ブルア廻戦   作:天翼project

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今回はアニメ14話の範囲でお送りします。
配役に関しては独断と偏見と掲示板での意見を借りて決めています。


百鬼夜行支部交流会─団体戦 零─

 

「あっ!いたいた〜!」

「ん…」

 

ゲヘナの辺境にある山の奥深く。

濃い湯気を立ち登らせる天然の温泉に浸かりリラックスし目を閉じていたアルだったが、少し前に別行動で離れた仲間の声を聞いてゆっくりと目を開けて元気に温泉に真っ裸で飛び込んできた仲間を見やる。

 

「アルちゃ〜ん!やっほ〜!」

「ムツキ…お行儀悪いわよ」

「アウトローがお行儀なんか気にしちゃだめでしょ〜?それより、怪我も大分治ったみたいだね。今は湯治かな?」

「まあね。ここは居心地が良いわ。人も寄り付かないしゆっくり休めるし」

「皆は大変だね〜。腕の良い医者は大体S.C.H.A.L.E側だから自力で治すしかなくて」

「あれ、ユメもいたんだ?」

 

温泉の縁に腰掛け脚を湯に入れていたユメは話しかけて初めて自分の存在に気が付いたムツキに苦笑しながら手を振る。

それに特にアクションを返すことも無く中々に広い温泉を軽く泳いだムツキはアルの傍に行くと頭を差し出し、意図を察したアルは優しい手付きでムツキの頭を撫でた。

 

「はぁ…にしてもあんたも随分やられたわね?」

「う〜ん、バレちゃった?いやー、Keyとその器が天敵でさ、たまたま拾った玩具から始まった遊びだけど上手くいかないもんだね。最初は楽しかったのに。やっぱり人質でも取って無理にでも契約交わさせれば良かったんじゃない?」

「契約はあくまで自分で自分と交わすもの、他者を介した契約や他者間での契約は簡単じゃないんだよ?」

「ふぅん…?」

 

些か複雑な要素が絡み合う契約というものを考えるのが面倒になったムツキはアルに頭を撫でられながら顔を半分湯に沈め、ぶくぶくと泡を吐く。

どうすれば上手くいったのか、コハルを改造せずにその場で致命傷を与えればKeyでも治すことが出来るのであの時のアリスとの契約を受け入れたのか。

 

 

『分を弁えなさい、痴れ者め』

 

 

(いや、あの性格じゃ無理かな。どっちにせよ断ってたに決まってる)

「…アルちゃん、Keyに触れて分かったけど取り敢えず当分はユメのプランで進めて大丈夫だと思う。Keyにはそれだけの価値があるよ」

「…機器部品(モジュール)を集めてKeyに献上する、ね…いつかこのキヴォトスの今の秩序が壊れて誰もが何にも縛られずに生きることが出来るような世界が出来るのなら…それが例え100年後だとしても。もしそれまでに私達が全滅したとしても、それが叶うなら本望、よね?」

「…そうだね」

 

少し物寂しそうにそういうと、アルはムツキの頭を撫でていた手を離す。

名残惜しそうに離れていく手をじっと見つめていたムツキだったが、ふぅ、と息を吐いてアルの肩にもたれかかった。

2人の話が一段落したのを確認すると、ユメは肩の上まで手を挙げた。

 

「…いいかな〜?それじゃあ今度はS.C.H.A.L.Eに保管してある6個のKeyの機器部品(モジュール)を回収するよ」

「うん…?それ必要あるの?連邦生徒会はKeyの機器部品(モジュール)を取り込ませる為に天童アリスを飼ってるんでしょ?放っておいても勝手に取り込むんじゃない?」

「それが、連邦生徒会はKeyの器としての強度を計りかねてるみたいでさ〜、何本目から暴走するのかとか分からないからその辺慎重になってるみたいだね〜。もし取り込ませるとしたら処刑の直前とかじゃないかな?一部の早く取り込ませたい例外の介入が入らなければ、だけど。それまで待つのもアレだしその前に上に消される可能性もあるしね」

 

