ブルア廻戦   作:天翼project

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本編とはある地点から時系列が分岐したifルート的なお話です
(また、本編とは一部のキャラの前提が変化しています)


シン・ペロロジラ 前編

 

───キヴォトス海沖

 

それまで静かに揺れていた海面が、突如として黒い影を写して大きく盛り上がる。

やがて巨大な水柱が立ち、何かが上空へ向けてやや斜めの角度で発射された。

 

遥か彼方へと飛行したそれを見送るのは、海中に身を沈める途方もなく巨大な影。

そして影は移動を開始し、飛来物の方向───キヴォトスの大地を目指して突き進み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ペロロジラ、ですか?」

「はい!モモフレンズ、ペロロ様シリーズのぬいぐるみの中でも特にレアな代物で、かつて輸送船が沈没してしまったことで市場に流通されることがなかったという伝説的な逸品です!とあるイベントの為に少数作られたオーダーメイド品であるため今キヴォトスに存在しているペロロジラぬいぐるみは片手で数えられる程度しかないとされ、愛好家たちの中ではこれを所持している者は真のペロロ様ファンと崇められているんですよ!」

「あのキモイやつの亜種にそこまで分量喋れる熱量が…」

「あはは…何か言いましたかカズサさん?」

「イヤナンデモー」

 

特級アウトローが乱入して来て色々と大事になった特異現象捜査部、S.C.H.A.L.E本部と百鬼夜行支部との交流会から暫く。

あの時ほど大きなものではないが、あれからも両支部による合同訓練や合同任務などの小規模な交流は続いており、本日の合同訓練終了後の自由時間にてアリス達に百鬼夜行支部のヒフミがそのように絡んでいた。

捲し立てるように語るヒフミにボソッとカズサが零すが、それを聞き逃さなかったヒフミからの笑顔の圧力にカズサは棒読みで返事をし視線を逸らす。

 

「で、なんで急にそんな話をしに来たのよ」

「もしかしてその海に沈んでいるというぬいぐるみをサルベージしに行くのでしょうか!?海底探索ゲームは幾つかやり込んで居ますがどれも海の神秘性や恐怖が調和した素晴らしい傑作ですので憧れがありました!」

「あ、いや、違うんですアリスちゃん…でもそれも良いですね!今度時間が取れたら5()()で行きましょう!」

「はい!喜んで!」

「5人…?」

「えっ私達も勝手にカウントされてる?」

 

行動力高めなアリスとヒフミの会話に今後本当に巻き込まれるのではないかと既にゲンナリするヒナとカズサ。

とそこへ、ヒフミが自身とアリス、ヒナとカズサに続いて誘おうと予定していた5人目の人物が声を掛ける。

 

「話の発端は…D.U.港地区でそのペロロジラに酷似した外見の特異体が複数目撃されたというものだ。それも例のペロロジラぬいぐるみを積んだ輸送船が沈没したという海域の近くにある港が、だ。関連性を疑うには十分な根拠がある」

「あ、()()()ちゃん!ちょうど良かったです!」

 

4人が集まっている所にやって来たのはなんとも言えないふてぶてしい外見をした鳥のような姿の…端的に言えばペロロの見た目をしたロボ、百鬼夜行支部のメカペロロこと白州アズサだ。

交流会の際はアリス達の先輩であるペロロとやり合いしのぎを削り、その後紆余曲折を経て改めてアリス達に正体を明かされることとなった。

 

「ほう!ペロロの見た目をした特異体が複数…地獄ですね!」

「なんでですか!天国じゃないですか!」

「私も概ねヒフミに同意だが…それらが特異体として民間人に危害を加えているとなれば看過出来ないのは理解出来る。愛すべきペロロの姿をしたものが悪戯に人を傷付けているのは許せないからな」

「そ、それはそうですね!ペロロ様の姿を利用するとは不届きな特異体です!」

「ねえアリスもう帰らない?」

「何となくこの後の流れが読めたわ。どうせろくなことにならないでしょう」

「心配しなくても既に現場の調査へ私達の名義で志願している」

「だからなんで勝手に巻き込まれてるのさ!?」

 

