ブルア廻戦   作:天翼project

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シン・ペロロジラ 後編

 

キヴォトス標準時 24:00

 

突如として出現し召喚したペロロミニオンの大軍と共にD.U.へと進行する特級口伝特異体 ペロロジラ。

その討伐作戦の開始時刻を時計の針が指した瞬間、各地に展開された特異現象捜査部の生徒達が各々行動を開始する。

 

ペロロジラを撃退し得るとリオが引っ張り出した超古代遺物であり、その仕様故アリスが射撃手を務めることとなった大砲『アンタレス』

 

その起動準備が完了するまでペロロジラ及びペロロミニオンをD.U.中央区への侵入前に食い止める事が彼女達の任務となる。

 

 

 

「とはいっても、やっぱりあんなの止められないわよね」

「あのデカイ図体に登って暴れてやれば少しは気を引けるかもね。その前にあそこまで近付かないと行けないけど」

 

ペロロジラ進行方向の正面右側に配置されていたヒナとカズサは二人でヒナの召喚した”玉犬『渾』”に相乗りしながら避難誘導が済み人っ子1人いなくなった夜の市街地を駆けていく。

既に見える距離にペロロジラが迫っており、ペロロジラの進行速度から推測されたD.U.中央区までの到達時刻は深夜1時。

『アンタレス』の起動準備完了までにかかる予定時刻は深夜の2時とされている。

 

つまり、最低でも1時間はペロロジラの進行を遅らせなければいけない。

 

「…見えてきたわ」

「うわぁ、もう見るだけで嫌になってくる」

「同感。さっさと突破するわよ」

 

玉犬『渾』の健脚はヒナとカズサの2人を背に乗せてもなおあっという間にペロロジラまでの距離を詰め、そしてその進路を阻むようにペロロジラの周囲にペロロミニオン達が展開されている。

2人の接近に気付いたペロロミニオン達は一斉に、一糸乱れぬ動きでそちらの方を向くと各々が目を光らせ光弾を発射、光の弾幕を放ってくる。

 

視界を埋め尽くす程の光に、しかしヒナは冷静に手で影絵を作り新たに式神である”鵺”を召喚。

飛び立とうとする鵺の脚に掴まって一緒に浮上し、カズサを乗せたままの玉犬『渾』は横の建物の屋根の上にで飛び上がってそれぞれ弾幕を回避した。

 

二手に別れたヒナとカズサにペロロミニオンの大軍も綺麗に半分に別れて両者の追跡を開始する。

地上からの光弾の回避を鵺に任せたヒナは片手で脚を掴んだまま宙ぶらりんの状態で、もう片手に背負っていたマシンガンを構えて打ち下ろす。

射撃に晒されたペロロミニオンは次々に倒れ爆散していくが、元々数が莫大だったのに加え案の定次々と召喚されているために減る気配はない。

 

「根性比べになるわね…上等よ。打ち止めになるまで潰してあげるわ」

 

 

一方玉犬『渾』に騎乗したまま夜の市街地の建物の上を駆けていくカズサは下の道路から光弾を放ったり屋根の上に飛び上がって突撃を仕掛けてくるペロロミニオンを次々射撃して返り討ちにしながらペロロジラの元を目指す。

ヒナやアリスに比べて神秘の出力や秘儀の性質故に身体能力や破壊力で劣っている自覚のあるカズサは、それを補う為に今回ヒナに玉犬『渾』を預けられている。

 

「これで死なせちゃったらヒナに悪いし、一緒に頑張ろうね」

 

片手撃ちでペロロミニオンを攻撃しながらカズサが玉犬『渾』の頭を撫でると、「ワンッ!」と元気な鳴き声が返事として返ってくる。

それに微笑んだカズサは直ぐに表情を引き締め直すと飛び跳ねて来たのか上から降ってくるペロロミニオンを玉犬『渾』の背の上で器用に回し蹴りをして吹き飛ばす。

前方に次々と道を幅もうと登ってきたペロロミニオンが立ちはだかるも、カズサに背を撫でられた玉犬『渾』は正確にその意図を察して大きく跳躍、ペロロミニオンの頭上を飛び越える。

 

その最中、カズサは今回の作戦に当たって予め用意してきた布袋を取り出すと、飛び越える自分を見上げているペロロミニオン達に向かってその中身をぶち撒けた。

 

ばら撒かれたのは───無数の空の弾頭(バレット)

 

木天蓼(マタタビ)!」

 

それは予めカズサが神秘を込めて撃ち尽くしたものであり、『芻霊秘術』の技の1つである神秘を込めて運動させた物体にもう一度その運動を取り戻させる『木天蓼』の対象になっている。

普段は戦闘中に射撃した弾丸を再利用する形でこの技を使っているカズサだが、今回予め用意したこれらを用いればわざわざその工程を経ずとも即座に範囲攻撃を展開することが可能となるのだ。

 

ペロロミニオンの頭上にばら撒かれた弾頭(バレット)は秘儀により射撃された際の運動エネルギーを取り戻し、またカズサの操作によって無造作に散らばっていたそれらは一斉に地上を向いて…ペロロミニオン達に向かって弾丸の雨が降り注ぐ。

 

 

「これでも地味なもんでさ…でもアリスとヒナには負けてられないんだ」

 

 

一気に数十体のペロロミニオンを葬ったカズサだが、未だペロロジラまでの道を遮るその大軍に対しては微々たる数でしかない。

それを見て気合いを入れ直したカズサは再び玉犬『渾』と共に突き進み始めた。

 

 

 

 

 

 

「98!99!これで、100!キリがねぇぞ、おい!」

「1体1体は弱いとはいえまともに相手してたらまあそうなるだろうね。ミノリ、無理のない範囲で道を開ける?」

「プロレタリア」

 

ペロロジラ進行方向の正面左側に配置されていたレンゲ、ミノリ、ペロロの3人も同じくペロロミニオンの大軍を正面突破しながらペロロジラまでの接近を試みているが、やはり成果は芳しくない。

レンゲは特級遺物『百花繚乱』によりその火力を活かして、また本人の高い身体能力をもって次々とペロロミニオンを倒すも次々と押し寄せてくる大軍の前ではあまりにも微力だった。

 

