ブルア廻戦   作:天翼project

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今回はアニメ20話までの範囲でお送りします
今回少し読みにくいかもしれないです


規格外

 

───回歴する。

 

中等部1年時代、連邦生徒会の下っ端役員を務め真面目に業務に取り組んでいたある日、アオイはサンクトゥムタワーへの移動中に不良達の喧嘩に巻き込まれ、それを腕っぷしで制圧した。

毎日のように上司である役員に雑務を放り投げられ、それを淡々とこなすだけの退屈な日常。

そんな日々に辟易として戦闘の後処理もしないままサンクトゥムタワーに向かおうと来た時────不意に声を掛けられた。

 

 

『そこの君、ナイスファイト〜!』

 

『…?』

 

 

声を掛けてきたのは、翼を星や月形のアクセサリーで飾った桃色の髪の女性。

全くの初対面の彼女だったが…思えばこれがアオイにとっての人生の転換点となった。

 

 

『ところで聞くけど───どんな女の子が好みかな☆』

 

『…貴女は誰?』

 

 

退屈が裏返る…そんな予感がアオイの心の氷を溶かした。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

カヨコと激戦を繰り広げるアリスとアオイ。

式神頼りの戦いから自身の身体能力でも脅威的な力を見せたカヨコを前に、アオイも本気を出すことを決める。

 

「私の秘儀を解放するわよ!」

「あれ?前も使ってませんでしたか?」

「だけど、私の秘儀について貴女に詳しく説明している暇は無いわ。今私から言えることは1つだけ…止まらないで。そして私を信じて」

「2つ言われましたけど…分かりました!」

 

「…」

 

アリス達がまた何かをやってくるのだろうと悟ったカヨコは掌印を結び複数の式神を作り出す。

その中にはあの巨大な化け猫のような式神も含まれており、まともに削り合いをすれば間違いなくアリス達が不利となるだろう。

故に、アオイも分析を進めていた。

 

(あのアウトローの手札…作り出す式神の種類。主なのは5mから7m程の動物を模した怪物のような式神。これらの戦闘力はおおよそ均一、一体だけでも最低準1級以上の特異体に相当する力がある。次にお気に入りかなんなのか、あのアウトローが作る式神の中で最も強力と思われる化け猫。体長は10m程。力は下手な特級の特異体にも匹敵する。さらに、さっきのあの全長200m以上はある巨大な鯨のような式神。ただ大きくし過ぎたのか戦闘力自体は他の式神と大差ないように見えた。そして空崎ヒナに喰らいついていたような小型の式神…直接的な戦闘力は低くとも邪魔なことに変わりは無い。何より厄介なのはあのアウトローはそれらの式神を神秘が尽きるまで幾らでも作り出せることだけど…)

「…問題ないわ、アリス」

「はい?」

「不足の事態を考慮した上でIQ53万の私の脳内CPUが出した結論は勝利!何故なら、私は独りじゃないからよ!」

「散々長考した結果がそれですか!?」

 

長々と考え訳の分からない結論を出された事にツッコミつつも、駆け出したアオイに続いてアリスもそれを追う。

正面にはカヨコが作り出した計30体にも登る式神が待ち受けるが、今のアオイにはそれらに自分が…そしてアリスが止められる気はなく、その全てを粉砕してカヨコを制圧しようと速度を上げる。

 

「言ったでしょう、問題ないと。今の私には…シスター!貴女がいるからよ!」

「アオイ…足元危ないです」

「もっと早く言ってシスター!?」

 

地面に潜んでいた小型の鳥のような式神が嘴から伸ばした長い舌でアオイの足を絡め取ると、そのまま跳び上がってアオイを宙吊りにする。

そこへ別の鳥の式神が嘴で貫こうと身動きの取れないアオイへと突貫した。

 

(まずは1人───)

 

「───なんてね」

 

 

 

パァン!

