ブルア廻戦   作:天翼project

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今回はアニメ16話までの範囲でお送りします



百鬼夜行支部交流会─団体戦 弐─

 

目より先に手が肥える事はないという。

良し悪しを見抜く目を養わねば、作品を生み出す手の成長は望めないという、表現者の間でよく使われる文句。

 

これはあらゆるジャンルに共通し、目のよい者の上達速度はそうでない者のそれを遥かに凌駕する。

 

 

 

「えぇいっ!」

「まだまだ、もっとよ!」

 

アオイの回し蹴りをしゃがんで回避したアリスは、振り切られた脚を掴むと振り回すようにして投げ飛ばす。

背中から地面に落ちる前に地面を手で押し、その反動で無理矢理空中で姿勢をコントロールしたアオイはヒールの底で地面を削りながら着地する。

その隙を逃すまいとアリスは放物線を描いて跳び上がり、上からアオイへレールガンや銃身を叩きつけた。

 

アリスの膂力に落下の勢いが加わったそれを腕で受け止めるアオイだが、その威力に足が若干沈み足元の地面が割れる。

 

(動きのキレが増している。私との戦いで、着実に成長している!)

「ふっ…ん!」

 

下からのアリスの蹴りがアオイの鳩尾に入り、身体が僅かに浮き上がった所にさらにレールガンをフルスイングして真横にぶっ飛ばす。

かなり強烈な一撃だった筈だが、アオイは焦りどころか痛みに顔を歪めることすらせず、やけに嬉しそうな表情をしていた。

 

(あの体勢なら避けられない、光の剣で…!)

(…だけど!)

 

「光よ────あっ!?」

 

先程のダメージを見て今度は間近でレールガンを撃ち込もうとうつ伏せに倒れるアオイの前まで接近して放とうとしたアリスだったが、発射の直前に銃身の下側を蹴られた事で銃口が真上に上げられ、あらぬ方向へエネルギーが放たれてしまう。

ならばとそのままレールガンの質量を振り下ろそうとするも、アオイは横に転がってそれを避けると足払いをかけてアリスを転ばし、その間に立ち上がって体勢を戻す。

 

お尻を地面に打ち付けて悶えるアリスだったが、アオイからの追撃が来ないことに疑問を感じつつ立ち上がると、それをわざわざ待っていたアオイは教導を始めた。

 

「貴女のレールガン(それ)、確かに武器としては強力ね。それそのものの火力は勿論、本体の頑丈さ故に盾にもなるし、重量故に鈍器にもなる。そしてそれを軽々振り回すように扱える貴女の腕力がそれらを最大限活かしてる。普通なら発射の反動だけで後ろに吹っ飛んで行ってもおかしくないもの。大抵の相手であればそれで十分勝ちを拾いに行けるでしょう」

「そうですか…?それは…ありがとうございます」

「但し、それが通じる相手ならば、よ。特級にはまだ通じない」

「!」

 

特級…トリニティでの1件で交戦したあのムツキというアウトロー、アリスはユウカからあれやホシノを襲撃したアウトローが特級区分に認定されたという話を受けており、だからこそ”特級”という壁が今の自分が超えなければいけない目標だと認識している。

そして今回アオイとの戦闘を通して、今の自分の力ではあのアウトロー達には勝てないだろう事も実感していた。

 

「どうするのかしら、親友」

「…それでもこれはアリスの武器です。今のままで通じないというのならば、レベルを上げて上から殴ります!」

「へぇ?小難しく考えるよりかは分かりやすくて悪くないわね。ならばどうやってその持ち味を活かすの?」

「それは…」

 

武器そのものの強化ならば幾らでもやりようはある。

その分重量や大きさが増えてしまうが、それでも十分に使いこなせるだけの腕力があるアリスにはある程度はデメリットにはならない。

だがしかし、それで”底上げ”は出来ても”上限突破”は難しい。

結局のところ、幾ら武器が強くても強い神秘を持つ相手にはそれだけでは有効打になりにくく、アリス自身が武器に神秘をどれだけ込められるかという話になってくるのだから。

 

