ブルア廻戦   作:天翼project

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結実

 

 

彼の守護天使の名は”metatoronn”───

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

旧ミレニアム自治区に存在する迷宮。

その深部にて建造されていた巨大な装置を守るかのように調査に来たレンゲ達を阻む特級神名特異体、”完全なる”ケテルは搭載した巨大な砲塔をレンゲとミノリへと向け、発射した。

 

同時に左右に別れて回避を図った2人だったが、放たれた砲弾の破壊力は予想を上回るものであり、着弾と同時に起こった爆風が距離を取ったレンゲとミノリを巻き込んで吹っ飛ばしてしまう。

 

「くっ…そ、あの野郎…!ミノリ!大丈夫か!?」

「プロレタリア…」

「はあ…こりゃめんどくせぇな」

 

建物の外壁に突っ込むまで吹き飛ばされたレンゲは悪態を着きながらも向かいの方で地面に転がって行ったミノリの無事を確認し安堵するも、ケテルが再び射撃体勢に入っているのに加え大勢の武装したオートマタが隊列を組み行進してきているのを見て直ぐに身体を起こして動き回る準備をする。

オートマタ達程度の武装の火力でも神秘の無いレンゲでは普通に怪我をしてしまう──桁違いに頑丈な分そうそう戦闘不能にはならないが──ので、弾幕を張られる前に一度背後の建物の壁に釈魂刀の柄を叩き付けて破壊し、その中に身を隠した。

 

(シグナルの発生源を見つけた場合の対処は現場の判断に一任されてるが、あそこまで露骨に守ってくるとなると破壊した方が良さそうだが…破壊するだけなら釈魂刀(こいつ)なら簡単だろうが、あれだけの物量がいると近付くのは簡単じゃない。それにケセドもケテルも面倒だ。なら破壊役は…)

「サオリ、聞こえるか!?」

 

『…攻撃を受けていたようだが、大丈夫か?こちらからはまだ爆煙で見えん』

「アタシもミノリもなんとかな。そっちから見て右側の建物にアタシが、反対側のアパートみたいな建物にミノリが入ってった。出てきたのはケセドとケテル、あとオートマタが多数」

『了解、援護する』

「いや、それはまだ待て」

『…?何故だ?』

 

レンゲは無線を通じて巨大な装置のある広場から離れた位置にある塔の上に陣取るサオリに状況を報告しながら広場の方が見える窓の脇に移動し、こっそりと外の様子に目を向ける。

射撃体勢に入ったケテルは巨大な装置の側に位置取りながらレンゲとミノリが逃げ込んだ2つの建物にそれぞれ視線?を行ったり来たりさせており、地下からせり出すように地上に現れたケセドは構築秘術にも似た方法で次々とオートマタを生み出している。

元々いた、そして新たに生み出されたオートマタは下手な特殊部隊ならば顔負けの動きでレンゲとミノリの追撃に向かっていた。

 

(…あの動き、指揮官がいる特殊部隊のそれだな。指揮してるのはケセド?ケテル?或いはそれ以外のヤツか…)

「…とにかく、サオリはもう少し様子を見てろ。ケテルかケセド、もしくは機会があれば広場の装置を確実に破壊出来るタイミングで火力高いのを撃ち込んでトドメを刺していけ。取り敢えずは最優先で一番面倒なケセドを叩く。一発撃ったら直ぐに移動しろよ」

『…分かった。ミノリの方にはこちらから連絡して示し合わせておく』

「おう、こっちで上手く撹乱しとくから2人で良い感じにやってくれ」

『肝心なところはアバウトなんだな…』

 

大雑把に指示を出したレンゲは無線を切って窓を破り外に飛び出すと、その瞬間にケテルの砲身がレンゲへと向いて砲弾を発射してくる。

しかし先程の攻撃の際に既にその速度を見切っているレンゲは釈魂刀を縦にひと振りしてそれを真っ二つに叩き切ると、左右に分かれた砲弾はレンゲの横を通り過ぎて背後の建物に着弾して爆発する。

その爆風を背中に受けて空中で加速したレンゲはその勢いのままケテルに切りかかろうとするが、その直前でレンゲは急ブレーキをかけるように空気の”面”を蹴ってバク宙しながら後ろへ下がった。

 

「チッ、邪魔くせぇ…!」

 

レンゲの進路を塞ぐように地上からオートマタが様々な銃火器を乱射して弾幕のカーテンを作っていたのだ。

さらに退いたレンゲが地上に着地するとオートマタ達もそれを追って射撃を続け、物量による圧倒的な弾幕に晒されてレンゲも慌てて再び適当な建物に突入し身を隠す。

 