羽の様な機械の手で器用にメカペロロが持っているのはヒフミ、アズサに加えてアリス、カズサ、ヒナの名義で登録された出張許可証だ。

加えて、調査同行監督のサイン欄には見覚えのある名前もある。

 

「あれ、引率はユウカですか?」

「なんでアリスはユウカ先輩に先輩を付けないのよ…にしてもよく許可貰えたわね?ユウカ先輩って後輩に過保護なところあるから未知の現場に易々と連れてってはくれないと思ってたけれど」

「ユウカ先輩かぁ…交流会の後にちらっと挨拶したけど気前良い人だったよね。夕飯みんなの分奢ってくれたし」

「どうにも特異体の数が多いようで件の港の近くにいた生徒だけでは鎮め切れないらしい。報告によればそのペロロジラの姿をした特異体は一体一体の力はせいぜい3〜4級程度のようだから、あなた達にも対多戦を経験してもらう良い機会だと踏んだんじゃないか?」

「多数の特異体を対処する案件なら私達は1年前の”百物語”で経験しましたしね…ところでアズサちゃんなんでまだ周知されてない報告のことそんなに知ってるんですか?」

「私の秘儀で小型の傀儡を特異現象捜査部の会議室や事務室等に忍ばせている。発見されないように注意しているし緊急時の情報は常に収集出来るぞ」

「…後で全部回収して一緒に謝りに行きましょうか」

「む?何故だ?」

「本当に大丈夫なのかなこれ…」

「はぁ…一応しっかり準備していきましょうか」

「バケモノ退治クエストですね!腕が成ります!」

「今ペロロ様のことバケモノって言いましたか!?」

「落ち着けヒフミ、特異体の事を言ってるんだ…多分」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…で、現場に来た訳だけど…アリスちゃん達は良いとして、改めて一応聞くけどあなた達は遊びできてる訳じゃ無いわよね?」

「はい、勿論です!ペロロジラの姿で人に不幸を齎す特異体なんて生かしておけません!」

「許可を貰う時に話した通り、なんの下心も打算もない純粋な善意と正義感によるものだ」

「なら良いんだけど…」

 

準備を整えた後、今回も3徹目過労のアヤネに運転させユウカを引率としてアリス達がやって来たのは深夜のD.U.港地区。

オデュッセイア海洋高校と連携して運営されている港は普段は交通手段のみならず各学園や外の世界との交易や運搬、漁業の拠点としても使われ、キヴォトスの中心であるD.U.の港故特に活発に関係者で賑わっている。

 

そんな中ユウカに詰め寄られているヒフミとアズサを一旦無視したアリス達は普段訪れることの無い珍しい海辺に興味津々といった様子で、アリスは真っ直ぐ縦に立て掛けたレールガンの上に器用に立つとうんと背伸びをして遠方に見える港の先の灯台の光に照らされた夜の海を眺めた。

 

「凄いです!海に来たのは凄い久しぶりですけど、風が気持ちいいです!」

「潮風は後でちょっとベタつくから苦手…海もいざ泳ごうとしたら思ったより冷たいわ慣れてないと波で溺れそうになるわで苦手なんだけど」

「あら、猫ちゃんはやっぱり泳ぐの苦手なのかしら」

「プールだったら普通に泳げますー。苦手なのはあくまで海だけなんですけどー」

「アリス知ってます!海と言えば水着イベントだと!当然水着の用意もして───」

「あ、言うまでもなく泳ぐとかしないわよ。そもそもここビーチとかないし。あったとしても夜だから泳げないし」

「うわーん!早速イベントフラグが折られました!」

 

自信満々にやたらと荷物が詰め込まれた鞄を叩くアリスだったが、横から口を挟んだユウカに早速気勢を削がれ涙目になっている。

苦笑する一同に、車でどこかと連絡を取っていた目の下の隈が目立つアヤネが端末を片手に現状の報告を始めた。

 