アリスの神秘にも限りがある。

出力の話ならば一度に込められる神秘の量はさらに落ちる。

そして実際にそれをやろうとするとどうしても込められる神秘にはムラがあり、最大限の神秘を込めることは難しく威力が安定しない。

 

「…乱数をより高い方へ持って行ける感覚を掴めれば…より活かせるようになるでしょうか?」

「そうね。身体に、物に、神秘を流すという技術は特異現象捜査部で活動するものにとっては基本中の基本で、誰しもがこれを意識的に行っているわ。狂喜、憤怒、悲哀、悦楽、強い感情から捻出される神秘はお腹を起点に全身に流すのがセオリーよ」

 

一々自分の身体を指差しながら、丁寧に解説を始めるアオイにアリスも戦闘中だというのに聞き入ってしまう。

言動が意味不明な面があるとはいえ…確かに真っ直ぐ自分に向き合ってくれているということを感じこの短時間でアリスもアオイへの信頼が芽生え始めていた。

 

「お腹から胸を通って、肩、腕、そして拳。貴女の場合はそこから武器へ。神秘を流す、それは間違いでは無い。けれど、それは初歩。この認識に囚われていてはいけないわ。一流程神秘の流れで動きを読みづらいものよ。貴女とは違う理由でね」

「つまり、どういうことですか?」

「私達はお腹でものを考える?頭で怒りを発露できる?アリス、私達は全身全霊で世界に存在するのよ」

「…」

 

アオイの話を聞き、アリスは考える。

つまり───何を意味するのか。

正直ほとんど何を言っているのか理解出来なかったが、思考を放棄していては足踏みするままだと言葉の局所を読み取り、少しづつ”理解”を広げていく。

 

 

 

己を理解し、感情を理解し、神秘を理解し、存在を理解する。

そしてその果てにアリスは世界を理解する。

 

 

「…分かりました。ありがとうございます、アオイ」

「ふっ…もう言葉は要らないようね。手加減はしないわ」

 

答えに辿り着き、少し前とはまた雰囲気が変わったアリスにアオイは共に過した日々が脳裏を過ぎると、その集大成と言わんばかりにアリスを導く決意を決める。

 

(高みに登ってきなさい、アリス)

(アリスは…勝ちます!)

 

 

 

 

 

 

 

その頃ヒナの鵺に落とされ廃墟の屋上に墜落していたフウカは、地上から見上げて煽ってくるカズサとペロロにビビり散らかしていた。

どちらかと言えば偵察や索敵に向いたフウカには他の皆のような高い戦闘力や高火力な芸はなく、故に今回の交流会においても積極的に前線に出るつもりは無かったのだが…

 

「ほら降りてきなよ。早くしないと建物ごと爆破するよ」

「1階に爆弾をしかけてきた。何時でも行けるぞ」

「ちょっと待ってよ!?」

 

「…降りてこないなら少し話さない?あんた達もしかしてアリスの事殺そうとしてるでしょ?」

「…」

 

(あの子勘が良いなぁ…いや、それはペロロの方か)

「別に隠さなくて良いから。私も今回は殺す気でやるし。特にあいつ、キキョウとか言う雌猫。」

「…はぁ?人の友達になんて事言うの?」

「友達?癖強めの芸人の集まりの間違いじゃないの?そっちのメカとか、ペロロ先輩といいあいつといい、あのキモイ鳥流行ってるのかな?」

(なんだ、怒れるんじゃん。まあ怒りたいのは私の方だけどね…)

 

 

(カズサ…その煽りは私にも効く)

 

1名傷付いている者をスルーしてフウカを煽り倒すカズサだったが…背後から飛んで来た光線、それを察知したペロロがカズサを突き飛ばし、代わりに光線に貫かれてしまう。

 

「っ!ペロロ先輩!」

 

 

「急所は狙っていない。だが暫くは動けない筈だ。それで…何がキモイ鳥だって?」

 