と、景気の良い音が響く。

 

 

「…は?」

 

そしてその音と同時に、カヨコは自分の式神に足を絡め取られて吊り上げられていた。

正面から突貫しようとしていた式神は咄嗟に嘴をずらしてカヨコに突き刺さるのを防ぐが、避け切ることは出来ずにお腹へと強烈な体当たりをしてしまう。

 

「ごふっ…何が…!?」

 

「あっ、アオイ!」

「待たせたわね」

 

いつの間にかアオイはアリスの横へと戻っており、式神達も突然の出来事に困惑し上手く動けていない。

足を絡めている式神を消して地面に降りたカヨコは起きた出来事からアオイの秘儀を考察し…そして心底面倒そうだと内心毒を吐く。

秘儀にある程度当たりを付けられたところでアオイは不敵に笑うと自らの秘儀を開示し始めた。

 

「分かったかしら?私の秘儀は相手と自分の位置を入れ替える『不義遊戯』よ!」

「…?アオイ、それは…」

「しっ、慣れられる前に仕留めるわよ。ちなみに発動条件は手を叩くことだから覚えておきなさい!」

 

何かを言おうとしたアリスをウィンクと共に口止めしたアオイはアリスの背を叩いて今度こそカヨコを打ち倒そうと共に駆け出す。

走ってる最中もアオイは何度も手を叩き、その度にアリスと自分の位置を入れ替えて撹乱を行った

 

「あれ凄く嫌…行って」

 

接近されればろくな事にならないと、カヨコは困惑している式神達に指示を与え強引に迎え撃たせる。

しかし、単に2人の位置を入れ替えるというだけで戦闘を掻き回すには十分な効果を発揮し、アリスを前脚で叩き潰そうとした式神はアオイと位置を入れ替えられ攻撃が空振り、そして何故かアリスはアオイへとレールガンを放って…着弾する直前にアオイは手を叩きカヨコと位置を入れ替え、結果的にカヨコにレールガンのエネルギーが直撃する。

 

「〜〜〜っ!」

(これ…何時入れ替えられても防御か反撃出来るようにしないと直ぐにヘイローを壊される…!)

 

極大のエネルギーの奔流を浴び苦痛に顔を歪めるカヨコはとにかく式神達にアリス達を攻撃させるが、アオイが次々とアリス、そして式神の位置を入れ替えることでそれらを翻弄し、時折カヨコも入れ替えて同士討ちも狙おうとする。

やがて数がいた方がやりにくいと判断し式神を化け猫のみを残して消したカヨコだったが、それは同時に自らの強みを捨てるのも同然だった。

 

(とにかくこれで私と入れ替わるかこの子と入れ替わるか、Keyの器と入れ替わるか…三択まで絞れるだけまだマシ。けどそこまで頭が回りきらない…!)

 

「一気に削り切るわよ!」

「はい!」

「調子に…乗らないで…!」

 

防戦に回るぐらいならとカヨコは自分からアリスとアオイに肉薄する。

化け猫の式神とは一定の距離を保つことで入れ替えでの同士討ちのリスクを減らし、カヨコ自身も常に全身を神秘で守ることで先程のような不意打ちによるダメージを最小限にする急ごしらえの対策。

 

(なるほど、時間をかけるとその内対応されるわね…だけど…)

「考える暇もない程圧倒し続ければ関係無いわ!」

 

銃撃で牽制しながら銃のストックでアリスに殴りかかろうとするカヨコだったが、その前に手が叩かれアオイとカヨコの位置が入れ替わり空振る。

だがそれを想定していたカヨコは事前に入れ替わった後の位置関係を確認し、入れ替わった瞬間に即座にアリスの方向へ撃つ。

 

だがアオイはそれすら読んで自分とアリスを、そして自分と化け猫の式神を入れ替えることをカヨコが引き金を引くまでの一瞬の間に行い、弾は化け猫の式神を穿った。

結局同士討ちを誘われ舌打ちするカヨコだが、そこへアオイが背後を取り、対して裏拳でアオイの顔を狙ったカヨコだったが拳が届く前にアオイは手を叩き腕を振りかぶった状態のアリスと入れ替わる。

そして、アオイとアリスの身長差によりカヨコの腕はアリスの頭上をすり抜け、アリスの拳がモロにカヨコの鳩尾を捉えた。

 

「っ…!」

(まずい…これは…)

 

化け猫の式神がカヨコのフォローに入ろうとしても、その度にアオイが位置を入れ替えて引き離される。

積極的に肉弾戦を仕掛けてくるアリスとアオイに対抗しようとしても、アオイがアリスと入れ替わることで急に変化する体格差に目測を見誤る。

さらに油断すればアリスがアオイに殴りかかり、その時にアオイとカヨコが入れ替わることで不可避の攻撃が加えられる。

それが、延々と続けられ───抜け出せない。

 

「こんのっ…!」

「行けるわね!アリス!」

「はい、もう一度!」

(また…あれが来る!)