対してペロロはロケットランチャー等の破壊力の高い武器を扱う事に長けた『ミサキ』の人格に切り替えペロロミニオンの密集地を狙って攻撃を仕掛けるも、あまりにも層は厚く殲滅力がまるで追いついていない。

膠着する状況を打破するため、ここまで神秘と体力を温存していたミノリが前に出ると、マフラーで覆っていた口元を曝け出し、レンゲとペロロがそれぞれ防御を取ったのを確認してから片手に持った拡声器をONにして秘儀を使用する。

 

 

『クビ』

 

 

拡声器から普通では有り得ないような重々しい声が広がる。

次の瞬間、その声の可聴範囲内にいた全てのペロロミニオン…軽く数百、或いは千にも登るそれらの首にあたる部分が一斉にねじ切れ、切断された。

無惨に飛び散ったペロロミニオン達は一斉に爆散して周囲が一瞬だけ昼間かと思う程の光に包まれる。

 

ミノリの秘儀である『言霊』の性質上、防ぎ方を知らなければ格下に対して圧倒的な制圧力を発揮し、声さえ届くならば幾らでも広範囲を攻撃対象に出来るそれはペロロミニオンの大軍に対して極めて有効に作用する。

 

ただ1つ問題があるとすれば…

 

「…ゲホッ…コホッ…」

「弱いとはいえ流石にあの数巻き込んだらまあそうなるよな…任せて悪かった。大丈夫か?」

「労働…」

「また暫くは私達が露払いするから、出来るだけ深くまで切り込もう。それまで回復に専念して」

 

『言霊』は対象の実力差や神秘総量の差によって自身が受ける反動が大きくなる。

ペロロミニオン1体程度ならミノリならば殆ど反動もなく叩き潰すことが出来るだろうが、1度に数百も同時に対象にとれば反動は相応の喉のダメージとして返ってくる。

 

咳き込むミノリだが返事の声の調子からどのくらいの反動がかかっているのかを経験則から察知したレンゲとペロロは、後何回ミノリに秘儀を使わせても大丈夫かを計算しペロロジラへの接近を再開する。

恐るべきはあれだけの数を倒してもなお再び波のように押し寄せてくるペロロミニオンの物量だが…

 

「アリスは勿論、ヒナとカズサも来てんだろ?後で討伐数でマウント取りたいし、あたしももう1000ぐらい狩るとするか」

「こんなもの数だけ狩っても仕方ないでしょ。自慢したいなら貢献度で…まあペロロジラ本体でも狙ってみたら?」

「あ?…あの腹立つ目ん玉に直接『百花繚乱』撃ち込んでやりゃ流石に止まるか?」

「やって見なきゃ分からないから…やれるだけやろう」

「闘争!」

 

迫るペロロミニオンの大軍を見据え、レンゲ達は果敢にその波へと突貫した。

 

 

 

 

 

 

 

 

「ここまで派手な戦いは去年の百物語以来だなぁ!また不覚を取るんじゃないぞヒフミィ!」

「分かってますよマコト先輩!」

 

ペロロジラ進行方向の真正面。

ペロロジラの直接の進路に配置されている百鬼夜行支部の生徒達はペロロジラに先行して進軍してくるペロロミニオンを押しとどめながら、遙か後方に構えられたペロロジラ対策本部からの砲撃支援を受けながら抵抗を続けていた。

 

対策本部に設置された迫撃砲やS.C.H.A.L.E本部からの対特異体弾道ミサイルによる攻撃が次々とペロロミニオンの大軍の中心やペロロジラ本体へと直撃しているが、本体へのダメージはほぼ皆無。

支援砲撃の火力ではまるでペロロジラの足止めには役に立っていない。

マコトに注意されながらも渋々ペロロミニオンをまた1体射撃で倒したヒフミは、額の汗を拭いながら屋根の上から狙撃を続けているマコトを見上げた。

 

「これ、このままここで戦い続けても踏み潰されるだけなんじゃないでしょうか?」

「まあそうだろうな。あんな化け物まとまに戦って敵うものか」

「あー!マコト先輩まで化け物呼ばわり!」

「逆に聞くがあれが化け物じゃなかったらなんなんだ…」

 

この期に及んでまだペロロジラとペロロミニオンを擁護してくるヒフミに呆れるマコトは、屋根の上からヒフミを狙おうとしているペロロミニオンを狙撃しつつ前方の方で大暴れしている連中へと目を向けた。

 

 

銃声と爆撃音と光弾による破壊音が鳴り響く戦場の中、その戦いの苛烈さには似合わない気の抜けた手拍子の音が酷く特徴的に響き渡る。

火花と爆炎が踊る大舞台、リズムを取るかのように規則的に手拍子が鳴らされる度に()()()()が走り、ペロロミニオンが蹴散らされていく。

 

「シスターのアシストの為にあの巨体を食い止めろ?良いわ!何時間だって翻弄してあげる!」

 

回転しながら蹴り込んでペロロミニオンを1体吹き飛ばし、吹っ飛んだ先で10体ほど仲間を巻き込みストライク。

続けて上から新手が飛びかかって来るもアオイが手を叩けば双方の位置が入れ替わり、アオイが上に、ペロロミニオンが下に。

下のペロロミニオンをハンドガンによるノールック射撃で倒したアオイは敢えて倒したペロロミニオンの傍に着地、直後倒れたペロロミニオンの自爆を背に受けて自ら吹っ飛ばされ、正面を埋め尽くすペロロミニオンの波へと錐揉み回転しながら突撃。

先頭にいたペロロミニオンの頭を掴むと突撃の勢いのまま押し倒し、頭部のトサカを掴んでジャイアントスイング、周囲のペロロミニオンを薙ぎ倒して再び群れの方へと投げ返す。

 

「とはいえ私の秘儀でもあそこまで巨大なものを対処には出来ないから工夫はいるでしょうけど…」

 

アオイの秘儀『不義遊戯』の拍手による位置の入れ替えは対象とするものが一定以上の神秘を含んでいること、そして一定以下のサイズであることが条件となる。

例外として、ある程度サイズが近しいもの同士ならば神秘を含んでいることの条件を満たしていれば入れ替える事も出来るが…その仕様を有効活用出来た機会はアオイの人生で一度たりともない。