後方の廃墟の陰から姿を現したのは、ペロロと似たようなデザインの、しかし機械で作られた異質な生徒…メカペロロだった。

光線に撃ち抜かれ倒れるペロロに駆け寄ろうとしたカズサだったが、メカペロロの腕に当たる部分の羽にくっつくように持っている銃で足元を撃たれ、それを妨害される。

 

「…待ってメカペロロ。この子は、私が責任をもってお説教する。キキョウがどれだけ苦労してるのか、それを教え込んであげる」

「無理をするなフウカ。やるとしても私が援護を───」

「詰めが甘い」

「!」

 

1人になったカズサを挟み撃ちにしようと近付いたメカペロロだったが…倒れるペロロの横を通り過ぎようとした瞬間、どこからともなくアサルトライフルを取り出したペロロはメカペロロの頭を撃ち抜き、怯んだところに体当たりをして奥の廃ビルの中へぶっ飛ばした。

 

フウカをカズサに任せてメカペロロを追ったペロロは、その先で全身から駆動音を上げるペロロを見て警戒を強める。

 

「…態々姿を表さずに援護に徹するべきだったな。戦場で目立ちたがり屋は長生きしないぞ。何はともかく…手合わせ、よろしく頼む」

「知ったような口を…」

「ふん、特異体を仕留めるという話はどこに行ったのだろうな」

 

「出力推進…『白熱眼光』!」

 

メカペロロの目から2本の光線が放たれる。

先程ペロロを貫いたのもこれと同じものなのだろう、今度は確実にペロロを倒す為に真横に薙ぎ払われたそれを上に跳んで回避したペロロは、電気の通っていない古びた電線を掴んでぶら下がり、上からメカペロロを撃ち下ろす。

頑丈な装甲でそれを跳ね返すメカペロロは光線を上に向け、電線を切断してペロロを地上に引きずり落とした。

 

(強いな…さっさと片付けてカズサに加勢したいが…あの火力の射撃は放っておくと面倒だ。最低でも準2級…カズサには荷が重い)

「…お前、何級だ?」

「特異体相手の格付けが今必要なのか?」

 

今のカズサはまだ3級、故に準2級のペロロが相手をしなければいけないと判断してメカペロロを追撃したのだが…

 

「ただ隠すことでは無いから教えても構わないが…準1級だ」

「…そうか」

「『泡沫』」

「ちょっ…待っ…」

 

想像以上に格上だったメカペロロに判断を間違えたかもしれないと及び腰になるが、そんなペロロに容赦なくメカペロロは口から強烈な放水を行い、廃墟の外の広場まで押し流す。

全身をびしょ濡れにし見るからに重量が増して機動力が落ちていると見るや、メカペロロはさらに目から光線を出してペロロを撃ち抜いた。

 

しかし、今度は真っ向から警戒されていた為か神秘で全身を覆われ、光線はペロロを貫くことなく表面を焦がすのみに留まる。

 

(タフだな…いや、あの外装がそもそも特別なのか?先程は不意打ち出来たから良かったが、この出力だと時間がかかるな)

(…先程の光線といい今の放水といい、出力は確かに脅威。だがあれを何度も繰り返せる程の神秘があるとは思えない。あの機体の操作自体にも神秘を消耗する筈。ならば…)

 

「!」

「確かにお前は準1級なのだろうが、火力ばかりに頼っていては3流もいい所だ。手解きしてやろう」

「ぐっ…舐めるな…!」

 

あの図体でどうやったのか、一瞬でメカペロロと間合いを詰めたペロロは銃床でメカペロロの側頭部を殴りつけ、横に傾いた所へ背中で体当たりをする。

メカペロロは壁までよろめいて背中をぶつけ火花を散らす。

反撃に転じようと目を光らせるが、光線を発射する前に文字通り目の前に突きつけられた銃口が火を吹き、片目が破壊される。

 

「くっ…そ…!」

「今の感覚で分かったぞ。やはり本体がどこかでお前を遠隔操作してるんだろう?神秘の出力からして本体はそう遠くにはいない…が、流石に今回のステージの範囲外か。仕方ない、やはりお前はここで壊させてもらおう」