「射撃の精度が昨日出くわしたオートマタ共の比じゃねぇな。アリスとかクロコならゴリ押せるんだろうが…ケセドが量産を続けてるし、まとめて片付けてまた増やされる前にケセドを仕留めなきゃいけねぇか。なら…」

 

ケセドとケテル、そして大量のオートマタの軍勢。

建物に隠れ射線を切りながらそれらの攻略法に思考を巡らせていたレンゲだったが、レンゲのいた真上の天井を突き破ってオートマタが降りて来る。

それを軽く飛び退いて避けたレンゲだったが、反撃しようとするよりも先に天井に空いた穴から上半身を逆さまに覗かせた2体目のオートマタがすかさず銃撃を行い、レンゲはそれに対して大きな板のような瓦礫を足のつま先で持ち上げ即席の壁にして防ぐ。

しかし最初に降りてきたオートマタが直ぐに回り込んで狙って来る、が

 

 

「遅せぇ!」

 

 

撃たれるより早く釈魂刀を切り上げてオートマタを両断し、遅れて降りてきた2体目のオートマタに向かって半分になったオートマタの残骸を投擲、レンゲの豪腕によって投げ放たれたそれに巻き込まれたオートマタはその一撃で粉砕されながら建物の外まで飛んで行った。

その直後、外から砲撃が放たれて建物が丸ごと爆破される。

壁にしていた瓦礫が緩衝材となって爆発に直接巻き込まれることのなかったレンゲだが、爆風で広場からかなり離れた位置まで吹き飛ばされてしまう。

 

「クッソ、明らかに動きが良いじゃねぇかよアイツら…!」

 

流石に全てのオートマタがそうでは無いが、大量に製造されている内の何体かだけは誰かがコントローラーを握って操作しているかのように機敏な動きを見せている。

レンゲが思い出したのはかつて白州アズサが操っていたメカペロロのような、人の意志を感じる動きだ。

 

(ケテルやケセドの動きを見るにあいつらがあれを操っているとは思えない。つーことはやっぱり裏に何者かがいる…ははっ、予想外に収穫が多くて調査の手間が省けるな)

 

「んじゃあ───こっからは本気で行くぞ」

 

可能性として考えていた要素、それらの確認を終えたレンゲは意識的に肉体のギアを上げ、一歩踏み込んだ次の脚でもはや常人の目に止まらない程に加速する。

その轟速は離された広場まで刹那の時間で到達し、待ち構えていたオートマタを二十体程釈魂刀を横に薙ぎ払っただけで破壊した。

 

一瞬遅れて最初にそれに対応を始めたのはやはりケテル、正確に砲塔の照準を定めて反撃を狙ってくるが、迫る砲弾を目で捉えたレンゲは脚を上げて…砲弾を起爆させないように精密な力加減で靴底で受け止めた。

 

「返すぞ」

 

バネのように砲弾を受け止め曲げた脚を、今度はバネが反発するように蹴り返した砲弾はケテルの砲塔に着弾して大爆発を起こす。

大きく仰け反ってケテルはその強靭な四脚でたたらを踏むが、ようやく事態を把握したオートマタ達が大きな隙を晒したケテルに代わってレンゲを迎え撃とうと武器を向ける。

しかし…

 

 

『クビ』

 

 

そこに飛び出してきたミノリがそう声を上げると、『言霊』の対象として指定された広場にいる全てのオートマタの頭部がまとめて吹き飛んだ。

ケセドが製造したばかりのオートマタもリスキル地味た破壊に晒され、ケテルも体勢を立て直すのに僅かな時間がかかる。

そしてその僅かな時間を無駄にする者はこの場にはおらず、瞬き1つの間にケセドへと急接近したレンゲは釈魂刀を振り下ろしケセドの強靭な外部装甲を切り開いた。

本来ならば極めて強靭で単純な物理攻撃ならばあの聖園ミカの攻撃であろうと多少は猶予を持って耐えられるであろうケセドの外部装甲も、あらゆる硬度を無視して物質を切り裂く特性を持つ釈魂刀の前ではその防御力は紙以下となる。

 

ケセドのコアは球状の殻のような外部装甲から中心部にあるので釈魂刀の刃渡りの問題で今の一撃だけではコアに攻撃が届かなかったが、剥き出しになったコアを破壊するのにはもう一撃で足りる。

 

「が、そう簡単にはさせてくれねえよな?」

 