どこかでだらけていたピンク髪の自称おじさんがくしゃみをするが、それを知る者はこの場にはおらず話は進む。

黙って話を聞いていたアルは体重をかけてくるムツキを軽く押し退け、立てた膝に肘を置いて頬杖を着いて仕方なさそうに呟いた。

 

「虎穴に入らずんば虎子を得ず、ってやつね」

「わあ〜、アルちゃんが正しい意味でことわざ使えてる〜!」

「うっさいわよ。策はあるんでしょうね?」

「勿論。その為にわざわざ手持ちの機器部品(モジュール)をS.C.H.A.L.Eに回収させたんだからね」

 

珍しくユメが見せる邪悪な表情に、自分達の事を棚に上げてアルとムツキは若干ドン引きしたのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…」

「ねぇ〜、ユウカちゃ〜ん。なんか面白い話してよ〜」

 

S.C.H.A.L.Eのオフィスの一つ。

テーブル越しに向かい合うユウカに鼻をかみながらホシノがだる絡みをしていた。

ユウカも頑なにそれを無視し本を読み、ホシノが投げつけてきた鼻をかんだティッシュを首を傾けて避け、後ろにあったゴミ箱にティッシュが入る。

 

「よし分かった!じゃあ廃棄のおにぎりでキャッチボールしながら連邦生徒会を批判しようか!動画にして上げて炎上してみない?」

「1人でやってなさい馬鹿」

(何が分かったんだか)

「小鳥遊ホシノの良いところで古今東西ゲーム〜!はいパンパン、全部!」

「…その調子で頼んだわよ。今のアリスちゃんにはそれぐらいの馬鹿さが必要なんだから」

「…」

 

 

 

『重めの任務を幾つかこなしてもらうよ』

 

 

 

「重めってそういう意味じゃなかったんだけどね〜…あっ、そうだ」

 

萎えたのか声のトーンを落としたホシノは、椅子の背もたれに寄りかかり呆然と天井を見上げる。

テーブルに脚をかけしばらくの間そうして椅子を前後に揺らしていたが、思い出したようにトリニティでの件をユウカへ訪ねた。

 

「羽川って子の家に置いてあったKeyの機器部品(モジュール)ってアリスちゃんに…」

「言ってないわよ。あの子の事だから、不要な責任を感じちゃうでしょうし」

「…ユウカに任せてよかったよ」

「そうかしら?」

 

ホシノは穏やかに微笑むが、ユウカはそれに目を向けることなく本を読み続ける。

ノリの悪い後輩にホシノはまた天井を見上げ…

 

「…で、機器部品(モジュール)は?」

「ヒマリ部長に渡して保管してもらったわ。ホシノ先輩に渡すと勝手にアリスちゃんに取り込ませようとするでしょ?」

「チッ」

 

ホシノの舌打ちによってせっかくの良い空気が台無しになる。

元々今はそんなものは必要ないとユウカは黙って本を読み続け…一区切りついた所で栞を挟んで本を置いた。

 

「…それより良いの?アリスちゃんを復帰させて。交流会で存在が公になったらまた上に狙われるんじゃないの?」

「だとしてもアリスちゃんはもう大丈夫だよ。それはユウカが1番よく知ってるんじゃない?」

 

 

 

 

「あっ!ホシノ先輩発見です!それにユウカも」

 

と、そこに勢いよく扉を開けてアリスが元気に部屋に駆け込んできた。

思いの外思い詰めたような雰囲気はなく、普段となんら変わりなく見える。

それが演技でも強がりでもないこと…しかし、アリスの中で心境に何かしらの変化が起きていることをホシノとユウカは見抜いていたが、敢えてそれを口に出すようなことはせずアリスに手を振った。

 

「おはよう、アリスちゃん。怪我はもう治った〜?」

「はい、セナさんのお陰ですっかりと!ヒーラーとしてパーティメンバーに欲しいぐらいです!」

「そう、でもまだ無理はしないようにね」

「分かりました。それよりもホシノ先輩!早く行きましょう!アリス、二年の先輩方に早く会いたいです!」

「う〜ん、それなんだけどね、アリスちゃん。せっかくここまで引っ張ったのに普通に登場する気?」

「え!?違うのですか!?」

「…また馬鹿なこと考えてるわね」

「いやいや、死んだ仲間がふた月後、実は生きてましたなんてここで活動しててもそう無いよ〜?だからやるでしょ?サプライズ」

「…はい!アリスは皆を驚かせたいです!」

「そう来なくっちゃ〜!」

 