「…いや、倒れるのはお前の方だ」

「…?お前…」

「”天与宣誓”…知っているか?自らが自らに課す契約とは違う。生まれながらに肉体に強制された契約だ。私には生まれつき右腕と膝から下の肉体、更に腰から下の感覚がない。肌は月明かりにも焼かれるほど脆く、常に全身の毛穴から針を刺されたように痛む。その代償として私は広大な秘儀範囲と実力以上の神秘出力を与えられた」

 

メカペロロ…その本体が語る壮絶な人生に、ペロロは神妙な面持ちで黙って聞き入る。

人の苦しみの告白に水を差す程、ペロロは薄情ではなかった。

 

「これは望んで手に入れた力じゃない。神秘を差し出して肉体が戻るのならば私は喜んでそれを差し出そう。だが…私を差し置いて、日の下をのうのうと歩いているお前が許せない!」

「…」

(八つ当たり…とは少し違うな。この神秘の高まり、まともに受ければ身が持たないか。しかし…)

 

メカペロロの片目に膨大な神秘が集中していくのを敢えて待ちながら、後方…この廃墟の外にいるであろうカズサがいる方角を気にかける。

 

(あそこから移動していれば良いが、今のあいつの攻撃範囲を考えると巻き込まれる可能性がある…仕方ない、受けてやるとするか)

 

「消し飛べ…『ハイパースパイラル熱線』!!」

 

 

メカペロロの片目が激しく輝き────放たれた極太の光線がペロロを包み込む。

凄まじいまでの神秘の奔流は廃墟の壁をぶち抜き、さらに複数の区画までもを巻き込んで前方放射線状の範囲を更地に変えた。

 

「…それと、私は一部を除いて同担拒否なんだ。キャラも被るから二度とそれを着るな」

 

炎に包まれるペロロを背に他の場所へ加勢に向かおうとするメカペロロ。

 

 

しかし、背後の物音に振り返ると、そこには炎を振り払い、先程まで持っていたアサルトライフルとは別の武器…大型の対物ライフルを手にしたペロロが立っていた。

 

(あれを食らってもまだ立っているだと…?いや、だが外装すら破れていないのはおかしい…)

「い、痛い、ですね…苦しいですね…今の、カズサちゃんとフウカちゃんも巻き込んじゃったんじゃないですか?」

 

「…!?」

(なんだ…?声と…雰囲気が…)

 

そこに立っているのは確かにペロロだ。

しかし、明らかにその身体の内から聞こえる声、口調、雰囲気…そして佇まいを含めた身のこなしが先程とはまるで…いや、完全に別人のものになっていたのだ。

 

「お前…誰だ…!?」

「私は…ペロロですよ?辛いですが…少しやり返したくなりました」

 

 

───ペロロ、アンチマテリアルライフルモード

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『大丈夫ですか?サオリ』

『…はい』

『そうですか…()()サオリですか』

『それは…どういう…』

『…2()()は、いつも貴女の中にいます。いつだって、貴女に力を貸してくれるでしょう』

『私の…中…?』

『いつか分かりますよ。だからどうか…皆、仲良くしてくださいね』

 

 

 

 

 

 

 

 

「っ…!『白熱眼光』」

 

メカペロロが光線を放つ。

片目を破壊されたことで威力は半減するが、それでも射程は十分、突然様子が変わったペロロは急にメカペロロに背を向けて走り出してしまったが、逃げる背中を撃ち抜いて転倒でもさせれば幾らでもやりようがある…そのメカペロロの考えは即座に粉砕されることになる。

 

表に出て既に500mは遠くまで駆けて行ったペロロは背後に迫る光線を振り向くことすらなく跳んで回避すると、空中で宙返りして頭が地上の方を向いた状態で、対物ライフルを構え正確にメカペロロの額を狙撃してみせた。

 

(…っ!対物ライフルは流石にダメージが大きい…いや、それにしても射撃の精度が上がり過ぎだ…!能力が向上したんじゃない、まるでまったく別の性能のキャラクターに切り替えたような…!)