「はい…現在港地区各地で観測されているペロロジラというキャラクターに酷似した外見を持つ特異体を、特異現象捜査部は『口伝特異体ペロロミニオン』と命名しました」

「口伝特異体?そんな特異体の区分あったかしら?」

「今回の特異体が実在するキャラクターと同一の姿形を持っているということで、ヒマリ部長とリオ部長の推測によるとあれらは『ペロロジラというキャラクターに関する噂』によって顕現しているらしく、原理としてはトリニティ自治区に出現するユスティナ聖徒会のような複製(ミメシス)に近いそうです。両者の違いとしてはそこに介在するもの…複製(ミメシス)は畏怖や敬信等の堆積した強い感情が転じて特異現象として具現化するもので、口伝特異体は『〜という噂』そのものに神秘が融合、憑融することによって強力な特異現象へと昇華している…とのことです」

「よく分かりませんが…何か強いなんですね!」

「これまで複製特異体と区分されてきた特異体の中にもこれと同じ原理で顕現している疑いのある特異体がそれなりの数があるので、近々過去のデータを遡って大規模な記録の見直しが行われるかと思います…ええ、はい。つまりまたデスマーチですね…」

「…何か手伝えることがあったら言ってちょうだい」

 

既にこの後に待ち受ける過酷な仕事の気配を察知しているのか話しながら目が死んでいくアヤネにユウカが肩にぽんと手を置いて慰める。

アヤネ含む監督オペーレーターや特異現象捜査部に関わる事務の方々を内心で応援したアリス達は、その後話を戻したアヤネから問題の『ペロロミニオン』の出現場所の傾向をピックアップしてもらい、しらみ潰しに鎮めて回るという運びになった。

 

そうして1度アヤネと別れ、ユウカの先導の元港地区の探索を進めるのだったが…

 

 

 

「はわわ…!み、見てくださいアズサちゃん!本物です!本物のペロロジラです!」

「落ち着けヒフミ。あくまでペロロジラの姿をしているだけ…いやだがかなりのクオリティだな…写真だけ撮ろう」

「だから遊びに来てるんじゃ無いわよ…」

 

港付近の貨物コンテナが並ぶヤードにて、一行が遭遇したのは焦点の合っていない大きな目をギョロギョロと動かし開いた嘴のような部位から舌を力無く垂らす鳥の着ぐるみのような…ちょうどペロロやメカペロロに近い見た目をした───件の特異体、ペロロミニオンだった。

普通のペロロとは背中にある背びれのようなものがあるのとトサカのようなもののカラーリングが異なっている。

それを見たヒフミはここに来るまでの威勢はどこへやら感動と興奮で声が上擦っており、それを諭すアズサもメカペロロ越しに声に興奮が見えた。

呆れたユウカはライフルを片手にペロロミニオンへと歩み寄っていく。

 

「報告だと単体なら3級程度らしいけど…さて、力の判定に誤りがあると致命的な事故に繋がるし、まずは私が様子を見るから皆は離れて見てなさい」

 

そう言って一気に接近したユウカに反応したペロロミニオン目から光弾を放って迎撃するが、それを姿勢を低くするだけで回避、そして開いたままの口にライフルの銃口を押し込み、そのまま乱射する。

弾丸はペロロミニオンを内側から滅茶苦茶に貫き、ペロロミニオンはぐるりと目を回すと力無くその場に倒れた。

ペロロミニオンが動かなくなったのを確認したユウカは弾倉を交換しながら自慢げに振り替える。

 

「どうかしら?こいつの動きには反応出来た?」

「はい!こっちに飛んできた流れ弾も問題なく防げました!」

「あ、そこまで気を回せなくてごめんなさい…」

 

ペロロミニオンが目から放った光弾をレールガンを盾に受け止めたのか、アリスが構えているそれの側面には僅かに煤けた跡が残っていた。

ともあれ、他の面々もペロロミニオンの動きや光弾に反応出来ていたと頷いたのでこれならば問題ないと次のペロロミニオンを探そうと呼びかけようとしたユウカだったが…その時、メカペロロが目を赤く光らせアラート音を鳴らした。

 

「アズサちゃん?」

「突然神秘が膨れ上がって…っ!?ユウカ先輩!危ない!」

 

「え?」

 

 

次の瞬間───倒れていたペロロミニオンの身体が膨張し、近くにいたユウカを巻き込む程度の小規模な爆発を起こした。

光と爆発音に思わず目を瞑ってしまったアリス達がゆっくりと目を開けると、そこには小さなクレーターの底で蹲るユウカの姿が。

 