 

例えばビルに神秘を流してペロロジラと位置を入れ替えさせることも理論上は可能だが、それだけ巨大なものに満遍なく神秘を流し込めば小鳥遊ホシノのような神秘の回復力や砂狼クロコ程の圧倒的な神秘総量でもない限り当然一瞬で神秘の底を突くだろう。

 

ペロロミニオン達の露払い自体は大した労力でもないので、片手間で殲滅を進めながら対ペロロジラの方法に思考のリソースを割く。

 

 

「…あら?あれは…」

 

 

しかし光明の見えない戦闘の中、事態はアオイにとっても予想外の方向へと動き始めた。

 

 

D.U.の大地が、鳴動する。

各地で戦闘音が響く対ペロロジラ戦線で、天を揺らす轟音が鳴り響く。

そしてその時───今まで一切の障害を障害とも思わず直進し続けていたペロロジラが、初めて外部の存在に意識を向けた。

 

 

「キッ…!?な、なんだアレは!?」

「あ、あれは…!」

 

 

この戦いに参加している者達、それをモニター越しで確認している者達、全員が()()の姿を見ていた。

それはマコトと…ヒフミもまた同様。

 

そして誰よりも、ヒフミは()()を見て目を輝かせていた。

キヴォトスに厄災を振り撒かんと破壊を齎す紛い物、”特級口伝特異体ペロロジラ”ではなく…

 

ある時は人々の畏怖と信仰を集める脅威として。

ある時は自らの縄張りと決めた領域をその地に住まう人々ごと守護する守護神として。

ある時は世界の破壊者を打ち沈める救世主として。

 

それは様々な形で人々からの強い思いを受けてきた()()

…それを模した、模造元はの(リスペクト)ある者により作られた大切なものを守るための正義の使徒。

 

さあ、その名を叫べ。

夜空を切り裂く流星、破壊者の前に立ち塞がる鉄壁の盾───

 

 

 

 

「”メカペロロジラ”…!」

 

 

 

「…キモイのとキモイのが並んだな」

「何を言うんですかマコト先輩!メカペロロジラ様は原作ペロロジラ様の細胞を利用して作られた生体兵器ですが元々正義感とは別に自らの生態の為成り行きでキヴォトスを守ってくれるペロロジラ様と違って明確にキヴォトスの脅威となる怪獣を防ぐために開発された戦闘用メカですしかもその在り方は禁忌的で邪道でありながらも確かな正義の為にその力が振り下ろされ度々本物のペロロジラ様と衝突しては敗北しながらも大きな爪痕を残し映画終章では遂に本物のペロロジラ様との初めての共闘が叶って惑星侵略種キングモロロンを撃退し命を賭してキングモロロンと相打とうとしたペロロジラ様に代わってキングモロロンを火山口に引きずり込み親指羽を立てながらマグマに沈んでいく様は涙無しでは見られない映画史に残る名シーンとして知られ──」

「分かった!分かったから!私が悪かった!」

 

一息で凄まじい解説をしようとしてくるヒフミを押し返したマコトは、ペロロジラの前に立ちはだかったそれ…メカペロロジラのデザインの意匠が随分と見覚えのあるものだと察知すると、無線機を取り出して上空を旋回させているフウカへと繋いだ。

 

「おいフウカ、アオイを拾ってこい!」

『…え、何?あの新しく出てきたキモイのと関係が…』

「やめろ聞かれる!…とにかく俯瞰分析はもう特異現象捜査部のドローンに全部やらせておけ。物資運搬ももういい。今はお前はアオイの手伝いをした方が都合が良さそうだ」

『えぇ…まあこういう時のあんたの勘は良いから信じるけど…』

渋々了承する声を受け取ったマコトは無線を切ると、まだまだ語りたそうにしているヒフミを一睨みして一旦気迫で黙らせると、ヒフミが持っている…会議の時に盗聴に使っていたミニメカペロロをひったくった。

 

「あっ、何を…!」

「おいアズサ。あのデカブツは貴様の仕業だろう。なんだあれは」

 

『…あれは私がいざと言う時の秘密兵器として用意した”絶対装甲傀儡戦略決戦兵器究極メカペロロジラ”だ』

「…良い名前だな」

『ありがとう。そして、今まで湖に沈めておくだけだったあれが遂に日の目を見る時が来たというわけだ。見ているか、ヒフミ。永久保存版となるだろう、その目とカメラに焼き付けておいてくれ』

「…っ!はい!ありがとうございますアズサちゃん!一生忘れられない思い出になります!」

『ふっ…』

 

「良い雰囲気を出すな!とにかく出来るならさっさとペロロジラを止めてこい!」

『はぁ…やれやれ、急かされなくとも…ペロロジラの姿を単なる破壊に用いる悪逆者、決して許しはしない!』

 

 

 

 

メカペロロジラを前にして、ペロロジラは僅かに歩速を緩める。

すり足のように慎重に距離を詰め、焦点の合っていなかった瞳がメカペロロジラをしっかりと捉えていた。

 

 

『足止めしなければいけない時間を考えると殆どの兵器が易々と使えないな…だが、このメカペロロジラならば肉弾戦だけでも…!』

 

 

先手を仕掛けたのはメカペロロジラ。

背部と足裏部分にあるブースターに点火し、僅かに浮上、そのまま前方への推進力を得て勢いのある水平移動でペロロジラへと突進する。

突然の接近に面食らったペロロジラはその突進を真正面から受けて仰け反り、この日初めてその進行を止める。

続けてメカペロロジラは旋回、その勢いで真横に広げた翼腕でペロロジラの横頬を打ち払った。

 

ビンタをされたように揺らいだペロロジラだったが、体勢を戻す勢いのままメカペロロジラに頭突きを返し、その衝撃でメカペロロジラが後退し頭部の装甲が軋む。

 

『ぐっ…想定以上にダメージが大きい…まともに撃ち合うのは危険か…なら!』

 