 

アオイの蹴りがガードするカヨコの腕を弾き、がら空きになった胴に再びアリスは極限の集中からなる渾身の一撃を繰り出し────黒閃

 

骨の軋む音と共にカヨコは血を吐き、廃墟の方へ吹っ飛んで壁を突き抜けた。

衝突の際の減速を利用して体勢を戻し着地するも、直ぐにアリスとアオイは追いついて追撃する。

 

(もう式神が役に立たない!選択肢が増えるくらいなら消した方がマシだ!)

 

化け猫の式神を消したカヨコはアリスの鬼気迫る希薄に気圧され集中力が途切れ始めていた。

そのチャンスを逃すまいとアリスはさらにギアを上げていく。

 

 

黒閃を連続で出すこと自体はそこまで凄い事では無い。

が、2回以上出すとなるとその日の内で無ければ難しいだろう。

それは、黒閃を出した際に入る事が出来る”ゾーン”の存在に由来する。

一度目が偶然でも実力でも、出すことが出来ればより集中力は高まり反応速度や神秘を操作する精度が高まるのだ。

普段意識して行う神秘操作は息をするように自然に巡り、全てが自分を中心に回っているという高揚感と全能感に包まれ…そうなれば、もう止められるものはいない。

 

 

「はあぁぁぁ!」

「くっそ…!」

 

 

アオイのサポートが入り、カヨコの顔面を狙ったアリスのストレートは3度目の黒閃を出す。

 

(シスター…貴女からはいつだって予感がする)

 

 

「とりゃあぁ!」

「あがっ…!」

 

カヨコがアリスへ振り抜いた拳を、アオイが横からハンドガンで撃ち抜いて逸らし、逆にアリスの回し蹴りが脇腹を直撃────4度目の黒閃。

 

 

「これで…!」

「ま、だ…終わりになんか…っ!」

 

アリスが腕を引き絞るように身体の後ろで構え…カヨコは背後を陣取るアオイが手を叩こうとしていることに気が付く。

このままアリスへの反撃の為に攻撃すれば入れ替わったアオイに有効打を与えることが出来るかもしれないが、その場合背後からアリスの一撃を思いっきり食らうことになってしまう。

 

(面倒なのはあっちの女だけど…今警戒しなくちゃいけないのはKeyの器!)

 

そしてアオイが手を叩いたのに合わせて後ろに蹴りを放ち───

 

 

(入れ替わって…ない!?)

 

「手を叩いたからといって秘儀を発動させるとは限らないわ。単純だけど引っかかるわよね」

 

(アリス…貴女からは、あの時のような退屈が裏返る予感が!)

 

「アリスは、全力で殴ります!」

「終わらない…終わらせない!私の平穏を…!」

 

せめて少しでもダメージを逃がそうと後ろに飛び退くカヨコに、アリスは身体の後ろまで引いていた腕を出し───背負っていたレールガンを構える。

 

「なっ…」

「光よ─────!」

 

 

黒閃を出すならば、己の身1つで殴るのが1番出しやすい。

ただでさえ運が絡む為、物体に神秘を流して攻撃する手法では早々黒閃が出ることは無いが…幾度の黒閃を経験し、極限まで集中力が高まり遂には天元突破の域まで達したアリスのレールガンの極大のエネルギーはカヨコに直撃し────黒閃。

 

 

 

「…あぁぁ!」

 

「ふう、頑丈ね」

「まだ倒れないなんて…防御力が高過ぎませんか!?」

「流石に追い詰めてるわ。後は押せ押せよ」

 

「…ふ、ふふふっ…そっか、これがムツキが言ってた…死に近づく感覚なんだね」

 

 

黒閃は、アリスを急激に高みへと押し上げて成長させた。

だが…それを受けた方もまた、刻一刻と近づくヘイローの限界に死という名のインスピレーションを受け、新たな扉を開こうとしていた。

 

「…けど油断はしちゃ駄目よ、シスター」

「…はい、アリスも感じました」

「うん…私は大丈夫。まだ楽しめてるよ。ここからが…私の羽化だから」

 

全身をボロボロにし生傷が痛々しいカヨコだが、その状態でも笑みを浮かべ、掌印を結ぶ。

それにより化け猫の式神が作り出され、カヨコを庇うように前へ出た。

 