追撃しようとするレンゲを阻んだのはその巨体に似合わない速度で突進を仕掛けてきたケテルだった。

搭載した機銃から弾幕を放ってケテルからレンゲを引き離すと、その四脚でケセドを覆い隠すように跨ぎ防御の姿勢を取る。

その間にケセドはオートマタを製造し軍隊を増やそうとするが、すかさずミノリが『クビ』と叫んでそれらを破壊した。

 

すると今度はケテルの関心がミノリの方へと向いたようで、機銃でレンゲを牽制しながら主武装となる砲塔はミノリへと向けられる。

 

「ミノリ!」

 

『働くな』

 

ケテルが砲撃しようとするのに合わせてミノリがその動きを一瞬止める。

それによってレンゲを牽制していた機銃の掃射も止まり、その隙に跳躍したレンゲはケテルへと飛び蹴りを仕掛けて質量差もものともしない威力によりケテルをケセドの上から退かせて見せる。

だがミノリの『言霊』による拘束も神秘量の差によってケテルには大して続かず、直ぐに動きを取り戻してレンゲやミノリがケセドにトドメを刺そうとするのを妨害するだろう。

 

故に、今ケセドにトドメを刺すにはミノリがケテルの動きを止め、そしてレンゲがケテルを蹴り飛ばすのと同時に一瞬無防備になったケセド、その装甲に空けられた穴を狙うしかない。

それを出来る者は…この瞬間を信じて待ち続けていたサオリしかいない。

 

 

「流石だ」

 

 

2人の行動に合わせて完璧なタイミングでサオリが放ったロケットランチャーは、あらゆる妨害を除去してほんの一瞬のみ完全に無防備になっているケセドの穴の空いた装甲に吸い込まれるように着弾し、ケセドを内側から粉砕した。

爆発炎上しながら吹き飛んだケセドにレンゲは軽くガッツポーズをするが、その喜びに水を差すようにケテルがレンゲへ砲撃を放った。

今度はそれを釈魂刀の刀身の腹で滑らせるように横に逸らして凌いだレンゲはまた狙われる前にミノリの元まで駆けると小脇に抱えて一度その場を離脱し、周囲の建物の陰へと入り込んで身を隠す。

 

「ミノリ、喉は?」

「で、デモぉ…」

「ちょっと不安か…っと、サオリ、そっちは無事か?」

『問題ない。撃った後直ぐに移動した』

 

抱えるミノリは若干喉を枯らして返事をし、負担の少ない停止の『言霊』でもKeyの時ほどとは言わずともそれなりの反動を貰ったようだ。

レンゲがミノリの調子を確かめた直後にレンゲ達が身を隠した事でケテルの狙いがケセドを破壊したサオリへと向き先程撃ってきた方向…鉄塔の上に向かって砲撃を行ったようだが、サオリの安全も無線で確かめたレンゲは少し離れた位置でミノリを降ろして散開する。

残りの対処するべき目標はケテルと広場の中心にある装置。

ケセドが生み出すオートマタの物量が無くなった今最早苦戦する要素など無い。

 

 

(サンプルも欲しいしシグナルを発してる目的も探らなきゃいけないし、装置の対処は後からじっくり考えても遅くは無い筈だ。なら調査を邪魔されないようにまずはケテルを始末する!)

 

 

対処の優先順位を決めたレンゲは建物を飛び越えてケテルの頭上に飛び出ると、空気を蹴った勢いで急降下して釈魂刀を振り下ろす。

対してその奇襲を察知したケテルは機敏な動きで飛び退いてそれを回避すると、お返しと言わんばかりに機銃の掃射と砲撃を同時に仕掛けた。

それを亜音速にもなる健脚で爆風の範囲から一瞬で離脱することで避け、広場を囲む周囲の建物の壁を走り乗り継ぎながら攻撃の隙を狙うレンゲ。

 

「…何だ?」

 

しかし、機銃を掃射しながらその動きを追いかけようとするケテルだがこのままでは埒が明かないと判断したのか、機銃の掃射を撃ち止めると強靭な四脚の内の一脚で地面を強く踏み締めた。

すると、ケセドが現れた時のように広場の一角の地面が開き、そこから勢いよく射出されたのは巨大な機械のパーツのようなもの。

それが打ち上げられたのを確認したケテルは四脚より上の機体の上部を大胆に切り離して放り捨て、残った四脚が身軽に飛び上がって打ち上げられたパーツと合流、そして空中でドッキングしながら凄まじい衝撃と共に着地する。

 

そうして大袈裟に換装したケテルの新たな武装は中央のジェネレーターのようなものとその左右に取り付けられた三本指のアームのような形状をしたブラスターだった。

2つのブラスターは高速で駆け回るレンゲへと狙いを定め、何かをチャージするように発行している。

 

 

(なんかやばそうだが、当たらなきゃ良いだけ…いやはっや!?)