 

「ゆ、ユウカがヤ〇チャみたいに!?」

「ユウカ先輩が死んだ!?この人でなし!」

「いや生きてるわよ!」

「なんだ元気じゃない」

「む…観測範囲で突然神秘が大きく変動したら自動で警報を出すようにしていたが、元々のペロロミニオンの神秘が弱いから威力も大したこと無かったようだな。心配した損をした」

「はー…ビックリしました」

「いや心配はしなさいよ?あなた達の先輩爆発してんのよ?」

 

元々爆発の威力が大したことが無いのを察していたのか全力でふざけ倒す一同…特にアリスとカズサをキレ気味に睨むユウカ。

身体や服に付いた砂埃を払いながら立ち上がり、爆心地に目を向けて今度こそ完全にペロロミニオンが消滅したことを確認する。

 

「爆発するなんて報告にはなかったじゃない…」

「一般的な生徒なら十分に殺傷可能だが特異現象捜査部なら4級程度の生徒の神秘防御力でも重症は免れられる程度のようだし、爆発の範囲もごく小規模。倒したのに不自然に消滅までタイムラグのある特異体の傍で油断して棒立ちしてるような間抜けでも無ければまず巻き込まれることもないだろうから重要な情報として伝えられなかったのではないだろうか」

「遠回しに私のこと油断して棒立ちしてま間抜けって言ってるわよね?」

「気のせいじゃないか?…やめろ、レンズを素手で触るな」

 

ふてぶてしく言われ、声の本人に折檻出来ないならばとユウカは手袋を脱ぎメカペロロの目のレンズをベタベタと触る。

2人のじゃれあいをあわあわしながら仲裁しようとするヒフミを横目に、アリス達もペロロミニオンの爆心地を3人で覗き込んで調査を始めた。

 

「先程の光の攻撃も余裕で耐えられましたし、やはり大したことの無いサブ程度のクエストなんでしょうか?」

「どうだろ。数は多いみたいだしあっちこっち回るってんなら面倒だけど…私ゲームでも色んなところ行ったり来たりする俗に言うお使いクエスト嫌いなんだよね」

「何を言うんですかカズサ!RPGなら特にお使いクエストが醍醐味と言えるでしょう!ゲーム制作者がなんとかしてゲームにボリュームを演出する為の工夫が詰まった制作の労力と苦心が感じられる名イベントですよ!」

「要はかさ増しってことじゃん!」

「なんの話ししてるのよ…それよりこっちでしょこっち。保護しにくい内側からとはいえ秘儀も使ってないユウカ先輩の雑な攻撃でも倒せる程度の耐久力に特異現象捜査部の生徒なら余裕で耐えられる攻撃性…今回来た目的はペロロミニオンのデータ採取と出現した原因の調査なんだから、もう何体かと交戦したいところね。もしかしたらユスティナの複製(ミメシス)の中のバルバラのような特殊な個体もいるかもしれないわ」

「ユニーク個体というやつですね!アリス知ってます!」

「そういうの大概頭おかしい強さとか能力持ってるやつでしょ私知ってるよ〜?」

「アリスの口癖移ってんじゃない」

 

そうして雑談を交えつつ相談する3人。

 

と、メカペロロに絡みながらもそちらの方に意識を向けていたユウカだったが、周囲に張り巡らせていた意識の中に入ってきた存在を察知したのと同時に振り向きながら発砲、コンテナの上からアリス達に飛びかかろうとしていたペロロミニオンを撃墜する。

一拍遅れた反応したアリス達は落下するペロロミニオンから飛び退いて距離を取りながら、真っ先にヒナがマシンガンで追撃を加えて今度こそトドメを刺す。

そして数秒経ってペロロミニオンの身体が膨張し小規模な爆発を起こす。

 

不意討ちを逃れられたことに安堵する暇もなく、一同は次々と自身達に向かって近づいてきている無数の神秘の気配を感じ取っていた。

 