(入れ替えられる事を承知で式神を…?下手に入れ替えるのは危険かしら?いやでも…)

 

「来なよ」

「…アオイ」

「ええ、今度こそラストスパートよ」

 

化け猫の式神の背後からカヨコが指を立て挑発する。

それに触発された訳では無いが、今なら押し切れると2人は果敢に攻め込んだ。

化け猫の式神が叩きつけて来る前脚を左右に別れて避け、アリスはその巨体の真下に潜り込んで腹を突き上げ式神を怯ませ、横を通り抜けてカヨコに迫ったアオイは手を叩いてアリスと入れ替わる。

 

既に反撃の為に腕を振り抜いていたカヨコは…途中で軌道をアリスの顔の高さに調整し、お互いの顔にクロスカウンターが入った。

 

 

(あっちもこの期に及んで対応し始めてきてるわね…けどさっきの黒閃ラッシュは確実に効いてる。私達2人なら鎮められるわ)

 

 

(生まれて初めて感じた死の気配、それでもこの戦いへの愉悦は衰えない。私も登れる、もっと上に)

 

「む…なんですかあれは」

「あの小さな式神は…空崎ヒナに喰らいついてたやつね」

 

距離を取ったカヨコは掌印を結ぶと、複数の小さな猫のような式神を作り出し、それらを一斉にアリス達へ向けて走らせる。

あれがヒナに与えていた影響を思い出したアオイは距離が近かった為に避け切れそうにないアリスとカヨコの位置を入れ替え、アリスを式神達の攻撃範囲から逃がした。

 

(あの女を経由せずに私とKeyの器を…!?自分以外のもの同士も入れ替えれるのか…!)

 

しかしアオイは式神の攻撃範囲からは出られてはおらず、このままではまともにあの式神達に喰らいつかれるだろう。

当然庇われた方のアリスはそれに責任を感じてしまう。

 

「アオイ!」

「心配ないわ!私の鍛えたこの身体と神秘による防御なら、あんな子猫の牙なんて通しは───」

 

 

 

 

 

 

 

『本当にそう思うかしら?』

『はっ…!リンちゃん!』

 

アオイの脳内に存在する教室の空間。

そこにバァーン!と効果音が付きそうなポーズで現れたリンはアオイに近づきその唇に人差し指を当てると、顔を赤くするアオイを無視して自分の考察を語り出す。

 

『空崎さんの傷口は覚えてるかしら?』

『も、もちろん覚えてるわ!今まさに私に襲いかかろうとしてる小さな猫のような式神!だからこうして…』

 

『けど、空崎さんに喰らいついてた式神は少し大きくなっていたわよね?』

『!』

『血液を吸って成長した?有り得なくはないわね。けれど相手は式神よ?1番可能性があるとすれば何かしら?』

『…!神秘!』

 

 

 

 

(防御の為に神秘を身体に流せば却ってそれを吸ってあの式神はより強く喰らいついてくる!)

 

この間0.01秒。

あの式神の攻撃の正体に勘づいたアオイは肉体の踏ん張りのみで牙を止めると、自ら地面に倒れ込んで体重で式神を押し潰して破壊する。

 

「次は広報用の生配信に出るんだったかしら…感謝のスパチャを送らないといけないわね」

「さっきから…ずっと鬱陶しい!」

「あら、つれないじゃない」

 

自分に向かってきていた式神を消したカヨコはアオイを撃とうとするが、背後に回ったアリスがカヨコの背中を蹴ってアオイの方へと飛ばし、それに合わせてアオイはカヨコの頭を掴むと強烈な膝蹴りを入れた。

鼻血を垂らし仰け反ったカヨコに致命打を与えようとアオイはアリスの側に移動して手を叩き…アリスが一丁目の銃と入れ替わる。

 

(人と物も、入れ替えられるの…!?)

(私の秘儀の対象は特定範囲内の神秘を持ったもの。即ち無生物でも遺物のように神秘を宿していれば入れ替え対象よ。そしてその対象は…さっきレンゲが落としていた()()!)

 

「それは…!」

「気付いてももう遅いわ!」

 

 

特級遺物…『百花繚乱』が火を吹き、放たれた弾丸がカヨコの額を撃ち抜き、衝撃で縦に一回転してカヨコは倒れる。

だが直ぐに起き上がるとまた化け猫の式神を作り出し、それわアオイへとけしかけた。

 

(私の神秘を上乗せした特級遺物でもまだ倒しきれない…でもこの式神も最初より格段に強さが落ちている。もう限界はすぐそこね…いや、何か様子が…?)