そもそも、メカペロロジラは凄まじい巨体を誇るが目の前のペロロジラと比べると一回りも二回りもサイズで劣っており、その質量差は格闘戦において致命的な差となる。

このまま殴り合うのは得策ではないと踏んだアズサはメカペロロジラの背部のブースターを止め、代わりに腹部に仕込んだブースターを起動して背後へと下がる。

それを追いかけてペロロジラが通常時の歩速よりも速い速度での突進を仕掛けるが───両者が衝突する直前、突如としてペロロジラとメカペロロジラの位置が入れ替わり、突進者となったメカペロロジラの頭部がペロロジラへと食い込む。

 

しかしペロロジラはこれを己の肉体の弾力性で跳ね返し、その目を輝かせるとメカペロロジラに向かって高出力の熱線を放った。

極太の熱線はメカペロロジラの装甲へと直撃し、凄まじい勢いで装甲の表面を融解させていく。

 

『くっ…まだ、まだぁ!チャージ1年分!”白熱眼光”!』

 

メカペロロジラの片目が瞬き、極太の光線を撃ち返す。

メカペロロジラには白州アズサが人生においておよそ16年間に渡って貯め続けてきた神秘総量の余剰となる神秘を込められている。

それを年単位で振り絞って放出する攻撃の出力は…一時的とはいえ、”特級”のそれに匹敵する。

即ち───ペロロジラに通用する火力だ。

 

 

光線を受けたペロロジラは怯み、自らの熱線の放出を止めて堪らず身を捩り翼腕でメカペロロジラをはたく。

ただそれだけでも凄まじい破壊力を誇る打撃がメカペロロジラの装甲を一部凹ませ、こちらも光線の放出が止まる。

だがすかさずメカペロロジラは足裏部分のブースターの出力を上げてその巨体をペロロジラよりも高い位置まで浮上させると───息を合わせたように拍手音が鳴り、ペロロジラの姿が上空に出現、抵抗の余地なくペロロジラの巨体が重力に引かれて地上に叩きつけられ、メカペロロジラはその上にのしかかりマウントポジションで両翼腕を用いペロロジラの両頬を交互にビンタした。

 

『良いアシストだ…扇喜アオイ!』

 

 

 

「入れ替え自体には神秘を殆ど消耗しないから…案外出来るものね」

「相変わらずあんたの秘儀滅茶苦茶よね…」

 

フウカに回収されたアオイはメカペロロジラとペロロジラの戦闘範囲から離脱しつつ、しかし離れ過ぎないようフウカの乗る箒の後ろに乗せてもらって適時秘儀による入れ替えでメカペロロジラの支援を行っていた。

アズサは頭がいいし、戦術眼もある。

アオイが入れ替えを行ってくるタイミングを察知してそれに的確に合わせてくれる。

 

「やるわねアズサ…貴方もわたしのシスター候補になるかもね」

「絶対やめてあげなさいよ?なんで私がこんなヤツ乗せないといけないのよ…」

「そう言わないで。空中でここまで自由に制御が効く秘儀ってのも稀少なんだから。距離の維持と地上からの攻撃の回避は貴方に任せっきりにするわよ」

「荷が重い!」

 

そう毒づきながらも、フウカは地上を見てペロロミニオンが放ってきた光弾を箒を急加速させることで回避する。

それを見て大丈夫だと判断したアオイはメカペロロジラとペロロジラの動向に集中し、何時でも入れ替えを行えるように手を構えた。

 

 

 

 

破壊力と耐久力では劣るものの機動力では勝り支援役は有能。

本来圧倒的な劣勢である戦力差はやや不利程度にまで埋まっている。

だがやはり問題はメカペロロジラの活動制限…年単位の神秘を消耗する高出力の武装の使用無しでペロロジラ相手に目標足止め時間のノルマ…残り約50分を凌ぐことは難しい。

 

暫くメカペロロジラに殴られ続けていたペロロジラだったが、翼腕を地面に打ち付けその反動で起き上がりながらメカペロロジラを跳ね飛ばし、跳ねるような体当たりで追撃を行うがその瞬間に双方の位置が入れ替えられメカペロロジラがペロロジラに体当たりする形になる。

しかしペロロジラはこれを翼腕をクロスさせるようにしてガードし、翼腕を押し戻す力だけでメカペロロジラの質量を跳ね返した。

 

『ペロロジラの後方へと抜けてアオイに入れ替えて貰うことで引き戻し続けるか…いや、奴には知能と学習能力が見られる。そう何度も通用するとは思えないし下手に距離を移動しようとすれば地上で戦う味方に戦闘の余波が及びかねないか…ならここで食い止める』

 

メカペロロジラは瞬間的に足裏部分のブースターを吹かしその場で垂直に跳ね上がると、直ぐさま背部のブースターを起動してやや傾いた体勢…足裏部分を前にする形で前方に飛び、ペロロジラへとドロップキックを仕掛ける。

翼腕によるガードの上からペロロジラを蹴り飛ばし、追撃にメカペロロジラは両目を光らせた。

 

『チャージ2年分!”二重白熱眼光”!』

 

先程よりも出力と数が増えた2本の極太の光線がペロロジラを押しやり、D.U.から遠ざけるように少し後退させる。

反撃しようとペロロジラも両目を光らせ熱線を放とうとしてくるが、それをさせまいとメカペロロジラの胸部から展開された二門の巨大な大砲がペロロジラの両目を射撃し、ペロロジラが瞬きしたことによって熱線の放出が中止される。

 

さらに突撃を行ったメカペロロジラはペロロジラへと組み付くと押し倒そうとするが、逆にペロロジラは敢えて自ら後退することでメカペロロジラの突進の勢いを和らげ、突進を受け止めつつ回転することで逆にメカペロロジラを自分の下に敷くように引き倒した。

ペロロジラの規格外の質量でのしかかられて甲高い音を立てて装甲を軋ませるメカペロロジラに向けペロロジラは至近距離から熱線を放とうとして…双方の位置が入れ替わり、ペロロジラはうつ伏せに倒れ、メカペロロジラがその背にのしかかる形になる。

 

その状態でメカペロロジラは足裏のブースターを勢いよく吹かせて一気に雲の上まで急浮上、ブースターを停止し、自由落下に任せて起き上がろうとするペロロジラの背中へとスタンプを行う。

メカペロロジラの脚がペロロジラの背中にめり込み、ペロロジラは悲鳴のような鳴き声を上げる。

 