「これ…多くないですか?こんなにたくさんとは…」

「ほら、やっぱり面倒なことになるじゃない!あーもうまた後でなんか色々美味しいものでも奢ってもらわないと割に合わないからね…!」

「ユウカ先輩、指示を」

「…!後退しようにも市街地が近いから出来ないわね…全員でカバーしつつこの場で殲滅するわ。ヒフミちゃんとアズサちゃんは応援の要請とこいつらが市街地の方に向かわないように防いでちょうだい。残りは私と一緒にこいつら押し返すわよ」

「はい、了解しました!」

「わ、分かりました…!」

「要請先はアヤネさんとこの街に張ってる面々と本部の方で良いか?」

「ええ、踏ん張りなさい!」

 

指示を出し終わったところでヤードに点在する大量のコンテナ、その裏や上から何十体では効かないような数のペロロミニオンが姿を現し、次々と襲いかかってくる。

焦点の定まらない目で感情の読めないふにゃふにゃした化け物が無数に迫ってくる絵面はシンプルにホラーだ。

 

「キモイキモイキモイ!なんか想像以上に生理的嫌悪がある!」

「ちょっとぉ!?確かにあれはペロロジラではありませんけど同じ見た目をしてるものをキモイと言われるのは解せないんですけどぉ!?」

「そうだ!むしろシャッターチャンスだろう!愛好家にとっては堪らない一枚になるぞ!」

「だから写真撮ってんじゃないわよ!」

 

その異様な光景にひぃひぃ言いながら銃撃して対応するカズサに後方で撃ち漏らしの処理に回っていたヒフミとアズサが猛抗議してくるが、ツッコミ役が板についてしまったユウカと違った実力や実戦経験ではまだ劣るアリス達にそちらへ意識を回す余裕は無い。

ヒナはマシンガンで迫ってくるペロロミニオンを倒しながらも手で影絵を作り、玉犬『渾』を召喚するとその背中に乗って駆け回らせ、ヤード内をコンテナや作業用リフト、クレーン等の上までを縦横無尽に移動しては押し寄せるペロロミニオンの流れを分散させ侵攻を送らせている。

 

カズサもまた近くにあった送電線を繋ぐための鉄塔に登ると、その上からペロロミニオンの大軍に向けて撃ち下ろし、カズサを追跡しようと登ってくるペロロミニオンを撃墜しながらも十分な量の弾丸をばら撒くと秘儀を使用する。

 

「『木天蓼(マタタビ)』」

 

それに合わせて地面に散らばっていたカズサの神秘が込められた弾丸がひとりでに浮遊すると、一斉に周囲のペロロミニオン達に襲いかかって殲滅数を伸ばす。

が、鉄塔の下に溜まっていた倒れたペロロミニオン達が次々と爆発したことによって鉄塔の根元が完膚なきまでに破壊され、慌ててカズサは倒壊する鉄塔から退避し適当なコンテナの上へと着地した。

 

「これだけ大量の敵を相手にするのは初めてですが…なんだか無双ゲームをリアルでやってるみたいですね!」

 

一方アリスはこの状況を楽しみ、ペロロミニオンの大軍のど真ん中で一騎当千の大立ち回りを演じていた。

背後から飛びかかってくるペロロミニオンの首元に手をめり込ませて掴みあげると、別のペロロミニオンが目から放ってきた光弾の盾にして受け止め、掴んだペロロミニオンを光弾を放ってきたペロロミニオンへと投げ返し、ボウリングの容量で複数のペロロミニオンを巻き込んで吹っ飛んでいく。

 

縦横無尽で手数の多い攻撃を仕掛けてくる相手との戦いはトリニティでのムツキとの戦いや交流会で襲いかかって来たアウトローとの戦いを経験したアリスにとっては慣れたものだった。

 

ペロロミニオン達が目から放ってくる光弾を飛び越えるようにジャンブで躱し、コンテナの上に潜んでいたペロロミニオンが放ってきた光弾もレールガンを盾にして防ぎ、下から飛びかかって来たペロロミニオンにレールガンの砲身を振り回して叩き落とす。

アリスや膂力による鈍器の殺傷力はペロロミニオンを停止させるのに十分な威力を叩き出し、地上に落ちたペロロミニオンは味方を巻き込みながら爆発する。

 

(…ペロロミニオン達はあの爆発に巻き込まれてもほとんどダメージを受けている様子は無い…?同一の神秘というか、自分の神秘による秘儀等から受ける自分自身への影響は減衰すると習ったことがありましたが…ペロロミニオンは全てが同一の個体?或いは、あれらを作った作成者がいる?)