 

「生きてるだけで十分サプライズだと思うけど…」

 

楽しそうな2人に水を差す事も出来ず、ホシノの事だからろくでもないことをするのだろうと諦めて現実逃避するかのようにユウカはまた本を読み始めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「…え!?なんで皆銃以外手ぶら!?」

「逆に何よその大荷物」

 

S.C.H.A.L.E近くのバス停に来ていた生徒達の中で、大きな鞄や百鬼夜行の観光ガイドブックを片手にするカズサの姿がよく浮いていた。

それもそのはず他の者は武装のみで特にこれといった私物を持ってきている者はいないのだから。

 

「何って…これから百鬼夜行でしょ?百鬼夜行で支部と交流会…」

「百鬼夜行の支部と交流会よ。D.U.でね」

「えー…百鬼夜行のスイーツ店巡りしたかった…」

「こいつ案外抜けてるよな」

「なるほど、通りで最近話が噛み合わなかったわけだ」

「デモ」

「去年勝った方の地区でやんだよ」

「何勝ってんのさ」

「何故私が責められるんだ!?私達は去年は出ていない!参加したのは数合わせのクロコだけだ!」

「ペロロに突っかかるな馬鹿」

 

カズサがペロロの胸ぐらを掴んで八つ当たり気味にブンブンと揺さぶるのをレンゲが諌める。

首根っこを掴まれ借りてきた猫のように脱力するカズサを片手に、レンゲは去年の交流会の話を思い返していた。

 

「去年はな〜…プレ先の解放前だったからクロコの強さもずば抜けてたし、圧勝だったらしいな。私は直接見てないけどな」

「むぅ…クロコ先輩ねぇ…」

「…お、来たな」

 

一同が和気藹々としたやり取りをしていた所に、停留所の前に1台のバスが止まった。

バスの扉が開くと、次々と百鬼夜行支部の面々が降車してくる。

 

 

 

「S.C.H.A.L.Eの連中…わざわざお迎えなんて暇なんだね?」

「開口一番煽ることしか出来ねぇのかよ、キキョウ」

 

バスを降りて早々、以前とS.C.H.A.L.Eに来た時と同じように憎まれ口を叩く猫耳の少女に早くもレンゲは空気をピリつかせた。

 

───百鬼夜行支部二年、桐生キキョウ

 

 

 

「…クロコいないじゃない」

「まだ出張で立て込んでいるらしい。許してやってくれ」

 

結局来なかったクロロに苛立つ青い髪と尖った耳を持つ少女に、ペロロが代わりに詫びを告げる。

 

───百鬼夜行支部三年、扇喜アオイ

 

 

「そこの、前はよくもやってくれたわね。今度こそ財布置いてくか百鬼夜行のスイーツの土産奢ってもらうから」

「デモ」

「交流会前に腹を空かせて来るんじゃない」

 

(何あの一年…怖っ…)

 

ガラの悪い雰囲気を纏うカズサに軽くビビりつつ、既に帰りたいと思い始めている左右に伸びた大きな角が特徴的な少女。

 

───百鬼夜行支部三年、愛清フウカ

 

 

「クロコがいないのは良いとして、一年2人はハンデが過ぎるんじゃないか?」

「…いや被ってる被ってる!キャラほぼ一緒!良いのペロロ先輩!?ロボか着ぐるみかの違いしかないじゃん!」

「ああ、私の宿敵だ」

 

ペロロとほぼ同じ造形をしたメカメカしい存在に耐えきれなくなりカズサはツッコミ、ペロロも鋭い目(?)でそれを睨む。

 

───百鬼夜行支部二年、究極(アルティメット)メカペロロ

 

 

「キキキッ、特異現象捜査部で活動する以上歳など関係ないだろう?むしろ自ら勝ちを譲ってくれる事に感謝しようではないか!」

「うわっ、出たわね…」

 

