ブルア廻戦   作:天翼project

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今回はアニメ15話までの範囲でお送りします


百鬼夜行支部交流会─団体戦 壱─

 

「開始1分前だよ〜。というわけで始める前にカホちゃんからのありがたーいお言葉があるからしっかり聞いてね」

「え!?私!?」

 

特異現象捜査部、S.C.H.A.L.Eと百鬼夜行支部による交流会1日目。

舞台となる普段立ち入りが禁止されているS.C.H.A.L.E管轄の廃墟街で、各チームが開始地点に到着したのを確認すると、ホシノは通達用のスピーカーをオンにしておもむろに共に観戦しているカホに話を振った。

 

「え、えっと…ある程度の怪我は仕方ないですが、その…時々は助け合い的なあれとか…」

「はい終了、時間だよ〜。皆位置について〜」

「いい加減にしてください小鳥遊!」

 

 

 

『それじゃあ、交流会団体戦スタート!』

『先輩を敬いなさい!』

 

「…ボチボチ始めるわよ」

「はい!アリス、頑張ります!」

「さっさと終わらせよー」

 

スピーカーから流れる開始の合図を皮切りに、各チームが一斉に廃墟街へと駆け出した。

S.C.H.A.L.Eチームは廃墟街の北側から、百鬼夜行支部チームは南側からスタートし、廃墟街のどこかに潜む2級の特異体を狙うという今回の競技だが…百鬼夜行支部チームはそれとはまた別の目的の為に行動する。

 

「アオイどこだ?」

「私に言われても分かるわけないでしょ」

「チッ、分かってはいたがやはり独断専行か。面倒な奴め」

「ですから皆さん仲良くしましょうよ〜…」

(帰りたい…)

 

既にまとまりのない百鬼夜行支部に対して、今は全員で密集し行動するS.C.H.A.L.Eチームはヒナが式神を先行させ、それに追従する形で廃墟街を駆ける。

 

「ボスの特異体はどこにいるのでしょうか?」

「放たれたのはお互いのスタート地点の中間だろう。だが特異体、じっとしている筈がない」

「例のタイミングで別れたら索敵に長けたペロロの班とヒナの班に別れる。その後は頼んだぞ、アリス」

「了解しました!」

 

「…いたわよ」

 

移動しながら最終確認をしていた一同、そんな中ヒナは標的では無い方の特異体を先行させていた式神…黒の玉犬が補足した事…そして厄介な相手が来ていることを察知する。

 

「お、見えたな。あれは雑魚の方か」

「いや…散らばりなさい!」

「!」

 

銃を構え処理しようとしていたレンゲを呼び止めたヒナは玉犬を呼び戻して横道に逸れ、アリス以外の他の者もそれに倣って廃墟の中や路地裏に身を隠した。

そこまでヒナ達が警戒する相手となると…今回の交流会には1人しか存在しない。

 

 

「はあぁぁ!」

 

蜘蛛のような特異体を、どこからか振ってきたアオイが着地の勢いで踏み潰して鎮める。

その衝撃によりコンクリートで舗装された地面がひび割れ、半径10m程にかけて亀裂が広がった。

 

「ふん…1、2…6人全員近くにいるわね。さあ、かかってきなさい!」

 

一瞬で周囲に隠れた全員の数と位置を気配のみで把握したアオイは懐から銃…取り回しの良いハンドガンを取り出し、臨戦態勢を取った。

それに対して───アリス以外は全員その場を離脱し、残ったアリスは全速力でアオイに飛びかかると顔面へ向けて膝蹴りを放つ。

 

「…っ、良いパワーね!」

「うぇっ!?」

 

常人のそれを遥かに超えたアリスの膂力から繰り出される一撃は大抵の者ならば一発でノックアウト出来るほどに強力なものだが、多少仰け反っただけで直ぐに持ち直したアオイはアリスの胸ぐらを掴むと、そのまま放り投げて引き離す。