『どうだ、今のは効いただろう!』

(…だが、ここまでブースターを使い過ぎた。”白熱眼光”で3年分、メカペロロジラを待機させていた湖からここまでペロロジラを移動させるためのブースターで2年分、そしてペロロジラとの戦闘中のブースターの使用で2年分神秘を消費している。残りのメカペロロジラの神秘は…約9年分。戦闘時間はまだ20分か。このままでは持たないぞ…!いっそこのまま倒し切るしか…)

 

明らかに神秘残量の消費ペースが足止めノルマまで間に合わない事を憂慮するアズサは、時間稼ぎに専念するか思い切って攻勢に転じるかで思考の天秤を揺らしている。

 

だがペロロジラは考える時間を与えてはくれない。

うつ伏せのまま踏みつけられているペロロジラは突如としてその身体を膨らませ、背中に乗っていたメカペロロジラを吹き飛ばしてしまう。

そのまま起き上がり小法師の要領で立ち上がったペロロジラはメカペロロジラの方を振り返ると、両目を光らせる。

 

 

 

「させないわ、また入れ替えて…っ!?チッ!」

「えっ、何っ!?きゃあっ!?」

 

それを阻害しようとアオイが手を叩こうとするが…中止したアオイはフウカを後ろから片腕で抱くとその体勢のまま手を叩き、自身とフウカを地上の適当なペロロミニオンと入れ替える。

次の瞬間、先程まで2人がいた地点を高速で飛来するガシャ玉のようなものが通過していた。

 

続いてそれは地上に降りたアオイとフウカにも目掛けて落ちてくる。

アオイが次々とペロロミニオンと自分達を入れ替えてガシャ玉を回避し、代わりにペロロミニオンが踏み潰されていく。

そして地上に落ちたガシャ玉が割れ…新たなペロロミニオンが生まれた。

 

「あれは…やられたわね」

 

アオイが見上げると、上空にはペロロミニオンを召喚する孔が開いていた。

ペロロジラが開ける孔の数は一つ、新しく開くなら以前の孔が閉じていなければいけない。

戦闘中ペロロジラは以前開けた孔を閉じ、何処かのタイミングで空に孔を開いていたのだ。

 

「にしても、あの落ちてくる玉の軌道もある程度操れるのね…」

「ど、どうするの?」

「飛べば落ちてくる玉の良い的。支援はしづらくなったわ。今はアズサを信じて一旦皆と合流しましょう」

 

戦況を俯瞰し易い空中からでなければ適切なタイミングでの入れ替えは出来ない。

下手に入れ替えればむしろメカペロロジラの足を引っ張ってしまうと判断したアオイはフウカと共にペロロミニオンを蹴散らしながら1度撤退することを選んだ。

 

 

 

そして、アオイの入れ替えが阻害された事でペロロジラの熱線を止めることも出来なくなり、両目から発射された螺旋状の熱線がメカペロロジラの胸部を撃つ。

 

『クソッ、アオイ達が落とされた…!?このままでは…仕方ない、こうなれば押し切るしかない…!』

 

時間稼ぎを続けるのは不可能、となれば攻めるのみとアズサはメカペロロジラの出力段階を上昇、馬力を上げる代わりに神秘の消耗速度が加速し、活動制限がより短くなる。

上がった出力を活かし熱線の勢いに逆らうようにメカペロロジラは突撃、ペロロジラを大きく怯ませる。

そこへ顔を突き出して両目を光らせ…

 

 

『チャージ3年分!”ハイパースパイラル熱線”!』

 

 

より殺傷力を増した渦巻く光線がペロロジラへと突き刺さり、その肉体の表面を掘削する。

ペロロジラが悲鳴をあげるも、ペロロジラはその場で回転することで光線を受け流すと回転しながらメカペロロジラへスピンアタック。

怯んだメカペロロジラに頭突き、そのまま頭を突きつけてゼロ距離で両目を輝かせ───熱線を放つ。

熱線はメカペロロジラの装甲を破壊し、ボディの至る所から黒煙が吹き出し爆発が起こる。

 

 

『…ここまでか。チャージ4年分───』

 

 

出力向上の為急速に神秘を消費し、残った4年分の神秘を使ってアズサはメカペロロジラの心臓部であるコアを暴走させる。

同時に脱出ボタンを押しメカペロロジラの頭部から一気に上空まで操縦席ごと射出され───メカペロロジラはペロロジラを巻き込んで極大の爆発を生じさせた。

 

 

 

 

 

「ぺ、ペロロ様あぁぁぁぁぁ!!!」

 

「…それだとどっちを応援してるのか紛らわしくないか?」

「マコト先輩煩い!」

「理不尽じゃないか!?」

 

「…それに、アズサちゃん!」

 

 

 

 

 

 

 

「ふぅ…ありがとう、メカペロロジラ…まあそうだろうな」

 

操術席ごと上空に飛ばされ、パラシュートでゆっくりと降下するアズサは視線の下で爆煙の中から何食わぬ顔をして現れるペロロジラの姿を確認する。

多少なりともダメージを与えられたようだが…それでも、アズサは理解していた。

 

ここまでの戦いで、メカペロロジラがペロロジラに与えることが出来たダメージはペロロジラの耐久力のせいぜい1割程度かそれ以下であることを。

拮抗した戦いに見えたのは見かけだけだ。

その力はまるでペロロジラには及んでいなかった。

 

爆煙から出てきたペロロジラは頭を振り、そしてアズサを見上げる。

なんとなく、メカペロロジラを操っていたのはこのアズサであると理解していそうだ。

それはつまり今ペロロジラからの敵意(ヘイト)を最も稼いでいるのはアズサであることに他ならない。

しかし今のアズサがメカペロロジラと比べて取るに足らない存在だと察知しているらしいペロロジラはそんなアズサにトドメを刺すためにわざわざ熱線は使わない。

羽虫を叩き落とすかの如く、アオイ達にやったように空の孔から飛来するペロロミニオン入りガシャ玉で狙いを付けられた。

天与宣誓、メカペロロジラ程の巨大な傀儡を動かせる神秘の出力や効果範囲と引き替えに肉体に大きな障害を負っているアズサでは回避出来るはずもない。

 

 