S.C.H.A.L.Eの面々を見下すように、小馬鹿にするように笑う大きな4本の角が特徴的な少女に思わずヒナは苦い顔をした。

 

───百鬼夜行支部三年、羽沼マコト

 

 

「キキッ、その目はなんだヒナ?貴様の醜い血筋については把握しているぞ?この由緒正しきゲヘナの議長の血を引くこの私に対して失礼では無いか?身の程を弁えるといい」

「じゃあなんで百鬼夜行に行ってんのよ。そこはゲヘナの支部じゃないの?」

「…」

「…あ?なんだキキョウ」

「別に」

 

「み、皆さん落ち着いてください〜…仲良くしましょうよ〜…」

 

迎合直ぐに一触即発の雰囲気になり兼ねている現状を見かねた平凡な雰囲気の少女が場を宥めようと声を上げる。

 

───百鬼夜行支部二年、阿慈谷ヒフミ

 

 

「そこまでにしなさい。内輪で喧嘩をするとは…はぁ、全くあなた達は…」

 

続いてバスを降りてきたキツネの耳を持つ和装の女性はいつにも増してS.C.H.A.L.Eの生徒達に喧嘩腰な自分の後輩達にため息を吐く。

 

───百鬼夜行支部監督官、引率、桑上カホ

 

 

「…それで、あの馬鹿は?」

「ホシノ先輩なら遅刻だ」

「馬鹿が時間通りに来るわけないでしょ」

「誰も馬鹿がホシノ先輩とは言ってないですよ」

 

 

「うへ〜…待たせたね〜」

 

自分のいない所で散々に言われるホシノ…ということも無く、既にすぐ側まで来ていたホシノは後輩達からの容赦ない罵倒が耳に届き若干凹みながらも、手押し車に乗せた大きな箱を持って現れた。

 

「チッ、小鳥遊ホシノ…」

(うわぁ…!また小鳥遊ホシノ先輩を生で見れましたぁ…!)

 

「やあやあ皆お揃いで〜。実はおじさんついこの間までレッドウィンターに言っててさ〜。お土産持ってきたんだよ。というわけでこれから配るね〜」

「唐突過ぎない?」

「時差ボケかなんかでしょう、一々気にしてたら身が持たないわよ」

 

「はい、百鬼夜行支部の皆にはこれ。アングリーアデリー人形」

 

大きな箱の上に載せていたペンギンのような何かちょっと違うような、そんなよく分からない人形を渡された百鬼夜行支部の面々は目を輝かせるヒフミ以外は微妙な表情を浮かべる。

 

「あ、カホちゃんのは無いよ」

「要りませんが!?」

「S.C.H.A.L.Eの皆へのお土産は〜…これだよ〜!」

「テンション高。キモッ」

「ヒナはホシノ先輩にはやたら辛辣だよね…」

 

そんな彼女達を尻目にホシノは今度はS.C.H.A.L.Eの面々に向き直ると、荷車に載せていた大きな箱の蓋に手をかけた。

 

 

 

 

「故人の、天童アリスちゃんで〜す!」

 

「わ、わっぴーーー!」

 

 

 

 

「「「「「…」」」」」

 

「…あれ?」

 

場が静まり返る。

ヒナとカズサはドン引きしたような表情を浮かべ、二年組も真顔で特にリアクションは無し。

百鬼夜行支部の面々に至ってはホシノに配られた人形を何処に仕舞うか、或いは捨てるのかを気にしていてアリスには目を向けてすらいなかった。

 

 

 

「なっ…!」

 

が、最後にS.C.H.A.L.Eの部長であるヒマリと共にバスを降りてきた長い黒髪と黒い装いが特徴的な女性は、アリスの姿を見て驚愕に目を見開く。

 

───百鬼夜行支部部長、調月リオ

 

「ちょっと待ってちょうだい!Keyの器がなんで…!」

「あら、下水道に相応しい表情ですね、リオ」

「やぁ、リオ部長。良かったよ〜、びっくりしてぎっくり腰にでもなるんじゃないかって事だけが事前の懸念でさぁ」

「…小鳥遊、ホシノ…!」

 