 

アオイの相手をアリスに任せた他5人はヒナとレンゲ、ペロロとミノリとカズサの二班に別れ各自行動を開始する。

 

「アオイ1人だったわね」

「やっぱりアリスに変えて正解だったな」

 

 

「分かっては居たけどやっぱり化け物じゃん…」

「ああ、だから今は無視だ」

「ストライキ」

 

 

 

アオイに投げられたアリスは器用に身体をバネのように使ってバク転を交えてなんとか着地すると、アオイに飛びかかる前に置いていたレールガンを回収し構える。

アオイもまた上着を脱いでノースリーブのインナー姿になると、好戦的に笑ってアリスを見据えた。

 

(相手は格上…アリスにどれだけ粘れるでしょうか…)

 

アオイを足止めする役を担うことになったアリスは先程のミーティングの時の話を思い返す。

 

 

 

 

 

『アオイは確実に私達を直接潰しに来る。キキョウも私狙いで便乗してくるかもな…アオイは化け物だ。全員で相手にして全滅するのが最悪のパターン。だからペロロかヒナに足止めさせるつもりだったが…アリス、お前に任せる』

『アリスが、ですか?』

『索敵出来る奴減らしたくないしな。別に勝つ必要は無い。出来るだけ粘って時間を潰せ』

『だがアオイの性格ならばあまり消極的に挑んでいると相手をして貰えなくなる可能性がある。やるなら積極的に、常に攻め続けるんだ』

『はい、分かりました!レンゲ先輩!ペロロ先輩!』

『…すまない、ヒナ。お前が相手したかったのだろう』

『いいわよ、別に。どっちでも良かったわ』

『ん、そうか?』

 

『ですが、先輩』

『『?』』

 

『やるからには、アリスは勝ちたいです!』

 

 

 

 

 

「う、ぐっ…!」

「良い反応ね、スピードも申し分ない」

 

アリスはアオイの想像を遥かに上回る格闘戦においての手強さに防戦一方となり、反撃しようにも隙を潰すように撃ってくるハンドガンで上手いこと牽制され、攻め手を入れ替えられずにいた。

 

(なんでさっき思いっ切り入ったのにピンピンしてるんですか…!)

「そろそろ温まってきたわね。それじゃあさっきよお返し行くわよ、死ぬ気で受けなさい!」

「っ!」

 

アオイはハンドガンを左手に持ち替えると、右腕を振りかぶり…地面が割れるほどの踏み込みでアリスへ肉薄し、移動の勢いに乗せて拳を振り抜いた。

咄嗟にレールガンを盾にしてガードしたアリスだったが、アオイの華奢な見た目からは想像出来ない拳の破壊力によって軽く吹っ飛ばされ、廃墟の壁に突っ込んで室内まで突き抜ける。

 

(いっ…死んだかと、思いました…腕ありますよねこれ…?)

「もう終わりかしら?」

「ぐっ…!?」

 

顔を上げると音もなくいつの間にか目の前に立っていたアオイにレールガンを向けようとするが、レールガンを持っていた腕を蹴られ取り落としてしまう。

なんとか立ち上がり殴りかかろうとしても鳩尾にアオイの拳が突き刺さり、顎下を蹴り上げられ、ヤクザ蹴りで胸を蹴り飛ばされて背中を壁に打ち付ける。

さらに壁を背にしてへたりこんだアリスに容赦なくアオイの靴のヒールが顔面に叩き込まれ、アリスは身体をぐったりとさせた。

 

「…そう、もう終わりなのね」

 

頭から血を流し顔を真っ赤に濡らすアリスを見て攻撃を止めたアオイは、失望したように呟くと二手に分かれて離脱した面々の方向を探り始める。

 

「どっちを追いましょうか…あら?」

「ふっ…!」

 