「…後は任せたぞ、皆」

 

 

そして、目を瞑るアズサに向かってガシャ玉が直撃しようとして───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ナイスファイト!よくやったわ!」

「!?」

 

玉が直撃仕掛けたアズサを、そこに鵺の脚に捕まって飛んできたヒナが横から掻っ攫いギリギリで玉の軌道から退避させることに成功した。

 

「空崎ヒナ…」

「あなたのお陰でペロロジラの足がかなり止まったし、あなた達の戦闘の余波で近くのペロロミニオンが殆どペシャンコになって簡単に近付けたわ。後の時間稼ぎは私達に任せなさい」

「だが、あなた達の力ではあれを止めるのは…」

「やってみなきゃ、分からないじゃない。あとあんたにくっついてるそれ外せない?鵺はあんまり力ないのよ」

「あ、ああ…すまない」

 

アズサはシートベルトを外し、自身にくっついていた操術席を落とすと重量で高度が落ちかけていた鵺が持ち直し、滑空してアズサをペロロジラ対策本部まで送り届けた。

そこで待機していた監督オペレーター達にアズサを任せ、ヒナは再びペロロジラへと向かおうとする。

 

「…余計なことは言わない。健闘を祈る」

「ありがとう。友達の為にも、自分の命を大事にね」

 

アズサからのエールを受け取ったヒナは鵺の脚に捕まり共に飛翔する。

ペロロジラ周辺のペロロミニオンが殆ど潰された事で特異現象捜査部の面々がペロロジラへと到達し、各々が足止めの為に攻撃を仕掛けていた。

 

カズサは玉犬『渾』に跨ったまま駆けさせてペロロジラの周囲を周り、色んな方向から本体に射撃を仕掛けている。

レンゲはペロロジラの巨体を駆け上がり足場とするペロロジラの身体に射撃を加えながら駆け回っている。

ペロロは高火力な火器で少しでもペロロジラの注意を引こうと攻撃を続けている。

ミノリは残ったペロロミニオンを間引きつつ、ペロロジラ本体に対して『言霊』を使う機会を伺っているようだ。

 

アオイはフウカの箒の後ろに乗って低空飛行しつつ、隙を見てペロロジラへと神秘を込めた石を投げそれと入れ替わる事でペロロジラに直接取り付き、至近距離から攻撃を仕掛けている。

マコトは狙撃により攻撃している生徒達を狙って落下するガシャ玉を弾き、時折マコトの秘儀である『赤血秘術』の対象とするため血を混ぜた弾丸を放ち、加速させてそれをペロロジラへと叩き込んでいる。

ヒフミはそんなマコトを狙うペロロミニオンを倒したり、飛んでくる光弾を撃ち落としてマコトが狙撃に集中出来るようにしている。

 

その他にもここに集まっている特異現象捜査部の生徒達は各々の手段ででペロロジラに攻撃を仕掛けたりペロロミニオンを押さえ込んでいる。

 

「アズサにはああ言ったけど、やっぱり打撃力不足ね。これじゃあ気を引くなんて───」

 

 

「ヒナーー!乗せなさい!」

 

「!」

 

地上から自分を呼ぶ聞き覚えのある声にヒナは直ぐに鵺を降下させ、声の主を回収して飛び立つ。

が、鵺がかなり飛びづらそうにしているのを見てヒナはため息を吐いた。

 

「余計な装備とかないのに普通に重かった…ユウカ先輩」

「失礼ね!同年台女性の平均体重の範囲内に収まってるわよ!」

「それで、何の用かしら?」

「後で話の続きするわよ…!私をレンゲの元まで連れていきなさい!あの子の武器を借りたいの!」

「…?わかったわ」

 

回収したユウカからそう言われ素直に従ったヒナはマコトやペロロからの支援を受けながらペロロジラに張り付くレンゲの元までひとっ飛び。

落下してくるガシャ玉や地上からの光弾の妨害に晒されながらも到着すると、いきなり近づいてきたことにレンゲが大袈裟に驚いた。

 

「うわっ!?びっくりした…何しに来たんだヒナ!と、ユウカ先輩…」

「『百花繚乱』を貸してちょうだい。コイツを止めるわ」

「…できるのか?」

「先輩を信じなさい」

「分かった。他にやって欲しいことはあるか?」

「そうね、いつでもこいつから距離を取れるようにして」

 

簡潔にやり取りを済ませるとレンゲは大人しく指示に従い移動、ペロロジラに直接取り付いて攻撃を仕掛けてる連中に呼びかけながら撤退の準備をし、その間にヒナは再びユウカを片手で抱え鵺の脚に捕まりながらペロロジラから一旦距離を取る。

 

「…で、何するんですか?」

「知ってるでしょうけど、私の秘儀は特定の位置を狙うことで強制的に相手の弱点を作り出してダメージを与えることが出来るわ。『百花繚乱』程の特級遺物でそれを行えば…この位置なら狙いやすいわね。鵺を止めて」

 

丁度いい距離まで離れたところで、ユウカは『百花繚乱』を構えペロロジラの体長の88%に当たる位置…ユウカの秘儀、『分率算術』の発動条件を満たす位置を精確に狙い───射撃する。

神秘を込めれば込めるだけ威力の増す『百花繚乱』、そして強制的に弱点を作る『分率算術』

 

この2つを合わせた一撃は…ペロロジラを小揺るがせた。

 

それによって足を止めたペロロジラの焦点の定まらない瞳がギョロギョロと動き、そしてヒナとユウカを捉える。

 

 

「…がっつり狙われる感じ?」

「みたいよ。ほら避けさせなさい」

「鬼…!」

 

直後、ペロロジラの両目から熱線が放たれた、慌てて鵺を移動させすんでの所でそれを回避する。

メカペロロジラ程しっかりと足を止められているわけではないげ、ペロロジラは前進しながらもユウカとヒナを狙って熱線を何度も放ち、その為に歩速が少し遅くなっている。

 

「少しでも、ほんの少しでも!このまま食い止めるわよ!」

「ああもう!やってやるわよ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『アンタレス』起動準備地点

 

対ペロロジラに用意された超古代遺物『アンタレス』の整備は最終段階に入り、前線の戦況が白熱するにつれてエンジニア達の作業にも熱が入り、整備を進める速度が上がっていく。