バチバチと視線の間に火花を散らすホシノとリオはさておいて…箱の中に引っこもうとしたアリスを引っ張り出したカズサは、ヒナと共に目尻に涙を浮かべながらアリスを問い詰めていた。

 

 

「…」

「アリス、なんか言うことあるよね?」

「んんっ…その…生きていることを黙っていてすみませんでした…」

 

 

───天童アリス、合流

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

2日間に渡って開催されるS.C.H.A.L.Eと百鬼夜行支部の交流会。

その1日目に行われる団体戦。

その競技内容───”チキチキ特異体討伐猛レース”

 

ネーミングセンスから誰が考えた種目なのかよく分かる競技だが、ルールは単純なもの。

指定された区画…今回は立ち入りが禁止されているS.C.H.A.L.E管轄内の廃墟街…に解き放たれた二級相当の特異体を先に鎮めたチームの勝利となる。

区画内には3級以下の特異体も放たれており、日没までに決着が着かなかった場合は鎮めた特異体の数が多いチームに軍配が上がる。

それ以外に特にルールはなく妨害も可能だが、あくまで共に戦う仲間、交流会は競い合いの中で仲間を知り己を知り高め合うための場…殺し合う必要は無い。

 

 

「…ということで、理解出来ましたか?」

「うへ〜…ヒマリ、ぶちょっ…手心…」

 

 

競技の説明を終えたヒマリは、ホシノをぐるぐる巻きにしている付き添いのロボットのアームをより締め上げさせて反省を促す。

その様子を見てカホがほくそ笑んだりもしたが、気にせず進行し、ルールを生徒全員が理解したことを確認して開始時刻の正午までは一度解散することとなった。

 

 

 

S.C.H.A.L.E側がミーティングに使う廃墟で、アリスは正座をさせられ遺影用の額縁を顔の前に掲げるというなんとも言えない反省をさせられていた。

 

「うわーん!かなりハードないじめに見えます!」

「当分はそうしてなよ…まったく」

 

「事情は説明されただろう?許してやってもいいんじゃないか?」

「なんですかこのキモイ着ぐるみは!?」

「言うなアリス、私も思ったけどもう考えるだけ無駄なんだって」

 

「デモデモ」

「本当になんなんですか!?」

 

「ミノリ先輩は言霊使いなのよ。意味を孕む言葉を実現、強制する秘儀。安全を考慮して語彙を絞ってるの」

「では、死ねと言えば相手は死ぬのですか?ザラキとか使えるんですか?」

「ミノリのはそんな便利なものじゃない。実力差で効果も変わるんだ。強い言葉を使えばその分反動も大きく、最悪自分に跳ね返ってくる。語彙を絞るのは自分を守る為でもある」

「なるほど…では何故着ぐるみなんですか?」

 

「人の秘儀をペラペラと…」

「いいんだよ。ミノリのはそういう次元じゃないからな」

 

頑なに説明されないペロロのことにカズサとアリスはヤキモキとするが、そんな中用事を思い出したレンゲはアリスの前まで行くと手を差し出す。

 

「…?なんでしょうか?」

「なんでしょうじゃねぇ、前にホシノ先輩から弾に神秘込める銃借りただろ?あれ私のだから返せよ」

「…あ〜」

 

 

確かカズサと共に廃墟に潜入した時にそんなものを借りた事を思い出したアリスだったが…確かあの銃は壁を壊すために一度置いて、壁を壊した後は回収することなく特異体を鎮めてそのまま帰り…

 

「…ホシノ先輩が持ってます…」

「チッ、あのぐうたら馬鹿…」

(日和った〜…素直になくしたって言えば良いのに…)

 

ホシノに責任を押し付けるアリスに一連の様子を見ていたカズサが内心呆れ返る。

 

 

 

一方その頃ホシノはくしゃみをしており、いい加減風邪でも引いてしまったのではないかと自分で心配を始めていた。

 

 

 

「で、どうする?団体戦形式は予想通りとしてメンバーが増えちまった。作戦変更するか?時間はないけど…」

「プロレタリア」

「当然アリス次第だ。何ができるんだ?」

「はい!アリスは殴ります!」

「間に合ってる」

「えぇ!?」

 

