うじて無事に残っている教卓の上によっこらしょと腰掛けたホシノは足を組み膝の上に肘を立て、手の上に顎を置いて割れた窓の外の茜色に染まった夕焼けを見上げてフッ、と微笑む。

 

可愛い後輩達が楽しそうにやんちゃをして、元気そうにはしゃいで、伸び伸びと絆や心を育んでいくのはホシノが先輩として夢見た理想像で、それは既に叶っていると言えるだろう。

その上で今ホシノが思うことはただ1つ。

 

 

(ヒマリ部長…当時は本っ当にご迷惑お掛けしました…!)

 

 

後輩に振り回されやらかしの責任を取らされる苦労を思い知ったホシノは昔ユメと一緒になって散々迷惑をかけたことをヒマリに心の中で平謝りし、それが届いたのか職員室で今度はヒマリがくしゃみをして首を傾げている。

 

やんちゃな後輩を持つ先輩という立場がこんなにも大変なのかと身に染みて理解したホシノはひとまずこの惨状をなんとかしなければと頭の中を色々な業者や監督官達の名前が過ぎり、その作業の過酷さに胸を傷め…そして決意する。

 

「取り敢えず、アリスちゃん達は全員頭突きかなぁ…」

 

 

 

 

 

 

「そういやこの間のテスト赤点だったら補習あるんだったか?お前ら何点だった?」

「デモ!」

「ミノリは86点…流石だな。私は74点だった。どうもケアレスミスが多くてな…」

「おう、ケアレスミスはマズイな。次からは気を付けるように」

「そ、そうだな…ところでレンゲは何点だったんだ?」

「聞いて驚け65点だ」

「いやギリギリじゃないか。さっきの上から目線なんだったんだ」

「プロレタリア!」

「ハハハッ…ん?」

 

翌日、S.C.H.A.L.Eに登校したレンゲ達は1年生の教室の壁から突き出ているアリス、カズサ、ヒナの頭を見て数秒足を止めたが、直ぐに見なかったことにして何事も無かったかのように自分達の教室に向かうのだった。




ちなみにクロコはリモートでテストを受けてる。90点以上常連。
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