これならば当初の予定より幾らか早く起動することが出来るだろう。

 

「ウタハ。あとどれくらいかかるの?」

「このペースなら1時半…いや、もう10分は縮められる筈だ」

「アズサ…メカペロロジラには驚いたけれど、想定よりも大きな時間を稼いでくれたわ。十分間に合うとは思うけれど、急いでちょうだい」

「ああ、任せてくれ」

「…聞いていたわね。あなたもそろそろ準備をしなさい」

「…ふぅ。はい、わかりました!」

 

リオに呼びかけられ集中していたアリスは大きく息を吐いてからそれを了承すると、整備中の『アンタレス』の元まで駆け寄る。

実際、『アンタレス』そのものの起動準備は終わっており、後は作動させるために必要な動力系と制御系のケーブルを繋ぎ細かい調整をするだけのところまで来ている。

本番前にアリスは感覚を掴もうと『アンタレス』を…手動で起動できるよう取り付けられた引き金に指をかけ、持ち上げる。

 

「重っ…」

「…大丈夫?」

「は、はい。想像以上に重いですけど…神秘で身体を強化すれば問題ありません」

「そう。神秘の装填は今から始めても大丈夫だけど、暴走させないように注意してね」

「はい!」

 

注意事項を伝えたリオは整備班を手伝いに向かい、残されたアリスは試しに『アンタレス』へと神秘を込め始める。

 

と、その時。

 

 

『…随分と懐かしいものを持ってますね、小娘』

「っ!…何しに出てきたんですか、K()e()y()

 

アリスの内側から機械音が鳴り響くと、アリスの片目にノイズが走り赤い光が暗く灯った。

それは、アリスの内側に封じられている名も無き神々の王女…Keyがアリスの表に現れていることを示している。

 

『何しに、とは随分な物言いですね。そもそもそれは私のものですのに』

「…これがKeyのもの、ですか?」

『厳密には私のものの()()でしょうか。かつて名も無き神々の時代に私の城であった”アトラ・ハシース”、それを構成する構造体の一つ、に搭載された砲台。貴方々が回収したという宇宙戦艦とやらは私の城を構成するパーツの一つに過ぎません』

「…なら、有難く使わせてもらうことにします」

『思い上がりも甚だしいですね…まあ止めることは出来ませんのでこれ以上言って負け惜しみと取られても面白くありません。それに私自身直接あの城に思い入れがある訳でもありませんからね』

「そうですか。ならさっさと消えてください。集中出来ません」

『…本当につまらない小娘ですね。あの巫山戯た特異現象に翻弄されると良いですよ』

 

捨て台詞を吐いてKeyの意識が沈み、アリスの目も元の青い光を取り戻す。

鼻を鳴らしたアリスは『アンタレス』に神秘を込めながら引き金と同じく後付けで取り付けられている照準を覗き込み…遥か先まで見据えるそれによって視認することが出来るようになった、ペロロジラと戦う仲間達の姿を捉えた。

 

「っ…!」

 

一人一人の判別は難しいが、それでも見覚えのある式神が、特徴的な武器による光が、離れていても存在感のあるシスターが、ペロロジラを食い止めるために戦っている。

ペロロジラは滅茶苦茶に目から光線を放って周囲を薙ぎ払い、応戦してる特異現象捜査部の者達が傷付いていく。

 

「…起動はまだですか…?」

 

 

 

 

 

 

 

ペロロジラが翼腕を薙ぎ、生じた暴風により鵺ごとヒナとユウカは吹き飛ばされた。

何処かの建物に突っ込み、屋内に転がった2人目掛けて建物の天井を突き破ってガシャ玉が飛来してくる。

慌てて回避した2人は玉の中から現れたペロロミニオンを直ぐに射撃して鎮めると建物の外に飛び出て自爆を回避し、改めてペロロジラへと目を向けて…

 

「嘘、でしょ…」

「…ここに来て余計キモイ要素増やさなくて良いのよ」

 

 

 

「れ、レンゲ…」

「デモ…」

「マジか…お前、飛べるのかよ…」

 

ペロロジラを食い止めていた者達は一様に唖然とする。

 

そこには、翼腕を忙しなく上下にはためかせ空中に対空するペロロジラの姿があった。

高所に位置どったペロロジラは地上を睥睨し、両目を輝かせ───放った極太の熱線を薙ぎ払い、地上を蹂躙していく。

 

 

 

 

 

 

 

「っ…ウタハ!準備はまだですか!もう皆が持ちません!」

 

「アリス…直ぐに終わらせる!頼む、もう少しだけ待ってくれ!くっ…リオ!」

「分かってるわ!各地に展開した固定兵装を起動!アリスの攻撃を悟らせないよう少しでも意識を散らさせて!」

 

リオの指示を受けた特異現象捜査部オペレーションルームは、ペロロジラの進路を包囲するように配置していた自走砲やミサイルポッドを起動、様々な方向からペロロジラに砲撃やミサイルを叩き込む。

 

それらの攻撃を受けたペロロジラは煩わしく思ったのか攻撃の軌道から攻撃地点を予測、固定兵装が仕掛けられた地点に向かって流星のようにガシャ玉を飛来させたり、両目の熱線を薙いで徹底的に破壊する。

ペロロジラの攻撃はさらに激しくなり、熱線を薙ぎ払う過程で地上も焼き払われ地獄が広がっていく。

 

 

 

「早く…!」

「分かっている!みんな急げ!」

「…後1分で完了するわ!アリス、神秘を最大まで溜めなさい!」

「はい…!」

 

作業が進む事にエンジニアや作業員達は容量を掴み、より作業を効率化させていく。

それによって作業スピードは加速度的に増し、遂に『アンタレス』起動まであと少しの所まで漕ぎ着けた。

 

ペロロジラの攻撃が激しさを増し前線部隊がそれに晒される様をスコープ越しに見る度にアリスの焦りは加速していく。

 

「早く…!早く…!」

 

「動力接続!制御装置接続!『アンタレス』起動まで後20秒!」

「最終安全装置を解除しなさい!」

 

 