 

戦闘の最中に感じだ違和感にアリスは考察する。

特にアオイに色々教わった交流会での戦いからは戦闘中でも頭を働かせることの重要性を学び、身体を動かしながら考え事をする癖を付けている。

そうして考えている間も波のように押し寄せるペロロミニオンは途切れることはなく、倒せども倒せども終わる気配が無い。

 

「っ…!無双ゲームみたいで楽しいとは言いましたけど…!終わりがないならゲームにならないじゃないですか!アリス、エンドレスモードは好きじゃありません!光よ───!」

 

長丁場になりそうだと神秘の節約の為に使用を控えていたレールガンを解放し、ペロロミニオンが密集している地点に向けてエネルギー砲を放つ。

大量のペロロミニオンが吹き飛びあちこちで爆散するが、倒された仲間の隙間を埋めるかのように新手がワラワラと湧いてくる。

交戦が始まってから既に20分以上経過しているがペロロミニオン達の勢いは留まるところを知らず、一体どこから現れているのかと戦いながら周囲を見回したアリスは港にある灯台、それが広く照らしている海の方に何度も水柱が上がっているのを発見した。

それに目を凝らしてよく見てみると…

 

 

「なんですかあれキモイです!」

 

 

それは、海に次々と降り注ぐ雨のようなペロロミニオンだった。

見上げれば雲の隙間から丸い何かが落下し、それが空中で割れてその中からペロロミニオンが現れている。

そうして海に墜落したペロロミニオンが海中を泳いで港へと上陸しているようだ。

ペロロミニオンが降ってくるあの空の向こうに何かあるのか、試しにアリスはレールガンの出力を最大まで引き上げてチャージすると、ペロロミニオン達の光弾などによる妨害を交わしながら空の彼方の雲の向こうへとそれを解き放った。

 

光、よ────!

 

そうして空を駆け抜ける一条の光。

灯台の光よりも眩く輝くエネルギー砲は雲を貫いてその先へ。

光が突き抜けたことにより空を覆っていた一部の雲が散り散りになり雲に穴が空いたかのように一部だけ見渡しが良くなる。

その先にあったのは美しい星空…ではなく、空に開いた不気味な孔だった。

空間の歪みのようなその孔から次々と玉が現れペロロミニオンを生み出している。

 

「あれをどうにかしなければ…しかしアリスだけではあれは…」

 

対処するべき原因は見つかった。

しかしどうすればあの孔からペロロミニオンが生まれるのを止められるのか。

少なくとも自分一人では無理だと誰かの手を借りようとするも、あまりの乱戦に既にここに来ていたメンバーは散り散りになっており自分自身が耐え忍ぶので精一杯になってしまっている。

それでもと誰かと合流する為に場所を変えながら戦っていたのが功を奏したのか、アリスがレールガンを使い始めて目立つようになっていたお陰でようやくそれに気付き合流しに来る者がいた。

 

「アリス!無事か!」

「っ!アズサ!?ヒフミは大丈夫ですか!?」

「ユウカ先輩に預けてきた!今は…監視カメラによると一緒に市街地の防衛をしているようだ」

「もうそこまで敵が進んで…」

「それより、こいつらの出現場所はあの空の孔だな?手が必要か?」

「…はい!お願いします!」

「よし、飛ぶぞ!乗れ!」

「えっ、ここに来てそんな熱い展開良いんですか!?」

 

アズサに言われ、長い戦いで蓄積していた疲労が吹っ飛んだかのように目を輝かせたアリスがウキウキした様子でメカペロロの背中にしがみついた。

そこ目掛けてペロロミニオン達は一斉に光弾や体当たりで攻撃して来るが…それらが到達するより先にメカペロロは足元から吹き出したブースターによって一気に上空まで飛び上がり、置き土産とばかりに地上へ向けて複数の爆弾を投下した。