が、急に飛び起きたアリスの蹴りを腕で受け止めるも手の痺れを感じ、後ろに跳び退いてアリスから距離をとる。

アリスは顔にべっとりと流れる血を服の袖で拭い、依然戦意を衰えさせる事無くアオイを睨みつけた。

 

「ただでさえ…この間ホシノ先輩にクソゲーばかりをやらされて脳破壊されているのです!これ以上頭がおかしくなっては堪りません!」

「心配する必要は無いわ。リンちゃんは多少頭おかしいぐらいがキヴォトスでは普通のことだと言い切っていたわよ」

「誰ですか、行政官に興味なんてありません!」

「なんで行政官って分かるのよ知ってるんじゃない」

 

自分に対してここまで生意気な相手も久々だと、アオイはハンドガンのマガジンを入れ替えてリロードし再度アリスに向き合い、アリスもまたレールガンを拾って構える。

 

「…時に、貴女名前は?」

「天童アリス、一年生です!」

「そう、天童アリス。貴女に聞きたいことがあるわ」

 

そう言って無駄に溜めの時間を作ったアオイは、一度銃を降ろして問いかけた。

 

 

 

 

「どんな女がタイプかしら?」

「…?何故そんなことを…?」

「気にする必要は無いわ。品定めみたいなものよ」

 

勿論突然そんな質問をされてアリスは困惑し、せっかく高まっていた緊張感が解けてしまう。

しかし答えなければ向こうも付き合ってくれないだろうと判断し、アリスは自分なりに返答を模索する。

 

(タイプ…?好み、憧れという事でしょうか?アリスにとって尊敬する人は…ここ最近出会った中だと…直接名前を言うのは気恥しいですね。でしたら…)

「(自分より)背が高くて、(ふともも等)お尻周りが大きい女性、でしょうか?」

「はっ!」

 

ユウカの名前を挙げるのもなんだと思い若干ぼかしたアリスだったが、その答えが琴線に触れたアオイは雷に撃たれたようなショックを受け、天井…に遮られた天を仰ぐ。

 

そしてアオイの脳内に溢れ出す────()()()()()()()

 

 

 

 

 

 

 

『これ、新作が凄い面白いんですよ!』

『へえ?』

 

青空の校舎の屋上で、アオイとアリスは談笑に花を咲かせる。

いつもの風景、いつもの青春。

共に過ごした青い春。

 

 

校内の廊下を並んで歩いていた時、アオイは足を止めると意を決してアリスに伝えた。

 

『アリス…私、リンちゃんに告白しようと思うわ』

『…えぇ!?やめておいた方がいいですって!アリスはアオイを慰めるのは嫌ですよ!面倒臭いですから!』

『なんでフラれる前提なのよ』

『逆に何故OK貰えると思ってるんですか…』

『彼の独裁者チェリノは言ったわ。”例え全てが虚しい事だとしても、それは努力をしない理由にはならない”、と』

『あの人絶対そんな事言わないと思います』

 

 

校庭の桜の木の下で、想いを告げたアオイ。

それを受け取ったリンは、目の前でラブレターを破り捨てるとアオイに背を向けて立ち去る。

 

『ごめんなさい。私、好きな人がいるの』

 

 

『…好きな人が私ってパターンはないかしら?』

『絶対にありません』

『そうよね…』

『…アオイ』

 

俯くアオイだったが、朗らかな声に顔を上げると、アリスがアオイへ手を伸ばしていた。

 

『一緒にゲームセンターへ行きましょう。プレイ料金は今回はアリスが奢ります。容赦はしませんよ?』

『…ええ、望むところよ』

 

 

いつもの風景、いつもの青春。

少しの苦味もたまには良いエッセンス。

アオイとアリスは、肩を組んで夕焼けの通学路を共に歩いた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「地元じゃ負け知らず、ね。どうやら私達は、親友だったようだわ…」

「今名前聞いたばかりですよね!?」

 

とことん訳の分からないアオイに振り回されるばかりのアリスだったが…建物の外に気配を感じ取り、アオイが固まっている間に窓から外の様子を伺うと、上空に百鬼夜行支部の生徒の1人…愛清フウカが箒に乗って地上を見下ろしていた。

 

 

「いたわよ…そのまま真っ直ぐ、ええ。でも、本当にやるの…?」

『キキッ、問題ないさ。勝手にしろと言ったのはアイツの方だからな』

 

 

 

(2、4…向かいに狙撃手…!)