 

あれだけの強力な連打を受け、体力も神秘も遂に底を突きかけたと思われたその時、大気の流れに変化が起きたことに気付きアオイは慌ててカヨコから距離を取る。

渦巻く大気、その中心に立つカヨコは化け猫の式神を消し…消滅した際に散らばった神秘の粒子がカヨコの方へと流れる。

 

 

「私は…今まで何度も出した式神を自分で消してたよね?そうして消した式神は分解されて神秘に戻るけど…それは私に還元されず、大気に留まる。だけど回収できない訳じゃなくて…私自身の神秘を回復することは出来なくても回収した神秘で秘儀とかは使えるんだ」

「…開示…能力の底上げね」

 

 

「アオイ!」

「来ないで!」

 

百花繚乱と入れ替えられようやく戻ってきたアリスだが、駆け寄ろうとするのをアオイが止める。

その間にもカヨコは大気を漂う分解された式神達の神秘を集め…遂にそれを解放しようとした。

 

「だけどせっかく集めた神秘を直接放出しても、新しく式神を作っても、あんたの秘儀なら簡単に避けられるだろうね。だから────

 

 

 

 

 

 

 

─────神秘解…!」

 

 

カヨコが見せようとした神秘の極地。

しかしその直前廃墟街を覆う結界が崩壊し、代わりに圧倒的な神秘の圧力が巨大なプレッシャーとなって一帯を飲み込んだ。

 

 

「結界が…」

「…来たようね」

 

「…潮時か」

 

 

結界が崩壊した事に困惑するアリスに対して、それを成した存在を察知したアオイとカヨコは空を見上げる。

 

 

そこには、空に立つかのようにキヴォトス最強の神秘…小鳥遊ホシノが地上を見下ろしていたのだ。

 

 

 

 

 

 

 

巨大ロボの胴体から突き出たバルカン砲を機敏な動きで避けた2つの頭部を持つ奇怪なスーツ姿の男はリオを狙おうとするが、両者の間を巨大ロボのアームが遮りそれを妨害する。

 

『ハイジョ!ハイジョ!』

「くっ…巫山戯た外観に反して無駄に精巧に作られているようだな…!」

「だから見た目は関係無いじゃない!」

 

結界が崩壊する少し前、未だ交戦していたリオが操る巨大戦闘ロボ、アバンギャルド君とマエストロの戦いが激化する。

 

 

時を同じくして、生徒達の保護の為に廃墟街を駆け回っていたカホの元にも刺客が現れていた。

何処から撃たれた事を察知したカホは偏差撃ちされた弾丸をギリギリで踏み止まることで避け、撃ってきた方向を睨む。

 

「っ…!誰!?」

「あっれぇ?避けちゃいました〜?」

 

 

瓦礫の山の上からカホを撃ったのは、桃色の髪をツインテールにした小柄な少女。

 

(恐らく今回の襲撃を仕組んだアウトローの一派…!)

「にはは〜、良い武器だと思いませんか?マエストロさんが私用に改造してくれたんですよ!」

 

少女は桃色に塗装された銃を自慢するように掲げる。

一見好きだらけに見えるが、どのような秘儀を持っている相手かも分からないが故にカホも迂闊に仕掛けることが出来ずにいると…

 

 

「そこのチビ、こんなところで遊んでないでさっさと家に帰ってママに甘えてきなよ」

「どこもかしこも…なんで今日はこんなに…」

「あなた達!」

「げっ…増えた…」

 

廃墟街の外へ向かっていたカズサとキキョウが合流し、臨戦態勢を取る。

人数差が出来たことで露骨に引け腰になった少女は、さらに直後に結界が崩壊したのを確認すると直ぐ様反転して脱兎のごとく如くどこかに逃げて行ってしまう。

 

「…なんだったのあいつ」

「さあ…?」

「そ、それよりも早く他の生徒の安全を確認しないと…!」

 

 

 

 

そんな各場所の様子を上空から俯瞰していたホシノはまず先にアリス達の方へと目を向ける。

 

 

 

 