 

地上でペロロミニオン達が爆散していくのを確認する間もなく、そのままの勢いでメカペロロはしがみつくアリスを背に載せたまま空の穴へと飛翔する。

 

「あ、あれってどうやって止めれば良いんでしょうか!?」

「ペロロミニオンが現れてから私がこの()で見た情報は逐次特異現象捜査部本部に送信していた。加えて、私は応援を呼ぶ為に各所に連絡を繋げていたんだ」

「…つまり?」

「あの孔の観測情報を既に送信、そしてリオ部長とヒマリ部長が直ぐに解析してくれたデータを送り返してくれた。孔の中で一定以上の規模の神秘の暴走を起こせば元々不安定なあの孔は歪みを維持出来なくなるらしい」

「なるほど!つまり…思いっきりあの中にブッパなせば良いんですね!」

「ああ、一緒にやろう。2人がかりなら孔を閉じるのに必要な規模の神秘の暴走を起こすのに十分な筈だ」

 

そうして雲を超えて孔の近くまで上昇したアリスとメカペロロだったが…雲の下まで落ちたところで割れていた穴から吐き出される玉は、敵の接近を察知した為か穴から出てきた直後に割れ、落下しながら目から光弾を放ち穴に迫るアリス達を撃ち落とそうとしてくる。

それをメカペロロは左右に揺れるようにして回避し、上から、横から、そして下に落ちたペロロミニオンからも放たれる光弾の弾幕を凌ぎ、避けきれないものはアリスが背負っているレールガンを盾にして弾き、孔へと近づいて行く。

 

「…この距離なら十分だ。妨害に注意して最大出力を叩き込むぞ。神聖なペロロジラの姿を使って恐怖を振りまこうとした罪を贖わせてやる」

「ペロロ愛好家ってそんな宗教じみた感性してるんですか!?」

 

ガチのトーンでメカペロロから聞こえるアズサの声色にちょっとビビるアリスだったが、気を取り直して背負っていたレールガンを構え直し空の孔へと向ける。

相変わらずペロロミニオン達からの光弾による妨害は続くが、光弾の威力が低いことに目をつけ自らの神秘による保護を高めることで強引に身体で受け耐える方向にシフト。

同時にそれぞれの攻撃の為にアリスはレールガンへ、メカペロロは搭載した武装に神秘をチャージし、出力を上げていく。

 

無数に飛来する光弾は防御の為の神秘出力を上げているとはいえ一般の生徒がデッドボールを受けている程度の痛みはある。

それを何度も生身で受け続けるのは流石のアリスにとっても堪えるものがあったが…今更この程度の痛みで集中を乱すほど柔ではない。

アリスが、そして同時にメカペロロもチャージを終え、両者ともに穴へと向けて自身の持ちうる最大火力を解き放つ。

 

 

「光よ────!」

 

「『ハイパースパイラル熱線』!」

 

 

レールガンから放たれたエネルギー砲が。

メカペロロの目から放たれた螺旋状の熱線が。

 

それを止めようと身を呈して割り込んでくるペロロミニオンを尽く爆発する間もなく消し飛ばして穴へと直進し───穴の中に突入した直後、その内側で神秘が荒れ狂い、穴から吹き出た神秘の暴走の余波が空中に滞空していたメカペロロとアリスを吹き飛ばした。

 

「うわぁ!?ちょっ、アズサ、飛んでください!」

「すまん…今のでこの機体に補充していた神秘の殆どを消費した。今は節制モードで会話と歩くことしか出来ない」

「それじゃあ結局墜落してたじゃないですか!背中にアリス乗せてたこと忘れてました!?」

「…すまん」

「うわーん!役に立ちません!」

 

人並み以上に頑丈な自信があるアリスと言えど流石に雲の上からの落下で無事にいられる保証は無い。

衝撃に煽られた結果陸の方に向かって落下しているが、落下地点にはクッションに出来そうなものなどない。

 

(これは…死にますかね…孔は…良かった、閉じ始めてます…なら、皆の役に立てて良かったと思えば───)

 

 

 

 

 

「何、勝手に諦めてんのよっ!」

 