 

「…外した。この距離で気付くんだ…?」

 

 

離れた廃ビルの高層階からのキキョウの狙撃を間一髪で回避したアリスだったが、立て続けにロープを使って振り子のようにして窓を突き破り突入してきた平凡な装いの少女…阿慈谷ヒフミの奇襲を躱し、一旦この廃墟から脱出する為に窓の前に陣取るヒフミの方へと駆ける。

 

「き、来ますよね〜!?ええい…!」

(シン・陰流…簡易領域!)

 

ヴゥン!とヒフミの周囲に半径12.3mの円が広がる。

それは間合いに入った瞬間に相手を神秘で感知し脊髄反射による反応で照準を合わせて銃撃を必中させる早撃ち技術…なのだが、感知範囲に入ったアリスはレールガンの銃身をヒフミとアリスとの間に構える事で銃撃を全て防いだ。

 

(なんですかあの武器…!?あんな大きくて頑丈な武装どこで手に入るものなんです!?)

 

ヒフミを振り切り廃墟から抜け出したアリスだったが、複数の方向から向けられる突き刺さるような敵意と害意に冷や汗をかいて辺りを見回す。

先程とは位置を変えてキキョウが、さっきまでアリスがいた廃墟の上からマコトが、今出てきた窓からヒフミが、真上から箒に乗り見下ろすフウカが、前方の建物の陰からメカペロロが。

完全にアリスは包囲され、そして全員から向けられる感覚の正体を悟る。

 

(これって…もしかしなくとも、アリスは命を狙われてますよね?)

 

交流会のルールを明らかに無視した百鬼夜行支部の者達による殺意を一身に受けてどうすればいいのか迷い…その隙を有難く突かせてもらおうとマコトが引き金を引こうとして───

 

 

 

 

パンッ!

 

 

 

銃声とは違う乾いた音が鳴り響くと、いつの間にかマコトが一同の包囲を受けるような位置…地上に下ろされ、アリスはつい先程までマコトが配置していた廃墟の屋上にいた。

 

(今の入れ替え…天童アリス…じゃないな。アオイか…)

 

「言ったわよね、”邪魔したら殺す^って」

「…キキッ、どうやら貴様は記憶力すらまともに機能しなくなったようだな。貴様が言ったのは”指図をしたら殺す”だ。私達が責められる道理など何一つないだろう?」

「同じことよ、消えなさい」

「…い、今はこの場を収めてやろう。だがいつかどちらが上かを分からせてやるからな!覚えておけ!」

 

マコトが適当な廃墟に駆け込んでどこかへ離脱したのを確認すると、他の者も銃を下ろしたり殺意を取り下げて撤収の準備を始めた。

 

「なんだマコト逃げたのか」

「ダッサ」

『はぁ…もう本当に面倒なのだけど…まだ帰っちゃ駄目なの?』

「フウカは上から索敵して連絡寄越してればいいよ。あ、レンゲ見つけたら教えて」

「あはは…失礼します〜…」

 

マコトが撤退したのに合わせ他の者もこの場を離れ、競技の方に戻っていく。

残ったアオイは全員いなくなったのを確かめると、瞳を爛々と輝かせてアリスを見やる。

先程よりさらに重くなったアオイからのプレッシャーに気圧されかけたアリスだが、一度深呼吸をして気を取り直し、レールガンを構えた。

 

「行きます!」

「私は親友に手加減するような野暮な女じゃないわ。だから…貴女も本気で来なさい!」

 

 

 

 

 

 