アリスが覗くスコープには『アンタレス』の充電状態を表すメーターが示されており、それが急激に上昇していく。

これが100%に到達すれば『アンタレス』は起動し射撃を行うことが出来る。

メーターの数値が10%、20%、30%、40%、50%と上がり…

 

 

「残り10秒!」

「アリス、照準補正に合わせなさい!撃つわよ!」

 

 

メーターの数値が60%、70%、80%と上がり…

 

 

その時、ペロロジラの視線が遙か彼方から狙っている筈のアリスを捉え、そちらへ振り返り両目を輝かせ始めた。

 

「気付かれた!?」

「後少しなのにっ…!」

 

メーターの数値が90%、92%、94%、96%と上がり…

 

メーターが溜まり切る前にペロロジラはアリス達へ向けて熱線を放とうとし───

 

 

 

『働くな』

 

 

 

拡声器で響いた声が、一瞬ペロロジラの行動を停止させる。

 

 

 

その間にメーターは98%、99%と上がり…100%を示した。

 

「今だ!」

「アリス!」

 

 

「はい…光────よ!

 

 

 

そしてアンタレスから放たれたとてつもない神秘、電力、エネルギーが極限まで内包された光線が発射され───

 

 

 

 

 

───ペロロジラを撃ち抜いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…間に、合いました…か」

 

「…お疲れ様、アリス」

「よくやったわ…はぁ、ここ数年で1番肝が冷えたわ」

 

極限の焦りと神秘を込めるのに体力を使い果たしたアリスがその場にへたり込むと、同じく冷や汗をかいているウタハが手を差し伸べ、アリスはそれを取って立ち上がる。

リオは作業テーブルに突っ伏し、普段からは想像できないだらしなさを見せていた。

 

ともあれ、現場は和やかな雰囲気に包まれ───ガタンッ、とモニターの一つに向き合っていた作業員が椅子を倒した。

 

「…どうしたの?」

「リオ、部長…も、目標から…高エネルギー反応が…」

「…なんですって!?」

 

それを聞きアリスも慌ててスコープを覗き込むと…そこには、爆煙の奥から現れる肉体を大きく損傷したペロロジラの姿があった。

ペロロジラは崩れ落ちた肉体を再生させながら、両目を輝かせこのダメージの恨みを晴らさずにはいられないとばかりに凶悪な執念が宿った瞳でアリス達を見据えている。

 

「倒し、切れなかった…?」

 

「っ!皆!退避するんだ!」

「いえ、全力で防御を!退避は間に合わ───」

 

「あっ…」

 

退避や防御の指示が飛び交う中、しかしそれを嘲笑うかのようにペロロジラはアリス達のいる植林山へと向けて極太の熱線を放ち───

 

 

 

 

 

 

 

 

「…あれ…?」

 

予感していた死の瞬間はいつまで経っても訪れなかった。

代わりに強烈な光が瞬き、アリス達の前で弾けている。

恐る恐るアリスがそちらへ目を向けると、そこには…

 

 

 

 

「よく耐えたね、皆。後はおじさん”達”に任せて」

 

 

 

「ホシノ、先輩…」

「小鳥遊ホシノ…」

 

盾を構え、さらに盾から大きく広がったシールド状の膜が圧倒的な熱量を受け止め、その一切合切をそれより後ろに通していない。

やがて熱線が止み、難なく耐え切ったホシノはシールドを解除し盾を構え直すと、ぐっと屈んでアリスの方を振り返った。

 

「アリスちゃん、お疲れ様」

「…はい、ホシノ先輩」

 

微笑んでそれを伝えたホシノはアリスからの返事を受け取ると屈めた膝をバネのように戻し一瞬でペロロジラのいる彼方まで跳躍した。

 

彼女が来たのなら、もう大丈夫だろう。

いや、()()()が来たのならば…

 

 

 

 

 

 

 

 

「見てみてクロコちゃん、怪我してるの抜きにしてもキモくない?」

「そう…?私は愛嬌あると思うけど…」

「あれ、クロコちゃんキモカワ系…キモカワ系?もイける感じなの?意外…ではないかな。割とそれっぽいかも」

「それは褒められる…?」

「褒めてる褒めてる。人の趣味なんて多種多様だからね〜」

「ん…あ、ホシノ先輩が飛んでった」

「そう?じゃあせっかく間に合ったんだし、私達もカッコイイとのろ見せちゃおうか☆」

「ん、レンゲ達と後輩をイジメた奴は許さない」

 

 




次回、シン・ペロロジラ エピローグ


特級口伝特異体 ペロロジラ
モモフレンズの手がける映画作品に登場したペロロジラ、その内唯一の公式人形である海底に沈んだペロロジラぬいぐるみがペロロジラ、ひいてはペロロ愛好家たちによるペロロへの噂を取り込み、神秘と反応して強大化した存在。
体長300mを超え、歩くだけで全てを引き潰していく災害の如き脅威で、主な攻撃手段は巨体を活かした特攻と両目から放つ熱線。
そして空に自らの兵隊であるペロロミニオンを召喚する孔を開くことができ、ペロロミニオンが生まれるガシャ玉のような玉は落下の軌道をある程度調整して投下攻撃に利用することが可能。
脅威度はKeyの機器部品(モジュール)換算で15個分以上

ちなみに凄まじい耐久力を誇るが特異体なので死路虚の退魔の剣(退魔の銃?)を1発食らうとそれだけで問答無用で消し飛ぶ



絶対装甲傀儡戦略決戦兵器究極メカペロロジラ
白州アズサ作、彼女が16年に渡って貯め続けてきた神秘が込められた超巨大な戦闘ロボット。
サイズはメカペロロには劣るが(番外編では)200m前後はあり、活動時間が込められた神秘に依存することを除けばかなりハイスペックな機体。
攻撃手段は突進や目からの光線は勿論、胸部から大砲や機銃、ミサイルを展開することが可能。
敢えて戦闘力を示すならばKeyの機器部品(モジュール)7個分相当
どちらかと言えば耐久力より攻撃力に性能が振られており、大抵の相手ならばその火力で消し飛ばすことが可能(これは本編も同様)
本編ではあっさりと敗北したが相手が特攻以外の攻撃を無効化するムツキでなければもっと活躍できた…かもしれない
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