今回アリスはレールガンの使用に当たり、最悪相手を殺しかねない事からレールガンに神秘を込める事を禁止されている。

神秘の強いもの同士の戦いで攻撃に神秘を込めるか否かというのは大きな問題であり、幾らレールガンそのものの火力が極まっていても神秘を込める事が出来なければ強い神秘を持つ相手には有効打になりにくいのだ。

故に神秘を使うならば必然的に肉弾戦に混ぜるしか無いのだが…遺物を使った格闘を得意とする者が既にいる以上アリスは役割被りと言える。

しかし気を落とすアリスに歩み寄ったヒナはアリスの肩をポンと叩いた。

 

「アリスが死んでる間何をしてたのかは知らないけれど、S.C.H.A.L.Eとも百鬼夜行支部とも、神秘無しで戦ったらアリスが勝つわよ」

「…ほう?」

(扇喜とやりあったヒナが言うんだから信憑性はある。面白ぇな)

「ヒナ…!」

 

ヒナからの擁護に一転してアリスに興味を寄せるレンゲ達は、それならばと新たに作戦を立て始めるのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

百鬼夜行支部のミーティング場である廃墟。

そこで生徒達を集めたリオは、冷酷に言い放った。

 

「天童アリスを殺しなさい。あれはKeyの器、人じゃない。全て事故として処理するし、何かあっても責任は私が持つ。遠慮も躊躇も必要ないわ」

(嫌だなぁ…)

(帰りたい…)

 

簡単なことのように言われる抹殺命令にヒフミとフウカは既に鬱蒼としてきていたが、それ以外の者は特に反対意見を上げるでもなくただ質問をする。

 

「殺すも何も、死なないからあの子ここにいるんでしょ?」

「先に天童アリスが死んだ時は自死だと聞いているわ。敵対する生徒にトドメを刺す時気を付けなければ行けないことは分かるかしら?マコト」

「キキキッ、簡単な事だ。死後特異現象に転ずる事を防ぐ為に神秘で殺す、だろう?この私を舐めてもらっては困る」

「その通り、他者の神秘でしっかりとトドメをさせば問題ない。現在肉体の主導権は天童アリスにある。Keyが出てこなければ所詮ただの一年生、くびるのは…」

 

「くだらないわね」

 

廃墟の扉が乱雑に蹴破られる。

皆の注目が集まる中、それを行ったアオイはリオの話を聞き届けることも無くその場を去ろうとする。

 

「待て、アオイ。リオ部長が話している最中だろう?この程度の話にも集中出来んとはやはりこのマコト様の方が上…」

「この後11時からリン行政官の記者会見の中継があるのよ。これ以上説明がいるかしら?」

「…録画をしろ録画を」

「リアタイと録画両方見んのよ、舐めてるの?」

 

(…???)

「良いかしら貴女達」

 

あまりの理解不能さにマコトがフリーズする。

それを気にするでもなくアオイは一同を指差すと、不機嫌な口調で淡々と言う。

 

「女の趣味がつまらない貴女達にはとうの昔に失望しているわ。謀略、策略大いに結構、勝手にやればいい。だけど…次私に指図したら殺すわよ」

 

 

 

 

 

アオイ、そしてリオも退室した後に残った百鬼夜行支部。

ヒフミが代わって主導となり話を進めることになった。

 

「えっと…どうしましょう…?あの様子じゃ作戦行動なんてとても…リオ部長も行ってしまいましたし、私アオイ先輩に殺されたくは無いんですが…」

「…もう何でもいいんじゃない…?どうせアオイ先輩ならS.C.H.A.L.E陣営にまっしぐらでしょうし、好き勝手暴れさせておけば私達もゲームに集中出来るんじゃないの…?…はぁ、もうやだ…帰りたい…」

「けど、私達は天童アリスを殺さなきゃでしょ?」

「本当にやるの!?」

「そうですよ!殺しなんて…」

 

「だがアイツの事だ、殺しまではしないだろう。やりそうではあるがな」

「となるとアオイに監視が必要なんじゃないか?それに、天童アリスにトドメを刺す役もいる」

「キキッ、お前がやるか?メカペロロ」

「そんなお前はどうなんだ、マコト」

 