「だから放っておけば良かったのに結局ぐだぐだだし…」

 

箒に乗ってそれからの探索を続けるフウカは、百鬼夜行支部チームの位置と確認できた特異体の位置をモモトークや電話で伝達する戦場の目として動いていた。

空を飛べる秘儀というだけで索敵に大きなアドバンテージがあり、故に自分が頑張るほど早く終わるのだとフウカも気合いを入れる。

 

「皆世話が焼けるわね…早く帰ってお料理したいし、頑張れ私」

 

 

 

 

「落としなさい」

 

 

 

「えっ…?いやっ…!?」

 

そこに、高速で飛来した大きな鳥のような式神…ヒナの操る鵺が雷撃を纏ってフウカに襲いかかった。

すんでのところで直撃は回避したが、鵺の翼が箒を掠め、箒を伝って流れた電流が僅かながらもフウカの全身を麻痺させる。

鵺の飛来による風圧に煽られたのもあり体勢を保てなくなったフウカは地上へと落下し、廃墟の屋上に墜落した。

 

「いっ…てて…うん…?」

 

軽く頭を打ち後頭部を撫で擦るフウカだったが、人の気配を感じて地上を見下ろすと…

 

 

「フウカ〜、あ〜そ〜ぼ〜」

「よろしく頼む」

 

「…うっわぁ」

 

ガラの悪い笑みを浮かべるカズサと表情の読めないペロロが待ち構えており、心底帰りたいと思うのだった。

 

 

 

 

 

「…メカペロロ。フウカのカバーをしてやれ。あいつが居ないと流石に困る」

「了解した」

 

アリスへの襲撃から離脱後、合流した百鬼夜行支部。

鵺によってフウカが撃ち落とされたのを目視したマコトは、代わりにチームへ指示を出す。

承諾したメカペロロはフウカが落ちていった方へ向かった。

さて、これからどう動くか…そう考えていたマコトだったが…移動中、廃墟街のとある路地の真横を抜けた時に薄暗い路地の奥に見えた微かな光を見てキキョウとヒフミを担ぎ上げて急停止する。

突然なんのつもりかとキキョウがマコトを問い詰めようとしたが…次の瞬間、進路の先で大爆発が起こり、爆炎が一行の目の前まで迫る。

ギリギリ範囲外だったが、マコトが止めていなければ全員今の爆発で巻き込まれていただろう。

 

「…キキッ、今のトラップはミノリか?相変わらず派手な爆発が好きな奴だな。そう思わないか?ヒナ」

「あの人趣味で工務とか解体業やってるしね。お手製の爆弾だって作れるのは少し羨ましい器用さだわ」

「キキキッ!おい、他の奴らはお前達でやれ!」

「え!?マコトさ〜ん!?」

 

ヒナが先程通り過ぎた路地から姿を現す。

キキョウとヒフミを雑に下ろしたマコトは他の者に目をくれずヒナへと挑みかかった。

止めようとしたヒフミだったが、足元に銃撃が撃ち込まれてその足を止める。

見上げれば、すぐ横の廃墟の屋上からレンゲが目の前へと飛び降りた。

 

「お前の相手は私だ!」

「ひ、ひぃ…」

 

「レンゲ…!いや、今はまだ…」

 

レンゲが現れた途端に敵意を剥き出しにしたキキョウだったが、狙撃手である自分がこの距離で戦うのは無理だと一旦レンゲの相手をヒフミに任せてそこを離れる。

そうして、各々交戦を開始した。

 

 

「マコト…あんた達、アリスを殺そうとしてるわよね?」

「…キキッ」

 

 

 

 

 

少し時を遡り───

 

 

アリスと別れた後、百鬼夜行支部チームの動きが無いことに痺れを切らしたS.C.H.A.L.Eチームは、違和感を感じ一度足を止めていた。

 