 

「っ!?ヒナ!?」

「む、助かったのか」

 

このまま落下死を待つばかりかと思っていたアリスだったが、地上スレスレで飛び込んできた玉犬『渾』に騎乗するヒナが横からアリスとメカペロロを掻っ攫い落下の衝撃を殺しつつ着地した。

メカペロロが無駄に重量があるせいで玉犬『渾』が上手く着地出来ずヒナも含めて全員で地面を転がる羽目になったが、多少擦り傷や打撲がある程度で大怪我という程の怪我は無く済んだ。

 

痛めた箇所を擦りながら起き上がったアリスは転がった時に電柱に頭をぶつけたのか頭を抑え蹲っているヒナの頭を優しく撫で、手を差し出して立ち上がるのを手伝う。

 

「はぁ…無茶するわね…」

「アリスだってまさか空飛ぶことを提案されて着地のことを考えてないと思わなかったんです!」

「…ん?私が悪いのか?」

「これだから安全圏でラジコンポチポチしてるだけの奴は…」

「まあアリスは無事ですし、アズサを責めないでください」

「あなた…最初に会ったミレニアム校舎の時もそうだけどいざと言う時に自分の命を軽んじるのやめなさいよ…」

「えへへ、反省してます…あ、カズサとヒフミ、ユウカは何処ですか?」

「ああ、まだ皆奮闘してると思うわよ。とはいえ供給元を断ったならそのうち全滅させられるでしょう。手伝いに戻るわよ」

「はい!…あ、メカペロロはもう戦闘出来るエネルギーが無いそうです」

「撮影したデータは既にメインコンピュータに保存しているからこの機体が壊れることに頓着は無い。必要ならば特攻でもしてくるが」

「いやもう良いわよ…まったく」

 

イマイチ掴みどころが読めないアズサに振り回されつつ、戦線に復帰したアリスとヒナは着実にペロロミニオンの殲滅を進め、カズサ達と合流しながらもペロロミニオンの数を減らしていく。

そして───

 

 

 

「はーっ…やっと終わった…」

「はー…天国でしたぁ…」

 

「なんか感想二分してない?」

「アリス覚えました!ペロロ愛好家はヤバい奴しかいないと!」

「なんだとぉ」

 

ぐったりした様子のカズサと肩で息をするほど披露しながらも恍惚とした表情を浮かべるヒフミに死んだ目をするヒナ。

今日の教訓を胸に刻むアリスにアズサが抗議するが無視され、その間に後片付けが進んでいく。

 

戦闘時間は最終的に1時間近くにも及び、途中からは応援も駆けつけた為幾らか楽になったものの途切れることの無い敵の波を相手にするというのは対多数戦アマチュアであるアリス達にはあまりにもハードで、当分は運動する気力すら残っていなかった。

 

そんな中応援の生徒や監督オペーレーターと共に現場処理をしていたユウカは休憩するアリス達の様子を見て微笑んでいたが───海の方から聞こえた轟音に再び臨戦態勢に入った。

 

「冗談じゃないわよ…!」

 

異変に気付いた他の面々も海の方に目を向けて…そして一同が絶句する。

海面を押し上げて浮上する、とてつもなく巨大な影。

 

港の監視塔のサーチライトが一斉にその影の方へと向いてその姿を照らし出す。

複数の光に照らされて顕になったその威容。

 

それは────目測だけでも軽く体長200m以上はありそうなペロロジラそのものだった。

 

そしてペロロジラはだらしなく開いた嘴から何かエネルギーのようなものを空に向けて吐き出し…天高くまで浮上したそれは空中で歪むと、そのまま空間に見覚えのある孔を作り上げた。

 

 

 

それを見たある者は乾いた笑い声を上げ、

 

ある者は現実逃避するかのように遠い目をし、

 

ある者は勘弁してくれとでも言うように眉間を揉み、

 

そしてある者は…というか主に2名は目を輝かせて感嘆の声を上げる。

 

 

様々なリアクションがある中、皆の心境を代表するようにアリスは叫んだ。

 

 

 

 

「うわーん!デカスギます!」

 




後編は1月3日頃に投稿予定です
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