「…残念だけど、ここまで」

「っ!逃げるのですか!」

「よしなさい、アリス」

「自分と小鳥遊ホシノとの格の違いは理解してる。わざわざ負けると分かってる相手と戦うつもりは無い」

 

 

 

 

「う〜ん?アリスちゃん格段にレベルが上がってるね〜…ああ、アオイちゃんか。あの子なら確かに色々とアリスちゃんと相性良さそうだし…特級クラスのアウトローとやり合ってるぽいけどあれなら心配はいらないかな。なら…」

 

 

 

 

 

「まずはこっちを片付けようか」

 

「!来たな…小鳥遊ホシノ」

 

一瞬でアバンギャルド君と戦闘中のマエストロの背後に移動したホシノ。

それに気が付いたマエストロは瞬時に振り向いてホシノへと手を伸ばすが…

 

 

「小鳥遊ホシノ!殺さないで!」

「分かってるよ」

「ぬぅ!?」

 

ホシノはマエストロに触れるまでもなく不可視の圧力で四肢を捩じ切った。

達磨状態になったマエストロは無様に地を藻掻くだけの木偶人形と貸すが、ホシノは容赦なくそれをリオの方へと蹴り飛ばす。

 

「〜〜〜!」

「話が聞きたいんでしょ?ほら死んじゃう前に早く手当てしてあげなよ」

「…人の事言えた身ではないけれど…貴女も相当惨いわよ?」

「うへ〜、褒め言葉として受け取っておくね〜…さて」

(カホちゃんの方にいた気配が消えちゃったな。事前に逃げの算段を付けてたのか…残ってる子はこの前のかな。あれも逃げが上手かったし、ちょっと遠い…仕方ないか)

 

アリス達とアウトローがいる方を見据えたホシノは両手を合わせ、指を絡めるような掌印を結ぶ。

 

 

 

「ちょっと、乱暴しようかな。

順転『明け』反転『宵』────」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「今回は引くよ。機会があったら、続きはまたその時に」

「逃がしなんて…!」

「だからよしなさい、アリス…巻き込まれるわよ」

「えっ…?」

 

「巻き込まれる…?いやこの気配はまさか…!」

 

カヨコは遠方から感じる強大な神秘の気配を感じ取り、地面から大きな魚のような式神を呼び出して自分を飲み込ませた。

そしてまた地中に潜らせてこの場を離脱するつもりだったが───

 

 

 

 

 

掌印と詠唱によってホシノのオッドアイの瞳、赤と青のその両方が光を灯す。

続いてホシノはショットガンを構え…その銃口に赤と青の光が渦巻き、1つの紫の光を形成した。

 

 

「───虚式『暁』

 

 

そしてショットガンの引き金が引かれ───放たれた紫色の閃光は直線上の何もかもを巻き込み、そして消し飛ばす。

駆け抜けた閃光は大地を抉り、廃墟の瓦礫を塵1つ残さず消滅させ、圧倒的な破壊を振り撒く。

 

それが通った後には…一切合切が残ることはない。

 

まさにそれは小鳥遊ホシノ、最強の証明であった。

 

 

 

 

「…相変わらず規格外ね。これじゃあ仕留められたのかどうかも分からないじゃない」

「ホシノ先輩…チート過ぎます…」

 

 

 

 

 

 

 

「クク…ククク…素晴らしい!まさにキヴォトス最強の神秘!これ程までに美しい芸術があるとは!」

「黙りなさい。あなたにはじっくりとことの詳細を吐いて貰うわよ」

「やあ、大丈夫〜?」

 

四肢を失ったマエストロに縄を括り付けているリオの元に戻ってきたホシノは笑顔でVサインを送った。

 

「…どうだったの?」

「なんとか一件落着…と言いたいところだけど、どうやらそうもいかなそうだね」

「?」

 

笑顔から一転目を細めたホシノは、ここから遠く離れた…S.C.H.A.L.E本部の方を見て、眉を顰める。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

────S.C.H.A.L.E本部

 

地面を這いずる異形を跨いだムツキは、廃墟の方を振り返り「う〜ん」と唸る。

 

「カヨコっち大丈夫かな〜…まあ何はともあれ、こっちは任務完了っと」

 

無邪気に笑うムツキは、手のひらの上で強奪したKeyの機器部品(モジュール)を弄りながらその場を後にするのだった。

 

 




不義遊戯の戦闘を文字で表すのが死ぬほど難かった…
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