「変よね。気配からしてあいつら全員固まって行動してるわ」

「アリスと別れた辺りだな。目標の特異体があそこにいたのだろうか?」

「2級ならよほど狡猾でもない限り玉犬が気付くわよ。あいつら…まさかアリスにちょっかいかける気じゃないでしょうね?」

「はぁ?何それ、意味わかんない」

「…有り得るな」

「闘争」

「確かに連中からはそこまでの敵意を感じなかったが、それはアリスが現れる前の話だ。リオ部長からの指示ならば有り得る」

「…他人の指示で人を殺すような腑抜けの集まりなわけ?百鬼夜行支部は」

「いや認識が違う。お前達は普段からアリスと共に過ごしているからともかく、そして実際にアリスと対話した私達はともかく。アリスを知らない者からすればKeyの器という恐怖の対象でしかないのだろう。特異体を鎮めるのとそう変わらない。ただでさえ特異現象捜査部で活動していればその辺の認識がボケるものだからな」

「…何それ」

 

ペロロによる認識の相違の話に、カズサは苛立ちを露わにして歯噛みする。

そんな後輩の様子を見たレンゲは頭を搔くと、元来た道の方へ向き直った。

 

「…レンゲ先輩?」

「戻るぞヒナ」

「…悪いわね」

「なあに、仲間が死んだら交流会に勝ちも負けもないだろうが」

 

先にヒナとレンゲが引き返し、アリスの援護えと向かう。

そしてカズサに続いてミノリもアリスの元へ向かおうとするが…それをペロロが呼び止めた。

 

「待て。私とカズサが戻ってアリスの安否を確認しに行く。電話をかけても繋がらないからな…ミノリは特異体の処理を続けて、こちらの合図で仕込んだトラップを起動させてくれ」

「ストライキ!」

「心配なのは分かるが…私が思うに百鬼夜行支部の連中がやろうとしているのは団体戦に紛れたアリスの暗殺。団体戦が終わればその余地も無くなるだろう」

「なるほどね」

「…デモ」

 

納得したミノリは廃墟街の探索に戻り、残ったカズサとペロロも道を引き返す。

その道中、上空の鵺がフウカを撃墜したのを確認した2人は、先に厄介な索敵役であるフウカを追撃しに向かったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「マコト…あんた達、アリスを殺そうとしてるわよね?」

「…キキッ、そうだと言ったら?」

「失敗したのね。アリスがこの短時間でやられる訳が無いし」

「随分信頼しているようだな?が、私達にあれを殺す理由があるとでも?」

「あるでしょ、幾らでもね」

 

百鬼夜行支部チームの狙いを破綻させる為に、ヒナは相手側の司令塔であるマコトを抑えにかかる。

マシンガンの乱射は建物を遮蔽物に使ってあえなく躱されるも、ここでヒナが相手し続けている限りは指示を出せない。

そして、余裕で戦える相手ではないとマコトもまた理解しているからこそ全力で対抗することを決めていた。

 

「叩き潰してやる、空崎ヒナ」

「潰れた空き缶みたいにしてあげるわ。羽沼マコト」

 

 

 

 

 

 

「踏ん張りなさい!」

「うっ…う、おりゃぁぁぁ!」

 

アオイの蹴りをレールガンで防ぎ、衝撃で痺れる腕を強引に振り抜いて押し返す。

格闘を主体に立ち回るアオイの動きのキレと戦闘IQの高さに翻弄され、アリスはじわじわと体力を削られるジリ貧の状態に陥っていた。

 

迫る右ストレートを懐に潜り込んで回避しながらアオイの腹にカウンターを入れようとするが、アリスの拳が届く前に腕を蹴り上げられ攻撃が逸らされ、回し蹴りが横腹に叩き込まれてたたらを踏む。

しかし、何度アオイの強烈な打撃を受けてもアリスは倒れず、大きく跳躍すると向かいの廃墟の窓に飛び込む。

それを視線で追いながら、アオイは心の中で賞賛を送っていた。

 