「も、もう!私達まで内輪揉めしてどうするんですか!」

 

人の生死が絡む事態に百鬼夜行支部側でもギスギスとした空気が広がるが、ヒフミの一声により何とか一同気を取り直す。

場が落ち着いた所で策を思い付いたのか、マコトが手を挙げた。

 

「ではこうしよう!同じ特異現象捜査部に天童アリスのような半端者がいるのは不愉快だ。交流会以前の問題、このマコト様が見過ごす訳にはいかない。私達全員で天童アリスを襲撃するぞ!」

「ちょっと待ちなさいよ!アリスとミノリが一緒にいたらどうするの!?言霊使いに雁首揃えるのはリスクが高すぎるでしょ!?」

「フウカの言う通りだマコト。早計じゃないか?」

「なぁに、あれは来ると分かっていればそう怖いものではない」

「じゃあレンゲは私に抑えさせて。出来ればあっちの一年の猫も」

「キキッ、貴様のそれはアオイと同レベルではないか?」

「は?」

 

百鬼夜行支部側もまた作戦を纏め、天童アリスの抹殺に向けて動き出す。

 

 

 

 

 

 

「それで、話とはなんですか?」

「ん?なんか怒ってない?」

 

観戦用の部屋に一足先に訪れたホシノと、ホシノに呼ばれて来たカホ。

何事かと聞こうとしたカホだったが、その声が明らかに不機嫌なものだったのでホシノは首を傾げた。

 

「別に怒ってなどいません」

「だよね〜、おじさん何も悪いことしてないし」

「こいつ…!」

 

 

「特異現象捜査部にアウトローと通じてる子がいる」

「…なんですって!?」

「最近ゴロゴロ出てくるんだよね、特級相当はあるアウトローが。徒党を組んで、計画を立てて、確実に何かを狙ってる」

「…」

 

以前の強襲を受けた時のアウトロー、そしてアリスがトリニティで交戦したというアウトローを思い出しながら、普段のおちゃらけた様子とは別人のような真剣なトーンにカホも深刻な表情で話を頭の中で整理する。

 

「それで、カホちゃんには百鬼夜行の方の調査お願いしたいんだよね〜」 「…私がその内通者だったらどうする気だ?」

「ないない、カホちゃん弱いしそんな度胸もないでしょ〜?」

「ふんっ!」

 

真面目な話だと言うのにここぞとばかりに煽ってきたホシノにカホはお茶をぶっかけるが、なんでもないかのように避けたホシノはにへらと笑った。

 

「行儀の悪い子はモテないんだよ〜?」

「私の方が先輩なんですが!?」

 

 

 

 

 

 

 

競技の開始場所に向かう最中、準備体操をしているアリスに近付いたヒナは小声で話しかける。

 

「アリス、大丈夫?」

「うん?…はい!大役を任されましたが、やれるだけ頑張ります!」

「そうじゃなくて、何かあったんじゃないの?」

「いえ、別に…」

「…」

「…そうですね。何も無いと言えば嘘になります。ですが、本当にアリスは大丈夫です。むしろそのお陰で負けたくないと、そう思えました」

 

 

「…なら良いわ。私も割と負けたくないから」

 

「何が割と?思いっきりぶっ転がされてたんだし、コテンパンにしてやれば良いじゃん」

 

前を歩いていたカズサにも話が聞こえてしまったのか、振り返るなりそう焚き付けてくるカズサにヒナとアリスは苦笑する。

 

「目指すは圧勝だよ、レンゲ先輩の為に!」

「そういうのやめろ」

「労働」

「ああ、レンゲの為だ」

「だからそういうのやめろ」

 

S.C.H.A.L.E側一同が開始位置に着くと、戦闘に立つアリスが音頭を取る。

 

「それでは、勝ちに行きましょう!」

 

 

 

 

「なんでお前が仕切ってんだよ」

「うわーん!締まりません!」




配役
西宮…フウカ
加茂…マコト
メカ丸…メカペロロ?
歌姫…カホ
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