 

 

普段外装で隠れて見えないペロロのヘイローは、3つのヘイローが重なって織り成している。

本人はその実態をよく知らないが…かつてペロロを拾ったヒマリ部長曰く、ペロロの特殊な生い立ち故にそのような状態になったのだとか。

ペロロは表に出てくるヘイローの人格を入れ替える事で、得意な技能も切り替えて様々な武器を使いこなし、戦闘スタイルを変えることが出来る。

 

バランス重視の肉体の本体である…サオリ。

対物ライフルの扱いに長け、狙撃と援護能力の高い…ヒヨリ。

そして、ロケットランチャーの扱いに優れ、高い火力を叩き出すことの出来る…ミサキ。

 

ミサキのヘイローはメカペロロの初撃の不意打ちからサオリを庇った為ダメージが大きく、今は回復中。

サオリのヘイローは先程までの戦闘で受けたダメージにより損耗し、余力があるのはもうヒヨリのヘイローしか無かった。

 

 

(ここで私が頑張らないと…もう後がない…!)

 

 

(理屈は分からない…が、アオイの体術を受けた方がダメージは大きい。あの程度の狙撃、武器の火力も本人の神秘も足りていない。だが…本来ならばここまでの損傷を負うことはない筈だ…!)

 

「き、気付かれちゃいましたかね…?」

 

ヒヨリの扱う対物ライフルは、その特性により神秘を込める事で放った弾丸が相手の纏う神秘を大きく削る性質を持つようになる。

それは即ち、このライフルによる攻撃を受ける度に、受けた者の防御力が削がれる事に他ならないのだ。

装甲そのものの強度と神秘による補強で高い防御力を誇るメカペロロだが、この攻撃を何度も受け続けて耐えることは出来ない。

 

(もう装甲が持たない…次あのライフルの攻撃を頭部か胸部にでも喰らえばそのまま機体の主要部を貫かれてしまうだろう。神秘も使いすぎた。機体のダメージも相まって『ハイパースパイラル熱線』はもう撃てない。『泡沫』は溜め込んでいた水を最初の放水で使い切ったから使えない。『白熱眼光』は片目を潰されて十分な火力を出せない…ならば頼れるのは格闘だけか。隙を見て『白熱眼光』を撃てれば或いは…無駄撃ちは出来ないし、それならば別にリソースを割くか?)

 

(サオリさんのヘイローもミサキさんのヘイローももう消耗し過ぎてる…主力武器は大方破壊していますが、残っているものも多少は耐えられる…筈…苦しいでしょうけど…多分接近戦に持ち込もうとするでしょうか?ですが、わざわざそれに付き合う必要もありませんし…)

 

状況としては両者既に満身創痍に近く、辛うじてペロロに体力的な余裕がある程度。

戦況は…得意を押し付けられた方に傾くだろう。

 

「…」

「…」

 

風が吹く、砂塵が舞う。

決着が着くとすれば一瞬、対応をしくじった方が土を舐めることになる。

互いに緊張が張り詰め、ペロロの鼓動は脈拍を増し、メカペロロは全身から上げる駆動音が高鳴っていく。

 

長いようで、そうでも無いような睨み合い。

時間だけが悪戯に過ぎ去って────背中のブースターを起動したメカペロロが高速でペロロへと突撃した。

 

「えぇっ!?」

 

音のように一瞬で肉薄するメカペロロの突進をスレスレで躱すペロロだったが、すれ違い様に足元を引っ掛けられペロロはステーンと転ぶ。

後頭部を打ちヒヨコが頭の上を回る様を幻視したペロロだったが、再び唸りを上げるブースターの音で意識を取り戻し、音の方向に即座に対物ライフルを撃つ。

が…

 

 

(瓦礫を盾に…!飛びながら拾ったんですか…!?)

(今度は外さない。確実に中身ごと仕留める。真横に切り裂けば躱しようがない!)