(素晴らしいタフネス、地形を利用する柔軟性も申し分ない)

 

壁を突き破って姿を現したのと同時にアリスが投げてきた大きな瓦礫を掴んで止めるが、瓦礫を目眩しにその真後ろから跳んできていたアリスの腕がアオイが止めた瓦礫を後ろからぶち抜いて粉砕し、威力を衰えさせることも無くアオイの顔までもを殴り飛ばす。

少し後退するだけで踏みとどまったアオイだったが、アリスは続け様にアオイに急接近して飛び蹴りを仕掛けた。

 

(行動の組み立ても早い。そして極めつけは…)

 

アリスの飛び蹴りを腕で受け止めようとするが…その凄まじいパワーによってあっさりと吹っ飛ばされ、先程とは逆にアオイが廃墟の壁に背中を打ち付けた。

 

(あの小さな身体で素の力は私より上。だから少ない神秘でも十分な肉弾戦の威力を発揮出来る。そして神秘が少ないからこそ動きが読みにくい…だけど…)

 

 

 

「光よ─────!」

 

「それだけは…違う!」

 

アリスが追撃に放ったレールガンの極大のエネルギー。

それをアオイは…右腕を前に出して受け止め、それだけでエネルギーを相殺して防いでみせた。

 

「なっ…」

 

通常の火力では効かないと踏んで全力では無いが言いつけを破って神秘を込めてまで放ったそれを、避けるでもなく肉体1つで防がれた事にアリスは呆然とする。

今の攻撃によってアオイの手袋が破れた程度で、白玉のような肌にはほとんど傷は付いておらず、全力で神秘を込めて放っていても倒せたかは怪しい。

 

「それでは…駄目よ!天童アリス!」

 

 

 

 

 

 

 

「今のアオイか?」

「で、ですね…」

「お前らがアリスを仕留め損なった理由が何となく分かったよ」

 

アオイの怒号は離れた場所で対峙していたヒフミとレンゲの元にまで響いており、それによって戦闘が中断される。

とはいえ終始押されていた為攻め手が止まったことに安堵するヒフミだったが、増援の気配は無くもう暫く1人で相手するしかないのだと内心気を落としていた。

 

「…アリスちゃんのことは、ごめんなさい。言い訳にはなりますが、私は皆とは違うんです。ですが、それでも交流会の勝ちを譲る気はありません。特異現象捜査部の生徒には活動に応じて連邦生徒会から給与が支給されるのは知っていますよね?」

「階級上がると増えるやつか?なんだお前、金目的でここに入ったのか 」

「それは悪いことですか?」

「いいや。だがなんで金が欲しいんだ?」

 

 

 

「それは…モモフレンズグッズの為です!」

「…は?」

「それなゲリラライブやイベントの参加費用の為にも…私は稼がなければいけないんです!」

「…まあ特異現象捜査部に入るような奴にまともな奴の方が少ないに決まってるか。それでキキョウと上手くやれてるのか?あいつの弄りの格好の的にされそうだな。ま、理由がなんであろうと…手加減はしねーぞ?」

「勿論、そんなつもりで言ったわけではありませんので!」

 

 

 

 

 

 

「アリス、その武器は?」

「…え?『光の剣(レールガン)』のことですか…?なんですか急に…」

「それに甘えている限り貴女は私に勝てない。そらで満足してるようなら、私は貴女と親友ではなくなってしまうわ」

「いえ、それは別に良いのですが…」

「弱いままで良いの?」

「っ…!よくなんか、ありません!」

 

───強くなる。

守る為に、勝つ為に。

もう二度と、コハルのように悲しむ人が現れないように。

 

 

『君は強いのだから人を助けるんだ』

 

 

自分の原点を思い出し、救える人を精一杯救う為に。

 

「アリスは…もっと強くなります!」

「ふふっ…そう来なきゃね!」

 

その為に、アリスはアオイの胸を借りることにした。

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