 

 

あれはまともに受けてはまずそうだとより駆ける速度を上げていたレンゲだったが、先程までの機銃や砲撃よりも遥かに勝る弾速のエネルギーの塊が放たれ、直撃こそしなかったものの至近距離での着弾を許しその衝撃に煽られて足がもつれ、レンゲは地面に落とされてしまう。

慌てて立て直そうとするもののケテルは直ぐに次のチャージに入っており、あれだけ加速したのにも関わらず当たりかけたのだから走り出した直後の十分に加速できていない状況では避けられるはずも無い。

ならばとレンゲは回避ではなく攻めを選択し、ケテルへと飛びかかった。

それでもレンゲが届くよりもケテルのブラスターが放たれる方が早いだろうが…

 

 

『働くな』

 

 

「助かった!」

 

 

タイミングを合わせたミノリの『言霊』によりブラスターの発射が僅かに遅れ、先にケテルへと到達したレンゲの釈魂刀が四脚の内の1つに深い傷を負わせた。

追撃する前にケテルが飛び退いた事でそれ以上のダメージは与えられなかったが、アイコンタクトでミノリがまだ行けるというサインを受け取ったレンゲは遠慮なく攻勢をかけ、見た目に似合わない機動力で退避しながらブラスターを放ってくるケテルを削り取りにかかる。

 

(コアを狙わない限りは、あの巨体だと釈魂刀と言えど少し斬りつける程度じゃせいぜいかすり傷。さっき上部を切り離しても稼働してたのを見ると奴のコアは下半分の方にあるのか?)

 

時々ミノリに『言霊』でサポートしてもらいながら何度か攻撃は入れているものの、あまり手応えを感じないレンゲは神明特異体共通の急所となるコアの位置について考察するが、考える時間もそう多くない。

レンゲが攻め続ける限りはケテルもそれの対処をせざるを得ないのでミノリが攻撃の対象にされることはそうそう無いが、一度『言霊』の対象にするだけでミノリが受ける喉への反動はそれなりで、動きを止められるのもあと1回が限界だろう。

 

(奴のコアの位置…当てずっぽうになるが、やるしかねぇか!)

 

ミノリの支援が無ければレンゲではケテルのブラスター攻撃を躱し切れず、攻め切るのも難しい。

ならばと賭けに出ることを決め、レンゲは一直線にケテルへと突撃した。

当然迎撃しようとケテルのブラスターがレンゲを狙うが、それをミノリが許さない。

 

 

『働くな』…ゴホッゴホッ…!」

 

 

かなり嗄れてきている声で『言霊』を使い深く咳き込むミノリだが、停止の言葉は効力を発揮してブラスターの発射を僅かに遅らせる。

その隙にケテルの真下に潜り込んだレンゲはそこから真上に飛び上がり、ケテルの底面部を蹴り上げた。

 

「転び、やがれ!」

 

真下からかち上げられた事でケテルは体勢を崩して横向きに倒れ、四脚が連結する機体の下部パーツが晒された。

そこに向けてレンゲは釈魂刀で深く斬りつけて…切り開かれた装甲の様子がその部分だけ他とは少し違うものになっているということを見破る。

 

(やっぱりここだけ装甲の強度を上げてるんだな?つまりこの奥に厳重に守られたコアがあるんだろうが…釈魂刀(コイツ)なら関係ねぇ!)

 

そこへ向けて連続で釈魂刀で斬りつけ、傷口をより大きく切り開いていく。

かなりの分厚さがあるのかコアを露出させるのに中々時間がかかり、そしてその間当然ケテルもされるがままになる筈がない。

 

倒れるケテルは射角の問題でブラスターでレンゲを狙うことができないと見るや、ブラスターを立てるように脚部側に対して上に向けると、ブラスターの指の様なパーツが激しく回転を始める。

まるで何か大きなエネルギーをチャージしているかのようなその音に焦りを覚えたレンゲは攻撃の手を強めていく。

そう時間は経っていない筈だが凄まじく長い時間に感じたものの、遂に装甲を切り裂き尽くしてケテルの内部にあったコアが剥き出しになった。

 

「うおおぉりゃあぁぁぁ!」

 

そこへ向けてレンゲが釈魂刀を突き刺そうとする、が───

 

 

 

 

 

 

─────バチバチィッ

 

 

 

 

 

「がっ…」

 

 