 

メカペロロの腕に当たる部位である羽が変形し、鋭い刃に変わる。

それを羽に仕込んだブースターの勢いで加速して───ペロロの身体に刃が入った。

 

 

 

「…なにっ!?」

 

だが、入った刃はペロロを両断することなく半ばまで切り裂いた位置で止まる。

中で硬い何かを盾にしているかのように。

 

(…そうだ、こいつ中に武器を…!)

「当たったら痛いじゃないですか…この身体はもう私だけのものじゃないんですよ?」

「しまっ…」

 

 

ドンッ!と激しい重低音。

刃がペロロに食いこんだまま止められたことで引くことが出来なかったメカペロロは、ゼロ距離からの対物ライフルを胸部に打ち込まれ、装甲を貫いた弾丸が内部の駆動部を破壊し、メカペロロの武装が完全に停止する。

もう戦えなくなったことを確認すると、ペロロは刃を抜いてふぅ、と一息…そして雰囲気が元のものに戻った。

 

「…お前の敗因は、1人で戦った事だ。私は私で生まれた時から恵まれた人生とは言い難いし、生まれの辛さを語り合うならお前とは気が合うと思う。だが…私は自由に生きれる者を羨ましく思ったことは無いぞ」

「…何?」

「確かに私は生まれは恵まれてたとは言えない…しかし、仲間には恵まれた。共に切磋琢磨し、高め合う。話し辛くても、時間をかけて理解を深める。暗くて自罰的で自己肯定感の低いウジウジした奴でも…一緒に大切なものを守り合う。そんな、この世に生まれてよかったと思えるような、そんな仲間がお前にはいないのか?」

「…私、は」

 

 

 

『メカペロロ、お前大技を無駄撃ちし過ぎじゃないか?キキッ、派手なのは良いがな!』

 

 

『メカペロロ、女のタイプも即答出来ないのなら1人前にはなれないわ。精進なさい』

 

 

『メカペロロ…こ、これバレンタインという事でプレゼントです!エボルタ単三が好きだと聞きましたけど…』

『…ヒフミ、私はそういうのじゃない』

『え!?ですがキキョウちゃんとフウカちゃんが…あぁー!?何笑ってるんですか!?』

 

 

 

「何故お前は特異現象捜査部に入った?それしかやることがなかったのか?まあ理由は正直どうでもいいが…何か叶えたいことがあるのなら、私はお前を手伝うことを躊躇しない」

「いつか…叶えたいこと…」

「”例えどんなにそれが虚しいことでも、努力をしない理由にはならない”…私が好きな言葉だ。お前はどうだ?」

「…私は…いつか、ヒフミと…皆と一緒に…!」

 

 

メカペロロが虚空に向かって手を伸ばす。

見上げる空は青く、陽光がさんさんと照りつけて煤けたメカペロロのボディが鈍く光を反射する。

いつかメカペロロがその光の方角へ行けたのなら…それをペロロは心から願った。

 

「悩みがあるなら相談するといい。仲間にも…私にもな」

「…ふん。私の姿を後で見て同じことが言えるのなら考えてもいい」

「見た目に関して今更どうこう言うことか?ペロロだぞ、お互いにな」

「…さっきも言ったが、私は一部を除いて同担拒否なんだ」

「そうか…ならその一部とたっぷり語り合ってくると良い。それが出来る仲間がお前にはいるんだろうからな」

 

倒れ伏すメカペロロを尻目に、ペロロは今度こそ今も戦っているであろう仲間の元へ向かった。

1人残されたメカペロロは…遠く離れた場所でそれを操作していた本体───白州アズサはいつの日か夢見た景色を幻視して、その目に涙を浮かべた。

 

 

 

 

 

 

「携帯を失くしたペロロだ。悪いが貸してくれ」

「は?」

 

 

 

百鬼夜行支部交流会 団体戦

メカペロロ───棄権

 

 

 




配役
パンダ核…サオリ
ゴリラ核…ヒヨリ
お姉ちゃん核…ミサキ
メカ丸改め与…アズサ
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