ケテルはチャージしたエネルギーを解き放ち、強烈な電磁波を放った。

それはコアを破壊する一歩手前だったレンゲを跳ね除けて吹き飛ばし、ギリギリでトドメを刺されることを回避する。

ただの苦痛程度ならばレンゲが止まることは無いが、神経を麻痺させられれば流石のレンゲも満足に動けずにその場に這い蹲ることしか出来ない。

最も危険な脅威を行動不能にしたケテルは悠々と起き上がってレンゲを始末しようとして───その最大の脅威と対面し続けていたことによって、更なる脅威の対処にまでリソースが回っていなかった。

 

 

 

 

「全く、誰も彼も無理ばかりする…」

 

 

そうして、ケテルが起き上がり前にサオリが撃ち込んだロケットランチャーの弾頭がレンゲが切り開いたケテルの装甲の奥のコアへと達し、ケテルは内側から爆散して鎮められた。

 

 

 

 

 

 

「休暇?」

「大丈夫か?」

「これが大丈夫に見えんのかよ…」

 

ケテルを鎮めてから広場の方まで来たサオリはミノリに肩を貸しながら、ビクビクと筋肉を痙攣させながら倒れるレンゲを回収していた。

一旦ミノリには自分で歩いてもらって代わりにレンゲを背負ったサオリは広場の脇の方にあった資材置き場らしき場所に集められている手頃な機材の上にシートを敷いてそこにレンゲを寝かせた。

 

「あー…しんど」

「思ったよりも強力な個体だったな」

「デモ…」

「まだ、あの装置も調べなきゃなんねぇし…」

「ケセドやケテルの換装が現れていた地下の方も見なければな。一仕事終えた感じにはなっているがここからが本番だ」

「ストライキ!」

「それだけ声が張り上げられるなら大丈夫そうだな。レンゲは休ませて私達は先に調べに行くぞ」

「デモ〜!」

「あー待て…私も1分も休めば1人で歩ける程度にはなるから…」

「…お前の回復速度も大概だな」

 

そして宣言通り1分程度で歩けるようになったレンゲと共になんとか戦闘に巻き込まれることなく無事に残っている装置の前まで来ると、どういった原理で、どのような操作で動いているのかも分からないそれを眺めるだけ眺め、全員が「訳分からん」と意見を一致させていた時、それは起きた。

 

 

地面が、激しく揺れたのだ。

 

「…今の揺れ下からか?」

「下から感じたな」

「プロレタリア」

「なんか崩れるような音聞こえるし地響きが段々強くなってる気がするんだが…」

「…逃げるか」

「デモ!」

 

嫌な予感を感じた3人は是非もなくその場から逃走し、急いで広場から脱出する、その直後───装置のあった広場は地面ごと吹き飛び、雲を貫くまで届く巨大な火柱が吹き上がった。

せっかく苦労して確保した今回の件の鍵となりうる証拠品が目の前で炎と煙に消えていくのを死んだ目で眺める3人は、炎が収まった後広場に空いた穴…完全に崩落して調査の余地も無いほどに破壊し尽くされた縦穴の底を見て、とぼとぼと帰路に着いたのだった。

 

 

(こりゃ競走はクロコの勝ちだな…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

キヴォトスの極地にある研究所にて。

 

「ふー…証拠隠滅完了。いやぁ危なかったね。回収が間に合って良かった良かった」

「それでアイン…ケテルがやられたようですが」

「ひ、ひぃん…」

「この調子じゃ他の預言者達も危うそうだね。まあゲブラーとコクマー、あとホドはもう回収を終えてるからそっちは良いけど」

「しかしせっかくこちらがオートマタをコントロールして手伝ったというのに負けてしまうとは。やはりミレニアムで自己複製させているケセドの構築能力で生み出す機体のスペックでは大した戦力にはなりませんでしたか」

「で、ですが!レッドウィンター自治区の方に置いた”完全なる”ケセドならばこうは行きませんよ!」

「まあまあ、それよりもゲブラーとコクマーが会敵するみたいだよ。相手は…砂狼クロコか」

「これまた厄介な相手ですね」

「ゲブラーとコクマーちゃんは負けません!…流石に2人がかりなら負けませんよね…?」

「「…」」

「2人とも何か言ってください!」




”特級神名特異体、完全なるケテル”
かつてマルクトが使役していたものよりも火力と防御力は勿論機動力と武装の精度を強化されている。
旧機体より特に優れた点として反応速度の強化が挙げられ、レンゲの超機動も迎撃出来る極めて優秀な対応能力を獲得した。
どちらかと言えば防衛に優れており、死角を補う補助があってその真価を発揮する。
ケセドがああも簡単に落とされなければ勝敗はまた変わってきただろう。
特異体としての脅威度はKeyの機器部品(モジュール)8個分相当。
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